2013/12/29━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.190 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 早くも今年最後の山猫通信になってしまいました。 この時期になると毎年月日の経つのが早い事に改めて驚いてしまいます。 今は、夜は長いし空気は澄んでいて、星々がとてもよく見えます。 あの向こうはどうなっているのだろう。 星は何光年も離れていることは知識としては知っています。 何光年って言われても実感にはピンときませんけどね。 輝いている星をみるとそんな事を思うので、 この時期、永遠とか無限とかそういう掴みどころのないモヤっとした感覚を 思い出します。 この掴みどころのないモヤっとしたものを、 昔の人もなんとか言い表そうとしたんでしょう。 たとえば大きな数字の単位。 一十百千万と続いていって那由他(なゆた)不可思議、無量大数っていう 数え方の単位もあります。 無量大数っていうのは10の六八乗。1の隣に0が六十八個付きます。 もううわぁーってなりますね。 しかも無限という概念はその無量大数を使っても追いつきません。 でもそんな大きな数字を扱う時は、10の何乗みたいに 右上に小さな数字を付ける事で対処する方法を編み出し、 とりあえず今の所はおさまっています。 数字で何かを表すときには単位を使います。 長さだとセンチメートルとか、キロメートルとか。時間だと秒とか年とか。 時は師走。 何かと気ぜわしい毎日ですけど、気分を変えてちょっと浮世離れした数のお話で 宇宙の果てからミクロの世界まで、光の速さで散歩をしてみましょう。 今日の話題は「単位の話」です。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■単位の話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ これまで宇宙の年齢は137億年といわれていました。 それが今年に入って1億年長い138億年に訂正されたというニュースが流れました。 宇宙が1億年サバを読んでいたって事ですか。いや、別にいいけど。 まぁ、だいたいそのくらいって事です。 実際の1億年は、気の遠くなるような長い時間だけど、 これだけ離れた1億年はあってもなくても全然関係なくなるっていうのも、 考えてみれば不思議な事のような当たり前のような。 今、宇宙の年齢といわれているのは138億年と言ってみました。 もちろんこんな長い時間は私たちは体験できません。 でも長い時間を表す言葉や単位はたくさんあります。 まず普通に秒、分、時、日、年、って使いますね。 百年で一世紀です。これは西洋の単位です。 東洋にも独特の単位があります。 刹那って言葉がありますよね。 これは仏教用語で、時間の単位です。 私は瞬間ぐらいの意味と思っていました。 調べてみたら、誰が決めたのか、1刹那は1秒の75分の1の時間だそうです。 そのほかにも一刻を争うの刻。 この刻というのは中国で最近まで使われていた単位で1日は百刻なんですね。 計算してみると1刻は、14分24秒って事になります。 1刻を争うっていうのは1分1秒を争うっていう事じゃなくて、 15分くらいの時間を争うっていう事になってしまいます。 結構余裕がありますね。 それでは長い方の話。 落語の寿限無ってありますね。 私、あれ言えるんですよ。小学生の時に丸暗記したんです。 寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに 住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、 シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助さん。 これ名前です。苗字は杉田さんです。 で、ここに出てくる五劫の擦り切れの五劫の「劫」。 これも単位です。1劫っていうのが、 「4年に一度、天女が羽衣で一里四方の大きな岩をサーッとなでて、 この岩がすり減ってなくなるまでの時間」または、 「4年に一度、天女がケシつぶを一粒づつ一里四方の大きな升に入れていって、 升がいっぱいになるまでの時間」です。 一里っていうのも昔の単位で約4kmです。 ええと、別に天女じゃなくても良い気がするんですけど。 未来永劫っていう四文字熟語にもこの劫の字が入っていますね。 とにかく長い長い時間って事です。 で、この一劫をホントかどうか知らないけれど、誰かが計算したんです。 