到着した6階。
眼前に広がるは、巨大な5枚のスクリーン。
それぞれ右から順に問1、問2と表記されていき、5問。
スクリーンに映っている問題を、その前にある台にある道具(現代でいうコンソール)を通じて入力する。

「失敗は、なし。 一度でも間違えば、この階は攻略失敗。 外に出されるわ」

頭を使う問題。
失敗は、許されない。

「制限時間は?」
「ないわ。 ただし、私たち個人で言うなら、今日中。 上に上がることを考えれば3時間は切って欲しいわ」

余裕はあまり無い。
うだうだと考えている余裕は無い。
恭平は、一歩踏み出す。

「覚悟はいいようね」
「はい。 こういうのは得意ですし。 いきます」

恭平は問1の問題へ。
スクリーンにはこう映っている。

問1:(x-a)(x-b)(x-c)……(x-z)を求めよ。

「……数学?」
「数学問題が多いわね」

少しの間、思案。
そして、迷わずコンソールを叩く。

ピッ

[問1、クリアーです!]

途端に正解を告げる声が流れる。

「早い……っ!」
「次は問2っ!」

問2:次の文字に当てはまる数字を答えなさい。

    ABCDE
  ×     4
    EDCBA

掛け算。
傍目に高難易度な問題が続く。

「私のときとは問題が違うわね……ちょっと難しくなってるかも」
「ふむ……AとEは簡単に答えが出るなぁ……いや、Bもか。 ここまでくれば……っ!!」

所要時間3分。
恭平は再びコンソールを叩く。

[問2、クリアーです!]

まるで答えを知っているかのような、恐るべきスピードで問題を解いていく。
この調子なら、もしかしたら……?

問3:高さ10メートルの二本の旗竿が立っています。
    長さ15メートルの縄の端を二本の竿の先に結び付け、間に垂らしました。
    縄は一番低いところで地上2メートル50センチのところにあります。
    旗竿はどのくらい離れて立っているのでしょうか。

「あ、文章題だ」
「なんでもありよ。 最後は……今までの問題が前回と違うから、何かはわからないわ」

最後も問題だが、今は1つ1つ確実に解いていかねばならない。

「……ん? 10メートル……15メートル……二本……2メートル50センチ……なんだ」

これまたあっさり。
答えを叩き込む。

[問3、クリアーです!]

「早いわね……別に本人は急いでるわけでもなさそうだし……いけるわね」

焦らず急がず。
恐らく本人は、じっくり解いているつもりなのだろう。

「さぁ……問4」

問4:次の文字に当てはまる数字を答えなさい。

    SEND
   +MORE
   MONEY

「洒落た問題だなぁ……でも……う、少し難しいか。 Mは楽勝だけど……あ、Oも出る」

今までとは違う。
真剣に考え始める。

「っていうことは、Sがあれで……地道に計算すれば何とかなるか」

そういって、残りわずかなパターンを試していく。

「……! これかっ!」

コンソールを叩く手に力がこもる。

ピッ

[問4、クリアーです!]

前座は終わり。
そして、問題の…ボスキャラが登場する。


SUNNY-MOON

第22話 Wisdom & knowledge



問5:次のクロスワードを全て埋めよ。

前提
 A家の持ち物になってから何年もなる、ある農場が舞台。
 農場の一角に、長方形の牧草地がある。

主要材料
 ・年は1939年
 ・1エーカー=4840平方ヤード=4ルード
 ・1マイル=1760ヤード


・横のカギ

1:牧草地の面積は○○平方ヤード
5:A氏の伯母Bの年齢
6:牧草地の縦と横の差は○○ヤード
7:「縦の8」と牧草地のルード数を掛け合わせた数
8:牧草地がA家の所有物になった年
10:A氏の年齢
11:Cの生まれた年
14:牧草地の周囲は○○ヤード
15:A氏の歩く速度を時速何マイルに換算し、それを3乗した数
16:「横の15」から「縦の9」を引いた数


・縦のカギ

1:牧草地の1ルード辺りの価値は○○シリング(1ポンド=20シリング)
2:A氏の義母の年齢の2乗
3:A家の娘、Cの年齢
4:牧草地のポンドでの値段
6:A家の息子Fの年齢。 1945年には妹のCの歳の2倍になる
7:牧草地の横の長さの2乗
8:A氏が牧草地の周囲を1回1/3まわるのにかかる時間○○分
9:「横の10」の数にかけると答えが「縦の10」になる数
10「縦の9」を見よ
12:「縦の10」のケタ数を足したものに1を加えた数
13:牧草地がA家の所有物になってからの年数

