2014/2/16━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.193 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 毎日ソチオリンピックをテレビ観戦しています! ソチってどこにあるんだろうと思って地図で見てみると… おお!こんな所に!黒海のほとりだ。 今はソチオリンピック一色ですけれど ちょっと前には節分がありました。つい2週間ほどしか経っていないのに ずいぶん前の事のようです。 節分では本来は大豆を撒くんですけれど、 北海道では圧倒的に殻つきピーナッツを撒きますね。後片付けが簡単ですものね。 道民の合理的な一面が節分に殻付きピーナッツを選んだようです。 大豆も落花生も人との古い歴史を持つ食べ物です。 それよりも古くから人との関わりが知られているのがイチジクです。 北国に住む私はイチジクを今まで数えるほどしか食べた覚えがありません。 ぐずぐずと妙な柔らかさがあって赤黒い甘い果物です。 うん、子どもの頃、何度か食べた記憶がかすかにあります。 調べてみると暖かい所が原産で日本でも関東以南では栽培は簡単だけど、 寒いところでの栽培は大変難しいようです。 どうりでほとんど食べた事がない訳です。 去年の10月にNHKテレビの「ダーウィンが来た!」で イチジクとイチジクコバチの関係を紹介した番組を見て、 そのあまりの濃い関係に驚きました。 興味を持って自分でも調べてみました。 すると「ダーウィンが来た!」の番組以上の事がわかりました。 今日の話は「イチジクの約束の話」です。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■イチジクの約束の話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ イチジクってちょっと不思議です。 漢字で書くと無花果と書きます。 花の咲かない果物はありません。 イチジクも花は咲きます。 でもそれは見えないところに咲きます。 あの果実の内側に花が咲くんです。 それじゃぁ、ヒトには花は見えません。 イチジクも実をつける植物ですので、受粉が必要です。 受粉は虫が一手に引き受けています。 イチジクにもいろんな種類があります。 まずは、エジプトイチジクの不思議な生態をお話しましょう。 アフリカのサバンナに、生きものがたくさん集まる巨木があります。 数百年も生きていて20mもあるエジプトイチジクの木です。 一度につける実は1トンにもなります。 果実をつける植物は普通1年に1度しか実をつけないものなんですけれど、 エジプトイチジクは1年に数回も果実をつけるんです。 だから、年に4トンも5トンも果実をつけるって事です。 そんなだから、エジプトイチジクの果実を食べに、 ありとあらゆる動物たちがやってきます。 ゾウやキリンなど大型哺乳類や、様々な種類のサルたちが食べにきます。 100種類を超える鳥たちも食べに来ます。 川辺に生えたエジプトイチジクの木では、サルや鳥が食べこぼしたイチジクのかけらを 狙って魚が集まってきます。 その魚を狙う鳥やワニが集まってきます。 食べられずに川に流されていく果実もたくさんあって、遠く流れて行った先に カメに食べられる果実もあります。 こうしてエジプトイチジクの影響は、サバンナの隅々にまで及んでいます。 昆虫や微生物も入れると、エジプトイチジクを中心とする生態系の輪があるんですね。 サバンナのどれだけの命をエジプトイチジクの巨木が支えているのか見当もつきません。 エジプトイチジクの果実が熟して地面に全て落ちる頃、木の上では次の実をつける準備が 始まっています。 ここで登場するのがイチジクコバチという1mmほどの小さな昆虫です。 イチジクの花は内側に咲いて、誰もみる事は出来ません。 このイチジクコバチの一生が壮絶な生き方をするんです。 内側に咲いた花を目指してメスのイチジクコバチがやってきます。 ここ、今はさらっと流しますけど、あとでもうちょっと詳しくお話します。 イチジクコバチっていう言い方は長いので、このあとコバチという言い方もしますね。 