2015/1/18━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.215 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 あけましておめでとうございます。 今年最初のやまねこ通信です。 本年もよろしくお願いします。 さて今年はヒツジ年です。 世界史は特にヨーロッパ史は、ヒツジ抜きでは語れません。 ヒツジで衣食住全部まかなえます。 広大なユーラシア大陸はヒツジ文化圏と言っても過言ではありません。 それは中央アジアから北アフリカ、西ヨーロッパ、ブリテン島のイギリスまで、 歴史が動いた時、その原動力はヒツジが作ってきました。 文化的にもキリスト教ではヒツジは重要な存在です。 でも日本にはもともとヒツジはいません。 それでも私たちが普段使う漢字には羊の文字が入ったものがずいぶんあったり 十二支の干支にはヒツジがちゃっかり入っていたりします。 人々の暮らしに深く入り込んでいるヒツジ。 今日は「ヒトの歴史を作ったヒツジの話」です。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■ヒトの歴史を作ったヒツジの話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 無駄なく全部利用する動物というと日本ではクジラです。 西洋ではヒツジがこれにあたります。 毛皮は衣服や絨毯に、皮や胃袋は水入れに、腸はソーセージの皮や楽器の弦に、 脳みそは煮込み料理に、乳は乳製品に。 テニスのラケットの弦をガットというんですけれど、 もとはその部分にヒツジの腸の筋を使ったんです。 ヒツジの腸をガットというんです。 ヒヅメを使った民族楽器もあります。 現代の楽器、ピアノにもフェルトが使われていますね。 フェルトは羊毛です。 ピアノってハンマーで弦を叩いて音を出す楽器です。 このハンマーがフェルトで覆われています。 ピアノって一番繊細な所にヒツジが活躍しているんです。 ウールのセーターや羊毛布団など、現在の生活でもさまざまな所にヒツジが入り込んでいます。 子どもの頃に読んだ子供向けの欧米の冒険小説に、時々見たことのないものが出てきました。 冒険に出かける前に台所にあった塩漬け肉を持っていく。 これには想像が膨らみました。 それから宝の地図。 これは羊皮紙に描かれています。 ヒツジの皮の紙と書いて羊皮紙。 水に濡れても大丈夫でなかなかのすぐれものっぽい印象でした。 調べてみると、羊皮紙の歴史は古くて古代の紙、パピルスが普及する以前から使われていて、 パピルスが普及してからも、その保存性のよさから再び羊皮紙に置き換わった地域も あったくらい使い勝手が良いものらしいです。 現在でも外交文書など特別に使われることがあるそうです。 条件が揃えば1000年以上の耐久性があるというんですから、 宝の地図に使われるのはうってつけなんですね。 冒頭でヒツジで衣食住をまかなうと言いました。 衣食はわかります。ヒツジの毛で着るものをまかない、肉は食べます。 乳は飲んだりチーズにしたり。では衣食住の住。 これはどういう事かというと、モンゴルの遊牧民の住居であるゲルってわかりますか? 木でできたフレームに、羊毛から作った大きなフェルトの布で壁や屋根を覆って 作られる住居です。 床には羊毛で織られた絨毯が敷きつめられます。 釘一本使わずに組み立てられて、中央アジアの真冬の厳しい寒さでも、 ゲルの中に入ってしまえば、ストーブひとつで快適に過ごせるんです。 キリスト教では迷える子羊という言葉を使いますね。 聖書には羊飼いが頻繁にでてきます。 中世以降のヨーロッパの人々の精神的な支えのかたわらにいつもヒツジがいただけではなくて、 ヨーロッパの歴史はヒツジが作ったと言って良いくらいヒツジと密接な関係にあります。 ルネッサンスも、コロンブスの新大陸発見もその影にはヒツジがいました。 ヒツジなくして西洋の歴史は語れないんです。 人とヒツジの関係は八千年ほど前からと言われています。 