「な……ちょ、ちょっと恭平、これ、解けるの?」
「やるしか、ないですけど……かなり厳しいですよ」

ばかげている。
今までの問題は、計算して答えが出れば、終わりだった。
しかしこれは、そもそも計算する回数そのものが普通じゃない。

「くっ……難しい……これほどなのか……?」

思案する。
出来そうなところからやらなければ、流石に話にならない。

「まずは……舞台が1939年だから、横の11と横の8、どう考えても1000年台……」

4桁目に1を書き込む。

「あと……ここ、か……?」

メモ帳を取り出し、書き出す。
流石に記憶力のみでどうにかできる領域ではないのだろう。

「横の15……3乗して2桁の数字は2つ、3と4だ。 3なら27、4なら64……縦の9の1桁目が1だから、仮に横の15が64だとすると、横の16の結果の下1桁は3……すると縦の7の1桁目も3……3? ありえない」

横の15に27を打ち込む。

「すると、引き算の結果は6だね。 で…縦の9と横の10をかけたら縦の10になる……縦の9の1桁目が1、横の10の1桁目は2……横の10の1桁目は2。 うん、これで縦の8も答えが出たな」

(すごいわね……もう、好きとか嫌いとか、それ以前の問題よ。 相性よすぎだわ。)

フィアは考えていた。
正直数学は苦手じゃない。
が、はっきり言ってこれは、どこかで習う数学の問題ではない。
数学の名を借りたクイズだ。
ここまで来ると、数学が出来る出来ないだけではない。
パズルが好きかどうか、そして何より、相性がいいか悪いかが問題になる。
見ただけでどこから先に解けばいいのかを瞬時に判断する能力。
それは、戦いの場では圧倒的な武器になる。





 「……っと、フィアさん、疲れました。 少し休憩にしていいですか?」

2時間が経過した頃、恭平が言った。
流石に楽ではないのだろう。
が、見ると既に半分以上は埋まっている。
流石というべきだろう。

「ええ、そうね。 少し頭も体も休めましょう。 この上からは休めないわ」

上にいるモノを、フィアは知っている。
いくら昔の話だとはいえ、初回に撤退を余儀なくさせた程の敵。

「そういえば、恭平……あなた、なんで戦ってるの?」
「えっ?」
「正直、恭平は文系だと思ってたからね。 戦うって事は、それ相応の理由があるんじゃないかと思ってね」

確かに戦いを好むようには見えないし、ましてその相手がウリエルというのは想像もつかない。
それは、わずかなものを守る戦いではなく、この世界のすべてを守る戦いだからだ。

「そうですね……そもそも僕は、この世界の人間ではないんです」
「えっ?」

恭平は今までのすべてを話していた。
そもそも別の世界からきたこと。
いろんな偶然が重なって、今この場にいること。

「へぇ……今度は恭平たちの世界に行ってみたいわね」
「いいところですよ。 ここみたいに、自然はあまり無いですけど」
「なるほどね……その娘、変わってるわね」

その娘……ここに来ることを決意した水羽のことだろう。

「真っ直ぐなんですよ。 見てしまったものを見逃せない。 避けて通ればいいところを真っ向から突っ切ってしまうんです」
「悪いところでもあるけど、立派な長所よ。 会ってみたいわね」
「……ブレイバルにいると信じて、必ず会わせてあげますよ」
「なら……そろそろ片付けてね」
「任せてください」

恭平は立ち上がる。
残り約半分となった、いかれたパズル。
終止符を打つ時は、近い。





 更に2時間が過ぎた。

「これで……どうだぁっ!!」

最後の入力を終え、判定のボタンを押す。
ようやく問題が解けたのだ。

[問5、クリアーです!]

「私なら、倍はかかるわね……流石だわ」

所要時間4時間。
異例の速度である。

「よく、やったわ」

コンソールなどの一式が消え、階段が現れる。

「ふぅ……楽しかったけど、そういう問題じゃなくなるんですね」
「ええ。 ここから先は……命がけよ」

2人は、階段を踏み始めた。






紅美「もう、何がなんだか……」

雄也「面白そうだなぁ。 今度は是非挑戦させて欲しいよ」

紅美「雄くんこういうの好きだもんね……」

SoU「解答編も用意したぞ。 一応解きたい方がいると問題なので、問題ごとに1ページ使ってある」

紅美「私はやりません」

雄也「面白いのにな……」


次回予告

 戦いを終わらせる。
その為に、闘う。
7階以降の魔物は正しくボスにふさわしかった。

恭平「こ……これは……!?」

悪夢を超えて。
ついに、旅立ちのときは来る。


第23話 TRI-BLADER


フィア「さぁ……泣いても笑っても、それが最後よ」






解答編1
解答編2
解答編3
解答編4
解答編5