すると1劫は百億年って事らしいです。 宇宙が出来て137億とか138億年とかです。結構百億って近いです。 天女の羽衣は擦り切れてしまって、 大きな升にはけし粒が溢れてしまっている頃ですね。 先ほどの寿限無の五劫の擦り切れ。1劫は百億年とすると五劫が五百億年。 そんなに長生きの名前は…いらないですね。 それでは今度は現在の1秒の話。 これどうやって決められているんでしょう。 ちょっと考えればわかりそうです。 「1日を24等分したものが1時間。1時間を60等分したものが1分。 1分を60等分したものが1秒」ですね。 でもね、これ昔の定義なんです。えぇ、だいたいは合っています。 でもだいたいじゃダメなんですね。 何故この定義が使えないかと言うと、1日の定義があやふやだからなんです。 1日っていうのは、太陽が真上を通過してから再び通過するまでの時間です。 これが日によって微妙に違うんですね。 地球が太陽のまわりを回る運動は、だ円なので一定ではないし、 その年によっても、微妙に違うんですね。 星の運行はそれ程きっちり正確じゃありません。 星任せにはできないんですね。 それで現在は、セシウムという原子の振動を基準としたものを1秒としています。 これを利用したのがセシウム原子時計で1億年に1秒の誤差とか言われています。 だれも1億年も試していないのにそう言い切ってしまっています。 宇宙の年齢が最近1億年も増えたのにね。 1億年に1秒の誤差。 そんな細かいことは良いんだよと誰かに言ってやりたい気持ちです。 小さいほうの単位もあります。 九分九厘間違いはないって言い方ありますでしょ。 ここで使われている分や厘は1より小さい単位です。 九分九厘は0.99で99%間違いはないって言ってるんです。 それと五分五分もこの言い方の仲間です。 0.5と0.5で50%50%で同じって事だよって事です。 この小さいほうの単位も、ずっと行くと、 虚空とか清浄とかのありがたい単語が単位になっていて、 10のマイナス20乗などと想像も付かない数字になっていきます。 先ほど紹介した刹那もここに並んでいます。 西洋の単位も1秒以下の単位はあります。まず10分の一秒でしょ。 それから百分の1秒にはならなくて、1ミリ秒、それから1マイクロ秒、 1ナノ秒、1ピコ秒と続いて、一フェムト秒、一アト秒まであります。 一アト秒だと0.000っていう0が17個付いた最後に1が付きます。 もう何言ってるかわかりません。 でもマイクロとかナノとかは最近時々聞くようになりましたね。 でもこれは長さの単位でよく使われているのを 耳にするようになったのでしょう。 でも、そんな細かいことは良いんだよって誰かに言いたくなるほど とにかく小さい単位です。 時間の単位は、細かすぎる瞬時でも、長大なる未来永劫のような時間でも、 なんか「わぁぁぁぁっ」ていう気持ちになります。 それでは、もうちょっと身近な話をしましょう。 今度は長さの話です。 地球の一周はちょうど4万キロメートルです。 そう。ちょうどです。すっごい偶然ですね。 でも偶然じゃないんです。 地球の赤道から北極までを1万キロメートルとするっていうように、 地球を基準に長さの単位を決めたんです。 この千万分の一を1メートルとする。と19世紀のフランスが決めたんです。 こうやって最初の1mが規定されました。 フランス革命の威信をかけた大事業でした。 実はこの時、角度や時計の60進法をも変えようとしたんです。 今は7日で一週間だけど、10日で一週間に変えようとしました。 でも定着しなくて、長さの単位だけ世界に広まっていったのです。 1mが決まったら、それを基準として1kgを決めて、 それから面積のアールを決めて、 1立方メートルと1リットルが決められました。 フランスはメートル検器というものを作って各国に配りました。 金属で出来た1mきっちりの棒状のものです。 でもこれには、問題がありました。 保存していると長さが変わるんですね。 気温や湿度や気圧やいろんなものが影響するんでしょう。 それで現在では、 1mとは、真空で光が1秒の3億分の一ほどの時間に進む距離と 規定されています。 これって1秒をセシウムの原子の振動を基準とした事と同じです。 普遍的なものを基準にしないと、単位の意味がなくなってしまいます。 それにしても光って、1m進むのに1秒の3億分の一しかかからないんですね。 その光を持ってしても、宇宙の果ては100億年以上かかるとか。 ホント広大すぎます。 たとえば太陽の光が地球に届くまでには、8分20秒ほど時間がかかります。 