幸せな地球と


 地球は幸せでした。
もう、何十億回と明るく輝く太陽の周りをくるくる回っていましたから。

他の惑星の仲間たちと一つの太陽を回ること、それが幸せでした。
なぜなら、それこそが自然で当たり前の事だったからです。
ですから別に、太陽の周りを回ってさえすれば、何があっても気にならなかったのです。
何も思い出さないのです。
地球を「地球」と呼んだ人間の事も。

 地球は幸せでしたが、人間たちは不幸だと感じていました。
地球にとっては太陽の周りに存在していれば幸せでしたが、人間は地球に存在しているだけでは不幸でした。
もっと幸せになろうと、他の生き物の毛皮を奪いました。暖かさを得るためです。
これで寒さは減りましたが、人間は不幸でした。

 地球は幸せです。今、太陽と最も離れていますから。でも、人間は不幸でした。
食べても食べてもお腹が空くので、他の生き物を食べ、過度に食べました。
まだ、お腹が空いていたので、他の人間の食べ物を奪い争います。
人間は不幸でした。

いま、太陽と最も近い所から光を浴びていましたから、地球は幸せでした。ですが、人間は不幸です。
幸せになるために食べ物を奪い合い、宝物を奪い合います。ですがますます、不幸になります。
争いが不幸を呼び、不幸と感じましから、争うのです。
そう感じなかったら、争わないかもしれないのに。

 月と地球は近づき、幸せです。人間は不幸なまま。
幸福を願って作られた薬が、人間たちに病をもたらしたからです。
その薬が思いもよらない効果を出してしまったからです。
別に薬は悪くなく、使う人間が悪いのです。
幸福を願う、人間が悪いのです。

月と地球は離れ、幸せです。
地球の表面が様変わりしても。かつての様な幸せな生き物がいなくなっていても。
人間たちが「地球を守ろう」と言い出しても。
不幸なのは地球ではなく、人間たちです。
自分たちのために自分を苦しめる、人間たちと巻き込まれた他の生き物たちです。
地球には地球以外に幸せな者はもういません。

 地球の近くに彗星がやってきて、幸せです。彗星が遠くに行って幸せです。
彗星を見るものがいなくなっても。

地球は幸せです。月も太陽も幸せです。
いずれも人間を思い出すことはありません。
月は地球の周りを回り幸せで、地球は太陽の周りを回り幸せで、太陽は光り輝き幸せでしたから。
人間を思い出しません。
人間にとってこれを超える不幸はないでしょう。
存在しなかった事になるのですから。





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