ギリシア人もローマ人もペルシャ人も、長くて丈夫でしなやかな毛を持つヒツジの品種改良に 努力していました。 そしてとても大きな帝国を作り上げたローマ人は、軍隊の後ろにヒツジの群れを従えて いたんですね。ローマ人によってヒツジは、北アフリカからイギリスがあるブリテン島を含む 全ヨーロッパに広がっていったんです。 ヒツジは、ローマ人とともに生息域が広がっていく過程で、 ローマのヒツジとアジアの一地方のヒツジが、 スペインの羊飼いによって交配されてできたのが、 最高品質の毛を持つ今のメリノ種のヒツジです。 このメリノ種のヒツジが世界史を動かしていきます。 スペインの国土は、ほとんどが高い山脈や広い高原や乾燥した草原です。 雨の量も少なくて農耕に適していない土地でした。 それに加えてしょっちゅう戦乱が起きて、 土地はどんどん荒れて農業がなかなかすすまなかったんです。 スペイン人は耕しても実り少ない土地を捨てて、 その代わりに多くのヒツジの群れを移動させながら、戦乱をさけて、 荒れた土地を移動する生活になっていきました。 ヒツジは荒れた土地の草でも十分に太ることができる動物なんです。 やがてスペイン全土は、ヒツジの放牧地になっていきました。 8世紀、イスラム人がスペインを征服します。 イスラム人たちは西アジアの羊毛生産技術と素晴らしい織物の技術を持っていました。 そこで織られたものは北アフリカ、エジプト、ギリシア、ビザンチン帝国などに輸出されて、 スペインはヒツジによってたちまち世界最大の国力を持つ国になっていきました。 14世紀になると、このイスラム人たちは異教徒という事で スペインの国土からすべて追放されてしまいます。 追放された異教徒たちは、みな羊毛生産加工技術を持っていた者たちだったので、 スペインは世界貿易の力を失っていきます。 それでもスペインはメリノ種のヒツジは手放さなかったんですね。 メリノ種のヒツジはスペインの唯一の財産だったんです。 たった1頭、国外に持ち出そうとしただけでも死刑になりました。 有名な「ドン・キホーテ」はこの頃のスペインの話です。 主人公は広大なスペインの原野に数え切れないほどのヒツジの群れを見て、 これを敵の大軍勢だと思い込んでしまいます。 そして勇敢にもこのヒツジの群れに、たったひとりで立ち向かって突撃するんです。 スペインの原野にはメリノ種のヒツジが溢れるほどに生存していたんです。 スペインはメリノ種のヒツジの独占生産から得られる富で、 衰退しつつあった国力を回復させていきました。 そして、世界の隅々にまで海を渡る者たちに、経済的に援助をしました。 その行為が世界各地にまたがる大スペイン帝国を樹立することになったのです。 コロンブスの遠征の経費もメリノ種の羊毛の輸出税の収入から捻出したものです。 コロンブスの遠征は大成功をおさめました。 アメリカ大陸の発見です。 ちなみにコロンブス自身も羊毛の織物師の息子でした。 でもこのメリノ種のヒツジの独占で優位になったポジションも永遠には続きません。 18世紀にフランス軍がスペインに攻め入ってきたときには、スペインは対抗できませんでした。 この時はじめてメリノ種のヒツジはスペインの国外に出ます。 そしてフランスのヒツジと交配させてランブイエ種という新種を生み出しました。 このヒツジがどんどん増えて、今でもフランスのヒツジの大半はランブイエ種です。 スペインはアメリカにもイングランドにもメリノ種のヒツジを売り渡すことになりました。 このヒツジによってイギリスは最高品質の羊毛を生産する工業国の国家となることが できたんです。 こうしてスペインは、イスラム人が入ってきた8世紀以降1000年以上に及ぶヒツジによる 独占的で優先的なポジションをついに失うことになったんです。  ヒツジの力はすごいですね。ヨーロッパの歴史の影にはいつもヒツジがいたのですね。 次に、ルネッサンスに至るまでのヒツジの力を簡単に説明しますね。 それではちょっと歴史を戻します。 スペインのメリノ種が入ってくる前のイングランドのヒツジも、 良質な羊毛を産出していました。 