2015/12/6━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.236 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 札幌はすっかり冬です。 冬は夜空が澄んでいて星々がよく見えます。 条件が良ければ人工衛星が、つーっと移動するのが判ります。 私、一度だけ見たことがあるんです。 結構な速さでそれもなんか人工的な動きで つーって移動しているものが見えたことがありました。 流れ星とは違うんです。 あぁ、アレが人工衛星かって思いました。 現在国際宇宙ステーションには宇宙飛行士の由井亀美也さんが乗っています。 地上から400kmの所を秒速8kmのスピードで地球のまわりを回っています。 90分で地球一周です。 早いですねー。 今年7月に由井さんが乗ったロシアの宇宙船ソユーズが打ち上げられて、 わずか6時間後に宇宙ステーションにドッキングして乗り込みました。 そして8月には日本の補給船「こうのとり」が 宇宙ステーションにドッキングしたことが大きくニュースになりました。 今日はこのあたりの事を、そして日本のこれからの宇宙開発の展望についてお話していきます。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■これからの宇宙開発━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本人が最初に宇宙に飛び立ったのが1990年です。 もう25年経ちました。 今、国際宇宙ステーションにいる油井さんでちょうど10人目になります。 一番最初は民間の放送局TBSの特派員秋山さんです。 それから毛利衛さん、向井千秋さん、若田光一さん、土井隆雄さん、野口総一さん、 星出彰彦さん、山崎直子さん、古川聡さん、そして油井亀美也さんの25年で10人です。 この中には2回宇宙へ行った人も何人かいます。 次の25年ではもっと多くの人が行くのでしょうね。 最初の秋山さんだけはテレビ局の社員で生中継をしました。 秋山さんの時は、行く事、そして伝える事に意味がありました。 秋山さん以降の毛利さんからは、いろいろな実験をしに行っています。 無重力じゃないとわからない事がたくさんあって、 皆さん宇宙にいって様々な研究のサンプルをとっています。 実は秋山さんが日本人初の人になるはずではなかったんです。 最初に宇宙に行くのは毛利さんって決まっていました。 毛利さんが行った宇宙ってこんな所ですよって報道するのが秋山さんの役目だったんです。 順番が逆になってしまったのは、 1986年のスペースシャトルチャレンジャーの爆発事故のためです。 打ち上げから73秒後に爆発して7名の乗組員が全員亡くなりました。 あの事故で毛利さんが宇宙に行くのが遅れてしまって、 2番目のつもりでいた秋山さんが最初になってしまったんです。 秋山さんは第一声は「宇宙は混沌としています」って言おうと考えていたといいます。 でも実際に宇宙に行ってみたら全然混沌としていなかったんですね。 そして生中継で東京のスタジオからの呼びかけに「これ、本番ですか?」っていうのが 第一声になりました。 秋山さんの次は1992年の毛利衛さん、そして1994年の向井千秋さんが宇宙に行きました。 この時の世間の関心は大変なものがありました。 今でもはっきり覚えています。 秋山さんはロシアの宇宙船ソユーズで宇宙に行きました。 毛利さんは日本人初のスペースシャトル搭乗者になりました。 向井さんは日本人初の女性宇宙飛行士として注目されました。 で、その次の若田光一さん以降はそれまでの3人とは決定的に違う事があります。 それは滞在時間です。 毛利さんは2度宇宙に行っているのですけれど1度目の時は7日間宇宙に滞在しました。 その後のたとえば2009年の野口総一さんは163日の滞在です。 毛利さんの1回目の頃は宇宙ステーションではなくて スペースシャトルの中での研究だったんです。 シャトルは乗り物なので長期滞在は1週間が限界だったんです。 国際宇宙ステーションっていうのは15の国が一緒になって作って運営しています。 色々な国が部品を持っていってはパカパカと付け足してどんどん大きくなっています。 