コバチのメスは、他のエジプトイチジクから花粉を持ってきていて、 果実の内側に花を咲かせている花のメシベに花粉つけていきます。 その時、その花のメシベの先から産卵管を差し込んで卵を産みつけます。 幼虫はここにできる種を食べて育ちます。 イチジクの木は、コバチの幼虫を育てる場所と栄養を与えているんです。 その代わりに花粉を運んで確実にメシベに擦り付ける事をコバチにしてもらっています。 イチジクの木は、花粉を風まかせでもなく、他の昆虫でもなく、 イチジクコバチだけに頼んだのです。 そしてその約束はなかなか過酷で残酷でもあります。 産卵から2か月ほどすると、イチジクの実の中でコバチの成虫が誕生します。 まず先にオスが生まれます。オスは生まれるとすぐにメスを探し、 メスが出て来やすいように回りを広げてあげます。 そしてまだ動けないメスに交尾をします。 真っ先にやることはソレかい!と突っ込みたくなりますね。(笑) 実はオスは目もなければ羽もありません。 そして命の持ち時間は数時間しかありません。 その短い間にやることがあります。 内側に花が咲いている果実の中の、花粉を集めてメスに持たせてやるんです。 メスには花粉を入れるポケットがあります。 メスに花粉を与えたら、今度は果肉に穴を開ける作業があります。 齧って齧って果肉に穴を開けます。 そうしてオスは一度も外に出ることなく果肉の中で一生を終えます。 メスのために場所を広げてやり、メスへ交尾をして、メスに花粉を持たせてやり、 メスのために外へ通じる穴を開けてやる。 これがオスのイチジクコバチの、メスだけのために捧げた数時間の一生です。 オスが果肉に穴を空けてくれた頃、メスはやっと動く事ができるようになります。 そしてオスがあけてくれた穴から外に飛び出します。 向かう先は他のイチジクの木。 でもメスの一生もたやすくはありません。 あらゆる天敵が待ち構えています。 クモやヤモリが狙っています。 それらを食べるために鳥やカメレオンも集まってきます。 メスはオスよりも寿命が長いと言っても、 自由に飛び回れる時間はせいぜい半日から1日です。 天敵が待ち構える命がけの旅の果てに、 産卵に適したイチジクの実までたどり着けたものだけが、 次の世代を残すことができます。 1匹のメスがイチジクの実を見つけました。 イチジクの実の先っぽには小さな小さな穴が開いています。 穴はメスの体よりも小さいんです。 すごく狭い穴に無理やり入るので、その時、羽は取れてしまいます。 そればかりか体を潰しながらもぐりこむので体液も出てしまいます。 そんなになりながらイチジクのメシベにたどり着いて、 まっ先にするのは生まれた果実から持ってきた、花粉をメシベになすり付ける事。 これがイチジクの木との約束です。 それから卵を生みつけてそこで死んでしまうのがメスの一生です。 イチジクコバチのオスがメスに渡した花粉を、メスは命がけで、 次の果実のメシベになすり付けました。 イチジクの雌花は受粉して、雄花が咲くまでの時間にはズレがあります。 この時間のズレは、見事にコバチ一世代分の時間になっているんです。 イチジクは、種をコバチの幼虫の餌として提供してくれます。 そして幼虫の安全な「ゆりかご」となって成虫まで育ててくれます。 ここ、ちょっと説明が必要です。 コバチのメスが、どんどんメシベに花粉をこすりつけて卵を産み付けると、 全部それはコバチの幼虫となって、出来た種はすべてコバチの幼虫の栄養となって しまいます。それではイチジクの木にとってメリットはありません。 そこでイチジクは、長いメシベと短いメシベを用意しました。 長いメシベでは産卵管が届かないので、メスは卵を産み付けられません。 短いメシベだけに産卵します。 でもコバチは、律儀にも産卵に適さない長いメシベにも花粉をこすりつけるので、 イチジクは種を残す事ができます。 「何故そこまでするの?」という問いには 「約束だから」という答えしかないような関係です。 そうして、育ったイチジクコバチは、イチジクために「空飛ぶ花粉」となります。 イチジクはコバチのためにあり、コバチはイチジクのためにあるのではないかと 思えるほど濃密な関係です。 この両者はお互いがなくては存在できません。 別々の生き物というより、ふたりでひとつというような関係です。 