2014/3/2━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.194 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 3月に入ってずいぶん日が長くなってきましたね。 これから少しずつ日が長くなって、 今月の21日の春分の日には昼と夜の長さが同じになって、 そうして6月には昼が一番長い夏至を迎えます。 こうやって毎年規則正しく1年が巡っては過ぎていきます。 ヒトは、この地球に暮らしてずっとこの現象を体験してきました。 地球に暮らしていると北半球では、 太陽が東から昇ってそうして西に落ちていきます。 私たちの住む地球を中心に太陽が動いているように見えます。 実はずいぶん早い時期から、地球が太陽の回りを回っている事を わかっていた人がいました。 でも、なかなかその考えは認められません。 今日の話は「地球が太陽の周りを回るまでの話」です。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■地球が太陽の周りを回るまでの話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 世界中のあらゆる文化が、宇宙はいかにして生まれたか、 どのように形づくられたかという事について、独自の神話を持っています。 そんな時代が長く長く続いていたんですけれど、 紀元前6世紀のギリシア人は、さまざまな可能性を考えるようになりました。 神話的な宇宙観ではなくて、自分なりの説明を自由に作り出したんです。 たとえば、太陽は空に開いた穴から天の火が漏れているのだと論じたり。 または、地球はよく燃えるガスを放出していて、それが夜のうちに溜まって、 限界に達すると発火して太陽になり、燃え尽きると夜が訪れる。 というふうに考えた人もいました。 もちろん、真実からはとても遠いです。 でもここで重要なのは、神さまや超自然的な仕掛けに頼ることなく、 自然界を説明する理論を作ろうとした事です。 色々な宇宙論のアイデアを出し合って、批判し、比較し、改良したり捨てたりしました。 紀元前の古代ギリシア人たちは、さまざまな理論を吟味して、 最終的にもっとも説得力ある理論を選び取ろうとしたんです。 神話で宇宙を説明していた時代に、最初の一歩を踏み出したのです。 この新しい流れの基礎固めをした人にピタゴラスがいます。 ピタゴラスは数学を使って音楽を説明した最初の人です。 一本の弦を爪弾くと音が出ます。 この弦の長さを半分にすると1オクターブ高い音が出て、 最初の音と調和する事に気づいたんですね。 ここから和音や不協和音など音程の原理を見つけ出しました。 数学を使って音楽を説明できることがわかると、 それに続く人たちは、色々なものすべてを調べるために数を使うようになりました。 ピタゴラスのアイデアを基礎として、その方法を改良していきました。 そうして科学は次第に洗練された学問の分野になっていって、 太陽、月、地球の実際の直径や、それぞれの距離を測るという所まで行き着くんです。 ここまででまだ紀元前の話なんです。 凄いですよね。 天体の距離や大きさを求めるためには、 古代ギリシア人たちは、まずこの大地は球形であることを証明する必要がありました。 この世界は丸い球のようだという考えは、船が水平線のかなたに消えるときに、 一番最後まで見えているのがマストの先端だということに気づいていたので、 割と広く受け入れられるようになっていました。 それから月食の様子からも裏付けられました。 月食が起こるのは、地球の丸い影が月に落ちるからです。 その影が丸いですし、それに月は丸いですから、 この大地が丸いと考えるのは理にかなっているように思えます。 だけどこの地球が丸いとすると、問題があります。 その問題は現代の子どもたちをも悩ます問題です。 私も子どもの頃、その事で困っていましたからよく判ります。 地球が丸いのなら、南半球の人たちはなぜ落っこちないの? この難問に対して古代ギリシア人たちは、こう考えて解決しました。 宇宙には中心があり、すべてのものは中心に向かって引き寄せられるから。 地球の中心と宇宙の中心はたまたま一致していて、 地球そのものは動かず、地表にあるものはすべて、 その中心に向かって引き寄せられると考えたのです。 そう考えると、たとえ地球の反対側に住む人ですら、 この力によって大地につなぎとめられると考えたんです。 説得力がありますね。