「災難」
 
去勢という言葉を知っていますか?肉牛を飼っていると避けて通れないものです。雄牛の雄としての機能をなくしてしまうことです。理由はいくつかありますが、一番は肉質を良くするためでしょう。雄のまま大きくなると、肉質は荒く、肉色も濃いものになります。今の格付けに合わないものになるのです。また、雄はどうしてもけんかをします。おとなしくさせるという理由もあるのです。以前試験を頼まれ、雄のまま去勢しない牛を育てたことがありました。確かに去勢した牛より大きくなりますが、けんかがひどく牛舎がぼろぼろになったのを覚えています。その去勢を今日しました。数ある仕事のうちで一番やりたくない仕事です。肉質のためとはいえ、人間の都合でやられるほうはたまりません。以前は、輸精管を外側からつぶしてしまう方法でしたが(この方法だと血が出ない)後遺症が大きく、今は睾丸をとってしまう方法です。確かに傷が乾けばそれで大丈夫だし、以前は輸精管が復活してしまうことがありましたが、この方法だと確実に去勢ができます。この事実をどれだけの人が知っているかなと言う思いで書いています。健康だったらいいのでは?と思いますが、今の流通では売り物になりません。まったく、牛も災難です。そういえばもうひとつ、自由に種付けをされると困るのです。普通雄と雌は別々に飼いますが、雌の発情をかぎつけると柵を飛び越えてしまう勇者もいます。肥育される牛は種がつくと困るのです。先日も離乳した牛が1頭発情が来ました。一斉に雄牛がそわそわして柵ごしに鳴き交わしています。放牧場でも雌が発情すると、雄牛がぞろぞろ付いて歩きます。おまえもか、という小さい牛まで付いてあるくのです。さて、今日取った睾丸は食べる人もいるそうですが、牛の気持ちを考えると、とてもそんな気にはなれません。
ゆのみ NO27   5月18日
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