この濃密な関係が、年に数トンもの果実をつけて、 サバンナの多くの命を支えているんです。 サバンナのたくさんの命は、大きなイチジクの木が支えているのだけれど、 たった1mmほどのイチジクコバチがサバンナの命を支えているとも言えます。 花と花粉を運ぶ昆虫の関係にはいろいろありますけれど、 これほど濃密な関係は滅多にないです。 イチジクはだいたい九百ほどの種類があります。 その種類ごとに花粉を運ぶコバチの種類も決まっているのです。 遠い昔に1 対1 の約束を交わした大きな木と小さな昆虫の物語です。 こんな濃密な関係を知ると、イチジクの木とイチジクコバチは一心同体とか共存共栄とか、 切っても切れない、片方だけでは成り立たない、お互いが大切な存在という関係なのかと、 人間目線で思ってしまいがちです。 頭の上には「絆」の漢字が浮かんできたりしてしまいます。 ここまでが「ダーウィンが来た!」の番組で紹介していたイチジクとイチジクコバチの 関係です。 でも、イチジクとコバチはそれほど仲良しではないかもしれないんです。 今お話したエジプトイチジクは、雄株も雌株もありません。 1本の木になる実の中に、オシベとメシベがあります。 イチジクの中には、雄株と雌株に分かれている種類のものもあります。 オスの木とメスの木があるんです。 イチョウなどもその戦略ですね。 イチョウには雄株と雌株があって、ギンナンは雌株にしかなりません。 雄株と雌株に分かれているタイプのイチジクでは、両方に果実がなるんです。 このタイプは、雄株になる果実でコバチを育てて、雌株では種のある実をならせます。 イチジクコバチのオスが持たせてくれた花粉を持って、 オスがあけてくれた穴からメスが飛び立ちます。 ここまではエジプトイチジクと同じです。 でも、向かう先の別のイチジクの果実は、外から見ただけでは雄株の果実か雌株の果実か わからないんです。 花粉を持って飛び出したコバチのメスが、雄株がつけた果実に入ると、 そこでメシベに花粉をこすり付けて、卵を生みつけて子孫を増やすことが出来ます。 でもそれでは、コバチを育てるためだけに種を作る事になるので、 イチジクにはメリットがありません。 花粉を持ったコバチが、イチジクの雌株の果実に入ると、 メシベに花粉を擦り付けてくれます。 受粉をさせることが出来て種ができます。 イチジクにとってはこれは嬉しいけれど、この雌株の実では、 メシベが長すぎてコバチは卵を産み付けることができません。 花粉をこすり付けて果実の中で死んでしまうだけです。 今度はコバチにとっては意味がありません。 コバチがどちらの実に入るかは、五分五分なんです。 コバチはできれば雄株の果実に入りたい。 イチジクはできれば雌株の果実のほうに多く入ってもらいたい。 このあたりにイチジクとコバチの戦いがあるんですね。 たとえば、コバチが一方的に栄養だけ貰って、花粉をつける事に熱心じゃない事も できたと思うんです。 でも、そんな事をしたらイチジクはコバチを排除する方向に進化するでしょう。 最初は、イチジクとコバチは、そのあたりを手探りで相手の出方を探り合っていた時期が あったと思うんです。 イチジクはたくさんの種類があります。 その種類ごとに対応する専用のイチジクコバチがいます。 イチジクが、種類に分かれるとき、コバチも付いていったんですね。 イチジクは少しずつ無理難題を押し付けたと思うんです。 雌が入り込む穴は他の昆虫には入り込めません。 本当はコバチだって入るには狭すぎるんです。 先ほどお話したように、入るときに羽も取れて、 体液も流れ出るような入り方をして果実の中で死んでしまうコバチ。 いきなりこんな難題を突きつけられたら、コバチは諦めます。 だからたぶんイチジクは少しずつコバチに、 ここまで出来る?まだ付いてこれる?と、コバチの様子を見ながら 変化していったのかもしれません。 今、このイチジクコバチのDNA解析が進んでいます。 判ったことは、3000万年前にイチジクコバチは、色々な種類に分かれている事です。 という事は、この時期にイチジクのほうにも色々な種類に分かれた時期なのかもしれません。 それと、コバチはちゃんと約束を守って花粉を運びますけれど、 そんな事をしないコバチもいる事がわかってきました。 