ちょっと惜しいけれど良いとこついてます。 紀元前の3世紀頃に、エラトステネスという人がいました。 ちょっと長い名前なのでここでは略してエラさんと呼ぶことにしますね。 このエラさん、たった一本の棒を使って、地球の大きさを計算で導き出したんです。 エラさんは、現在のエジプト南部のシエネという町にある井戸の事を知ります。 このシエネの井戸は、毎年6月21日、つまり夏至の日ですね。 この夏至の日の正午になると、太陽の光がこの井戸の真上から差し込んで、 井戸の底まで明るく照らすんです。 エラさんは、ちょうどその日に太陽がまっすぐ真上に来ていると気づきます。 そのシエネの井戸より数百キロメートル北にあるアレクサンドリアの町にある井戸では そんな事は決して起こらないんです。 シエネとアレクサンドリアで同時に太陽が真上に来ないのは、 この大地が球形であるためと気付いたエラさんは、 この現象を使って地球の周囲を測れないかと考えたんです。 エラさんは太陽がシエネの井戸を奥底まで照らす時、 アレクサンドリアで地面に棒を立てて、その棒が作る影の角度を測ったんです。 この角度と、シエネとアレクサンドルの距離から、 エラさんは地球の周囲の長さを導き出したんです。 その誤差は、なんと実寸と2%しか違わないというんですから驚きです。 でもそこは誤差がどうとかというのは、問題ではないんです。 重要なのは、エラさんが地球の大きさを科学的に求める方法を考え出したことなんです。 誤差が大きいとか小さいとかは、測定の精度の問題です。 シエネとアレクサンドルの距離の測定方法や、 夏至の正午の時間の決め方などの結果にすぎないんですから。 実際は今の言い方で言うと地球の周囲は、4万キロですけれど、 この頃、地球の周囲が4千キロメートルなのか、400万キロメートルなのかも 判っていなかったのですから。 それが約4万キロメートルだと突き止めたことは、とても偉大な事です。 自分の住んでいる地球という惑星を測定するのに必要なのは、 1本の棒と優れた頭脳を持つ人間だけあればいいんですね。 地球の周囲の距離がわかれば、地球の直径がわかります。 地球の大きさを知ったエラさんは、この数字を元に月や太陽の大きさ、地球からの距離を 導き出しました。 その計算方法はそれまでの科学者たちはわかっていたのですけれど、 基本となる地球の大きさが確定できないうちは、完結しなかったんです。 このエラさんの少し前に、アナクサゴラスさんとアリスタルコスさんという人がいます。 言いづらいですね。略してアナさんとアリさんと呼ぶ事にしますね。 アナさんは、太陽は神さまなどではなく、白くて熱い岩石だ主張しました。 星々も高温の岩石だけど、とても遠くにあるので地球では暖かさを感じないのだと 考えたんです。 そして月は冷たい岩石で、月の光は太陽の光を反射したものだと言ったんです。 かなりいいところ突いていますね。 太陽や月は神ではなく岩石だというアナさんの主張は、 さすがにこの時代物議をかもしました。 アナさんは邪説を説くものとして迫害を受けます。 アナさんの考えをさらに推し進めましたのがアリさんです。 もし月が太陽の光を反射したものなら、 半月になるのは太陽と月と地球の位置関係が直角三角形の配置になった時だと 考えたんです。 アリさんは、日食の時に太陽と月が完全に重なるなどの観測から、 月や太陽までの距離や大きさの計算方法を編み出しました。 エラさんが井戸の底に光が当たる事から地球の大きさを導き出したので、 アリさんの計算方法で、地球と月と太陽のそれぞれの大きさと距離が判ってきました。 このアナさんたちの話は紀元前3世紀の頃の話です。 そんな昔にしてはかなりいいところまで行っています。 ちょっと話が前後しますが、紀元前5世紀に生きたピロラオスさんという人が、 地球が太陽の周りを回っているのであって、その逆ではないと主張しました。 このピロさんの説を推し進めたのが、紀元前4世紀のヘラクレイデスさん。 ヘラさんです。ヘラさんは頭がおかしい人と言われてしまいます。 このヘラさんの宇宙観に最後の仕上げをしたのが、 ヘラさんが死んだ年に生まれた、さきほどのアリさんなんです。 アリさんは、太陽のような自ら光る星は動かず、地球は太陽のまわりを回っているという 仮説を立てました。 でも人類は、このおおむね正しかったこの太陽系モデルを完全に捨て去ってしまいます。 再び地球が太陽の周りを周ると認めるまでに、 ここから1500年もの時間を待たなければならなくなるんです。 