という事は、水平線に沈み行く夕日を見ていて「あ、沈んだ」と思った時って、 実際の太陽はそこにはもういなくて8分ちょっと前に沈んでいる太陽を見て 感動しているんです。 太陽の光は8分前の過去の光って事です。 今の季節、冬になるとひときわ輝いて見えるシリウス。 シリウスは地球から9光年離れているので、 今、見えているシリウスは、9年前の輝きです。 もうちょっと言うと、あなたと私が1m離れて向かい合っているとします。 私が見ているのは、現在のあなたではなく、 3億分の一秒後の過去のあなたの姿なんです。 どんなにお互いを見詰め合ってもそれは過去の姿なんですね。 今、っていう瞬間は、なかなか不確かなもののようです。 あら、単位の話をしていたのに、いつの間にか話がずれてしまいました。 世界の国々は、それぞれ独自の単位を使って暮らしていました。 日本でも、江戸時代は尺貫法を使っていました。 尺は長さの単位です。一尺は約30cm。 肘から手首までの長さと覚えておくと良い。と聞いたことがあります。 尺より小さいものは寸といいます。 もっと長い距離には一里という単位もよく聞きますね。 古い単位は言葉には残っています。 尺取虫とか一寸法師とか一寸の虫にも五分の魂とか。 尺貫法の貫は重さの単位です。 百貫デブなんていう言葉は、今は使わないのかな。 私の子どもの頃は、デブデブ百貫デブなんていうはやし言葉がありました。 一貫は3.75kgですので百貫は375kgになります。 土地の単位でよく耳にする何坪のツボ。 メートル法だと何ヘイベイって言わなきゃならない所を ツボで言ったほうがしっくりくる人がまだまだ多いんですね。 日本酒の量で耳にするのが一升とか1合とかの単位。 洋酒ではリットル表記ですね。 今でも生活の中にこっそりと息づいている昔の単位は結構ありますね。 独自の単位は狭い範囲内だけで暮らしいる分には全く不自由はありません。 でも、世界中で取引が始まると世界共通の単位というものが必要です。 フランスが世界に呼びかけた頃、フランスにも独自の単位がありました。 当然反対派がいて、普及には、てこずったようです。 罰金の制度まで作ってメートル法を普及させました。 単位の統一に悩む国は多かったようで、各国は次々とメートル単位を 採用していきました。 19世紀の中ごろにパリで万博がありました。 その時に世界中の学者が集まって単位の国際統一をする決議をして、 メートル条約が締結されました。 日本がメートル条約に加入したのはそれから20年ほど経った19世紀後半。 しばらくは尺貫法と併用していました。 するとやっぱり庶民は、使い慣れた尺貫法にこだわってしまって、 メートルが広まらないんですね。 それで法律でメートル法の使用を義務付けたのが1951年。昭和26年です。 たぶん世界各国で、新しい基準に対する抵抗運動があって、 法律でメートル法を押し付けるという手順を踏んで現在に至るのでしょう。 で、現在ではほとんどの国がこのメートル法を使用しています。 ただ大国ではアメリカ合衆国とイギリスがヤード・ポンドを使っています。 長さがヤードやインチ。重さがポンドやオンスです。 スポーツでよく聞く事がありますね。 ゴルフでは何ヤード飛びましたとか。 ボウリングのボールの重さはポンドですし。 日本でも、このヤード・ポンドの単位は例外的に使われている分野があります。 パソコンやテレビの画面の大きさ。 たとえば私のパソコンは17インチの大きさです。 インチは他にもジーンズの胴回りにも使われていますね。 今ではほとんどの国が使っているメートル法。 それでもイギリスとアメリカという例外があります。 やっぱり世界がひとつになるっていうのは難しいんだなとか思ってしまう例です。 それからこのヤード・ポンドは、メートル法で当たり前になっている10進法に なっていないんですね。 12インチが1フィートになっています。 重さの一番小さい単位はオンスで、16オンスが1ポンドです。 12進法と16進法が混在しています。 一インチより小さな単位はないので小さい単位は分数で表します。 2分の1インチとか4分の一インチとか。 何故ここで分数が出てくる!ってビックリします。 もっと厄介なのが、温度です。 日本の摂氏20度は、アメリカでは華氏68度です。 厄介っていうのは、摂氏と華氏は単純に比例していないんですね。 簡単な計算方法もあるんですけれど、 比例していないんだから、華氏での数字に慣れるしかないのかもしれません。 だからアメリカやイギリスでは天気予報はこんな感じになります。 「今日の気温は98度、風速は5マイルになるでしょう」 郵便局では荷物を出す時「何オンス?」