輸出先はイングランドの対岸のフランドル地方です。 フランドル地方は今で言うベルギー西部です。 この地には多くの河と海に接していて、世界貿易としての地の利があったんですね。 ヨーロッパ中の羊毛が集まって、織物となって、いくつもの国際的な取引の場として 定期的に市が立ちました。 エジプトやスコットランドからも大商人がやってきました。 そして多くの商業都市を生み出して発展していったんです。 イングランドは距離的にフランドルと近かったんで フランドルが栄えるとイングランドもゆっくりだけど確実に富を蓄えていきました。 13世紀以降のフランドル地方の羊毛加工生産は特に活気があって、 資本を投入すればそのお金を出した商人は莫大な富を得る事ができたんです。 だからよその国の商人たちがはるばるフランドル地方にやってきて 資本をどんどん投下したんですね。 羊毛バブルです。 この波に乗ったのがイタリアの商人たちです。 でも資本っていうのはすぐに底が尽きてしまいます。 それで、やむなく高利貸しからお金を借りてまで投資していったんです。 この高利貸し業はユダヤ人しか許されていませんでした。 ユダヤ人の金貸し業は、やがて銀行に発展していきます。 シェイクスピアの「ベニスの商人」はこの時代が背景にあるお話です。 このイタリアの商人たちは、新しい富裕階級を作り出しました。 この新しいブルジョアの人たちが大きな力を持って、 その富を背景に新しい時代、力強いルネッサンスの時代を切り開いていったんです。 ヒツジが銀行業を作り、ルネッサンス時代を切り開いた原動力になったのです。 このあたりのヨーロッパ史は、この短い紙面では語りつくせません。 でも、もうひとつだけ。 イギリスにもこの羊による改革の波は来ていて、多くの土地が牧場になりました。 今までたくさんの人がいた土地に、ひとりの牧夫と数頭の牧羊犬とたくさんのヒツジが いるだけになってしまったんです。 失業者たちの行き先は、ちょうどその頃発見されたアメリカ新大陸でした。 コロンブスが新大陸を発見する資金的な背景にも、 そして直接新大陸に渡る人々を作ったきっかけにも、そこにはヒツジの存在がありました。 ものすごく駆け足でヨーロッパ史を説明しました。 たぶんヨーロッパ史のどこを切り取っても底の方ではヒツジが関係しています。 世界の四大家畜はウシ、ウマ、ブタ、ヒツジです。 日本は、このヒツジについて最も関わりが少ない国でした。 確かに日本書紀などによれば西暦600年頃や800年頃に、 ヒツジだかヤギだかが異国から献上されている記録はあります。 でもヒツジは一般庶民には見ることもない縁のない動物でした。 中央アジアやヨーロッパの人々が羊毛文化でモコモコのフェルトにくるまれていた頃、 日本はずっと麻と絹と木綿の国だったんです。 推古天皇の日本書紀にヒツジがちょっと出てきてからそれ以後、 ヒツジに関する記録は江戸末期まで見当たりません。 文献どころか絵画や彫刻に残されたものもまず見ません。 でもこの日本文化の中で「ヒツジ」文化が受け入れられる素地がひとつだけありました。 それが十二支の中のヒツジです。未来の未の字をあてます。 中国から入ってきた十二支の概念を、日本はそのまま丸ごと受け入れて、 この未という字をヒツジと読んで、それを何百年も使い続けました。 ヒツジがどんな動物か判らないままにです。 他の十二支の動物はわかるんです。 十二支のうち鼠、牛、虎、兎、蛇、馬、猿、鶏、犬、猪の十種は日本人に馴染みのある動物で、 物語や絵画などで扱われています。 空想の動物の龍でさえも民話伝説絵画彫刻などに多く見られます。 日本人にとって、龍は馴染み深く身近に感じていました。 でも、この未と書いてヒツジと読ませる動物は、いったいどんな動物なのか、 ぼんやりとでも姿を浮かび上がらせることができない動物だったんですね。 ただ、ヤギは15世紀に中国や朝鮮から入ってきて、九州や沖縄で飼育されていました。 このヤギのツノを小さくしたもので、ヤギを大人しくしたものが たぶんヒツジという動物なんじゃないかと思いをめぐらすのが、精一杯だったようなのです。 