せっかくいい所まで行ったのに、どうして太陽中心モデルは捨てられ、 地球中心モデルになってしまったんでしょう。 せっかく幾人かの先人の考えの仕上げに、アリさんが太陽中心の宇宙モデルを まとめ上げたけれど、地球中心モデルが選ばれてしまいます。 聡明な古代ギリシア人たちは、アリさんの太陽中心モデルは三つの欠陥があったと 非難します。 第一に、もしも地球が動いているのなら、絶えず強風が吹きつけてくるはずだし、 足もとの地面が猛烈なスピードで動いているのなら、 我々はなぎ倒されるはずだと考えたんです。 でもそんな強い風は感じられないし、地面がぐいぐい動いている様子もありません。 説得力がありますね。 第二に、あらゆるものは宇宙の中心に向かい、地球は中心にあるのだから動かないという 説明がとても合理的だったんです。 リンゴが木から落ちて地球の中心に向かうのは宇宙の中心に引き寄せられているから という説明です。 もし太陽中心が正しいのなら、落ちるリンゴは太陽に向かうはずだという事になるんです。 これも説得力があります。 言い負かされそうです。(笑) 第三の理由は、これも手ごわいです。 地球が太陽の周りを周っているのなら、一年のうちには別の視点から星々を 見る事になるはずです。 地球の位置が変わるなら星の見え方も違ってくるはずで、 輝く星同士の位置関係も違って見えるはずです。 それなのに星同士の位置関係は1年を通しても変わりません。 もちろん星たちが近くにあれば、地球が動くと星は違って見えてきます。 実際は、ものすごく遠くにあるので変わらないんです。 古代ギリシア人たちの想像を超えるほどの遠い所に星があるので 地球が太陽の周りをまわったぐらいでは、星の位置関係はかわらないんですね。 でも、やっぱり太陽中心の宇宙観は「まったく馬鹿げている」という事だったんでしょう。 普通に暮らしていると、地球は動かず、その周りを太陽が周っているのはごく自然です。 太陽中心の宇宙観は、非常識だったんですね。 それにもし地球が動いているとすれば、すべてのものは後ろに取り残されて、 空中に浮かぶことになるだろう。という事になりました。 でもただひとつどうしても説明のつかない事がありました。 それは惑星の動き方です。 地球を中心に、惑星や太陽は綺麗な同心円を描いて周っているはずなのに、 火星と木星と土星が時々戻るような動き方をするんです。 地球中心説では、これの説明がつかないんですね。 惑星って惑う星って書くでしょ。 これは逆行する動きからきているんです。 この現象は、太陽のまわりを地球が回ってるから見かけ上そう見えるんですけどね。 ともあれ、これらの地球中心の宇宙観の考えをまとめて、 書物にしたのがプトレマイオスさんでした。 地球中心説でも結構それなりに説明の辻褄があったんですね。 真実に近づきながらも、惜しいところで真実から遠ざかってしまったんですけれど、 この流れはここで途絶えてしまいます。 科学的思考や観測から導き出される事はなくなってしまったんです。 そうして再び宇宙や太陽や月などすべてのものは、神話の世界に帰って行きました。 神様が創ったり、巨人が作ったりなどの世界観です。 そんな神話的世界観がその後1000年ほど続きます。 さて、1000年ほど時が経った頃、ようやくヨーロッパに古代ギリシアの知恵が 伝えられました。 スペインの王さまが、大きな図書館に世界中から書物を集めてその翻訳に熱心に なったのです。 それによってヨーロッパの学者たちは、古代の書物が読めるようになって 天文学の研究が活気づきました。 でも古代ギリシアの書物を敬う気持ちが強すぎて、 その内容に疑問を持つ者はいなかったんです。 そうしてプトレマイオスの地球中心モデルが翻訳されて、 そのまま地球中心モデルは4百年も生き延びていました。 でもその4百年の間、時々、あれ?少し変かもと、このプトレマイオスの地球中心説に 批判する人もいました。 12世紀に、観測結果と違うと納得しなかった学者がいました。 14世紀になると、地球中心モデルはきちんと証明されたものではないと、率直に言った 学者もいたけれど、間違っていると言うまでには至らなかったんです。 15世紀には、地球は宇宙の中心ではないかもしれないと言った学者もいましたけれど、 太陽中心とまでは言っていませんでした。 そして16世紀になってついに、古代ギリシアのプトレマイオスの地球中心説に 異議を唱える学者が現れました。 有名なコペルニクスです。 コペルニクスさんは、地球の中心は宇宙の中心ではない、太陽が中心である。 地球は回転しながら太陽の回りを回っている。 