と聞かれる事となります。 調べてみると、イギリスもアメリカもメートル条約加盟国ではあるんですね。 国際的にはそうなんだけど、国内に普及していないというか普及する気が あまりないというか。 フランスや日本のように、従来の単位を法律で禁止するくらいの姿勢で挑まないと 定着はしていかないものだと思います。 でもね、世界は色々あって良いとは思います。 まったく通じない単位。まったく違う習慣。 10進法が当たり前だと思っていたのに違う数え方がある世界。 これって言葉で言うと方言ですよね。 全部標準語になってしまったら、つまらないです。 でも方言だらけで言葉が通じないってのも不便で困る。 両方使えたら良いんですね。 タレントの永六輔さんは、尺貫法復権運動を起こした人です。 日本では法律で昭和34年からは尺貫法の使用が禁止されされました。 メートルを使うようにと、義務付けるだけじゃなくて、 寸尺の差し金使うと処罰されたのです。なんと罰金50万円! 昭和51年、永六輔さんの知り合いの指物師が、 曲尺(かねじゃく)で仕事をしていると警察に呼び出されたんですね。 曲尺っていうのは大工さんが使う金属性の直角にまがった定規です。 こんな法律は変だと思った永六輔さんは、政治家に相談したけれど、 法律改正は不可能といわれてしまったんです。 そこで永六輔さんは、自分のラジオ番組で尺貫法復権を訴えたんです。 そして全国の職人衆に決起を呼びかけました。 それだけじゃありません。 自ら尺貫法を使用し警察に自首するデモンストレーションもしました。 曲尺・鯨尺の密造密売と、この計量法をテーマとしたお芝居の全国公演などの 活動をします。 こうやって尺貫法復権運動を大々的に展開しました。 おかげで、今では尺貫法を使ってもしょっぴかれることはなくなりました。 「黙認」という形になりました。 だから永六輔さんを英雄視する職人さんは日本中にいます。 でも、尺貫法を日本国外で通用させようとは思いません。 そこはやっぱり方言と標準語とを使い分けるような感覚でやっていきたい所です。 あ、そうそう。日本の古い単位が世界で通用しているものがあるんです。 それは尺貫法での重さの単位の匁(もんめ)。真珠の計量のみ匁が使われています。 それ以外で使うのは禁止されています。匁は国際的に使われているんです。 1匁は3.45g。五円玉がちょうど一匁です。 世界的に表記はアルファベットでmommeとされて、記号はmomです。 今日は、単位の話から思いつくままにお話してきました。 遠い宇宙にも、目に見えないミクロの世界も単位は大事です。 古い単位、消えていった単位、便利な単位、統一された単位と、されなかった単位。 単位の歴史は人類の歴史でもありました。    * * * * *  * * * * *                                      行くこともかなわない宇宙の果ても       光の速さを基準に伝えることが出来る。       目に見えない小さな小さなミクロの世界も       単位を使えば想像する事が出来る。       いにしえの単位から昔の生活を感じ       見知らぬ単位は異国の空気を感じる。       時間と距離、重さと広さ、容量とエネルギー       共通の単位があるからやりとりができる。       単位はコミュニケーションツール。 ━■やまねこ投書箱━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『前号vol.189のメイン記事「縄文時代は母系社会?」を、語る』 読者の怪さんから前号の感想メールが来て、私がその返事を書いて。 以下は、その往復書簡です。  [怪]さん  こんにちは。。前号vol.189「縄文は母系社会?の話」大変興味深く拝読しました。。  ちょっと思うところがあったので、コメント。。  > 縄文の人型の土偶は圧倒的に女がモデルになっているものが多い  このくだりから、まともな文化人類学は無視して妄想を拡げてみます。  僕は、これはむしろ「父系社会があったことの弱い証明」ではないかと感じました。  一般的には、土偶は祭器であり、女性がモデルになるのはその出産力から豊穣や  多産を想起させるからだ、というのが通説ではないかと思います。  しかし、「女性に神秘性を感じる」のは男女どちらかといえば、これは圧倒的に  男なんじゃないでしょうか。女にとっては自分自身のことですからね。  どうも僕は、女性を象った祭器を女性が祀る、という構図に違和感があるのです。  