また人魚の夢



ぬるりとした物を、吐き出し、
私の手の中に、
一人の人魚が力なく横たわり眠っている。
小さな体で起きることなく。

体に粘りつくその粘液は、淫らな事を思う。
その粘液の中、人魚は目を開けることもない。
動きも止めて。
私の手の中に。

柔らかな体で、
まだ眠っている。
冷たい体のまま、
眠っている。
死んだかのように生き、
笑っているかのような表情のまま、
生きている。

誰の子なのだろう。
幼い顔で、
手を胸の前に合わし、
足のひれは、いつ泳ぐのだろう。
この小さな体で、どう泳ぐのだろう。
いつ、この顔が、曇ってしまうのだろう。

何もせぬままで、
人魚はいる。
夢を見続ける人魚はいる。
私の心のように、人魚はいる。

私の手の中、
今いて欲しい。
いずれ去る、あなたは今いて欲しい。
大切な物のように、
いつかいなくなる、
あなたは今、いて欲しいと思う。
手の中にいて欲しい。



そう思っていた。
でも、夢は覚め、人魚の彼女はいない。
手の中にもどこにも彼女はいない。

去り、現れる事はない。




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