惑星が逆行するように見えるのは、動いている地球の上で観測するという我々の立場の せいである。と、言い切りました。 そして遠くの星の位置関係が変わらないのは、星ぼしが、ものすごく遠くにあるからと 説明しました。 おおおお、やっと真実を言い切ってくれる人が現れました。 でも、事は簡単には進みません。 当時もっとも力があったのカトリック教会です。 その教えにそぐわない思想は宗教裁判にかけられ、残酷な方法で殺されます。 コペルニクスもその事をおそれていました。 彼は自分の考えた宇宙観を「回転について」というタイトルの本にまとめました。 本が出版されたと同時にコペルニクスは亡くなってしまい、「回転について」の本は 売れ残り、出版から何十年もの間、人々から忘れられて消えていきました。 それとは対照的に、プトレマイオスの地球中心モデルの本は、百回ほども増刷されて 人々に読まれ続けていたのです。 地球が太陽の周りを周っている事になるのは、まだ時間が必要だったのです。 16世紀のデンマークの貴族にティコという人物がいます。 彼の本棚にはコペルニクスの本「回転について」がありました。 ティコは豊富な資金と最新の天文観測機器を使って、 膨大な観測データを蓄積していました。 そしてそのデータは数学者ケプラーに引き継がれます。 ケプラーの本棚にも「回転について」の本がありました。 ケプラーは、ティコの膨大な観測データを8年かけて読み解き、 コペルニクスの説の不備な点を補いました。 ケプラーは、惑星が完全な円を描いているのではなく わずかな楕円を描いて周っている事を突き止めたのです。 ケプラーはガリレオと文通していました。 そうあのガリレオ・ガリレイです。 ガリレオは望遠鏡を自分で作って、夜ごと観測をして、宇宙のまったく新しい発見を いくつもしていました。 このガリレオによって、紀元前のアリさん、そしてコペルニクス、ケプラーが 正しかった事を証明していきました。 そう、地球が太陽の周りを周っているって事をです。 そのガリレオもカトリック教会に迫害を受け「それでも地球は動く」とつぶやいたと 伝えられています。 ガリレオがつぶやいたのが17世紀です。 そうして18世紀になって、やっと太陽中心モデルは多くの天文学者に受け入れられて いきました。 私たちは今、巨大な望遠鏡ではるかかなたの星の様子を知る事もできます。 あちこちの惑星へ探査機を飛ばしています。 自由な発想で色々な仮説を立てることが出来ます。 それもこれも過去の偉人たちの「巨人の肩の上に次の巨人が立つ」ような、 知識のリレーが今の科学を支えている事に感動を覚えます。    * * * * *  * * * * *                                      この世界はどうなっているのだろう       ヒトは幾世代にも渡って空を見上げて       仕組みを解き明かそうとした       近づいては遠ざかる真実       横たわる迫害や追放と       認めない大きな力       時代時代に現れる天才たちの知識のリレーで       1500年以上もかけて       太陽の周りを地球が回っている事を証明した       この世界はどうなっているのだろう       紀元前の疑問から発した科学の視点       知識のリレーは、今も続いている ━■みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「1本の棒で地球の大きさを測る方法 と 天地明察」 メイン記事でも触れた紀元前3世紀ごろのエラトステネスさん(略してエラさん)が、 たった1本の棒で地球の大きさを測ったその方法が、あまりに美しいので紹介します。 中学生2年くらいの数学の知識で求められるんです。 使う図形の公式はこれ。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/era.htm#a 「平行な2直線に交わる直線が作る斜め向かいにできる2角、錯角は等しい」 これです。 エラさんはある時、エジプト南部の町シエネにある興味深い井戸の事を知ります。 この井戸は毎年6月21日、つまり夏至の日の正午になると、 太陽がこの井戸の真上から差し込み、井戸の底まで明るく照らすのです。 エラさんはちょうどその日その時間に、太陽がまっすぐ真上に来ているはずと気づきます。 シエネの町より数百km北にあるアレクサンドリアでは、そんな事は決して起きないんです。 