そう感じる理由は、あまり自分でもきちんと全部言葉にできていないのですが、  一つには、「祀る対象」というのは、ふつう「他者」だと思うんですね。  「自分自身を祀る」ということは基本的にないと思います。  女性が妊娠する、ということは、男にとってこそ「喜ばしい他人事」ですが、  女にとっては命がけで、シビアな「我が身の現実」です。  そう考えると、「豊穣や多産を祈念して女性を象った祭器を造る」というのは、  いかにも男性的な(というか、女性を「他者」として見た)発想のように感じます。    女性が祈念するならば、他のモノに祈るだろう、と思うんですよ。  それこそ多産な動物とか、強い繁殖力を持つ植物とか、あるいは赤子そのものとか、  そういったモチーフのほうが、女性が用いる祭器としては自然だと思います。  さて、そういう妄想のもとに、縄文土器は弥生土器に比べて圧倒的に女性型が多い、  ということを再解釈してみます。  まず、これらの女型土偶を祭器、あるいはそれ以外の道具として用いたのは、  母系社会の女たちではなく、男たちだった。また、上記の理由から、女型土偶は  妻問いの際の手土産には向きません(女性はそれを祭器として使わないため)。  従って、女型土偶はあくまで「男たちの間で造られ、用いられ、贈答されるもの」  だった。女たちが形成していた母系社会とは別に、男たちは、自分たちの間で  モノを贈答する父系的なコミュニティを形成していた。  このようなコミュニティに属する男から見ると、母系社会はどう映ったかというと、  「大変都合のいい存在」だったのではないかと思います。  父系コミュニティの男から見れば、これは言ってしまえば  「責任を負わなくていいセックス相手」が集まった社会ですから。  また、父系コミュニティに生まれた女は父系社会的な扱いを受けるはずですが、  この女たちにとっては母系社会はどう映ったかというと、これまた特に支障のない、  むしろ都合のいい存在だったのではないでしょうか。  男たちが女の浮気を警戒する理由は「托卵」の心配があるからですが、  女たちが男の浮気を警戒する理由は、他に女ができると、夫が自分と子供に裂く  リソースが減るからです。  しかし母系社会は、男からのリソースを必要としていない。  子供が出来たところで、男は肉の一かけらも与える義務がありません。  また、夫が母系社会の女に「本気に」なったところで、  向こうはシステム上男を必要としないので、放り出されて終わりです。  したがって、父系コミュニティの女たちにとっても、  「コミュニティ内で浮気されるより余程都合がいい」存在だったのではないか。  男たちが母系社会の間を放浪した、というのは書かれている通り確かだと思いますが、  この放浪はしばしばこのような父系集団ではなかったかと想像します。  [みかりん]  あー。  面白い。まったくそうだと思う箇所多数。  まず「人型土偶に女性をモチーフにしたものは男が作った」  これそうだよね。うんうん。  どこかに 火焔式土器を作ったのは女の仕事って書いてある文を  読んだ記憶があったんです。  で、私が土偶もかーっていうのが気持ちの底にあったんですね。  それで土偶も女が作ったような文になったんです。  指摘されれば、そのとおりですね。  女がモチーフの土偶は畏敬の念を持って崇拝されるもので、  それは男じゃないとできませんね。  なにぶんにも証拠もない昔の風習の事は想像するしかないんですけれど、  ツマドイ婚や夜這いなどは、どうも女の方に選ぶ権利があったっぽいんです。  男も選びます。たぶん。  「この女の所へ忍んでいこう」という所で選んでいます。  でも、やってきた男にNO!といえる権利は女の方にも強く持っていた感じです。  それから、今とは考えられないくらいマジナイが大きな力を持っていたと思うのです。  そのマジナイは定住していた女が司っています。  だから怪さんが言うような「大変都合のいい存在」「責任を負わなくていいセックス相手」  という感じではなかったんじゃないかなと思うんです。  マジナイ、呪い、祝い事。  たとえば竜宮城の乙姫さまの背にひらめいている薄い布。  あぁいうのマフラー状のものをヒレといいます。  奈良時代から平安時代にかけて、正装した貴婦人が肩にかけて左右に  垂らしながら歩いていました。  そしていざという時には、それを振って身を守ったんです。  いえ、物理的にではありません。  「振る」は「震る(ふる)」に通じて、神さまや霊魂をゆり覚ます行為です。  つまりヒレは一種の呪具なんですね。  沖縄は13世紀頃まで縄文的な暮らしや精神文化で暮らしが続いていたと  いわれています。  