2015/7/19━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.227 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 北海道は夏本番を迎えました。夏のイベントと言うと花火がありますね。 私は人ごみが苦手なので見に行くことはまずにありません。 花火って光に目を奪われがちですけど、醍醐味は音にあるんじゃないかと思っています。 ひゅぅぅぅ〜どどんん!ぱちぱちぱち。 こういう花火のCDがあったら大音響でかけたいです。 夏の光といえばホタルもいますね。 私が住んでいる所でもそろそろ見る事ができます。 ホタルは幼虫時代はカワニナという貝を食べます。 6月ごろ川をのぞくとカワニナをみつけることができます。 そして7月に入って蒸し暑い夜にホタルの乱舞です。 ホタルが光らなかったら…たぶん話題にもならず 保護もされなかっただろうな。 今日は、ある生き物を優先的に保護するってどういうこと? という疑問をぶつけていきます。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■保護の罪の話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ やまねこ通信vol.224の「食う食われるの話」の中でこんな話を紹介しました。 特別天然記念物のトキが手厚い保護を受けて佐渡の島の自然に放された後、 トキは自然の中で何を食べているか観察した結果、黄色い珍しいカエルを食べていました。 そのカエルを調べたら新種のカエルだったという話。 私ね、この話をとても興味深く思ったんです。 希少種が希少種を食べる現実。 つくづく自然は人間の思い通りにはならないなとも思ったし、 そもそも希少種の保護ってどういう意味があるんだろうと疑問を持ったんです。 「希少種は保護しなければならない。  何故なら全滅させたら二度とこの地球上にはいなくなるのだし、  そもそもすべての命は何百万年何千万年の命を繋いで今ここにいるのだから」 この理屈に異議を唱える者などいるわけがない。という事なんでしょう。 多くの人がそう思っているし、私もそう思っていました。 でもね、私はこの希少種が希少種を食べる話を知った時から なんとなく心にもやもやしたものを抱えるようになったのです。 今日はそのもやもやをお話してみます。 うまく説明できるでしょうか。 長野県でのことです。 山間部にニホンジカが増えて農作物への被害が多くなってきました。 そこで多額の費用をかけて防護柵を作って農地にシカが入れないようにしたんです。 するとシカは別の所に進出しました。 南アルプスでシカが増えて高山植物のお花畑を食い荒らして 貴重な植物が減ってしまったんです。 山には高山にしか咲かない小さな花をつける植物があります。 条件が揃えば色とりどりの小さな花が群生地を作ってその景観はお花畑と呼ばれます。 頑張って登った人しか見る事の出来ない山のお花畑です。 このお花畑を見る事が登山の目的になっている人もたくさんいます。 もちろん採掘は禁止されていてとっていいのは写真だけ。 残していいのは思い出だけ。と、どこの山でも保護されています。 農地を追われたシカが、南アルプスのお花畑のミヤマキンポウゲやホソバトリカブトを 食べてしまっているんです。 ミヤマキンポウゲは小さい黄色い五枚の花びらをつけた可愛らしい花です。 ホソバトリカブトは小さな烏帽子状の青い花をつけます。 どちらも北海道の山でも見る事ができます。 シカはこの綺麗な花を咲かせる貴重な高山植物を食べてしまって、 お花畑だった所はシカが食べないマルバダケブキやバイケイソウばかりになりました。 マルバダケブキはフキのような丸い葉っぱをつけるけれどキク科の植物で 菊っぽい花が咲きます。 バイケイソウはかつては殺虫剤として利用された事もあるちょっと毒性のある植物です。 シカが嫌うのもわかります。 そこでシカを捕獲して数を減らす取り組みが行われています。 そう、もともとは農作物を荒らすから防護柵をという所から始まったんですから、 シカの数をコントロールできればいいですよね。 