サッカー場くらいの広さがあるというのですからかなり広いんですね。 両脇に生えているのがソーラパネルです。 これでステーション内で使う電気をかなっています。 人間が行き来できるのがこのソーラーパネルの間の円筒の部分です。 最初日本は、他の国の実験場所に行って間借りして研究させて貰っていました。 でも野口さんが二回目に行った2009年に日本独自の実験棟「きぼう」を 宇宙ステーションにくっつけたんです。 今はこのきぼうの中でさまざまな実験をしています。 ちなみに日本の実験棟が世界で一番大きくて、 大型バス2〜3台繋がったくらいの広さがあります。 宇宙ステーションの中の様子を私たちに向けての映像はわかりやすいものになりがちです。 実験の様子を見せられてもよく判りませんものね。 ですので、よく筋トレしている様子が映し出されますよね。 ペダルをこいでる所とかね。 無重力で暮らしているので筋力がどんどん衰えてしまうんです。 何もしないと地上に帰ったときに立ち上がれなくなってしまうんです。 実は宇宙ステーションっていうのは地球に向けて常に落下し続けています。 でも同時に秒速8kmのスピードで動いているので、その遠心力でつりあいが取れて 地上に落下はしません。 で、そんな宇宙ステーションの中はまるで重力がなくなったように感じらるんです。 正確にいうと無重力なのではなくて宇宙ステーションの中は無重力状態なんですね。 この宇宙ステーションの中の無重力の状態って人体にとっては大変だけど、 地上ではできないような無重力を生かした実験や作業があります。 宇宙ステーションでの実験や観測は大きく分けて3つあります。 ひとつは動植物を連れて行って、長い間無重力の所にいても大丈夫なのは どんな条件の時かを調べること。 これが判れば宇宙旅行が出来るのに近づきます。 ふたつ目は新薬の開発です。 もちろん地上でも新しい薬をつくる実験はしているんだけど、 重力のない所での方がはかどる実験ってあるんですね。 その中では筋ジストロフィーという難病の薬の開発が一番進んでいます。 みっつ目は天体観測です。 ちょっと前までのとは違って、最近の宇宙の写真がやたらと綺麗ですよね。 地上からではどんなに良いカメラを使っても、空気があるので揺らいでしまうんです。 宇宙だと大気がないのでパッキリと綺麗に写真が撮れるんです。 宇宙は天気も関係ないですしね。 今年8月に宇宙ステーションの補給機「こうのとり」を搭載したロケットが 種子島宇宙センターから発射されました。 そして宇宙ステーションにいた油井宇宙飛行士が操作するロボットアームが捕まえて、 宇宙ステーションにドッキングに成功した事が大変な話題になりました。 その時の説明をしますね。 補給機は定期的に打ち上げなければなりません。 それがこの所立て続けにアメリカとロシアの補給機が失敗していたのです。 補給機には水や食料や衣服や実験機材など必要なものがたくさん積まれてます。 水はおしっこや汗もフィルターで綺麗にして飲み水として利用しているんですけれど、 そのフィルターも新しいものに取り替えなきゃならないんです。 こうのとりはそのフィルターも積んでいます。 補給機は運ぶだけじゃなくて帰りはゴミの焼却炉としての役目もあります。 いらなくなったものを詰め込んで大気圏に入って燃えてなくなるんです。 必要な使うものを運ぶのも、いらなくなったものを捨てるのも両方とても大事な役目です。 アメリカの補給機の打ち上げやドッキングが立て続けに失敗をしていて、 この8月の時点でけっこうピンチだったんです。 このピンチを救う日本の「こうのとり」っていう所でかなり注目されていたんです。 NASAも「こうのとり」に荷物を積ませてと頼んできています。 最初は研究場所を間借りしていた日本が、 国際宇宙ステーションの危機を救うのかって所まで来たっていう事でもあったんですね。 まず宇宙ステーション自体が1秒間に8kmの速さで進んでいます。 それに「こうのとり」が追いつこうとしているという構図です。 8月19日ロケットを打ち上げて、 「こうのとり」が宇宙ステーションに一番接近するのが24日です。 ステーションは90分で地球一周するスピードで動いています。 すごいですよね。 秒速8kmでの作業になるんです。 ものすごく高速で動くステーションと、「こうのとり」は併走する事になるんです。 