その沖縄に赤いヒレを振って男たちを見送った女の歌があります。  嵐がやってきたとき、沖縄の女たちは白いヒレを持って海岸を走り、  漁に熱中する男たちに急を知らせたと言われています。  歌では、赤いヒレをなびかせて出港する男たちの無事を祈っています。  このようなヒレの呪力みたいな、そういう力を縄文の女が持っていると、  男も女も信じていて、男はおいそれと勝手ができなかったんじゃないかと  思うのです。  そう。前回の「縄文は母系社会?の話」で、何となく説明が足りていない気が  ずっとしていて、今回、怪さんの投稿でその書き足りなかった事が  書けて嬉しいです。  以下はまったくの想像です。  言われるように「放浪はこのような父系集団」であったかもしれません。  そしてそれは、ずっと放浪し続けていたのではなくて、生まれた集落に  時々戻ってきて、しばし滞在し、女たち(母や姉妹たち)の詔を受け、  そこでの土器や土偶を持ってまた放浪したのかもしれません。  その時、集落の若い男も連れて行きます。    女は天気を予測し、季節を知るに長け、子孫を増やす所がマジナイに転化して  いったのではないかと想像します。   [怪]さん  > でも、やってきた男にNO!といえる権利は女の方にも強く持っていた感じです。  はい。妻問い婚では、女性側に強い拒否権があります。  女性が強い霊力を持っていたというのも仰る通りだと思います。  ただ、それと  >「大変都合のいい存在」「責任を負わなくていいセックス相手」という感じ  これは矛盾しないんですよ。  女性側に選択権があったところで、母系社会の女性たちが、男性たちにとって  リスクのない、「責任を負わなくていいセックス相手」であることには  違いはありません。  男性側にとってみれば、別に機会が一度しかないわけじゃありませんから、  女性Aに断られても痛くも痒くもない。じゃあ女性Bに行こう、というだけです。  これは、男性(父系)視点から見れば「売春」です。だからこそ、  みかさんは「女性側に拒否権があること」を強調されたのだと思いますが、  同じモノを女性(母系)視点から見れば、これは飽くまで「結婚」なんです。  男性側の思惑は関係ないんですよ。どうせいなくなるんだから。  だから、売春婦を求める男たちと、一夜の夫を求める女たちの思惑は一致する。  あくまでこれは想像に過ぎませんが、そういうわけで父系社会と母系社会は  「同時に同じ地域に存在できない仕組み」ではなくて、むしろある程度の  互恵関係にあったんじゃないか、と僕は思ったのです。  「縄文時代は父系か、母系か?」という問いかけに、もしかすると両方が  両立していたんじゃないか、という可能性は返せるな、と思ったわけです。  恐らく、人口の大部分は母系だったんだと思いますが、  父系社会が流浪集団として存在し、彼らが女型土偶をつくったと考えると  説明できそうだな、と。 [みかりん]  そうですね。  母系社会と父性社会は対立するものではないですね。  で、ややこしい言葉に母権社会と父権社会というものもあります。  母系と母権(父系と父権)も微妙にかぶっている所と  違うところがあってややこしい。  母系社会とは、家族が母親の系統で構成される母系家族を単位として  構成された社会。  母権社会とは、女首長の統治する社会。  最初の人類は、母系社会と考えている人たちがいます。  世界各地に伝わる考えで、祖先霊などの何らかの霊的存在が女性の胎内にやどって、  子供として生まれてくる的な話がたくさん存在すること。  この考えだと、妊娠での男性の役割ってないんですね。  まさに女性から子が生まれるのは神秘で摩訶不思議だったんです。  土偶もつくられるますよね。  ごく最近まで、男女の性行為で子供が生まれるという知識のない人間社会が  パプア・二ュ―ギ二アにありました。  彼らは子供は祖先の霊魂の生まれかわりという輪廻転生説的な宗教で  妊娠を理解していました。  この社会では男は妊娠には無関係という扱いです。  こういう社会では男は単なる養育係でしかないので、  社会は母系家族制社会となります。  縄文時代は母系社会であって母権社会ではないので、たぶんものすごく制度もゆるやかで、  そのまま母なる集団に居残る男もいたかもですし、放浪で戻ってこない男も、  戻ってきたり放浪したりを繰り返す男もいたのかなと想像できます。  女の感性からすると、自分の子どもは全部良い子で  男の考えからすると、出来の良い子どもだけが良い子です。  