ホログラム

朝、出勤前に、ニュースで「昨夜未明頃成川ビルで飛び降り自殺がありました。詳し い動機については分かっておりません。警察では身元を捜索しております」
といつもどうり放送が流れた。
その時だった、アナウンサーは椅子からころげ落ちたのだ。アナウンサーはすぐに椅子 に戻ったが、僕と妻は見てしまった。そのアナウンサーの椅子がまるで一瞬ホログラム になったのかの様にアナウンサーを透き通らせたのだ。
「見た?」
「見たよ」
「まあ、何かのドッキリじゃないか」
僕はこう言ってテレビを消そうとリモコンのスイッチを押したがスイッチを押せずに別 の物を押していた。見ると、指がリモコンをきれいに貫通していた、つまりスイッチ ではなく指を押していたのである。
「ちょっと…それ…」
「うそだろ…」
ドガッ!
その時だった、上から唐突に本棚が落ちてきた。無論上にあるのは蛍光燈だけである。
「えっ、何、何?」
「この本棚のアルバム上の成田さんのだ…」
「うそ…」
「外に逃げましょ、ここはあぶないわ!!」
「そうだな、逃げよう!」
外にでると、ちょうど同じく生命の危険を感じた隣の前田さんも、逃げる途中だった。
「あ、前田さん。」
「ああ、藤井さんか、早く逃げよう危ない…うあ……」
「前田さん!!」
僕と妻は叫んだ。その床の部分は恐らくホログラムの様に透き通る状態になっていたのだ ろう、前田さんは下の階に落ちてしまった。
「逃げよう…早く……」
「ええ………」
下の階の前田さんを助け1秒でも早くマンションから逃げることにした。

僕と妻はマンションから逃げ、前田さんは救急車で運ばれていった。
「家にはしばらく入れそうにないな」
「そうね…ちょっと………!!」
そのときマンション屋上の人が明らかに手すりを貫通させておちてきた。
ドサリ。
間違いなくあの人は死んだだろう。
「な…なんだよ…おい」
「もしかして…今朝のニュースの人も同じ様にしんだんじゃ………」
「そうかもな……まてよ…もしかしたら地球上のどこもあぶないかも……。」
「え…どういう……」
妻は結局聞き終わることができなかった。
なぜなら僕が恐れていたことがおこったからだ。
それはというと、すべての地面が一瞬ホログラムの様になってすべてのものが落ちてい ったからだった。


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