この話は、シカが南アルプスの高山植物の群生地、お花畑を食い荒らして、 そのあとにシカが好まないマルダケブキとバイケイソウが増えたという話です。 そういうふうに聞くと、マルダケブキは悪条件でもしぶとく生きて、 綺麗な花をつけるミヤマキンポウゲやホソバトリカブトは環境変化に弱い可憐な植物っていう イメージです。 そしてこの可憐な植物は人の手で保護しなければ!っていう流れになりがちです。 私がもやもやするのはこのあたりなんです。 ええと、ややこしいのでミヤマキンポウゲとホソバトリカブトのコンビを代表して ミヤマキンポウゲとします。 マルバダケブキとバイケイソウのコンビの代表をマルバダケブキにしますね。 代表者を決めないと、植物の名前ばかり言って何言ってるか判らなくなるんで。 話を続けます。 落ち着いてよく考えると、マルバダケブキは、シカがお花畑を荒らすとすぐにそのあとに 進出してきているんです。 という事はマルバさんはこの地に侵入する能力はあるんです。 でもシカがやってくる前はミヤマキンポウゲのたちがこの地を優先しています。 マルバさんたちはミヤマさんたちとの競争に負けているんです。 強くてたくましいのは可憐な花をつけるミヤマさんたちであって、 マルバさんたちはお花畑の片隅でじっと競争に耐えながら細々と暮らしていたんです。 ミヤマさんたちは、人が手を差し伸べて保護してあげなければ 生きていけない可憐な存在ではなかったんです。 シカがミヤマキンポウゲを荒らして南アルプスのお花畑がマルバダケブキだらけになってると 問題になったのが2008年。 その後の2011年にはマルバダケブキを刈り取るとミヤマキンポウゲのお花畑が 復活することを実証したと信濃大学の研究チームが発表しています。 なんかもやもやしませんか? それでは次はクジラの話をします。 クジラと一口に言っても80種類くらいいます。 大きさもシロナガスクジラのように大型のもからミンククジラのように小型のまで、 さまざまな種類のものがいます。 南極海では昔は大型のシロナスガスクジラがとても多くて その数はミンククジラよりも多かったようです。 シロナガスクジラは動物プランクトンのオキアミを食べています。   ちょっと話はソレるけど、現在世界で一番大きい動物のシロナガスクジラが オキアミを主食としているって子ども時知って驚きました。 シロナガスクジラは長さ30m以上重さ100トン以上です。 この世界一の巨体を小さなオキアミで維持しているなんて。 それもシロナガスクジラは一匹しかいないのではなくたくさんいるんですよ。 それらが全部からだが大きくて全部オキアミを主食にしてるんです。 海ってオキアミが無限増殖して沸くのか。 オキアミすごい、海すごいって思ったものです。 一方、小型のミンククジラはオキアミはちょっとは食べますが、 おもに魚やイカを食べます。 シロナガスクジラは巨大で高速で泳ぐことから捕まえるのが大変で、 古くは捕鯨の対象にはならないものでした。 元々個体数は30万頭ほどいたとされています。 でも19世紀以降、大型で高速な捕鯨船や、爆発して飛び出す仕組みのモリが発明されて 近代捕鯨が始まってからは捕鯨対象になり、 シロナガスクジラは急激に数を減らしていきました。 シロナガスクジラは大きいので1頭あたりの鯨油生産効率がいいので 捕獲が集中したんですね。 1960年代にシロナガスクジラの捕鯨は世界中で完全に禁止された時には 700頭まで減ったとされています。 その後もなかなか個体数は回復しなくて、近年やっと少しずつ回復してるといわれています。 シロナガスクジラが減ると小型のミンククジラが増えてきました。 しかも近頃のミンククジラは以前に比べて魚よりもオキアミの方を食べているんです。 という事は、シロナガスクジラとミンククジラの間には、オキアミを巡る競争があって、 この競争ではシロナガスクジラの方が優勢だったんですね。 ミンククジラはオキアミが食べたかったんだけど、 しかたなく捕まえにくい魚を追いかけていたんです。 シロナガスクジラが数を減らしたために、 ミンククジラはオキアミを十分に食べる事ができるようになって数を増やしていったと 考えることができます。 