母系社会を中心とする集団が点在し、父系の放浪集団がいたかもしれません。  でも父系であって父権集団ではまだないんですね。  縄文から弥生に移ると共に、母系から父系の社会に代わります。   母の原理から父の原理の社会へ移行っていうのは容易に考えられるんだけど、  その逆ってあるのかなぁ。と考える事があります。 [怪]さん  > 最初の人類は、母系社会  これは僕もそうなんじゃないかと思いますよ。「自分の子」という確信を持てるのは  女性だけですから、社会の原型としては母系社会の  ほうがシンプルです。  逆に、ゼロから父系社会を作ろうと思ったら、  「他所で種をもらって来ないように女性を管理する」  システムを整える必要があります。これは結構ハードルが高いと思います。  > この考えだと、妊娠での男性の役割ってないんですね。  > まさに女性から子が生まれるのは神秘で摩訶不思議だったんです。  > 土偶もつくられるますよね。  これ改めて言われると、「女たちが女型土偶を祀る」風景も、  なくはないのかも…と思えてきますね。  > 母の原理から父の原理の社会へ移行っていうのは容易に考えられるんだけど、  >その逆ってあるのかなぁ。と考える事があります。  人為かそうでないかはともかく、たぶん悲劇的な経路を通って移行すると思います。 [みかりん]  >人為かそうでないかはともかく、たぶん悲劇的な経路を通って移行すると思います。  え?たとえばナウシカ的な「悲劇的経路」?とか想像して、胸アツ。(笑) [怪]さん  >>人為かそうでないかはともかく、たぶん悲劇的な経路を通って移行すると思います。  それは、ほとんど直感的なものだったんですけど、  理由を言葉にしてみると、そもそも現状で「父の原理」による  発展が行き過ぎているからです。単位面積の土地に対して、  人口や一人当たりの消費行動の量が大きすぎる。  つまり現状で、母の原理=平等かつ停滞、に持ち込んだところで、  環境に対する負荷は既に過剰で、その分は「口減らし」  されなければならない。悲劇的な事件、戦争あるいは災害によって  大量に人が死ぬ経路を通るだろうと思うのは、そのためです。  母の原理の社会が生じるとしたら、その「悲劇的事件」によって  父の原理の社会が成立しなくなったときだろうな、と思うのです。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★「みかりんの叫び」での怪さんと私の往復書簡は、もちろん素人談義であります。   怪さんの専門でもありませんし、私は一介の蟹売り&絵描きです。(笑)   古代史はわからない所がたくさんあってその分、想像する余地がたくさんあって   楽しい楽しい。 ★12月19日の日経新聞に、ロシアのシベリアで出土した5万年前のネアンデルタール人の  女性の骨から採取したDNAを解析してわかった事が記事になっていました。  この女性の両親は親戚関係のような近縁だと判ったという事です。  まぁ、たまたまそういう女性だったのか、集団が小さくて近縁での関係が一般的だったか  は、この一例だけではわかりません。  それよりも私が驚いたのは、DNA解析でそんな事もわかるのかーという事です。  死んで5万年も経っているのに。です。 ★12月26日のニュースで、小笠原諸島に現れて、順調に成長してきた新しい島が、  ついに隣の西之島につながったと報道されました。  動画をみたけれど、当初ニュースになった時の5倍も大きく成長して、西之島と  大きさはもう変わらないくらいの成長ぶり。  火口も3つあって、マグマも噴き出して、地球、生きてるー!って感じです。   ★今年の山猫通信はこれでおしまい。  また来年よろしくお願いします。  それでは良いお年をお迎えくださ〜い。  次回発行は1月19日「ウマ文化の話」です。 ★ラジオ山猫通信がリアルタイムで、  パソコン、スマートフォンから聴けるようになりました!  http://www.radiokaros.com/simulradio/  ↑ここがカロスのサイトの「インターネット放送聴取方法」のページです。  パソコンからスマートフォンから、カロスの放送を聞く方法が載っています。  http://www.simulradio.jp/  ↑ここがサイマルラジオのサイトです。  ここから全国のコミュニティーラジオが聞けるようになっています。    このサイトを開いたらちょっとスクロールすると「北海道」という場所があって  その下の方に「ラジオカロスサッポロ」という場所があります。  