果実の中には入らずに果実の外から産卵管を差し込んで卵を産む寄生コバチがいるんです。 この寄生コバチの幼虫は、果実の養分も食べるので、 イチジクにとっても約束を守っているコバチにとっても敵です。 寄生コバチのDNAを調べると、かなり古い時代に、 約束を守って花粉を運ぶコバチと分かれた事がわかったんです。 いいところだけを欲したコバチのグループがいたという事ですね。 コバチのメスは、花粉を入れるポケットを持っています。 でもはポケットを持たない種類のコバチもいます。 これもDNA解析で調べてみると、ポケットを持っている方が古い種類な事がわかりました。 ポケットを持たないコバチと約束したイチジクは、 コバチのこの変化に雄花を増やすことで対抗したようなんです。 少しでもメシベに花粉を付けやすくするイチジク側の対応です。 お互いがなくては存在できないかけがえのない大事な相手なのに、 それでも出し抜いてやろうという命のしたたかさが、時々垣間見えます。 イチジクは古い歴史を持つ木です。 イチジクがコバチと約束をしたのは約1億年前です。恐竜の時代です。 その頃からイチジクとコバチは、互いに出し抜いてやろうとしながらも、 切っても切れない抜き差しならない関係になっていったようです。 そして共に生きる事を決めたようです。 イチジクの原産地はアラビアあたりです。 このあたりには人類最古の文明とも言われている古代メソポタミア文明があります。 ここで6000年以上前からイチジクが栽培されていたのが判っています。 最近では1万年以上も前の新石器時代の遺跡からも、 イチジクの果実の痕跡が見つかっています。 イチジクが人類最初の栽培植物じゃないかと今では思われています。  小麦よりもずっと古い付き合いなんですね。 キリスト教では、アダムとイブが裸を恥ずかしがって体を隠したのは イチジクの葉っぱです。 ヘビが勧めたのはリンゴではなくてイチジクだという説もあります。 イチジクはキリスト教の聖書の中でも宗教画の中でも、しばしば登場します。 仏教ではブッダが菩提樹の木の下で悟りを開いたと言われていますが、 この木はインドイチジクの事です。 キリスト教にも仏教にもイチジクが重要な役割で登場しています。 という事は、三大宗教のもうひとつイスラム教ではどうなのかなと思って調べてみました。 イスラム教のコーランにもイチジクは登場していました。 人類もイチジクとの関係は長く深いのですね。 もちろんコバチほど長い関係ではありませんけれどね。 日本のイチジクは、江戸時代の始めに、ペルシアから中国を経て長崎に伝来しました。 さて、ここまでのお話を聞いて、みなさんはある心配をしてるんじゃないかと思います。 イチジクにはイチジクコバチという小さな虫が欠かせなくて、 その虫はどうやら果実の中で死ぬらしい。 それじゃぁ日本で出回っているイチジクも中で虫が死んでいるの?っていう心配です。 はい、お答えします。 結論から言うと、日本の食用のイチジクにはイチジクコバチが媒体していません。 だから中で虫は死んでいないです。 イチジクの仲間は熱帯から亜熱帯にかけて多く分布しています。 イチジクコバチにとって日本は寒いんですね。 日本の食用イチジクは、雄株と雌株に分かれているタイプのイチジクで、 その雌株だけで果実をつけます。日本のイチジクは雌株しかないんです。 だから種で増えません。挿し木で増やせます。 たまごで言うところの有精卵と無性卵の違いのようなものです。 イチジクコバチは自分の体を変え、 目も羽もないオスは、数時間の命を果実の中で終えるような過酷な一生を送る事で イチジクに忠誠を誓いました。 約束とそれを守る関係に、心を打たれます。    * * * * *  * * * * *                                      目も羽も持たない数時間の命を       イチジクの実の中で終えるコバチのオス       花粉をポケットに詰め込み       果実から飛び出したメスは       自分たちとイチジクの命を運ぶ       過酷な一生を送るイチジクコバチ       イチジクとの約束とそれを守る関係は       他の多くの命を支える。       脚光を浴びるのはイチジクの木と果実。       