江戸の中期、日本で最初のイラスト入りの大百科事典である「和漢三才図会」全百五巻の中に 羊の項目があります。 解説部分は中国の記述のままだし、イラストは、シカのような体に、ヤギヒゲを生やして、 曲がった角を持ったヤギにしか見えない動物が載っています。 江戸時代中期でヒツジはまだ現実の動物ではなく空想上の動物でした。 この百科事典のイラストに比べれば、紀元前のずっと昔の西アジアの名もない人々によって 描かれた、たとえば銀のお皿に入っているヒツジの模様や、 モザイクの床の飾り模様のヒツジの方が、ずっとはっきりとヤギとは違う優しいヒツジの姿を みることができます。 ヒツジは日本人には無縁の動物でした。 それでいながら未年、未の方角、未の刻など日常的に使っていてヒツジという言葉だけが、 日本人の日常生活のに息づいていたんです。 なんとも不思議なポジションです。 安土桃山時代の南蛮貿易の頃、舶来品として羊毛が入ってきています。 羅紗面といわれていました。 能の役者が緋色(赤い色です)に染めてその印象が強かったのです。 そして舶来品への想像が膨らんで、その赤は猩々緋(しょうじょうひ)といわれました。 猩々(しょうじょう)は中国の伝説上の動物です。 人の言葉を理解して酒を好む赤い色の毛の動物です。 二本足で歩きます。猿みたいです。 この舶来ものの羅紗面の赤は、猩々の血で染めたものだと人々が妄想して、 羊とはますますかけ離れたものになっていきました。 猩々緋の羅紗面は、信長や秀吉など名のある武将の陣羽織に仕立てられて愛用されました。 その後、江戸後期から明治にかけて、羊毛の毛織物がどんどん日本にも入ってきました。 一般人もこれらを着用するようになったのに、 それなのにどういうわけかそれがヒツジの毛から出来ているという紹介や解説が 抜けてしまっていて単にラシャとかラシャ面とか、 ラセイタ、セル、サージとしてしか呼ばなかったために、 明治期でもまだヒツジや羊毛の概念は置き去りにされているんです。 羊の毛織物は明治期には結構普及したんですよ。 軍人の制服にはサージの布地が使われ、初夏の頃の女性の装いとしてセルの着物が 季節感あふれる快適なものとして普及したのに、 全部羊毛なのにそういう感覚が全然ないんです。 その羊毛は、愛らしくて温和でモコモコふかふかのヒツジという動物から 生まれたものだという親近感や直感的な理解がまったくなかったんですね。 羅紗面のラシャはポルトガル語のラーシャが語源だと言われています。 でも羅紗には上等の薄織物(羅)、うすもの(紗)という意味しかなくて、 WOOL(ウール)とは結びついていないんです。 とても不思議な現象です。 日本にはヒツジと言う動物が身近にいなかったから。という理由しか考えられないんです。 日本最大のウールメーカーのニッケが設立したのが明治29年。西暦でいうと1896年です。 この繊維はヒツジなんだと日本人が本当に認識してから まだ100年ちょっとしか経っていないんです。 漢字には羊の字が入っている字がいくつもあります。 群れという字は右側が羊ですね。羊は群れでいる動物です。 養うという字は、上が羊で下に食べるという字で出来ています。 羊を食べて養うというんですから、これは牧羊で暮らしていた人々が作った文字ですね。 正義の義の字は所有権を現しています。羊という字の下に我という字です。 遊牧民は財産の羊をどれだけ多く我が物にしているかっていう所から来ています。 美しいという字は羊の下に大きいという字でできています。 大きな羊は美しく立派だったんですね。 ユーラシア大陸の人々になくてはならないヒツジのその影響の大きさは計り知れません。 羊と縁のない日本でさえも概念のヒツジと暮らす事になったくらいです。 羊という字の隣に羽という字を置くと翔くという字になります。 羊は人類と共にどんな未来へ翔くのでしょうか。    * * * * *  * * * * *                                                      初夏はヒツジの毛刈りの季節         そんなに丸裸にしなくてもというくらい刈り上げる         やさしいヒツジからやさしい毛織物がつくられる         暖かい衣服、暖かい絨毯、暖かい毛布         私たちはヒツジのやさしさにくるまれる         ヒツジ雲が浮かんでいる         ヒツジの皮をかぶったオオカミ         羊たちは沈黙し         アンドロイドは電気ヒツジの夢をみるのか         ヒツジが一匹 ヒツジが二匹 ヒツジが三匹         おやすみなさい 明日も良い日でありますように              ━■みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「ドゴン族のシリウス信仰」 前回配信したvol.214で、またまたやらかしてしまいました! しかもメイン記事でです。しかも2度目です。 前回と同じ読者の方に指摘されて気がつきました。 2014年最後のやまねこ通信を配信して数時間後に読者の少伯さんからメールがきました。   太陽を除いて全天一明るい恒星「シリウス」ですが  「おおいぬ座」の中にあるもので「おおぐま座」ではないです。 ちょうど1年前にも同じことがありました。 2013年最後のやまねこ通信を配信して数時間後に読者の少伯さんからメールがきました。   太陽を除いて全天一明るい恒星「シリウス」ですが  「おおいぬ座」の中にあるもので「おおぐま座」ではないです。 1年の最後の配信はここ数年、時間をテーマにしています。 だからシリウスとか太陽とかが出てくるんですね。 シリウスの説明として「全天で一番明るい」だけだとセーフなのに 星座を書いては失敗しているのが2年続いています。    またやった    じっと手を見る    反省す    シリウスは    おおいぬ座だよ    おぼえろよ    おおぐま座    北斗七星    尻尾だよ 思わず三句詠んでしまいました。 大いなる反省から、おおいぬ座シリウスについてお話します。 シリウスは「焼き焦がすもの」「光り輝くもの」という意味があります。 太陽を除けば地球上から見えるもっとも明る恒星です。(月は衛星ね) 星座に詳しくない人も、オリオン座は見つけやすいと思います。 オリオンの左肩のベテルギウスは、明らかに赤く輝いてるので見つけやすいです。 この星が今話題になっている超新星爆発を起こしちゃってるかもしれない星ですね。 ペテルギウスは地球から640光年の所にあるから、 私たちが爆発を知るのは640年かかるからです。 このベテルギウスと、こいぬ座のプロキオンと、私が何度も間違ったおおいぬ座の シリウスが作る三角形が「冬の大三角」と言われています。 ほとんど正三角形です。 1月の今なら南東の空です。 寒いけど澄んだ天気の日、夜空を見上げてみてください。 全天で一番明るいシリウスは目立ちます。 日本では「青星」や「おおぼし」と呼ばれていました。 中国では「天狼星」と呼ばれていました。 シリウスはひとつの星と考えられていたのですけれど 19世紀に連星である事がわかりました。 連星っていうのは、ふたつの恒星のペアが互いの重力の周りを運動している星のことです。 だからシリウスは、シリウスAとシリウスBがあります。 シリウスBは恒星の終末期の白色矮星(はくしょくわいせい)という事も判りました。 さて。 以上のことを踏まえた上で、話はこれからです。 1950年、ふたりのフランスの人類学者が西アフリカ・マリ共和国に住むドゴン族と生活を 共にし、ドゴン族は非常に詳しい天文学の知識を持っているという論文を発表しました。 その論文によるとドゴン族の伝承は驚くべきものでした。 ・ドゴン族はシリウスを信仰し、シリウスが伴星を持つことを知っている。 ・その公転周期が50年であることも知っている。 ・シリウスの伴星は白色矮星であることなどを知っている。 ・ドゴン族はその知識をシリウスから来た神に授けられ、古代から言い伝えられてきた。 これはどう考えたらいいのだろう。 