今、日本は調査捕鯨をおこなっていて一部の人たちに非難されています。 でも調査は必要だと思うんですよ。 たとえば捕鯨が完全に禁止されたとします。 するとたとえ時間がかかっても数は増えます。 するとオキアミが減ります。 オキアミが食べられなくなったクジラは魚を食べます。 すると人間の利用する漁獲高にも影響がでてきます。 実際に太平洋沿岸でそこに棲息するミンククジラが食べるカタクチイワシやサンマの量は、 人間による漁獲高を超えているという調査発表もあります。 いや、だからミンククジラを捕鯨対象にしようという事を言ってるのではありません。 ざっとかなり大雑把に単純化して説明したけれど、 生態系はさまざまな生物が複雑な関係を保ちながら個体数のバランスを保っています。 海は陸よりも見えづらいので海洋生態系をヒトが明らかにする事など難しいでしょう。 海の生態系のバランスの中には漁業活動をしている人間も入っています。 クジラが賢いから可哀相だからというよくわからない理由で保護するのが変なんです。 高山植物が可憐で保護欲をそそるから保護しようというのと似ていると思うんです。 人がある生き物を選別して保護する事にもやもやしているんです。 それって本当にいいことなの? ヒトが自然の生態系のバランスを保ってやってるっていう上から目線って もしかしたら大いなる誤解と勘違いと思い込みの産物ではないのかっていうのが、 冒頭に言った私のもやもやしたものです。 ユスリカという蚊の仲間がいます。 湖や池や川の近くでよく見られます。 蚊にそっくりだけど、人を刺すことはありません。 だってユスリカの成虫には口がないんです。 幼虫時代は水の中で暮らしています。 多くのユスリカの幼虫は数ミリ程度だけど、 種類によっては大きなものもいて1.5cmの大きさの幼虫もいます。 こういう大きいユスリカは長野県の諏訪湖や茨城県の霞ヶ浦など、 浅くて水質汚濁問題を抱えている湖に多いです。 時に大発生します。 諏訪湖では4月と6月と8月頃に大型のユスリカが発生します。 湖の底で暮らしていた幼虫がサナギになって 水面に浮かび上がって背中が割れて成虫が誕生します。 成虫は岸辺の木の近くで蚊柱を作ります。 蚊柱というのは蚊の群れです。 遠くから見ると黒い煙のようにも見えます。 この蚊柱でメスは相手を見つけて交尾をします。 交尾後メスは水面に飛んでいって卵を産みその後息絶えて死んで魚のエサになります。 卵は湖の底に沈んでいってしばらくすると幼虫が生まれます。 幼虫の餌は植物プランクトンです。 ユスリカが大発生するのは、浅い汚れた湖で餌が多いからです。 ユスリカは人を刺すことはないけど、湖の近くに住む人には迷惑害虫扱いされています。 蚊柱を作るときに近くの家の壁に止まるとかなり汚く汚れたように見えるし、 外に干した洗濯物にも止まります。 手で叩き落とすとユスリカの体は壊れて洗ったばかりの洗濯物は汚れてしまいます。 湖畔の温泉街では窓を開けているとユスリカが入ってきます。 ホテルでは「ユスリカ発生中につき網戸をあけないでください」と注意を促します。 大発生したユスリカが死ぬと道路脇にも積もります。 まぁ、嫌われ者ですね。 この嫌われ者の諏訪湖のユスリカの大発生が1998年の秋から突然いなくなります。 その後も発生量が少ないままです。 諏訪湖ではその前の年に下水処理場を作って水質浄化対策を進めていたんですね。 これによりアオコの発生が減りました。 アオコっていうのは、栄養がたっぷりすぎる湖や沼に発生する植物性の微生物のことです。 水面が青緑色の粉を撒いたようになります。 このアオコが減ったのと同時にユスリカの大量発生も減ったんです。 これによって諏訪湖では長年の問題が大幅になくなって住民みんなが喜びました。 でも意外な人が困った事になったと頭を抱えました。 漁業関係者です。 実はあれほど嫌われていたユスリカのその幼虫は魚の重要な餌になっていたんですね。 諏訪湖のワカサギの成長が悪くなって小ぶりになってしまってニュースにもなりました。 あんなに人に嫌われていたユスリカは、人に恩恵を与える存在でもあったんですね。 その後ユスリカは重要な役目を担っていたのがわかってきました。 