もちろん油井さんひとりでやるわけではありません。 地上からはNASAの管制官から若田光一さんが操作しています。 そして近くまで行くと、こうのとり自身が判断します。 宇宙ステーションから油井さんが、この秒速8km同士を近づけてドッキングさせるんです。 日本人同士の連携プレーでもありました。 それまでの宇宙飛行士は研究が目的だったので科学者とか医師が多かったのですけれど、 油井さんの前職は自衛隊のテストパイロットです。 極限の時に色々と試す飛行の経験を積んでいるので空間の認識力に長けているのではないかと、 この捕まえてドッキングする作業に期待されたんです。 この捕まえてっていうのは磁石のようなものじゃなくて、 小さなピンを3本のワイヤーで締めていくような感じで つかむところは1本のピンなのでそれを正確に真ん中にもって行く作業です。 補給機の失敗が続いて次の失敗は許されないという所で、 日本はこの細いピンの計画を提案したら、こんな計画はだダメだと言われたんです。 日本は宇宙船の実績もないのにいきなりステーションにドッキングなんてしたら 宇宙飛行士の命が危ないって反対されたんです。 日本は、 「それではドッキングさせないから近くまで行くからロボットアームで捕まえてください」 っていう方法を提案したんです。 それで地上で検証したらこれって意外と安全かもってなって、 今ではアメリカの輸送船もその方式でやっています。 日本の技術はかつては未熟でしたけれど今は世界のスタンダードになりつつあるんです。 宇宙開発は、有人と無人というものに分かれます。 前半にお話したのは実際に人が宇宙ステーションで活躍している有人の宇宙開発の話です。 それとは違って無人の宇宙開発っていうのもあります。 今年の1月に日本政府が宇宙開発についてのの最新の方針を発表しました。 その中には有人無人の、どっちかっていうと無人の方に力を入れたいって書いてありました。 無人の宇宙開発っていうのはどういうものをいうのかというと、 もっと人工衛星を飛ばしたいっていう事です。 人工衛星には3つの事が期待されています。 安全保障、防災、産業の復興の3つです。 安全保障っていうのは、よその国のミサイルの発射とか基地の様子とかを知るための 人工衛星っていう事です。 防災っていうのは、気象衛星などの事です。 最近では雨雲の中がわかるようになってきました。 それからGPSで自分が今どこにいるのかがわかる。 そういう人工衛星にお金をかけたいという事です。 もうひとつの産業の復興っていうのは、 他の国も人工衛星をあげたいので、実績のある日本に頼んでくるかもしれないのです。 すると経済成長につながると考えているんですね。 つまり短期間で結果を出すのは無人の人工衛星だからという考えなんです。 でも前半でもお話した、動植物の実験、新薬の開発、天体観測の実験は成果をあげていますし、 これらは無人ではできません。 人がしなきゃ誰がする。有人でなきゃ伝えられない宇宙っていうのも絶対あります。 でもね、2003年に打ち上げられ2010年に60億kmの旅から帰って来た、 無人探査機「はやぶさ」が小惑星の砂粒のサンプルを持ち帰るのに成功しました。 世界初です。人がいなくてもできたんです。 日本政府の方針では国際宇宙ステーションへの参加は2020年までは決まっているんですけれど、 その先は未定なんです。 だから宇宙飛行士を目指す人は急いだほうがいいですよ。 国際宇宙ステーションに日本がつぎ込んだお金は8000億円を越えています。 この8000億円って数字に驚かないで。 これ30年くらいかけてのお金です。 一度にかけたわけじゃないです。結果も出してるしね。 アメリカは年間4兆5千億円を宇宙ステーションにかけています。 日本はその10分の一以下です。 だからこれだけの少額でこれほどの成果と言っていいんです。 日本が科学技術にかけているお金が年間5兆円弱です。 アメリカはそれと同じくらいを宇宙ステーションだけにかけているんです。 日本は国際宇宙テーションに参加しているアジアの国の中で期待されて これだけの成果を上げてきたんです。 それにね、有人だからお金がかかるって訳でもないんです。 日本が今一番気にしているのが安全保障です。 