性転の園



鬱蒼とした森の中
僕は一人 穴から出てくる
これは儀式 別な存在になるための
着ている背広 もう破れ始めている
性転の時
もう始まりつつある

黒の背広
これは僕の象徴
小さな服 もう体が噴出して
破れ 用はなくなる
シャツの胸の辺りのボタンはすでに飛んだ
お尻の縫い目は間抜けに破れるのを待つ
革の靴は窮屈で ネクタイは胸の谷間に垂れたがる
まだだ
まだだよ
両の手で押さえきれない体を
胸の前で交差し 反対の腕を掴む
高い体温を感じて

体は変形を願う
背は前より高い
どの体の部位も巨大化している
性器は膨張したままだ
最後の膨張 どうする訳でもなく
ズボンに擦れる

大きな泉に着いた
体を押さえるのも終わりが近い
顔はもう別なものだ 僕の物じゃない
この体に会うものになりつつある
二つの胸はもう重く大きい

足先が水に漬かる
冷たい水が 体に染みる
体が水の中 沈む
着ていた 男性の背広は余すことなく 崩れ出し
僕が 僕は もういなくなる
私 私の始まりだ


背広なんかに包まれず
押さえるのを止めた体が さらに変形を進める
膨張していた性器はすでになく
大きな乳房を 水の中差し込む光に照らす
胎盤を持ち始めた 腰を持ち
急激に伸張した髪を波に乗せる
私だ
僕はもういない
存在するのは 私だ
裸の大きな私だ
この大きな泉の中で

泉の中泳ぐ
私と言う意識の下で
呼吸することなく
私は泳ぐ
新たな体で


泉から上がるも
私の体はそのままだ
象徴を身にまとう事もない
裸の私

少しの疲れ
それは私を眠らせる
私を眠らせる
この園の全ては

大きな胸の丘と
何かを育むでだろう 体を携えた腰を
外気にさらし

私は眠りについた

僕だった頃の夢を見ないで


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