木は見つめていました
目を使わずに見つめていました
ガリガリと切られる様、自分が死にゆく様を

名残惜しそうな音 残念な音 聞く人によっては残酷な音が
響きます

生きていました 永い年月 生きていました
もっと木々が残っていた頃 木の芽は出ました
少し折られては伸び 少し折られてはまた伸び
空気を出し 酸素を出し
水を吸い大きくなり
幾千年 木は大きくなり
切られます

切られます
大きな木なので

小さくなるでしょう
大きい木ですから 切られてしまって



音がしました
叫び声の様な音が………
人の耳には理解できない
沈黙が
流れます

わからない 黙祷が
流れます

そこは静かになります………

人間にはわからない静けさです

そして木は
一部始終 自分が死ぬのを
一部始終
無感情な慈しみ深いまなざしで
自分を殺すものを
見ていました

枝は折れます 葉は散ります
幹は切られ 今まで触れることのなかった 土に
落ちます
そうして 運ばれました 黒い煙を発する車に揺られて

そして 残されたのです
その土に刺さった枝と葉が伸びた 幼木はあの木の子供なのです


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