支える小さなイチジクコバチの存在は       目立たなく、力強くしたたかで、どこか悲しい。 ━■みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「鏡の中の左右逆転の謎」 前回vol.192のメイン記事は「右と左の螺旋の話」でした。 この話はもともと「鏡に映っているのは左右逆転ではなく前後が逆転している」という 話を書こうとして挫折し、「右と左の螺旋の話」の話に変えて、 あのようにまとめたのです。 で、前号を読んだ読者の[巴里雀]さんからメールが来ました。 2007年12月13日の新聞記事を写真に写したものが添付されたメールでした。 「古くはプラトンを悩ませ 今も熱い論争」 「鏡の中の左右逆転の謎」 「物理で説明か 心理かかわるか」 とたくさんの見出しがつけらて大きな扱いです。 ここにその全文を載せてみますね。 要約できればいいんだけど、ややこしいんで。無理。(笑) 「右と左の螺旋の話」でも十分にややこしかったのです。 この鏡の問題はそれよりもさらにさらにややこしいです。 この7年前の毎日新聞の記事全文コピペのあとに 一度諦めた「鏡像は左右逆ではなく前後逆」を図を使って説明してみます。 それではどうぞー。 ===========  ◇物理で説明か、心理かかわるか  鏡の前で右手を上げると、鏡の中の私は左手を上げているように見える。  なぜ鏡の中では左右が反対なのか。  この問いかけは、古くはギリシャの哲学者、プラトンが考えたと言われるほど  長い歴史を持つ。  現在も認知心理学と物理学の両分野で、国際的な議論が続いている。  今年11月、「鏡像問題に決着をつけた」とする認知心理学者の論文が発表されると、  物理学者が批判するなど熱い論争が続く。鏡像の謎に迫った。【関東晋慈】  ◇実証実験で論文  東京大の高野陽太郎教授(認知心理学)らは11月、英国の心理学専門誌に実証実験に  基づく鏡像問題の論文を発表した。  102人の学生が協力。この分野では過去にない仮説検証実験だった。  論文で分析した二つの主な実験は、自分自身と文字を鏡に映し、左右、上下に逆転して  いるかどうかを問う内容だ。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/migi-hidari.htm#i  まず、自分の姿については、「逆転している」と答えた学生は67人(65・7%)、  「逆転していない」と答えた学生は34人(33・3%)だった。  高野教授は「3割以上もの人が鏡に映る自分が逆転しないと感じている。  鏡像問題は逆転していることが問題の前提だったが、歴史の中で初めて示した事実」と  話す。  この現象を説明するのが視点の転換という。  鏡の中の自分の視点から、判断した人は逆転して見え、置き換えなかった人は  逆転しないという。  文字の逆転の実験では、最初にアルファベットの「F」を鏡に映した。  102人全員が左右逆転していると答えた。  次に、ロシア語のアルファベットであるキリル文字の「ユ」で実験した。  52人のうちロシア語を学んだことがない学生45人では、  「逆転」と「逆転していない」が同数の16人(35・6%)、  「分からない」も13人(28・9%)とばらつきが出た。  一方、ロシア語を学んだことがある学生7人は全員が逆転していると答えた。  これは、記憶の文字と鏡像が逆になることで生じた結果だという。  高野教授は逆転する理由について、  (1)鏡に映った人の視点から左右を判断する  (2)記憶と逆に見える−−という二つを挙げている。  「理由が複数あるという点が、他の研究者の理論と大きく違うところ」と話し、  「鏡像問題は、人間にとって、どう見えるかという問題だ」と主張する。  ◇問題の起源は  鏡像問題は「なぜ左右が逆になるのか」という疑問から始まった。  だが設問自体があいまいだったことと、物理的説明と視覚による認知という心理的要素  の混在で、明快な仮説はごく近年まで提唱されなかった。  例えば、ノーベル物理学賞を受賞した米国のファインマン(1918〜88)は  大学生時代に鏡像問題を考えたことが伝記に残っている。  