手の絵




尺取虫の様に動く
手が落ちていた
一つだけの手が 落ちていた
何もない場所に 手は
誰の物でもない手が 動き出す

独りでに動き出す
意識無き体は 自ら意識を持たせ
何かを描き出す

手の無い人 自分の居場所
描いた地面の絵
でもそれには 血は通わない
意識の無い体に過ぎない

すぐに消えた



また手だけが残る
血の通う手だけが残る
動き出し
また何かを描こうとする
今度は 人じゃない何かを
また血が通わない何かを

いずれにしろ 描いた物は
儚く消え
生々しい手だけが そこに残る
所在無いままの手が 残る
一人 手だけが残る


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