2001/5/11━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆        週刊 やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.22 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 「雪月花」という言葉があるようです。 雪と月。月と花。どちらも素敵な組み合わせだけれど、この3つを同時に楽しむ事は できないよ。良いことが全て一度に揃うことはないよ。という言葉だそうです。 今夜は、散り行く桜の花びらを拾って、月に透かして見てみましょうか。 新しく登録して下さった人、はじめまして。 バックナンバーがあるので、ここ↓チェックしてみてね。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ━■タガの話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 生物にはタガがはまっている。 生物はみな爆発的な繁殖力を持ちながら、そこに四重、五重のタガがはめらているこ とによって、適正生息密度を保っている。時々メカニズムが狂ってタガの一本か二本 が外れてしまうことがある。すると大発生という現象が起こる。しかしその状態は長 く続かない。他のタガが強力に効いてきて大量死が起こり、増加が止まる。 ヒトの歴史は、ずっと昔から人口調節のタガを外してきた歴史だ。そのたびに人口は 爆発している。 初めの爆発は、火の使用と衣服・住居の発明。次の小爆発は農業の発明。採取狩猟生 活では一平方キロに5人くらいまでしか養えないけれど農業はその数十倍を養える。 次の爆発は輸送の開発。食料を多いところから少ないところへ。これが大都市を生 む。そして産業革命。 もうひとつのタガ外しは、ヒトの天敵(病原体)を撲滅する姿勢。抗生物質の利用 だ。 こうしてヒトの歴史は、自然のメカニズムを無視して、人口爆発のタガを外してき た。 動物が大発生したとき、食料リミットなど外的条件の制約が来る前に、密度によるス トレス過剰で狂気の行動に走り、変死してしまうことが多い。人間は違うと言えるの だろうか? 突如原因不明の大量死したシカを解剖してみると副腎が極端に肥大してたという。 異常行動したネズミを解剖しても副腎が疲弊していたという。 トレンビーの考察というものがある。 「あらゆる文明は外からの攻撃ではなく、内部からの崩壊によって破滅する」という ものだ。 もし、あらゆる病気を撲滅し、食糧問題を解決したなら、次は、もっと強力な凄い タガがかかってきて、その時人類は……。 ━■動物行動学からの性♂♀の話 (20)━━━━━━━━━━━━━━━━ 「動物としてのヒトは本当の所、一夫一婦制なのだろうか?」 一夫多妻のハーレム型形態を持つ動物は、雄雌の体格差が激しい。ゴリラ、オラン ウータン、ゾウアザラシなど。 ヒトは男女の体格差はあるものの、性差はそれ程激しくはない。 チンパンジーの雄と雌の体の大きさを比較してみると、雄の方が大きいけれどそれ程 の性差もない。 チンパンジーの婚姻形態は乱婚制をとっていて、複数のオスと複数のメス、そして子 どもたちからなる数十頭〜百頭くらいの集団で暮らしている。 オスとメスは特定の関係というものはなく、メスは発情すると「来る者は拒まず」 で、どんどんオスを受け入れる。 それは精子競争(スパーム・コンペティション)が激しいということなんだ。メスの 体内での他のオスの精子間の競争だね。 ゴリラのようなハーレム型というのは、強いオスが多数のメスを独り占めしているよ うで羨ましいと思う向きもあるかもしれないけれど、オスは四六時中気が休まること なく、他のオスから、ハレムの防衛に気を配っている。 オランウータンは、一頭の優位オスがある一定の地域を支配し、その中の数頭のメス とその子どもたちが暮らしている。 けれど彼らの行動は母子を別にすれば基本的に単独。優位オスとメスはおよそ一ヶ月 をサイクルとするメスの月経周期のうち、発情した数日間を共に過ごすだけ。あとは 単独なんだ。 発情していない期間はガードしない。だからその間隙をついて縄張りを持たない渡り 者のオスが、嫌がるメスに交尾を強要する事がある。ゴリラのハレム型とはちょっと 違うんだ。 ヒトとオランウータンは、チンパンジーのような乱婚的なものではないし、ゴリラの ようなハーレム型でもない。 ヒトは、一夫一婦制、あるいは一夫多妻の婚姻形態をもっており、(マレに母系社会 の形を取ることもある)男と女に認められた特定の関係があるけど、その一方で、 しばしばイレギュラーな関係というものも存在する。 ヒトにしてもオランウータンにしても、オスとメスに一定の関係がありながら他方で はそうでない部分が存在する。そこにチンパンジーほどではないけれど精子競争が発 生するんだ。 ここでは大型類人猿三種、つまりチンパンジー、オランウータン、ゴリラ、とヒトを 比較してみよう。         