虎は、痩せ衰えます。
虎はますます、痩せ衰えます。
ここには恥辱しかなかったからです。

動物園に虎がやってきました。
いえ、無理に連行されてきました。
無垢な子供たちが、虎が来るのを望んでいたからです。
あの金と黒と白の毛皮に触りたかったからです。
すばらしい自然の、色のコントラストをよりよく知りたかったからです。
ですから、虎の危険極まりない、牙も爪も抜かれました。
急に動けないように、子供たちに危害を与えないように動きがゆっくりになる毒物を注射されて。
虎の地獄は今日、突然始まったのです。
子供たちの簡便な天国の中で、地獄が突如発生したのです。

子供たちはどっと押し寄せます。
何も考えていません。純粋すぎるからです。
虎にできるのは、よぼよぼと歩く事だけです。牢屋の縁に沿って逃げるため。向かうために。
過去に向かうために。
子供たちに追いつかれ、無意味に回るだけでも。
虎にできるのはそれだけです。
かつての牙を見せる威嚇もできません。
雰囲気も弱々しい限り。
みみずも脅せません。


苦痛の海の中、虎は夢を見ました。
かつての夢。
力強かった頃。
敵のいなかったあの頃。
何もかもができたあの頃。
もう何もできません。
捕らえられ、少しづつ、少しづつ、殺されていきます。全てを奪われていきます。
夢から覚め、気がついたらもう、地獄の中でしかないのです。
虎は哭きました。虎は悲痛に哭きました。助けてくれと哭きました。救ってくれと哭きました。
あまりにも悲しすぎ、ありとあらゆる存在は涙を流したのです。
子供たち以外。
子供たちは寂しかったから泣いたと思い、一層虎にとっての恥辱をし続けてのです。


虎は死のうとしています。
虎の悲しみに反応した、バイ菌は虎のあちこちに入り込んだのです。
心配した子供たちは心配し、願いました。「助かってね」と。
ですが虎にはもっともっと優しい存在が蝕んでくれていました。
それは死です。
死は不幸な虎のあちこちを、愛しく撫でてくれていて、虎の体の中に充満させてくれたのです。
毛皮の色が抜けても、虎は幸せでした。
死ねるのですから。
地獄の中で、初めての幸福感を味わっています。


死にました。
ついに二度と動きません。笑顔で死んでいました。
ようやく虎は救われたのです。
子供たちの悲しみの裏で、虎だけは喜んでいたのです。
嫌だった死は、虎の全てを消してくれました。
虎は、永久にジャングルの夢を見る事でしょう。






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