シエネとアレクサンドリアで同時に太陽が真上に来ないのは、 この大地が球形をしているためだと気づいたエラさんは、 この事を利用して地球の周囲の長さを測れないものかと考えました。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/era.htm#b この図は6月21日の正午に太陽からの平行光線がシエネの井戸を底まで照らすとき、 エラさんはアレクサンドリアで棒を立てて、太陽光線とこの棒が作る角度を測ったんです。 ここで先ほどの「平行線に交わる直線の作る錯角は等しい」という定理が出てきます。 エラさんは、このアレクサンドリアの棒が作る影と棒の先を結ぶ角度を測りました。 この角度が7.2度とします。 ここで重要なのは、この角度がアレクサンドリアとシエネの井戸から 地球の中心に向かって引いた2つの半径が作る角度に等しいって事なんです。 次に、シエネにいる人が、アレクサンドリアに向かって真っ直ぐ歩こうと決めて、 そのまま地球を一周して再びシエネに戻るものとします。 この時、この人物は、地球に沿って360度を完走する事になります。 ここでシエネの井戸とアレクサンドリアと、地球の中心を結ぶ線の角度が7.2度とすると、 このシエネとアレクサンドリアの2地点を結ぶ距離は、地球の周囲の7.2/360です。 つまり50分の1という事です。 ここからの先の計算は簡単です。 エラさんがこの測ったシエネとアレクサンドリアの距離は 5000スタディオンとわかりました。 5000スタディオンが地球の長さの50分の1だから、 求める地球の周囲の長さは25万スタディオンって事です。 どうです? 素晴らしくないですか? あ、なんか騙されたような顔をしていますね。 スタディオンっていうのは、古代ギリシアで徒競走で使われる標準的な距離です。 1スタディオンは157m。 この数字を当てはめると、地球の周囲は3万9250kmとなります。 地球の周囲は4万mですので、誤差はわずかに2%です! 地球の周囲がわかれば、地球の直径がわかります。 地球の大きさがわかれば、月食のときの月にかかる地球の影の大きさから、 月の直径は地球の4分の1である事がわかっていたので、月の大きさがわかります。 月の大きさが判ってしまえば、エラさんにとって月のまで距離を求めるのは簡単でした。 そうして月の大きさと距離がわかるとそれをもとに、太陽の大きさと距離を求めたのです。 1本の棒と優秀な頭脳があれば、ここまで判ってしまうんですね。 紀元前3世紀頃のエラさんの話でした。 さて、話は日本の天文学に変わります。 「天地明察」という映画のDVDを100円でレンタル店で借りて見ました。 江戸の初期、四代将軍の頃の話。 算術や星の観測に熱中する主人公が、 800年もの間、国内で使用されてきた中国の唐から入ってきた暦のズレを正し、 日本独自の暦作りに専念した話です。 実在の人物安井算哲(やすい さんてつ)の半生を描いた映画。 これ見たかったんですよー。 やっとレンタル店で見つけました。 主人公の算哲は、今、大河ドラマ軍師官兵衛の主役をつとめる岡田准一くんです。 この話の山場のひとつに「三暦勝負」というものがあります。 当時使っていた暦である「宣明暦」と、明で使っている「大統暦」と、 元の時代に作られた「授時暦」。 この三つの暦の日食当ての正解を競う勝負です。 主人公算哲は、「授時暦」の正確さを主張します。 けれど暦の利権に絡む公家などの勢力が「授時暦」を拒むため、 庶民を巻き込んで勝負に出たのです。 結果は最後の最後で、「授時暦」が外してしまいます。 でもはずしたのはその最後の1回だけで、他の暦よりも精度は確かなのに 算哲は、窮地に追い込まれます。 なぜはずしたのか。 苦悩する算哲は、若き頃の徳川光圀公と関和孝に助けを求めます。 そう、若い頃の黄門さまの時代です。算哲は光圀公と交流があったのです。 関和孝という人の説明をするには、この時代の興味深い風習について 説明しなければなりません。 当時、人の集まる寺の境内などに、自作の算術の設問などを絵馬や紙などに書いて公開し、 設問を解けた人はそこに書き込むというような風習がありました。 算術を通して見知らぬ人との交流ができる場です。 これが庶民の趣味として成り立つって、凄いことです。 庶民の識字率の高さと知識に対する素直な向上心。 この時代、世界に類はないと思います。 そしてひとつの趣味を不特定多数の同好の士と共有する、まるで現在のネット交流のような 場ですね。 で、算哲はこの寺の絵馬の設問を解いたり、自分でも設問を出したりしていました。 