葬儀の後



幼児が埋められる
埋葬される
体の中にまだ新鮮な母乳を満たしたまま
幼い子供は
多くの人たちの もう味をしなくなった涙を 体に浴び続け
土の中へ 送られる
悲しみの感情に見送られて 土の中に 黒い土の中に 送られる

涙声 咳込む声 足音 親の嘆き声
死んだ幼児は聞かない
土の中 別世界だから 聞こえない
わからない
動けない
死んでしまっている 魂は留まっていても

悲しい中
幼児の魂は 少しだけ嬉しがっている
自らが死に 父とも母とも別れ 永久に会わなくとも 何も見えなくとも ひとりでも 動けなくとも
今までにない悲しみの中 うれしかった 懐かしかった
子宮の中にいたのだから

子宮の中にいたのだから
あたたかな 慈愛に満ちた 不自由なゆりかごを思い起こす
棺の羊膜と土の子宮の墓穴を いつまでも居たかったあの場とした
母親の中とした
人の母から 土の中へ入っていった


体は朽ちる 腐敗は進み 醜くカビと虫の糧と化していた
でも魂は
永い年月の後も 生き生きしている
土は棺の中に進入し 土の母と一体になりつつある
戻りつつあった
土へと

体を構成していた物質が土へと戻る カビと虫のお陰で
魂も嫌がっていたそれらを受け入れた 母となった土のなすがまま
母に抱かれるまま

何もしない


体の中にいた魂は
体から出た
死んだ時の面影も 醜く糧となった時の面影も
想像もできない もろい骨ばかりになり
体から出てきた

幼児だった魂は 母となった土の言う通り
体を捨て
流動した

そして
眠りに付くある女性の中に
土の中から 入りゆく
再び 人として 生まれてくる

土の母から 人の母の中へと魂は移動して


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