湖がなぜアオコが発生する水質汚濁問題を抱えていたかというと、 湖周辺の住人が、窒素やリンを大量に含んだ排水を湖に流していたのが原因です。 窒素やリンは植物プランクトンにとって必要なものだったので、 諏訪湖ではそれでアオコが増えて水質を汚濁させていました。 でもどんな湖でも窒素やリンが多くなると必ずアオコが発生するとは限りません。 植物プランクトンを増やした窒素やリンの多くは、 死んでしまった生物と一緒に湖の底に沈んでそこにとどまります。 そのまま湖のそこでじっとしてくれていれば水質汚濁にはならないのです。 湖の底は光が届かない暗い世界なので太陽光を必要とする植物プランクトンは 増えないんです。 諏訪湖や霞ヶ浦などは一番深い所で7mくらいです。 こういう所では強い風が吹くと湖全体がかき混ざってしまって 沈んでいた窒素やリンが水中に舞い上がります。 これが植物プランクトンを増殖させてアオコの発生に繋がります。 さて。 ユスリカの幼虫はこの沈んだ有機物を食べて成長してサナギになって湖面に上がってきます。 そして成虫になって陸地に向けて飛び立ちます。 という事はユスリカは、陸から流れてきて湖に沈んだ窒素やリンを体内に取り込んで それを再び陸に運ぶという事をやっているんです。 ヒトが流して汚した水を浄化してるとも言えるんです。 陸上から湖への一方通行だった物質の動きをユスリカが逆方向の流れを作ってたんです。 陸上と湖の物質の循環の一部をユスリカが担っていたんですね。 湖の汚濁が進むほどユスリカが増えるというのは 陸上から湖への窒素とリンの移動量が多くなると逆の流れも多くなる事でもあるんです。 なかなか絶妙なしくみです。 迷惑害虫だから駆除する。 可憐だから賢いから保護する。 こういう人の身勝手な保護と駆除の姿勢にもやもやしたものを感じているという 私の言いたい事がなんとなく判っていただけたでしょうか。 可憐だから賢いから保護するんじゃなくて絶滅しそうだから保護する。 これなら何も問題はないでしょう。とずっと思っていました。 でも冒頭で言ったように、希少種のトキが希少種のカエルを主食として食べていた話に 私はホントに驚いたんです。 そしてこの思うようにいかない自然の仕組みに、よりいっそう面白みを感じました。 やまねこ通信vol.221でお話した「シナントロープの話」の中で、 動物たちは環境変化に対して、 ・別の場所に移動するか、 ・生きていくことができないか、 ・自分自身を変えていくか の選択に迫られます。とお話しました。 絶滅していく動物は環境変化に耐えられなかったものたちです。 その中で、人間が保護の手を差し伸べるべきものは、 人間が変えてしまった環境に対応できなくて個体数を減らしていくものたちくらいだと 思うんです。 あ、このあたり誤解しないでね、 人為的に絶滅に追いやった生物たちの話をしているのではありません。 まったくの自然現象で数が減っていくものに対して保護の手を差し伸べても、 それは環境に負荷をかける行為です。 その時作られている生態系のバランスからはじき出されようとしている生物で、 現在の環境に適応できずに滅んでいく生物は必ずいるんです。 それを人間が保護したらそこの環境を変えて 別の絶滅危惧種を生むことになるかもしれません。 それに、地球が生み出した生物の99.9%はもう絶滅しているんですもん。 絶滅ってそんな忌み嫌うものなの?って思ったんです。 生まれた種は必ず滅ぶ時がくるんです。 かつてヒトは、私たちホモサピエンスだけじゃなく、 ネアンデルタール人やホモフロレンスなどの幾種類かの ヒトの仲間と同じ時間を生きていた期間がありました。 どこかの時点でホモサピエンスが数で圧倒したんです。 その時、数を減らしたホモフロレンスは希少種です。 ちょっと想像をしてみてください。 私たちの手の届かない所に「神様的なポジション」の人がいる想像です。 その人が希少種のホモフロレンスが数を減らして可哀相って思ったとして、 そればかりかホモサピエンス増えすぎて可愛くないと感じたとします。 ホモサピエンスを駆除してホモフロレンスを手厚く保護したとします。 こういうふうに考えてみれば、 何かを優先的に保護したり、 選んで駆除したりする事に少し疑問を持ってもらえたでしょうか。 