情報収集衛星に年間600億円、この10年で1兆円使っています。 だから無人でもお金は使っているんですね。 この情報収集衛星って大規模災害に使うっていう触れ込みなんですけれど、 2011年の東日本大震災のときの災害と原発事故のときの映像は 安全保障に関わるからという理由で一般には開示しなかったんです。 あの時の衛星写真はアメリカから買ったものなんですね。 だから日本最大の危機の説きにその情報収集衛星が役立ったかどうかわからないんです。 安全保障にかかわるからどうしても秘密っぽくなって 実際役立ったかどうかわからないようになっているんです。 でも、さすがにあの大震災の時に使わないってあんまりだろうって反省したのか、 今年の9月に起きた鬼怒川氾濫の時には、日本の人工衛星からの写真を 解析度を下げて公開していました。 「はやぶさ」は、200億円かかっています。 または200億円しかかかっていませんっていう言い方になるのかな。 これ、失敗してそれを乗り越えた末のサンプルリターンだったから とてもドラマチックで人々の注目を浴びたけれど、 もし全部すんなり行っていたらこれほど注目されなかったかもしれません。 でも、有人なら、たとえば実際に火星に降り立った時、 あの岩の陰に行ってみようとかも思いつきでできるし、 何よりも人がやっている事の方が注目度が違います。 でもやっぱりね、宇宙開発っていうのはとてもお金がかかります。 お金の話が出てくるのはお金は無限にはないからね。 日本が短期間で成果がでるものに方針を出したというのもわかります。 宇宙開発っていうのは将来の投資、または人類の未来への投資なんです。 他の国はどうなんでしょう。 調べてみたら、有人と無人を組み合わせた計画のようです。 中国は2020年ごろに独自の宇宙ステーションを建設。そして月の探査。 アメリカは2030年代に火星探査。 ロシアは2030年代に月に基地を建設すると言っています。 お金の話をするとだんだん暗くなってきますね。 それでは話を変えて油井さんの時の宇宙飛行士募集条件を見てみましょう。 身長は158cmから190cmまで。体重50kgから90kgまで。あれ?大きすぎてもダメなんですね。 どうもね座席がそのサイズの人に合わせて作っているからで、 座席は宇宙船に入る大きさなんだそうです。 視力は1.0以上。メガネもOK。 大学卒以上で理系であること。 英語でコミニュケーションができること。 水着や服を着たまま75m泳げる事と10分以上立ち泳ぎができる事。 これが募集条件だそうです。 この泳ぎの条件っていうのは、地球に帰るときにジャングルなどに落ちた時のために 生きのびるためのサバイバル訓練もするからです。 生きのびるための精神的肉体的訓練も行うんだそうです。 野口総一さんは日本人で初めて宇宙ステーションの船外で作業しました。 一度船外に出たら数時間作業します。 6時間から7時間分のバッテリーと飲料水を持って、 秒速8kmで動いている宇宙ステーションの船外の手すりに捕まって作業しました。 足元の400km下には地球があります。 手すりに捕まって作業するんだけれど手を放しても大丈夫といいます。 船外活動っていうのは自分も月と同じに地球の周りを周っているいる存在になるんですね。 星になっているんです。 だから手を放しても大丈夫で、命綱もあるしザイルもあるしって 野口さんは笑って話していましたけれど、 私なら、手を放したら…なんて所を想像すると もうずっと地球に帰る事はできないんじゃないかって想像して恐怖です。 足元に地球かぁ。 それはちょっと見てみたいです。 人生観がかわってしまうかもですね。 日本人で一番最初に宇宙に行った秋山さんは、数年後にTBSを退職しています。 「宇宙に行ったことでお金や権力や名声などといったものが、  あまりにちっぽけで、そういったものに興味が湧かなくなった」と言っています。 今、国際宇宙ステーションにいる油井さんは今月帰ってきます。 2年後の2017年11月には元海上自衛隊の医師、金井宣茂さんが ロシアの宇宙船ソユーズで国際宇宙ステーションに向かいます。 また新しい宇宙を私たちに伝えてくれるのでしょう。    * * * * *  * * * * *        星空を見上げることはあっても 地球が足元にある風景をみることを 誰が想像できただろう 月に降り立つ日が来るなんて あの赤く光る点にしか見えない火星に 自走する機械が今も働いているなんて 今も多くの写真を送ってきているなんて 私たちは星の子なんだな 宇宙の事が知りたくて知りたくてたまらないんだ 知った先に絶望が待っていても それでも宇宙を目指す 人が生きていける場所ではないだろう 苦難しかないのだろう おとなしく地球にいればいいのにね        ━■みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「湖の年齢と変化する景色」 前号vol.235「魚とヘビと左右の話」で湖の年齢の話がでてきます。 湖というのは堆積物が、1年に1mmから数mm積もっていきます。 たとえば湖が出来てから1000年経ったら1mから数m堆積物が溜まります。 1000年の時間って、数mほどの湖ならなくなってしまう時間なんですね。 湖は突然なくなってしまうわけではなく長らく湿地という状態になっています。 湿地については、vol.185のみかりんの叫びで「やちまなこ」というタイトルで書いています。 ここでは利尻島の湖と道北のサロベツ原野の湿地帯の泥炭地について語っています。 ================  湿地に生えている草が冬になって枯れます。  でも冬が終わって暖かくなっても、低温のために枯れた草は分解されないのです。  普通は分解されて、それがまた土の栄養となってその土地の植生を豊かに  していきます。  でも低温の湿地帯ではその循環がないんです。  枯れたのに分解されないものが積もっていく。  それが数千年も積みあがるんですね。      (中略)  枯れたのに分解されない植物の遺骸は、だいたい1年に1mm積みあがります。  サロベツ原野で8mというから8000年はかかって現在の湿地帯があります。 ================ この湿地帯の泥炭地の文章を書いたのが2013年です。 2011年の東日本大震災のあたりから「地学」という分野が私の中でブームになり、 この湿地への興味もその延長線上にあります。 今年のやまねこ通信は、vol.232「ネス湖とネッシーの話」、vol.235「魚とヘビの右左の話」で この湖の出来かたや年齢に触れています。 で、前号の「魚とヘビの右左の話」を配信した直後 読者の少伯さんからご指摘メールが来ました。 ================  今回の話題の中で湖の寿命について書かれていますが、私の記憶では、数千年から数万年  だと思っていたのですが、  > 普通の湖は河川から土砂が入ってきてだいたい数百年もすれば埋もれて消えてしまいます。  > 湖の年齢はだいたい数百年なんですね。  と書かれています。  もし、数百年で湖が埋もれてしまうのなら平安時代より前にあった湖の多くが  湿原になっていることになると思うのですが、いくら何でも短すぎるように思います。  一度、ご確認いただけないでしょうか? ================ なるほど。 そうだよなぁ。 数百年は短すぎますよね。 今、ざっと「湖の年齢」で検索しても数千年から数万年になっていますね。 って、こりゃぁ、私の間違いって事で、こっそりHPを直したんです。 この時の原稿は「右利きのヘビ仮説  著/細将貴 東海大学出版会」 を頼りに書いています。 本ってのもやっかいなもので、結構間違っている事ってあるんですよ。 やまねこ通信を書くために読み込んでいると、 時々あからさまな間違いをみつける事があります。 でもね、この本の著者の若き研究者、細 将貴さんって人は、この本がたぶん初めての本で それはそれは思い入れたっぷりに書いているのがよくわかるんです。 ものすごく推敲しているだろうし、こんな単純な間違いはしないだろうなと思うんです。 って事は私の写し間違いか。(笑) この原稿を書いている今日、この本が置いてある東海大学図書館に行って確かめてきました。 私が参考にした所はこのように書かれていました。 ================ 川がせき止められるなどして形成される普通の湖は、流入河川からの堆積物によって せいぜい数百年程度で埋もれて消えてしまう。 ところが大地溝帯のような場所では時に、数百万年もの歳月の間、湖が命脈を保つことがある。 