そこの「放送を聴く」をクリックするとメディアプレイヤーが立ち上がって、  リアルタイムに放送を聴くことが出来ます。  ラジオ山猫通信は、第一月曜日と第三月曜日の19:00〜19:30です。  年明け1月6日19:00から「ウマ文化の話」が  リアルタイムで聞くことができます。  バックナンバーは、「やまねこ通信 E=MC二乗」のサイトの「ラジオ山猫通信」の  場所から、いつでも好きな回のお話を聴くことが出来ます。   ★今回のこの「単位の話」は、  ネットでいつでも好きな時に聞くことができます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ここの右側「ラジオ山猫通信」をクリックしてスクロールして  「昔すぎてよくわからない、絶滅していなかった話」をクリックすると聞けます。  すぐに聞けない人は、じっと待ってみて。きっと聞けます。  http://crashlanding.under.jp/rajiyama1216.mp3  直接URLはここです。  今回の文は、おおむねラジオ原稿そのままです。  ラジオ用をメルマガ用に書き換えているけどね。 ★vol.190の参考サイト&書籍       1秒の定義       http://www2.nict.go.jp/aeri/sts/afs/One-Second.html       単位の話       http://www2.nict.go.jp/aeri/sts/afs/One-Second.html      「縄文人に学ぶ」 著/上田 篤  新潮新書524 ★予告です。 1月6日放送「ウマ文化の話」(収録終わった)  (ネットにUP予定は1月20日) 1月20日放送「右と左と螺旋の話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は2月3日) 2月3日放送「イチジクの約束の話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は2月17日) 2月17日放送「地球が太陽の周りを回った話」(これから書く)  (ネットにUP予定は3月3日) 3月3日放送「イグアナの話」(まったく未定)  (ネットにUP予定は3月17日) ★ラジオ放送が月二回隔週であります。  最初はメルマガを元に原稿を書いてたけど、  今は、書き下ろし原稿です。  それをメルマガに転用するという逆転現象が  最近のメルマガ版「やまねこ通信 E=MC二乗」であります。 ★どうぞお時間のある時に「ラジオ山猫通信」も聞いてみてください。  5年目に突入の「ラジオ山猫通信」  どこまで続くんだ?  ここまで来たらいける所まで行ってしまえ!  最近は、トチらずスラスラよどみなくしゃべっているように聞こえます。  慣れてきたのです! ウソです。(笑)  編集で直して貰っているんです。 そのためずいぶん聞きやすくなっています。  決して私のしゃべりが上達したのではありません。  編集がうまくなったのです!(キッパリ) ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  私、みかりんのもうひとつのメールマガジン。  北の味覚。海産物。蟹おいしいよ〜。海水ウニもありますよー。  予算はこれくらい。食べる人数はこれくらい。と教えてくれたら、その中で  できる限りのご提案をします!山猫屋の蟹は冷凍物は扱っておりません!  さぁ、タラバ食べたいよう、毛ガニ食べたいようのメールをみかりんに書こう。  タラバも毛蟹も良いのが入荷してきています。  北の食材たちは脂が乗っておいしいです。  この機会に、どうぞ冷凍ではない蟹を!  ご贈答に、山猫屋の海産物を。 それじゃ、今回はここまで。 あなたのお便り待ってます。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 土星の衛星(月の事ね)のタイタンと、 京都での煮物をさす「たいたん」の関係について、昨日から考えている。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.190  2013年12月29日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さには  まったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。  それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━