日本の朝永振一郎は随筆の中で、ファインマンによく似た説明として  「鏡の後ろに回って立つ自分を想定して比較してみる」などと記しているが、  最後は「何かもっと一刀両断、ずばりとした説明があるのか、  読者諸兄に教えていただきたい」と結論には至っていない。  国際的には英国や米国、ニュージーランドの心理、物理、さらに哲学者が  さまざまな仮説を提唱している。  文字を鏡に映すために、ぐるりと回して鏡に向ける時に左右が反対になるとする  「回転説」や、逆転している方向を「左右」と見なすのが習わしだという  「言語習慣説」まである。  ◇批判論を準備中  鏡像問題について国際的に論文発表をしているのは高野教授らのグループのほかに、  物理学の分野で多幡達夫・大阪府立大名誉教授(放射線物理学)のグループがある。  多幡名誉教授は「鏡像の左右逆転、非逆転の根本的な理由に、  心理は本質的なかかわりを持たない」と訴える。  物理的要因が心理的プロセスに先立つ原理だという立場で、高野教授の理論を批判する  論文を準備中だ。  多幡名誉教授によると、非対称なものの鏡像は実物と比べ、上下・前後・左右の  三つの軸のうち一つの軸が逆になる。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/migi-hidari.htm#j  鏡に人を映した場合、人の体が外見上ほぼ左右対称なため、  上下・前後の軸を決めた後に左右が決まることになる。  鏡像を、実物とは違う鏡像固有の座標系で考えると、左右が逆転する。  多幡名誉教授は「逆転が起きないのは、実物と鏡像で同じ座標系を使っているから。  例えば、右手を上げた場合、鏡像も右側の手を上げている」と説明する。  多幡名誉教授は  「鏡像問題は、物理的に説明できるという考え方と  心理がかかわっているという考え方が争ってきた。  物理的理解をしっかり踏まえた上で、心理的研究をさらに進めるならば、  今後の鏡像問題研究はますます興味深くなると思う」  と話している。 =========== コピペはここまで。 この記事を読むと、私が当初書こうとして挫折した「鏡に映る像は、左右逆転ではなく 前後逆転である」という話とはまた別な話題なのですね。 「鏡に映る像は、左右逆転ではなく前後逆転である」という話は、 「鏡像は左右逆転である」と見える事を前提として、そうじゃなくて前後がっていう 話です。 この前後の話、色々文を読みまくって、まず言葉だけで説明するのは私には無理と悟り、 ラジオではもう絶対に無理と思いました。 メルマガだと専用のページを作ってそっちを見てもらって話を進めることもできます。 で、「鏡像はこの左右逆転ではなく前後逆転である」という事を 割と腑に落ちやすい図をネットから拾ってきました。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/migi-hidari.htm#k つまり視点の問題なんですね。 私達が鏡の向こうに居る人を「左右反転した人」と思うのは、 鏡像を「こっちを向いている人」だと思うからですね。 つまり、手元の文字を鏡に映す際に何らかの逆転操作が加えられているんです。 鏡は単に右のものは右に、左のものは左に、上のものは上に、下のものは下に、 そのまま映しているだけなのです。 でも、美容院で鏡越しの時計を見ると、訳わかんないです。 それを見越しての鏡に映った時にちゃんと見える時計もありますけどね。 鏡越しに見る壁に貼ってあるポスターや時計の文字盤の文字の裏返し問題は どう考えたらいいんでしょう。 まず鏡の反対側にある壁を見てみましょう。 そこには正しい文字があります。 鏡の中の文字は後ろにあるので見ることはできませんが、 鏡の映像を、自分の後頭部を透かして平行移動で目の前に持って来れば、 それは正しい向きの文字になっているはずです。 ここで振り返って反対側の鏡を見ます。 この時、見る人は横に180度回転します。 ここで、先のガラスをひっくり返すのと同じ現象が起こっています。 文字の左右が逆転して見えることになります。 この時、後ろの壁の文字を後頭部を透かして平行移動で前に持って来ると、 やはり左右が逆であることがわかりますね。 