シリウスの伴星とその周期が分かったのは1862年です。 シリウスBが白色矮星だということが分かったのは1915年です。 そのずっと前から言い伝えられていた…。 この謎を解く鍵として、有名な話があります。 1957年、ある医師がパプア・ニューギニアを訪れた時に、原住民に手厚い歓迎を受けたお礼に ロシア民謡の「黒いひとみ」を歌って聞かせました。 数年後、その医師がパプア・ニューギニアの違う地域を訪れた時に、 多少変調した「黒いひとみ」が原住民の間で歌われていることに気がつきます。 医師は原住民に聞きます。 「その歌は?」 若い原住民は答えます。 「先祖から受け継がれた古い歌さ」 「黒いひとみ」は既にこの地方の広い範囲で知られているようでした。 しかも古い歌として。 このパプア・ニューギニアの事例から、アフリカのドゴン族のシリウスの謎は 次ように考える事ができます。 二人の人類学者が現地に入る前に、シリウスの知識を持った宣教師か誰かが、 ドゴン族に、当時話題になっていたシリウスの話をしてしまったのではないか。 ということです。 そのシリウスの話が「黒いひとみ」と同じように、 原住民のなかで伝説となってしまったのではないか。 後から得た知識も、伝説の中に取り入れられて古くからの言い伝えや伝統になってしまう という例が示されたという事です。 これで解決…と言いたいところだったんだけど、後の調査でもっと詳しい事がわかりました。 ドゴン族と11年間一緒に暮らし、調査を行ったベルギーの人類学者が 「ドゴン族にシリウスに関する伝説などない」と1991年に人類学誌に報告しました。 他にも幾人もの学者が調査して同じ結論が発表されました。 ドゴン族のひとたちは、シリウスという明るい星の事は知っていたけど、 シリウスが連星であることや、公転周期の話、シリウスBが白色矮星であることは、 全く知らなかったというんですね。 つまり、最初にドゴン族の伝説の話を発表した二人の人類学者によるデッチ上げ だったというのがこの話の顛末です。 この年末年始の時間のある時に、私はやまねこ関連以外の本を読む時間が持てました。 手に取ったのは「後巷説百物語(のちのこうせつひゃくものがたり)」。 京極夏彦の分厚い本ですけど一応短編の形を取っているので、 他の京極本より読みやすかったです。 このドゴン族の話が、妙に「後巷説百物語」のテーマに重なったんです。 テーマは「世に不思議なし、世すべて不思議あり」です。 怪異、呪い、伝承、妖怪、迷信、魑魅魍魎の跋扈するように見える事柄も、 種を明かせば人の手によるものだと判明して、視界がサァッとひらけるような話でした。 ドゴン族のシリウス信仰の謎も、人の功名心が作り上げたもの。 世の不思議と言い伝えられている事にはちゃんと理由があるし、 だいたいは人がやったことだったりするんですね。 または、わざわざ怪異のように見たい人の心があるんですね。 でも時々、それだけでもない事が混ざっているのから、だから色々面白いのです。 世に不思議なし、世すべて不思議あり。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★シリウスは「おおいぬ座」です!  これだけ書けば、さすがの私も覚えるだろう。  あまりに恥ずかしいので、HPの方はこっそり直しておきました。  また内容に間違いがありましたら、どうぞご指摘ください。  ちょこちょことした間違いにはだいたい気づいています。  でも今回のような間違いはナシです。  申し訳ございません。  少伯さん、ご指摘ありがとうございました。 ★ラジオ山猫通信がリアルタイムで、  パソコン、スマートフォンから聴けるようになりました!  http://www.radiokaros.com/simulradio/  ↑ここがカロスのサイトの「インターネット放送聴取方法」のページです。  パソコンからスマートフォンから、カロスの放送を聞く方法が載っています。  http://www.simulradio.jp/  ↑ここがサイマルラジオのサイトです。  