体重kg   睾丸g   睾丸体重比   精子数 チンパンジー  44.3 118.8 0.27% 6億 300万 ヒト      65.7 40.5  0.06% 2億5300万 オランウータン 74.6    35.3   0.05% 6700万   ゴリラ     169.0 29.6 0.02% 5100万 チンパンジーが他を圧し、ゴリラが控えめなのは、チンパンジーは乱婚制をとってい る事に関係あるし、ゴリラはハーレム維持のために防衛に精子競争ではなく腕力を もって防衛するからだろう。ゴリラは睾丸を発達させるのではなく、体を発達させた と言えるんだ。 ヒトは、チンパンジーとゴリラと中間型だということが判る。でもはるかに乱婚の チンパンジー寄りだ。 それはオランウータンのレイプは稀で、非排卵期に行われるのに対して、ヒトの浮気 は、排卵期、非排卵期を問わずに行われる。いやむしろ排卵期にこそかもしれない。 そういうチンパンジー的な部分をこの数字が現しているのかもしれない。                        (データはA・H・ハーコート) ━●みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「私のオリジナリティー」 私はずっと生きてきて、私の好みや、私らしさや、より私っぽいという事を、私が 自分で選択獲得してきたものとずっと信じていた。 ある時、この確信が揺らいだのである。私って……? 何? 私が育った家庭は、子ども達は親戚の行き来をしないというやり方(?)だっ た……。 (親レベルでは行き来はしていた) したがってイトコという存在はいるという事は知っていたが、交流はなかったのであ る。 大人になって、私の父の兄の子どもという私より数歳年上の男のイトコと、小一時間 ばかりふたりで話す機会があった。 そのイトコは姉三人がいる末っ子である。 そのイトコと向かい合った瞬間に、まず初対面の感じはしなかった。(厳密に言うと 完全な初対面ではない、幼い頃、何度かちらっと見かけたことはある) イトコは私よりだいぶ年上である。私は、第一印象でまずその顔に私の弟の面影を見 つけていた。そしてその小一時間というもの私はそのイトコ相手にほとんど独演会の ごとくにしゃべり倒したのである。 何を話したかは覚えていない。(笑) そして一通りしゃべり終えて満足し、良い時間となった時、イトコが言った言葉が忘 れられないんだ。 「なんか姉ちゃんと話しているみたいだ……。話し方だけでなく内容も……。」 そのイトコの三人の姉。私にとってそれらもイトコという関係である。会ったことは ない。少なくとも記憶にない。 私には、その人たちの影響がないのである。私はその時、十分に大人だったし、話し のネタは私が自分で考え組み立てたものだし、それは完全に私のオリジナルでそうい うもの含めて、すべて私が長年積み上げてきた私のオリジナリティーなのである。 それが……会ったことのないイトコに似てる? 話し方も? 内容も? 遺伝子DNAが私の好みを決めたのであろうか? 私が私の好きな物を自分でみつけて蓄積したのが私であると。それが私のオリジナリ ティーと信じていたのに。 私はDNAの作用で私の好みが決められていたのであろうか。 アイデンティティーが揺らいだ瞬間である。 ━▲やまねこ投書箱━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [ユタ]  「江戸の色事」とても面白く読ませていただきました。  私が面白いと思うのは、男女の比率に関しての話です。  「結局私たちは、無意識に生きているじゃないか」というのが一つ。  それと雄・雌の比率によって求愛形態が違ってしまうこと。  これはとても興味あることです。  昨日も「動物奇想天外」というTV番組でトンボの、ある交尾の方法を紹介していま  した。それは雄がメスに逃げられないように、おいしい物をご馳走してその間に  他の雄の精子を掻きだして自分のをしっかりと済ます。といったものでした。  問題にしたいのは求愛行動が多種多様になるまえ、もっとずっと手前では、生殖方  法の進化は環境に対してメスが先に変化することで変化したのかその逆か、同時か  についてです。  私はメスが先のような気がするのですが。  メスの体で次の環境変化を予測してインプットされてきたのが基本だろうと思うの  です。何故かと言うと雄も雌もメスの腹の中から生まれるのが基本だからです。 ----------------------- そう。問題提起したいのは、そこなんです。男尊女卑の顕著な風土であっても男女比 のアンバランスが介在すると、あそこまで文化として昇華されてしまう。 無意識というのとは、ちょっとイメージが違うのだけれど、意識的ではないし、個人 の選択でもないし、生物としての種のたくましさとか幅の広さとか条件によっては 色々な広がりを見せるのだなぁと思うのです。 エサを差し出している内に交尾という方法では、カマキリなんか顕著だよね。 どうかするとオスは自分自身の体を餌として提供しながらでも交尾い至るという必死 の作戦を取ることもあるんだから。 私が興味を持ったのは、「ヒトの婚姻形態は、一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫、乱 婚、動物学的にみてどれに相当するのだろう?」という事なんです。 「江戸の色事」はその前段階だったんです。