眼球の夢



白いと思ったら黒い中、黒いと思ったら白い中、
そんな夢の中で、右の手の中に握り締めている。
丸い、黒い瞳のある、眼球だった。血の滴る夢だった。

不気味な光景だったのにもかかわらず、
別に何の不思議も感じず、手の中私は転がしていた。
目からは血は、滴り続ける。
紅く、鮮やかな血は下の、黒に、白に、消える。
闇に、光に消える。見えはしない。
血は私の手に伝わり流れ、染め上げる。



ただ、それだけだった。
何も起こらない。


もう一方の手は、何か柔らかい物に触れる。
細い針金の様な物が手に刺さる。
黒い空間が晴れ、白くなると、女性がいた。
私は彼女の顔に触れ、髪に触れていた。
閉じられた目に触れ、眼窩に深く指が刺さる。
彼女のまぶたは、私の指をくわえ、温かい粘液が手に付着する。
彼女の目に、彼女の目はない。
何もそこに入っていなかった。


黒い中、私は血が滴り続ける眼球を彼女に入れた。
白い中、彼女は両目を開けた。
立ち尽くす、彼女は目を開けた。右目しかない顔で。
それは私が目を入れた方だった。
もう一方には、虚空の淡い桃色をした、空間が広がっていた。
性器の内部の様な色をした目を、私に向ける。

そのまま私たちは見つめ合い、何もしなかった。



こうして私は目を覚ます。
目はまだ見える。失いはしていない。
彼女のようには。




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