滅びるものにも栄えるものにも必ず環境からの理由があります。 そして増えすぎたものはバランスを崩して数を減らしていきます。 永遠に増え続けて繁栄し続ける生物はいません。 ホモサピエンスは増えすぎました。 神様的ポジションの人がそろそろ何かしかけてくるかもしれません。 その前に何かのバランスが崩れてたぶん私たちは数を減らすときが来ます。 神様的なポジションの人。 それは自然のバランスの事なんだと思います。    * * * * *  * * * * *         神様が言いました       そろそろここらで栄えておくれ       そのために知恵をさずけよう       そうして人は中途半端な知恵を授かりました       今までは環境に合わせて生きてきたけれど       環境のほうを変えて生きていきました       そしてすっかり偉くなった気分でいました       お前は可愛いから保護しよう       お前は見た目汚らしいから滅びてしまえ       しばらくぶりに見に来た神様は驚きました       いったいこれはどういうこと?       こんなことならホモフロレンスの方に       知恵を授ければよかった       神様怒らないで       あの時授かったのは中途半端な知恵だったのです       どうして完全無欠な知恵をさずけてはくれなかったのですか?       私たちはこの中途半端な知恵で滅びるまで生き抜きます       それまで見守ってください   ━■みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「ハクチョウの餌やリの行く末」 ハクチョウは人気のある大型の渡り鳥です。 ハクチョウが飛来する湖や池がある所では、毎年冬になると今年もハクチョウが やってきましたとニュースになります。 そして、ハクチョウの数が増えて新記録を達成したことや、 小学生が先生に引率されて餌やりをして野生動物と触れ合ったことや、 冬の間中ハクチョウの世話をしていた人たちが、ハクチョウが北へ帰る時期になると 見送る様子など、ふれあいが美談としてニュースになります。 でもこれって、餌付けして集められたハクチョウだよね。 と、ちょっとでも疑問を持てたら、以下のコメントが変だって気付きます。 「日本でハクチョウの保護活動が始まったころ、 野生のハクチョウは警戒して なかなか餌を食べなかったんです。  でも厳寒期の中、人々は努力してやっとハクチョウたちが餌を食べるようになりました」 なぜそうまでして餌付けをしなければならない? 「寒い地域の湖や池は氷が張ります。  そうなるとハクチョウたちは水草を食べることができません。  だから人が湖の氷を割ってハクチョウたちが水草を食べやすくしてあげました」 ハクチョウって飛べるんで、凍って餌が取れないなら別の所に移動できますってば。 「ハクチョウが食べるのは水草です。マコモ、オモダカ、ヒルムシロなどを食べます。  この水草を餌としているとこの湖で支えられるハクチョウの数は100羽程度なので  500羽まで増えた今では、人が餌を与えないとハクチョウたちは困るのです。  そのためハクチョウの餌を苦労して集めました」 変でしょ。 そもそも人が餌やりをしてその湖や池で支えられないほどの数のハクチョウを 集めたんでしょ。 ハクチョウの餌やりは日本各地の多くの飛来地で行われています。 だからハクチョウの飛来数は年々増えています。 1975年には1万羽を越えるくらいだったのが 2005年には8万羽を越えるくらいです。 多くの飛来地ではハクチョウの会が作られて餌やリが組織的に行われています。 そして飛来数が多いと、活動の成果が現れたとして評価しています。 当初の目的は野生動物のふれあいだったと思うんだけど なんか目的が飛来数拡大になってるし。 ふれあいって数値化しづらいけど、飛来数は数値化できるもんね。 やってきた活動が評価されているようで、嬉しいんだね。 ここまでくると餌やりはハクチョウのためではなく、人の喜びのためにです。 だいたいハクチョウは餌不足で困っていないし、絶滅危惧種でもないし。 