人魚の夢

私は目を閉じる。

暗闇の中、目を閉じ、眠りへ行く。

ふいに光が見えた。
青い、涼しげな、光が。白い光と、青い光が調和したところに私はいた。
しばらくの間その光たちを見ていた。

二つ、黒いシルエットが視界に現れる。
二つとも、先端は人…それも女性らしくて…後端は魚だった。
人魚だ。

私はここが海だと気づく。海底に寝そべっている事に気づく。
今まで日が差し込んでいる海底を見ていた事に気づく。
私もまた人魚だと気づく。
私が彼女達に近づいたのか、彼女達が私に近づいたのか、二人の人魚を間近で見る事ができた。
長い髪でなにもまとっていない、彼女達を見た。
私は微笑を交わし、泳ぐ。
おしゃべりしながら。
話題なくおしゃべりしながら。

彼女達と泳ぐ。
深海を。
青い光はあるものの、白い光がなく、青と黒のグラデーションの海。
おぼつかない私を、彼女達は助けてくれる。
一人は文句をいい、もう一人はたしなめた。
ここはよくはわからない。
夜の様な海。
何があるのか彼女達もわからない。危機かもしれない。安心かもしれない。

彼女達は海面へ私の顔を向けさせた。
昼と夜の世界がそこにある。

私達は上昇する。
遅い私を彼女達は手を引っ張る。

昼の海。
怖くない昼の海。
空の様な海。
暖かい海。
どこまでもいける海。どこまでも見える海。
きれいな海。
私は彼女達と泳ぎ続ける。

泳ぎの時間は終わりの時が来たと、彼女達は言った。
悲しいねと言うと、そんな事ないと言い、まだいるという。二人とも。
一人は文句を言い、ひとりはたしなめる。

岸へ上がる。
岸の岩に私達は上がり、人になる。
魚の部分はなくなり私達はただの人になる。
何の変哲のない人になる。

一瞬だけ闇が来る。
そして再び光が来るのだ。
現実の光が。




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