常に近くが広がっていくおかげで、埋没を上回る速度で深さを増していくからだ。 そのような例外的に長寿の湖のことを構造湖あるいは古代湖と呼ぶ。 ================ あれ? 私の写し間違いって事でもないらしい。 それでちょっと考えてみました。 1年に1mmから数mm。←ポイントはここじゃないかとちょっと思ったのです。 1年に1mm堆積すると500年で50cm。 1年に5mm堆積すると500年で2.5mです。 数百年で埋まる湖もあれば埋まらない湖もあるんじゃないか。 あながち数百年っていうのは間違っていないかも。 私が、なぜこんな事をしつこく考えているかというのには理由があります。 私の住んでいる所のすぐ近くに西岡水源池公園って所があります。 私がフィールドにしている所です。 植林した場所もあるし、原生林も残っています。 そこには旧陸軍が明治時代に水道施設として月寒川をせき止めて作った湖というか 沼というか池というかそういう水場があります。 池には湿地の部分もあって、そこには木道が整備され、ぽこぽこと歩く事もできます。 広大な公園で動植物が豊かな生態系を作っています。 湿原にはミズバショウもみられます。 50種類のトンボも確認されています。 私はこの地に来てもう30年以上経ちました。 今年の8月13日の北海道新聞にこの水源池公園が記事になっていました。 「湿地の乾燥化が進んでいる。  以前は湿原内を網状に流れていたが、今では流れが木道の下に集中している。  木道の下には日が当たらず植物が育ちにくいため  水がそこだけに集まって水路のようになっている」 「野鳥に影響を与えない程度に湿地内の柳を伐採し、土嚢を積んで水の流れを変え  網状の水流の回復を目指す」 こんな内容でした。 イヌを飼っていた頃、1日に何度も水源池公園に散歩に行っていました。 最近はそんなに頻繁に行っていません。 そうか、水源池はそんなことになってるのか、それは見に行かなきゃなと思って 先日ちょっと奥の方まで足を運んでみました。 なるほどー。 たしかに植生が変ってるな。 私は、この地に来た30年ほど前の水源池の景色をよく覚えています。 湿地の部分に大きな木が生えています。 昔はこんな大きな木はここには生えていなかった。 水も確かに少なくなっているな。 でもなぁ、これって木道のせいじゃないよ。この湿地の変化だよ。 ちょうど「ネス湖とネッシーの話」や「魚とヘビの左右の話」の原稿を書くために その手の本を読んでいた頃だったんで、 私は「湖には年齢がある」という事を知っていたんです。 景色は変化する。特に浅い水辺の変化は早いのだなという印象を持ったんです。 私は、公園の管理時事務所に行って持論をしゃべってきました。(迷惑だったと思います。(笑)) 「新聞記事には、以前の景観を取り戻すために、  伐採や土嚢積みなどをするって書いてあったけど  これは、水辺の自然な変化なのではないか。  景観が変ろうとする自然現象なのではないか。  人工的に景観をとどめようとするのではなく、目の前で変化していく景観を大事に  その変化を市民が見ることができるたぐいまれな公園ってスタンスがいいのではないか」 あー、メンドクサイ人が来た。って思ったと思います。 管理事務所にいた若い兄ちゃんごめんね。 話はちょっと飛びます。 最近、私のものすごくお気に入りのテレビ番組が「ブラタモリ」です。 これね、地学の番組なんですよ。 先月、札幌編があったんです。ものすごく面白かったです。 函館編も小樽編も面白かった。やっぱりね、知ってる土地は面白いね。 でですね、札幌編なんですけれど、札幌はもともと泥炭地で農地にも人が住むにしても 水が染み出してきてあまりよくなかったんですね。 それで土管を埋め(暗渠工事)、人工の川をあちこちに作り、大規模な排水処理をしたんですね。 山を削り、埋め立てし、土地改良をし、 人はどんどん使いやすいように土地に手を入れています。 平安時代に湖があった場所に今も湖があるのかといえば、埋めてしまってないものもあれば 残っているものもあるんじゃないかと。 少伯さんのご指摘メールでここまで考えました。 面白かったです。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★「はやぶさ2」の話題。   