鏡にはこれがそのまま映っているだけであり、 自分が横に回ったために全てが左右入れ替わってしまったのです。 もちろん、横に振り返る替わりに仰向けに反り返って鏡を見ても構いません。 この場合は上下が逆の文字を見ることになるんです。 ふぅ。これで私が当初メインテーマと取り上げたかった問題を説明できたっぽい。 でも、図がなきゃ無理だよね。訳わかなんないよね。 これで一件落着〜。 と思いきや、そうでもないって事なのが、このたびの巴里雀さん投稿の ピタゴラスをも悩ましたという「物理的理解を踏まえた上で心理的研究を進める」ような 問題を含んでいたとは。 鏡問題は深すぎです。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★北海道で暮らしているとイチジクはメジャーな食べ物ではありません。  道民は食べた事がない人も多いと思います。  私も小さい頃に食べた記憶があるだけです。  どうして私は小さい頃に食べた記憶があるのだろう。  この原稿を書きながら不思議に思っていました。  その謎が解けました。  この「イチジクの約束の話」の放送を聴いた母が私に言ったのです。  「みかさん、イチジクの話の放送聞いたわよ。どうして庭のイチジクの事を  言わなかったの?忘れてるの?」  あぁ…。そうかぁ。確かにあった。  私は札幌で生まれ、父の仕事の関係で1歳と数ヶ月の時に仙台に移ったのです。  小学1年生を終えるまで仙台で暮らし、  それから札幌に戻ってきて以来ずっと札幌です。  その仙台の時の家の庭にイチジクの木があってその木が毎年実をつけていて  だから幼少の頃、イチジクを食べていたんです。  イチジクのじゅくじゅくとした甘い味と感触。しっかりと記憶に残っています。 ★ラジオ山猫通信がリアルタイムで、  パソコン、スマートフォンから聴けるようになりました!  http://www.radiokaros.com/simulradio/  ↑ここがカロスのサイトの「インターネット放送聴取方法」のページです。  パソコンからスマートフォンから、カロスの放送を聞く方法が載っています。  http://www.simulradio.jp/  ↑ここがサイマルラジオのサイトです。  ここから全国のコミュニティーラジオが聞けるようになっています。    このサイトを開いたらちょっとスクロールすると「北海道」という場所があって  その下の方に「ラジオカロスサッポロ」という場所があります。  そこの「放送を聴く」をクリックするとメディアプレイヤーが立ち上がって、  リアルタイムに放送を聴くことが出来ます。  ラジオ山猫通信は、第一月曜日と第三月曜日の19:00〜19:30です。  明日19:00に「地球が太陽の周りを回るまでの話」が  リアルタイムで聞くことができます。  バックナンバーは、「やまねこ通信 E=MC二乗」のサイトの「ラジオ山猫通信」の  場所から、いつでも好きな回のお話を聴くことが出来ます。   ★今回のこの「イチジクの約束の話」は、  ネットでいつでも好きな時に聞くことができます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ここの右側「ラジオ山猫通信」をクリックしてスクロールして  「イチジクの約束の話」をクリックすると聞けます。  すぐに聞けない人は、じっと待ってみて。きっと聞けます。  http://crashlanding.under.jp/rajiyama0203.mp3  直接URLはここです。  今回の文は、おおむねラジオ原稿そのままです。  ラジオ用をメルマガ用に書き換えているけどね。 ★vol.193の書籍&参考サイト ダーウィンが来た! 338回 命がけの約束!サバンナの巨木と小さなハチ http://cgi2.nhk.or.jp/darwin/broadcasting/detail.cgi?sp=p338 生き物こぼれ話 イチジクとイチジクコバチの仲 http://members.jcom.home.ne.jp/3111223201/ikimono/fig-bee.htm うんへありずむ 無花果の不思議のまとめ。