そこでひときわ異彩を放っていたのが関和孝さんという人です。 その関さんは、算哲の三暦勝負で授時暦が日食予想をはずす事を予想していたんです。 暦作りは、観測と計算が命です。 関さんは計算の人で、算哲は計算と観測の人です。 後半、算哲は助けを求めるために初めて関さんを訪ねます。 もう!もっと早くから顔見知りになっておけよ!と言いたくなります。(笑) でも、早くに助けを求めたら、外すっていう事はわかっていても、 それが何故外すのかは判らなかったでしょう。 日本の観測結果からだけじゃ足りない、世界の観測結果が必要と気付いた算哲は、 光圀公から世界地図を借り受け、そこから地球儀を自作して、そして真実を突き止めます。 なぜあの時、最後の最後で日食を予言できなかったのか。 なぜその後、授時暦は一度も日食を外していないのか。 なぜ、あの時だけ。 その謎がわかったのです。 授時暦は、北京の緯度経度に合った暦なんです。 北京と江戸は経度が6度違います。 その誤差が、授時暦が100%に近いほどの精度を持ちながら、 たまに外すという事を突き止めました。 算哲は江戸の緯度経度にあった暦作りに没頭し、大和暦(やまとれき)を完成させます。 そうして今度こそ日食を外したら切腹という条件で、 日食を庶民に予告し公家に大和暦の確かさを突きつけるという、まぁ、簡単にまとめると そんな話です。 こうした先人たちの観察と計算と迫害の上に、現在の知識が成り立っているんですね。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★私は、このエラトステネス(エラさん)の1本の棒で地球の大きさを測った話を  知ってから、ずっと脳内で何回も何回も反芻してそのたびに感動していたんです。(笑)  もうこれは文章にして昇華するしか脳内リフレインを止める方法がないと。    実際はエラさんの幾何学の解釈や表記法は今日のものとは違ったから、  エラさんがまったく同じようにこの問題を考えたとは限らないらしいです。  このエラさんのアプローチを現代風に説明をしたものを今回紹介しています。  ラジオで言葉だけでこの方法を説明するのは無理です。  今回こうやってメルマガで、ページを作って図で説明できて  やっと脳内リフレインが止まります。良かった。(笑)  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/era.htm ★ちょうどこのエラさんの棒の話を知った頃、岡田准一くん演じる安井算哲の伝記  「天地明察」のDVDを見て、もう天体祭になったんですね。私の脳内が。  去年の12月の頃です。  冬は空気が澄んでいて月や星がよく見えます。  でもねー、札幌の冬の夜空は観察するには寒いんですよー。  私はいつも夜道を歩くときに、わぁ、綺麗〜。と上を見上げながら歩いています。 ★このエラさんの話は、宇宙創成(上)新潮文庫 著/サイモン・シン 訳/青木薫  この本を参考に書きました。 天の始まりの神話伝説から古代ギリシア人の宇宙の成り立ちの考えから始まって、 こうやってコペルニクスやガリレオからそうして、19世紀でニュートンが現れて  世界はニュートン力学で説明できると人々は思ったのです。  でもアインシュタインが登場して、世界はニュートン力学で説明できるような  単純なものではないらしいって事になります。  この本は上巻です。上巻はハップルまで続いています。  ハップル望遠鏡のハップルです。  上巻は「宇宙は永遠不滅」から「宇宙は膨張する」「ビックバンで始まる宇宙」  あたりも説明しています。   巨人の肩の上に乗る巨人たちの知識のリレーの話。  このあと下巻もあるようなんですけれど、  私には、上巻まででいっぱいいっぱいですね。  新潮文庫「天地創世(上)」とDVD「天地明察」は、ちょっとオススメです。   ★ラジオ山猫通信がリアルタイムで、  パソコン、スマートフォンから聴けるようになりました!  http://www.radiokaros.com/simulradio/  ↑ここがカロスのサイトの「インターネット放送聴取方法」のページです。  パソコンからスマートフォンから、カロスの放送を聞く方法が載っています。  http://www.simulradio.jp/  ↑ここがサイマルラジオのサイトです。  ここから全国のコミュニティーラジオが聞けるようになっています。    