去年2014年に種子島宇宙センターから打ち上げられた「はやぶさ2」。   今年2015年12月3日に、地球の引力を利用して加速するために  (これをスイングバイといいます)地球に再接近しました。  目標は小惑星Ryugu(リュウグウ)です。  リュウグウに到着予定は2018年。  小型ローバやコガタ着陸機を切り離して小惑星の表面からサンプルを取得します。  2019年に小惑星出発して2020年地球帰還の予定です。   日本も着々と実績を積み上げていますね。  色々楽しみです。 ★JAXA(宇宙航空研究開発機構)のHPをうろうろしていたら  ちょっと面白い記事を見つけました。  今年の9月18日、北海道新聞に「航空機か? 函館の海岸に謎の残骸」という写真付きの  記事が載ったんです。     >台風の影響で高波が寄せた11日、熊別川河口付近に4片が打ち上げられた。   >最大で縦2.7メートル、横2.2メートル、厚さ4センチの湾曲した板状で、 >ハチの巣状のハニカム素材を板で挟んだ構造。 >住民らの通報を受けた函館海保は航空機の一部の可能性が高いとして同事務所に連絡した。  お昼休みの時間にこの記事をみつけたJAXAの編集部のスタッフ、これが何かわかったんですね。  「これって、ロケットの“フェアリング”じゃないか?」  8日後の9月26日「謎の残骸はロケット部品 函館の海岸で発見」という記事が  再び北海道新聞に掲載。   >2013年1月27日に鹿児島県の種子島宇宙センターで打ち上げたH2Aロケット22号機の >一部と判明した。  スタッフの予想通りフェアリングだったようです。  南の島・種子島から打ち上がったロケットのフェアリングが  函館まで流れ着いたんですね。  フェアリングっていうのはロケットの先端部にあるもので  打ち上げの時の大きな音響や振動、大気中を飛行する際に生じる熱などから搭載物  (人工衛星や、「こうのとり」)を護る役割を果たしています。  とても大きく、H-IIBロケットのフェアリング(5S-H)は全長15mあります。  ロケットが決まった高度120kmくらいに達すると、フェアリングは2つに分かれて  海上へ落下します。誰かにあたったら大変なんで、安全な海域に落下させています。  落下予想海域を示し、打ち上げ時には一般の船が立ち入らないようにしています。  フェアリングには位置を特定する装置がつけられていて、  着水後にあらかじめ待機している船で海上回収に努めています。  けど海に落ちた際に破損してしまうこともあって、  その一部が長く海を漂ってどこかに流れ着くことがあります。 ★水木しげる先生(93)死去のニュースにショックを隠せません。  水木先生は妖怪の仲間だから死なないと思っていました。  高度成長期の頃、妖怪の地位は低かったんです。  それを「妖怪カルチャー」という一分野まで押し上げたのは水木先生です。  「妖怪」は日本発信のカルチャーとしてこれから世界に行けると思います。  先生の片手で描かれた細密な漫画はもちろん素晴らしいのですけれど、  文章も素晴らしいんです。  昔々ビックコミックだかで連載されていた「カランコロン漂流記」ってのを読んで、  あまりの面白さに驚愕して文庫本になった時に真っ先に買い求めました。  そうかー。水木先生、もういないのかぁ。  水木先生のライフワークは、妖怪文化と太平洋戦争です。  先生の作品には独自の死生観が底に流れています。  これからもっと評価されるべき人です。  ★前月、11月としては札幌で62年ぶりの44cmの積雪。  前日までまったく雪がなかったのに翌朝突然の冬景色です。  朝起きて窓の外を見て「おおおぉぉぉ」って声が出ました。    その後、一日中雪かきでした。 ★ラジオ山猫通信がリアルタイムで、  パソコン、スマートフォンから聴けるようになりました!  http://www.radiokaros.com/simulradio/  ↑ここがカロスのサイトの「インターネット放送聴取方法」のページです。  パソコンからスマートフォンから、カロスの放送を聞く方法が載っています。  http://www.simulradio.jp/  ↑ここがサイマルラジオのサイトです。  ここから全国のコミュニティーラジオが聞けるようになっています。    