男女比のアンバランスで、日本の、 しかもあの江戸時代にさえ(だからこそなんだけれど)一夫一妻とはまったく違う 習慣が定着することが出来る“動物としてのヒト”を紹介して、まず先入観という のを壊しておきたかったんです。 生物は、子孫を増やすということに関して実にどん欲で創意工夫をしています。 環境が変わったから「どうれ、それじゃぁ」なんて悠長なことをしていないと思いま す。 強い子孫を残す事、そのために有利なオスとつがうこと。そのための戦略は常に取っ ているのだと思うのです。 その選択が正しかった場合、その戦略を採用した個体の子孫がその形質を受け継いで その形質を持つ者が繁栄します。 その創意工夫やオスの選択は常にメスがしていると思うのです。 オスは何も考えていなくて「多くのメスと」この一点だけなんじゃないかと。(笑) ----------------------- [和尚]  今では結婚すると嫁さんの実家に近いところに住み、おとなしく働いている男性が  多くなりました。  私も嫁さんの実家の土地に2世帯住宅を作って住んでいますが、子供も私もめった  に1階の方にはいきません。  不思議な世界を作ってしまいました。 ----------------------- 和尚さんの投書は興味深く読みました。 「子供も私もめったに1階の方にはいきません。不思議な世界を作ってしまいまし た。」←特にここ。 確かにね、こういう形態は現在は多そうだし、過去にはあまりなかったかもしれな い。この例も外的要因条件によって作られたひとつの形なんだろう。だから現代を代 表するひとつの形なんだと思う。 土地を手に入れるのが難しい環境。そして大勢で協力し合わなくても暮らせる環境。 そういう現代的な条件が作りだした世界なんだと思う。 ちょっと話しがズレるけれど、家族で協力して農業を営んでいる家庭の夫婦は年を経 ても仲が良い組み合わせが多いように思う。農村部の熟年離婚は都市部に比べて圧倒 的に少ないのではないかな。(調べていないから分からないけれど) 男女の組み合わせでの性格の不一致率というものが、都市部と農村部に違いがあると は思われないから、外的要因が大きいんだと思う。 大きな要因としてすぐ思いつくのが「困難さ」。困難を克服するのに協力しなければ 克服できない環境だとおのずと結束は固くなる。 結束を強固にするものは、「共に楽しむ」よりも「共に困難に立ち向かう」方が強い のだろう。 だから都市部の組み合わせは薄弱なんだな。 どうもね、最近思うのだけれど「叫び」にも書いたように、自分というものは、環境 やDNAレベルで出来上がっているものであり、自分自身がどこまでなものか、「オリ ジナリティーやアイデンティティーがある」というのは幻想なのか。ちょっと自分に 懐疑的です。 そして思うのは、ヒトという動物は、いろいろだよなぁ。と。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★「動物行動学からの性♂♀の話」20話まで来て、やっと私が書きたかった事の ひとつまで話が進んだ。 この事を書いてみたかったんだ。 ヒトのあるべき形態とはどんなものなんだろう? 絶対に一夫一婦制である。と決め てかかるにはどうも例外が多すぎるように思うし、宗教や道徳や風習などで規律を決 めているけれど、逆に言えば、規律で縛らなければぐちゃぐちゃになってしまうとい う面も持っているようだ。 前回、男女の比率が極端にアンバランスになってしまった江戸の庶民の性文化の話し を紹介した。状況によっては、ああいう事も文化として成熟してしまう面も持ってい る動物としてのヒト。 かなり融通のきく動物なのだ。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。 ★メルマガ相互宣伝です!  バックナンバーを読んでみて、気に入ったら購読すると良いよ。 それじゃ、今週はここまで。 あなたのお便り待ってるよ。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 向かい風の強風の中を飛ぶカラス。 空中で止まっているようだ。 そのなかなか進まない姿を見つけて笑う私。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○週刊 やまねこ通信E=MC二乗 vol.22  2001年5月11日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: ◆インターネットの本屋さん「まぐまぐ」 http://www.mag2.com/ ◆メルマガ発行サービス「メルマガ天国」 http://melten.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○週刊やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さに はまったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。 それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━