それに人が投げた食パンを奪い合うハクチョウがわんさかいると ドバトとどう違うの?って思ってしまう。 ハクチョウは渡り鳥です。 夏にシベリアで繁殖して冬になると日本にやってきます。 日本人がハクチョウに餌を与えているっていうことは 冬のハクチョウの死亡率を下げて、ハクチョウを太らせてシベリアに帰しているって事です。 もしハクチョウがシベリアで捕獲されて食べられていたとしたら シベリアの人に食料を提供していることになります。 まぁ、ハクチョウが狩猟対象って聞かないからそんな事はないんだろうけどね。 でもハクチョウにやったつもりの餌がカモが横取りして食べているから ハクチョウの餌やリはカモを肥えさせているだろうね。 カモは日本に留まるものもいるけれど渡るものもいます。 渡り先はアメリカ、ヨーロッパ、アジア中部です。 カモは狩猟対象になっていますから、日本で増えて太ったカモは かの地の人々の胃袋に納まっていることになります。 それにハクチョウが餌として与えられたものを全部食べてる訳ではありません。 食べ残して湖や池に沈んだものもあるだろうし、 ハクチョウの糞も湖や池に沈むだろうし、 こういう水質汚濁は湖水生態系に影響を与えています。 魚だけじゃなく水生昆虫やミジンコに至るまで影響はあるけれど それらは人にはわかりづらいです。 しかも増えたハクチョウはシベリアの湖の生態系にまで影響を与えていることになります。 春になって日本からシベリアに戻ったハクチョウたちは、 シベリアでタマゴを産み子育てをします。 たとえばシベリアのキツネにとって、ハクチョウのヒナが重要な餌だったら 日本でハクチョウを太らせることは、シベリアで生まれるキツネを増やすことになります。 日本でハクチョウに餌をやるという事は、 シベリアのキツネを増やしていることになってるんです。 冬になってハクチョウたちが日本へ向かってシベリアにいなくなると 夏の間に増えたキツネは、それ以前の冬よりも餌がたくさんいることになります。 キツネの餌となっていた動物層に影響がでるし、キツネと同じ餌を競合していた動物にも 影響があるでしょう。 キツネの餌になっていた動物がキツネに食い尽くされて激減したら、 今度はキツネが飢餓状態になって大量死しかねません。 日本でハクチョウに餌をやるという事は、シベリアの生き物たちのバランスを崩して 生態系全体に大きな影響を与えていることになります。 それに餌やりは人がやっている事なんで、 何かの事情で急に餌やリができなくなってしまう可能性だってあります。 そうすると、アテにしていたハクチョウや多くの生き物たちに多大な影響があります。 自分の気に入っている生き物を保護する。 これって変だよね。 その生き物のためじゃなくて、保護したい気持ちが暴走しているんです。 このハクチョウの話は「ネッシーに学ぶ生態系」という花里孝幸さんが書いた本を元に 書いてます。 この話を書いていて気になった箇所がここです。                    ↓   ふれあいって数値化しづらいけど、飛来数は数値化できるもんね。  やってきた活動が評価されているようで、嬉しいんだね。 私はここで「脳の報酬系」って言葉を思ったんです。 報酬系っていうのはwikipediaにこんなふうに説明されています。  報酬系とは、ヒト・動物の脳において、欲求が満たされたとき、  あるいは満たされることが分かったときに活性化し、  その個体に快の感覚を与える神経系のことである。 最初は野生の大型の白い鳥と、ちょっとだけふれあえたらいいのになっていうくらいが キッカケだったんだと思うんです。 そして餌付けで飛来数が増えると評価された気がして、そこから暴走するんですね。脳が。 人間の脳の仕組みが、こういうことをさせるのかなぁ。 保護っていうのは、「ヒトが見てて心地よいものを保護する」という ヒトのためのものである側面がとても強いという事を忘れてはいけないと思います。 何にしても、ある生き物を優先的に保護する不自然を メイン記事とこのハクチョウの話で感じていただけたらと思います。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★先日、ニセコのイワオヌプリという山に登山に行ってきました。  