このサイトを開いたらちょっとスクロールすると「北海道」という場所があって  その下の方に「ラジオカロスサッポロ」という場所があります。  そこの「放送を聴く」をクリックするとメディアプレイヤーが立ち上がって、  リアルタイムに放送を聴くことが出来ます。  サイマルラジオは数分時間がズレて聞こえることがよくあります。  ラジオ山猫通信は、第一月曜日と第三月曜日の19:00〜19:30です。  明日の月曜日19:00に「生き物に似てしまうロボットの話」が  リアルタイムで聞くことができます。  バックナンバーは、「やまねこ通信 E=MC二乗」のサイトの「ラジオ山猫通信」の  場所から、いつでも好きな回のお話を聴くことが出来ます。   ★今回のこの「これからの宇宙開発」は、  ネットでいつでも好きな時に聞くことができます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ここの右側「ラジオ山猫通信」をクリックしてスクロールして  「これからの宇宙開発」をクリックすると聞けます。  すぐに聞けない人は、じっと待ってみて。きっと聞けます。  http://crashlanding.under.jp/rajiyama1116.mp3  直接URLはここです。  今回の文は、おおむねラジオ原稿そのままです。  ラジオ用原稿をメルマガ用に書き換えているけどね。 ★vol.236の参考にした番組、本、サイト      NHK 週間ニュース深読み      どこまで進む? 日本の宇宙開発       2015年08月22日放送            右利きのヘビ仮説    著/細将貴     東海大学出版会      札幌・西岡公園、乾く湿原 木道が原因?川の流れ変化       市などヤナギ伐採、土のう設置へ       北海道新聞(2015/8/13)      ファン!ファン!JAXA!         http://fanfun.jaxa.jp/           ★予告です。 12月6日放送「生き物に似てしまうロボットの話」  (ネットにUP予定は12月20日)(収録終わった) 12月20日放送「記憶と時間の話」  (ネットにUP予定は12月30日)(書き終わった) ★どうぞお時間のある時に「ラジオ山猫通信」も聞いてみてください。  2009年9月から始まった「ラジオ山猫通信」  そろそろ終わりが見えてきました。  「ラジオ山猫通信」は年内をもって終了することにしました。    こんな所を読んでいる人がいるとは思えないけど、ここでこっそりと告知。(笑)  でもメルマガは続きます。  今後ともやまねこ通信をよろしくお願いします。 ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  私、みかりんのもうひとつのメールマガジン。  北の味覚。海産物。蟹おいしいよ〜。海水ウニもありますよー。  予算はこれくらい。食べる人数はこれくらい。と教えてくれたら、その中で  できる限りのご提案をします!山猫屋の蟹は冷凍物は扱っておりません!  さぁ、タラバ食べたいよう、毛ガニ食べたいようのメールをみかりんに書こう。  毛蟹の良いのが入荷してきています。  北の食材たちは脂が乗っておいしいです。  この機会に、どうぞ冷凍ではない蟹を!  ご贈答に、山猫屋の海産物を。 それじゃ、今回はここまで。 あなたのお便り待ってます。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「クセになる辛さ!」って書いてあるラーメン屋があった。 「辛さ(からさ)」と読むのだろうけど「辛さ(つらさ)」と読める。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.236  2015年12月6日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さには  まったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。  それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━