3 http://umreal.exblog.jp/9178141 知識の宝庫 目がテン!ライブラリー 実の中に花!? イチジク http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/05/09/0911.html 共生・共進化 時間と空間の中でつながる生きものたち 相互利用のバランス:レット・ハリソン http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/032/ss_3.html QJYつうしんQJY18 植物の不思議 イヌビワを究JYする http://www1.u-netsurf.ne.jp/~qjy/qjy1-100/qjy18/qjy18.htm 雑学ノート 鏡の世界の話 http://hr-inoue.net/zscience/topics/mirror/mirror.html YAHOO!知恵袋 鏡で前後が逆になる? http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1088226215 ★予告です。 2月17日放送「地球が太陽の周りを回った話」(収録終わった)  (ネットにUP予定は3月3日) 3月3日放送「桃の力の話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は3月17日) 4月7日放送「地殻の移動と生物の話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は4月21日) 4月21日放送「スズメの話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は5月5日) 5月5日放送「ダイヤモンドの話?」(まだ全然未定)  (ネットにUP予定は5月19日) ★ラジオ放送が月二回隔週であります。  最初はメルマガを元に原稿を書いてたけど、  今は、書き下ろし原稿です。  それをメルマガに転用するという逆転現象が  最近のメルマガ版「やまねこ通信 E=MC二乗」であります。 ★どうぞお時間のある時に「ラジオ山猫通信」も聞いてみてください。  5年目に突入の「ラジオ山猫通信」  どこまで続くんだ?  ここまで来たらいける所まで行ってしまえ!  最近は、トチらずスラスラよどみなくしゃべっているように聞こえます。  慣れてきたのです! ウソです。(笑)  編集で直して貰っているんです。 そのためずいぶん聞きやすくなっています。  決して私のしゃべりが上達したのではありません。  編集がうまくなったのです!(キッパリ) ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  私、みかりんのもうひとつのメールマガジン。  北の味覚。海産物。蟹おいしいよ〜。海水ウニもありますよー。  予算はこれくらい。食べる人数はこれくらい。と教えてくれたら、その中で  できる限りのご提案をします!山猫屋の蟹は冷凍物は扱っておりません!  さぁ、タラバ食べたいよう、毛ガニ食べたいようのメールをみかりんに書こう。  タラバも毛蟹も良いのが入荷してきています。  北の食材たちは脂が乗っておいしいです。  この機会に、どうぞ冷凍ではない蟹を!  ご贈答に、山猫屋の海産物を。 それじゃ、今回はここまで。 あなたのお便り待ってます。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 母マサコさんへ。 浅田真央と言いたいのはわかった。 でも浅田美代子って言ってるよ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.193  2014年2月16日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さには  まったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。  それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━