アルパカ
〜ある じじぃとの戦い〜



アルパカという動物がいる。
ラクダ科の草食動物だ。コブはない。日本では動物園にも滅多にいない。 この動物を飼ってるというシチュエーションをよく想像する。


アルパカを連れて家の近所を散歩する。
ぽこぽこと、のんきなもんだ。
散歩の途中、アルパカは空き地の雑草をのんびりはんでいる。
かたわらで五月晴れの青空を見上げ、ぼんやりする
平和そのものだ。(想像上では、何故かいつも5月。)

そこに、近所のじじぃが現れる。
このじじぃとは、直接しゃべった事はない。じじぃは、に対して敵がい心を持っている。 いや、アルパカなんぞを飼っているに対してという事だと思うのだが。

じじぃが敵意むき出しで話かけてきた。
「この動物は何というのかね?」
アルパカというんですよ。」
「ふん。まぁ、何を飼おうと勝手だが・・。ところでフンの始末はどうしているのかね?」
「ちゃんとしてますよぉ。ビニール袋に取って。」
「じゃぁ聞くが、これは何だね?」
空き地のはずれの茶の固まりを指さした。
「さぁ? 知りませんよ。」
アルパカとやらのフンではないのかね?」
「知りませんよ。私のアルパカではないんじゃないですか?」
「な・何をすっとぼけた事を! お前の他にこんな訳のわからん動物を飼っている奴がいるか!」
じじぃの顔に血管が浮き出ているが見て取れた。
「たぶん、野良アルパカのフンじゃないですか?」
は、薄笑いを浮かべてじじぃに言った。
「!」
じじぃは、怒りで爆発しそうになった。の胸ぐらをつかまえ手を振り上げた。
その時、私のアルパカは、平和な表情をして短い尻尾を上げ、ぼとぼととフンをしたのである。


どこまでも明るい五月晴れの出来事。


そんな事があってから数日後。
近所のスーパーに買い物に行ったは、じじぃを見つけた。

すすすっと後ろから忍びよりじじぃの耳もとでささやいた。
ア・ル・パ・カ・・・。
じじぃは飛び上がらんばかりに驚き、そしてを確認すると逆上してつかみかかってきた。
は、大袈裟に騒いだ。
「いやぁ〜。このお爺さん、変〜。何するのぉ〜。」

は、抵抗せずにじじぃに殴らせといた。
人々が集まってきて、じじぃは取り押さえられた。

「ハァ・・こいつが。ハァ、ハァ。アルパ・・カ・・・ハァ。フンの始末をハァハァ。」
「困ったモノですね。いえ、は平気です。いやぁ、何もしないのに突然殴りかかってきたんですよ。 お年も召していらっしゃるようですし、あまり叱らないで下さいね。」
は、最高の笑みでスーパーの店長に言うと、ちらっとじじぃを見た。
じじぃは凄まじい顔でをにらみ付けていた。


は、アルパカという動物を図鑑やテレビで見かけるたびに、 アルパカを飼うと、見知らぬじじぃの戦いを想像するのである。



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