少年と



熱い銃が、地面に落ちた。
人を殺した嫌な音を出した後、小さな手からこぼれ落ち、地面に当たると小気味良い音を出した。
その熱のために、降り積もり始めた雪を溶かして。

熱い血もまた、雪を溶かした。
死にたての人の血だ。
少年の殺した男の血だ。


雪は強くなる。



冬の戦場で、少年は人を殺したのだ。
少年は兵士として人を殺したのだ。合法的な良くある話。
何人も殺した。少年が今生きているとはそういう事だ。
何かの悦楽を感じながら。
悪い事だろうけども。


この画面のように、そこは白い。
一つだけが赤いままで。


人が死んでいる。
彼が殺した人は。
見ず知らずの男は、少年に似ていた。
背丈が、体格が。
少し幼い顔が、虫歯の前歯が。
開いたままの目が。

いや、少し似ていただけ。
僕はここにいて、どこにもいない。
僕が死んでいるような感じは、錯覚だ。
僕が僕を殺したようなのは、気のせいだ。
ただ、似ていただけだ。


吹雪いてきた。
もう何も見えなくなる。風の音以外、音はない。
熱い血も、熱い銃も、冷えて雪が積もる。
少年が少年を殺した銃に、雪が積もり、
少年が少年、彼自身を殺したような光景にも、また。
起きている少年が、寝ている少年を見る光景に。



血はあまりの雪で白くなる。



少年は動かない。
一人は死んで、一人は命令で。
どちらも絶対で。
動かない。

むかいあう二対の目。
閉じることなく見つめ合う。


白くなる。
そのままで。
白くなりすぎて、見えなくなる。
雪で全てが見えなくなり、
少年はもう見えない。


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