同行者は、ラジオ山猫通信のプロディーサーをしてくれているyasです。  イワオヌプリは火山系の山で、火山灰でざくざくしています。  その日は天気に恵まれ、  風なく雲なく晴天だけど空気が冷たいくて暑くありません。  こんな日に登山できるなんて。  たぶん一生涯で一番天気に恵まれた登山だったと思うくらいの日でした。  1時間ちょっとで登れるイワオヌプリ。  朝8時から登り始めて9時過ぎに頂上に着きました。  誰もいない。  あれはもしかしたら太平洋か?  積丹半島と日本海が見える。  反対側に洞爺湖が見える。  その向こうに駒ケ岳が見える。(その向こうが函館だ)  その反対側に定山渓天狗岳が見える。(その向こうが札幌だ)  雲のない真っ青な空に白い二十五夜の月。  私は宇宙をすら感じる取れる大自然で地球を満喫していました。  でも、一緒に登ったyasはまったく違うものを見ていたんです。  「あれ人じゃないか?   崩れる火山灰の崖をアタックしている人がいるよ。すごいなー」  私は言われも見えませんでした。  う〜んと目を凝らしたらゴマ粒ほどの人がやっと見えました。  私たちは、おにぎりを食べ、写真を撮ったりしてくつろいでいました。  でも、なんか変なんですよー。  崖の人、全然進んでいないんですよー。  アタックにしては軽装なんですよー。  中年の女性なんですよー。  「もしかして遭難してる?」  さっさと登ってさっさと帰るはずだったのに  どうも私たちは大変な事態に遭遇してしまったみたいでした。  この続きは書くの面倒なのでここでおしまい。(笑)  (私たちの見つけた人は要救助者でこの後、yasの活躍で応援を得、この人は助かりました。   私は、双眼鏡や望遠カメラで遠くから一部始終を見ていたただの傍観者です)  同じ風景に立っても、全然違う所を見ているというのは  モサク(飼犬)を飼っていた時に森へ散歩に行った時によく思ったものだけど  興味のあるものがヒトとイヌとでは違うからねと理解したんだけど  私とyasでも、同じ風景に立ってまったく違うものを見ているという  経験をしました。  あれほどの風景を見たら、私の脳なら「地球!宇宙!うっきゃ〜っ」ってなります。  ゴマ粒ほどの大きさに見える人が、流れ崩れ落ちる火山灰の崖に  へばりついているのを見つけることはできません。  ヒトは見たいものを見るんだな。    メイン記事やみかりんの叫びでハクチョウの話を書いていて、  「ヒトは保護したいものを保護する」という結論になっていた所での  この出来事だったので、  「ヒトは保護したいものを保護する」  「ヒトは見たいものを見る」  というのは似てるように思ったのです。   ★ラジオ山猫通信がリアルタイムで、  パソコン、スマートフォンから聴けるようになりました!  http://www.radiokaros.com/simulradio/  ↑ここがカロスのサイトの「インターネット放送聴取方法」のページです。  パソコンからスマートフォンから、カロスの放送を聞く方法が載っています。  http://www.simulradio.jp/  ↑ここがサイマルラジオのサイトです。  ここから全国のコミュニティーラジオが聞けるようになっています。    このサイトを開いたらちょっとスクロールすると「北海道」という場所があって  その下の方に「ラジオカロスサッポロ」という場所があります。  そこの「放送を聴く」をクリックするとメディアプレイヤーが立ち上がって、  リアルタイムに放送を聴くことが出来ます。  サイマルラジオは数分時間がズレて聞こえることがよくあります。  ラジオ山猫通信は、第一月曜日と第三月曜日の19:00〜19:30です。  明日の月曜日19:00に「トマトと植物の毒の話」が  リアルタイムで聞くことができます。  バックナンバーは、「やまねこ通信 E=MC二乗」のサイトの「ラジオ山猫通信」の  場所から、いつでも好きな回のお話を聴くことが出来ます。   ★今回のこの「保護の罪の話」は、  ネットでいつでも好きな時に聞くことができます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ここの右側「ラジオ山猫通信」をクリックしてスクロールして  「保護の罪の話」をクリックすると聞けます。  すぐに聞けない人は、じっと待ってみて。きっと聞けます。  http://crashlanding.under.jp/rajiyama0706.mp3  直接URLはここです。  今回の文は、おおむねラジオ原稿そのままです。  ラジオ用原稿をメルマガ用に書き換えているけどね。 ★vol.227の参考書籍&参考サイト     自然はそんなにヤワじゃない  著/花里孝幸 新潮選書     ネッシーに学ぶ生態系     著/花里孝幸 岩波書店        信州山小屋ネット     南アお花畑復活、信大が実証 マルバダケブキ刈り取り     http://www8.shinmai.co.jp/yama/article.php?id=YAMA20110217013124 ★予告です。 7月20日放送「トマトと植物の毒の話」  (ネットにUP予定は8月2日)(収録終わった) 8月3日放送「植物と動物の間の話と他の話」  (ネットにUP予定は8月16日)(書き終わった) 8月17日放送「ペンギンが友達になるまでの話」  (ネットにUP予定は9月6日)(書き終わった) 9月7日放送「強いものは弱いの話」  (ネットにUP予定は9月20日)(書き終わった) 9月21日放送「ネス湖とネッシーの話」  (ネットにUP予定は10月4日)(書き終わった) 10月5日放送「キツネに化かされない日本人の話」  (ネットにUP予定は10月18日)(書き終わった) ★ラジオ放送が月二回隔週であります。  最初はメルマガを元に原稿を書いてたけど、  今は、書き下ろし原稿です。  それをメルマガに転用するという逆転現象が  最近のメルマガ版「やまねこ通信 E=MC二乗」であります。 ★どうぞお時間のある時に「ラジオ山猫通信」も聞いてみてください。  2009年9月から始まった「ラジオ山猫通信」  どこまで続くんだ?  ここまで来たらいける所まで行ってしまえ!  最近は、トチらずスラスラよどみなくしゃべっているように聞こえます。  慣れてきたのです! ウソです。(笑)  編集で直して貰っているんです。 そのためずいぶん聞きやすくなっています。  決して私のしゃべりが上達したのではありません。  編集がうまくなったのです!(キッパリ) ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  私、みかりんのもうひとつのメールマガジン。  北の味覚。海産物。蟹おいしいよ〜。海水ウニもありますよー。  予算はこれくらい。食べる人数はこれくらい。と教えてくれたら、その中で  できる限りのご提案をします!山猫屋の蟹は冷凍物は扱っておりません!  さぁ、タラバ食べたいよう、毛ガニ食べたいようのメールをみかりんに書こう。  毛蟹の良いのが入荷してきています。  北の食材たちは脂が乗っておいしいです。  この機会に、どうぞ冷凍ではない蟹を!  ご贈答に、山猫屋の海産物を。 それじゃ、今回はここまで。 あなたのお便り待ってます。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「アシカが飛び降り自殺男性救う」 読点がひとつも付いていないネットニュース。 どこに読点を付けるかで意味が違ってくる。 1「アシカが、飛び降り自殺男性救う」  2「アシカが飛び降り、自殺男性救う」 3「アシカが飛び降り自殺、男性救う」  本文を読んだら1だった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.227  2015年7月19日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さには  まったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。  それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━