誕生の夢


私は火を見ていた。紅い火を見ていた。
プラスチックのケース越しに。四角いケースの中に手足を折り横になって入っていた。

何かケースの中に入ってくる。生暖かい粘性のある透明な液体がどこからか入ってくる。
抵抗せず私は浸る。ぼんやりと。紅い火を見ながら。

私は夢の中で少年のようだった。髪も手足もあまり長くない。
ペニスも持っている。普通の少年のようだった。小さめの少年のようだった。


でも変ろうとしていた。液体の中で体が変化する。
手足が伸びるのを感じる。髪が目の前まで降りてくる。
まだ手足が伸びてくる。体の一部が膨らみつつある。
そして以外にもペニスが収縮しつつあった。
私は少し笑いながらこの事を受け止めている。

くすぐったいと思いつつ私は体を変化させる。抵抗感は全くない。

まだ変化を続ける。私自身は紅い火しか見ていないが。
手足はさらに伸び、窮屈に感じ始める。ペニスがあった場所に手をやり、もう違う事を認識した。
髪はもう背中に届いている。胸が膨張し続ける。内臓も動き続ける。
この事がどういう事なのか理解している。

骨格も変動する。関節も動く。骨盤も変形する。
液体の中、私は準備している事に気づき始めている。

私はプラスチックケースから出てきた。
おそらく完全な女性として。大きい女性として。
ケースがあった場所は乳白色の色をした部屋だった。ケースと紅い火が燃えている薪だけがある。
私はケースと薪の間に体を横たえた。

緊張しながら待っていた。

何を待っているのかもうわかっている。女性になった意味も。
女性にならないとできない事だ。

筋肉がなくへこんでいたお腹が一気に大きくなる。
妊娠…なのだろう。

息苦しさが来る。痛みが来る。でも気にはならない。
待っている。
私はまだ待っている。すべてを気にせずに。

下腹部から出てきた。待っていたのが。ぬるりとしたのが。
血を纏った…。

ここで夢が終わる。
胸にまだ息苦しさが残っている。下腹部から出てきたもののぬるりとした感触も。
私の赤ん坊だった。
私が産んだのだ、未熟な私が変化して。




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