ここから全国のコミュニティーラジオが聞けるようになっています。    このサイトを開いたらちょっとスクロールすると「北海道」という場所があって  その下の方に「ラジオカロスサッポロ」という場所があります。  そこの「放送を聴く」をクリックするとメディアプレイヤーが立ち上がって、  リアルタイムに放送を聴くことが出来ます。  サイマルラジオは数分時間がズレて聞こえることがよくあります。  ラジオ山猫通信は、第一月曜日と第三月曜日の19:00〜19:30です。  来週というか新年1/5の19:00に「ヒトの歴史を作ったヒツジの話」が  リアルタイムで聞くことができます。  バックナンバーは、「やまねこ通信 E=MC二乗」のサイトの「ラジオ山猫通信」の  場所から、いつでも好きな回のお話を聴くことが出来ます。   ★今回のこの「見える空間、見えない時間の話」は、  ネットでいつでも好きな時に聞くことができます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ここの右側「ラジオ山猫通信」をクリックしてスクロールして  「見える空間、見えない時間の話」をクリックすると聞けます。  すぐに聞けない人は、じっと待ってみて。きっと聞けます。  http://crashlanding.under.jp/rajiyama1215.mp3  直接URLはここです。  今回の文は、おおむねラジオ原稿そのままです。  ラジオ用原稿をメルマガ用に書き換えているけどね。 ★vol.215の参考書籍&参考サイト       羊毛文化物語 著/山根章弘 講談社学術文庫 羊に纏わる歴史について       http://www.jazga.or.jp/tennoji/nakigoe/2003/01/hituji01.html           羊の話       http://charomen.com/sheep/sheep_top.html       めん羊とは大昔から友だちだった       http://zookan.lin.gr.jp/kototen/menyou/m04.htm       ドゴン族のシリウス神話       http://www.nazotoki.com/dogon.html               シリウス       http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9     ★予告です。 1月19日放送「魚は痛みを感じるかの話」  (ネットにUP予定は2月1日)(収録終わった) 2月2日放送「健気な外来動物の話」  (ネットにUP予定は2月15日)(書き終わった) 2月16日放送「火山とアトランティスの話」  (ネットにUP予定は3月1日)(書き終わった) 3月2日放送「石油の怪しい話」  (ネットにUP予定は3月15日)(書き終わった) 3月16日放送「火星の風景の話」  (ネットにUP予定は4月5日)(書き終わった) ★ラジオ放送が月二回隔週であります。  最初はメルマガを元に原稿を書いてたけど、  今は、書き下ろし原稿です。  それをメルマガに転用するという逆転現象が  最近のメルマガ版「やまねこ通信 E=MC二乗」であります。 ★どうぞお時間のある時に「ラジオ山猫通信」も聞いてみてください。  2009年9月から始まった「ラジオ山猫通信」  どこまで続くんだ?  ここまで来たらいける所まで行ってしまえ!  最近は、トチらずスラスラよどみなくしゃべっているように聞こえます。  慣れてきたのです! ウソです。(笑)  編集で直して貰っているんです。 そのためずいぶん聞きやすくなっています。  決して私のしゃべりが上達したのではありません。  編集がうまくなったのです!(キッパリ) ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  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