「牛たちの風景」
 
牧場にも春が来ました。ふきのとうがあちこちに顔を出し、福寿草が咲いています。この時期は一年で一番汚い季節です。しばれが解けてくるとぬかるみができて、ぐちゃぐちゃです。5月になると落ち着きます。それまで我慢です。牛たちは早く放牧場に出たいと思っているでしょう。草が伸びるまでもう少しの辛抱です。我が家には種牛がいます。自然交配なので、彼が発情の雌牛を見つけて交尾します。今は、厳寒期の出産を避けるために雌牛から離されています。彼は雄大な体を持ち、悠然としています。餌を食べる位置は一番の場所。力関係がはっきりしています。群れで生活している牛たちは、個性豊かな集団です。みんな真っ黒で同じに見えますが、人間と同じで、性格も様々です。月齢が7−8ヶ月になると離乳といって、母牛と子牛を離します。今まで自由におっぱいを飲んでいた子牛たちはミルクがもらえず、寂しくて親を呼んで大泣きします。親も急に自分の子供がいなくなるので子供を呼びます。離乳したあと1週間は、彼らの呼び合う声でいつもは静かなこの山もにぎやかです。親の中でも親の鏡のような牛がいます。先頭を切って我が子に一直線、柵をものともせずに突進です。仲間を引き連れ柵を壊すのはいつも同じ牛、なんと親子そろってそうなのです。そうかと思えば、知らん顔の親もいます。あっさりしているというのか思い出したころ、一声ないてみると言うような。肥育される牛たちは、何頭かの群で飼っています。嫁いだころはお気に入りの牛がいてかわいがっていましたが、肉に出荷するときの別れがつらくてお気に入りを作るのはやめました。それでも目立つ牛はいます。餌の前でお尻を柵にこすり付けて必ず、餌の上にうんこをする牛、餌を食べるときあわてるあまりなのか、撒き散らしながら食べる牛。このごろの問題児は2月に生まれた3頭の子牛です。柵を抜け出しやりたい放題です。昨日、私の大事な木ぼたんがぼっきり折れていました。犯人は子供か牛か怪しいのですが、どちらにしてもこの3匹どこでもうんこをして歩き困っています。

ゆのみ NO24   4月10日
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