このサイトを開いたらちょっとスクロールすると「北海道」という場所があって  その下の方に「ラジオカロスサッポロ」という場所があります。  そこの「放送を聴く」をクリックするとメディアプレイヤーが立ち上がって、  リアルタイムに放送を聴くことが出来ます。  ラジオ山猫通信は、第一月曜日と第三月曜日の19:00〜19:30です。  明日19:00に「桃の不思議な力の話」が  リアルタイムで聞くことができます。  バックナンバーは、「やまねこ通信 E=MC二乗」のサイトの「ラジオ山猫通信」の  場所から、いつでも好きな回のお話を聴くことが出来ます。   ★今回のこの「地球が太陽の周りを回るまでの話」は、  ネットでいつでも好きな時に聞くことができます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ここの右側「ラジオ山猫通信」をクリックしてスクロールして  「地球が太陽の周りを回るまでの話」をクリックすると聞けます。  すぐに聞けない人は、じっと待ってみて。きっと聞けます。  http://crashlanding.under.jp/rajiyama0203.mp3  直接URLはここです。  今回の文は、おおむねラジオ原稿そのままです。  ラジオ用をメルマガ用に書き換えているけどね。 ★vol.194の書籍        宇宙創成(上)  新潮文庫 著/サイモン・シン 訳/青木薫 ★予告です。 3月3日放送「桃の不思議な力の話」(収録終わった)  (ネットにUP予定は3月17日) 4月7日放送「地殻の移動と生物の話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は4月21日) 4月21日放送「スズメの話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は5月5日) 5月5日放送「炭素が巡る ダイヤモンドの話」(書き終わった)  (ネットにUP予定は5月19日) 5月19日放送「物語の中の動物の話」(これから書く)  (ネットにUP予定は6月2日) ★ラジオ放送が月二回隔週であります。  最初はメルマガを元に原稿を書いてたけど、  今は、書き下ろし原稿です。  それをメルマガに転用するという逆転現象が  最近のメルマガ版「やまねこ通信 E=MC二乗」であります。 ★どうぞお時間のある時に「ラジオ山猫通信」も聞いてみてください。  5年目に突入の「ラジオ山猫通信」  どこまで続くんだ?  ここまで来たらいける所まで行ってしまえ!  最近は、トチらずスラスラよどみなくしゃべっているように聞こえます。  慣れてきたのです! ウソです。(笑)  編集で直して貰っているんです。 そのためずいぶん聞きやすくなっています。  決して私のしゃべりが上達したのではありません。  編集がうまくなったのです!(キッパリ) ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  私、みかりんのもうひとつのメールマガジン。  北の味覚。海産物。蟹おいしいよ〜。海水ウニもありますよー。  予算はこれくらい。食べる人数はこれくらい。と教えてくれたら、その中で  できる限りのご提案をします!山猫屋の蟹は冷凍物は扱っておりません!  さぁ、タラバ食べたいよう、毛ガニ食べたいようのメールをみかりんに書こう。  タラバも毛蟹も良いのが入荷してきています。  北の食材たちは脂が乗っておいしいです。  この機会に、どうぞ冷凍ではない蟹を!  ご贈答に、山猫屋の海産物を。 それじゃ、今回はここまで。 あなたのお便り待ってます。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今日は最高気温が3度もあった。 もう白のダウンのロングコートはいらないかもと思って、お風呂場で洗った。 すすぎは一緒に湯船に入った。 なんかダイオウイカとお風呂に入っている気分になった。(笑) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.194  2014年3月2日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さには  まったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。  それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━