2016/6/5━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.243 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 5月31日、火星が地球に大接近する日という事がニュースで大きく報じられて 見なきゃと思っていました。 札幌はあいにくの雨(っていうか雷雨ね)で 火星観察は望むべくもない天候だったんですけれど 22時頃、雨はやんで雲がまばらになってたんです。 全天で、ちぎれ雲4割って感じだったでしょうか。 一日豪雨だったおかげで大気のホコリがなくなって、 雲間から見える星空の綺麗なこと! もちろん火星もバッチリ見えましたよ。 赤く、大きく、またたかず、ピカーって光っていて、すぐわかります。 南西の方角です。 今年見逃した方、チャンスはまた来ます。 2年後にもっと火星が近づくんです。 私の今年の目標は、「満天の星空を見る」です。 できれば天の川も。 現在何度か挑戦していますが、まだうまくいっていません。 見ることができたら報告しますね。 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm 「ラジオ山猫通信」も、ここから聞くことができます。↑ ━■ヒトは何を食べてきたかの話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 世界地図を思い浮かべてください。 アフリカ大陸の東、インド洋の端に島があります。 マダガスカル島です。 小さい島に見えるけれど、これはアフリカ大陸が大きいためで日本全土の約1.6倍も あります。まぁ、小さな大陸ですね。(変な日本語だね。(笑)) マダガスカル島は恐竜全盛時代あたりにアフリカ大陸から分離したと言われています。 分離した年代はわかっていません。 1億6000万年前に分離したという説や6500万年前に分離した説やその中間の説もあります。 分離したあとマダガスカル島の生物たちは、 恐竜の大絶滅時代(6500万年前)を生き残ってきました。 隔離されたマダガスカル島に棲む動物たちは独特の特徴を持っています。 ここではその代表として原猿のアイアイにまず登場してもらいましょう。 「アイアイ、アイアイ、おさるさぁんだよ〜♪」の歌でおなじみとなったアイアイの手は、 私たち霊長類の中でも特別変わっています。 ここの(1)がアイアイの手と姿です。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243.htm なんじゃこの手は!って思うでしょ。 私たちが見慣れたヒトの手を基準にしてみるから妙だと感じるんですね。 アイアイから見れば、アイアイの手こそ機能的で美しく、 ヒトの手をみたら「これで何ができるの?」って思うんでしょう。 それにしてもアイアイの手は他に類をみない不思議な形をしています。 親指の太さ、中指の細さ、薬指の長さ。これ全部に意味があります。 その意味とは、アイアイの食性の理にかなった手の形なんですね。 もっと言うと、歯の形も、その動物がどんな生活をしているのか、 主に何を主食にしているのかを現しています。 鳥はクチバシの形を見ればその食性がわかります。 種子を食べるクチバシ、肉食のクチバシ、昆虫食のクチバシ、葉、花の蜜、堅い実など その主食を食べるに適したクチバシの形になっています。 霊長類も同じという事です。 手や歯をみると何を食べているかわかるという事なんです。 アイアイは、ラミーというマダカスカルを代表する巨木の実の種を主食としています。 ラミーの実は3cm前後のもので、種は厚く固い殻で覆われています。 アイアイはまずラミーの果実を1個、噛みとると大枝に座ります。 果実を両手でしっかりと握ります。ここで太い親指、大活躍です。 そして果実の先端の果肉を歯で剥いで、吹き飛ばして、出てきた種子の先端を 切歯で削りあけます。 あけた穴に、細長い中指を突っ込んで中の胚乳を掬い取って、口に注ぎ込むようにして 食べます。 アイアイの切歯は、げっ歯類のように生涯に渡って伸び続けるという特徴を持っています。 これは霊長類では他に例がないです。 そして強靭な切歯を持っているのに、臼歯は他の霊長類にはみないほど貧弱です。 これは、噛み潰す必要がないラミーの胚乳に対応しているから臼歯は貧弱でいいんですね。 アイアイはネコくらいの大きさの動物です。 そして手の大きさは人間の手ぐらいあります。 私たちから見たらその姿はアンバランスでも、堅い種子を主食とするアイアイには その大きさは必要なんですね。 そして親指が他の指と向かいあう対向性は、かなりしっかりとしています。 中指以外の指の先端の大きな肉球は、握りしめるために滑らないために必要な形です。 この細長い中指は、ラミーの種子の胚乳を掻き出すためだけではなく、 食べ物をたたいてその中身の状態を知る道具にもなります。 そしてこの中指は、移動する時にはちょっと浮かすようになって全く使いません。 このアイアイの手の特殊性を話せば、それだけで紙面が尽きてしまって、 今回のメイン記事の「ヒトが何を食べてきたか」までたどり付かなくなってしまいます。 特殊な食物には特殊な道具が必要になるので、アイアイは特殊な歯と手を持ったと言えます。 それではもうちょっと大型で、多様な食物を食べる霊長類の手を見てみましょう。 アイアイと同じくマダガスカル島に棲むキツネザルを見てみましょう。 動物番組でよく取り上げられるワオキツネザルがこの仲間で最もおなじみですね。 樹上性の動物で、縞模様の尻尾が目立ちます。 ワオキツネザルを含むキツネザルの仲間は、果実を中心に、花、葉、昆虫を食べます。 ↓(2)がキツネザルの手です。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243.htm こういう果実食のキツネザルの手は、指先がちょっと膨れているくらいでヒトの手と 似てますね。 でも、親指の使い方が違うんです。 ワオキツネザルたちが手で食物をつかむとき、親指は他の指に向かい合うのではなくて 脇に寄せることが多いんです。つまり手は「開くと閉じる」だけの動きで、 食物をつかむ事はできるんだけど、ちょっと不恰好でいかにも不器用そうに見えるんです。 人間タイプのしっかりしたつかみ方に比べると、 原始的で未発達という見方がかつてありました。 それは「ヒトの手の形こそ完全である」という思い込みです。 本当の事はそういう思い込みとはまったく離れた所にあります。 果実は丸いものが多いです。人間的なつかみ方は ニンジンのスティックを食べるのには便利です。 丸い果実をこのやり方でつかむと親指が果実を覆って邪魔になるんです。 リンゴのような大きな果実を考えてはいけません。 アンズやウメのような小ぶりのものを考えて欲しいです。 野生の木の実は、かなり小さいんです。そして丸いものが多いんです。 小さな果実を手の中に握って、そして食べようとすると親指を脇に寄せるしかないんですね。 でも親指はヒトほどじゃないにしても、そこそこしっかりしています。 それは果実をつまむという動作が必要なんでしょう。 マダガスカル島には竹を食べるのに特化したジェントルキツネザルの仲間や 赤ん坊を背中に乗せて滑空するシファカや、大型のインドリという魅力的な原猿類も 紹介したいけれど次に行きますね。 マダガスカル島の隣、アフリカ熱帯雨林の原猿アンワンティボの手がこれです。 (3)ね。↓ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243.htm アイアイの次くらいになかなか衝撃的な手です。 人差し指は単なる突起にすぎません。 アンワンティボの主食は、他の原猿類たちが見向きもしないような毛虫です。 蛾やコオロギなども食べます。昆虫食ですね。 アンワンティボは、毛虫を捕まえると両手で毛虫を数十秒マッサージするんです。 このマッサージで毛が取れます。 チカチカする毛を持った毛虫は特に念入りにマッサージします。 このマッサージは、毛のないイモムシやバッタ類にもします。 ってことは、生まれながらの行動なんですね。 アンワンティボの手の大きさは5cmほどで、毛虫の標準的な大きさよりもちょっと大きいです。 親指の付け根の突起と、人差し指の突起の間に毛虫を入れて、両手でマッサージすると 毛虫の毛をこそげ取るのに最も特化した手の形なんでしょう。 次は原猿から離れて私たちに最も馴染み深いニホンザルを見てみましょう。 ニホンザルの食性は多岐に渡ります。季節によっても違います。 植物性のものだけをみても370種という観察結果もあります。 日本の四季の移り変りにあわせて、最適なものを選び取っているのがニホンザルの生活です。 ↓(4)がニホンザルの手です。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243.htm 親指が短いくらいで、ヒトの手と似た印象です。 ニホンザルのは指の関節がよく発達しています。 ニホンザルの指先の骨はすべて先端が細くなっています。 これはどういう事かというと「つまみとる」という能力が物凄く発達しています。 毛についたシラミの卵もむしり取ることができます。 私が時々行く札幌円山動物園では、細かい砂利の上に、小麦っぽいものを撒いて わざわざ食べづらくしてニホンザルたちに与えるサービスタイムがあります。 これはニホンザルの能力を人々に見せるためと、サルたちのストレス解消にもなっています。 この麦拾い行動は、ガラス越しに間近に見れるんですけれど、 私には砂利の中の麦はまず見分けられないし、ましてやつまむ事は不可能です。 これほどニホンザルの手先は器用なんです。 ビデオの分析では1秒間に2.4回の速さで小麦を拾うという解析もあります。 次はチンパンジー。 これ(5)が手。↓ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243.htm 親指が短いですね。 ニホンザルが四足で歩くとき、手のひらを地面につけます。 それはヒトがよつんばいになって歩くときと同じですね。 チンパンジーは違うんですよ。 ナックルウォークなんです。 ナックルウォークとは、手の指を折り曲げて、関節を地面につけて歩く方法です。 チンパンジーは、木の枝の上を歩くときもナックルウォークなんです。 実はチンパンジーは、まっすぐ立っている太い木に登るのは、かなり苦手です。 そこから降りるのも苦手です。登れない事も多いし降りるときは落ちることもあります。 身軽なチンパンジーの印象とはかけ離れているけど、これはちょっと考えればわかります。 チンパンジーの棲む森はツル性の植物に覆われた森です。 チンパンジーの食物はツル性の植物の実や葉が多いんです。 チンパンジーの長い大きい指は、この太さのツルを引っ掛けるのに都合がいいんですね。 このタイプの指は、太い幹を抱いて上り下りできず、 枝先を引っ掛ける、ツルを引っ掛けるという樹上での行動様式に適しています。 それをそのまま地上移動に応用するとナックルウォークになるんですね。 指はいつでも枝先やツルを引っ掛けるやすいように自然に曲げてるんです。 親指が小さいのも、このためです。 ヒトタイプの親指は物を握りしめて固定します。 これってツルを握って移動すると危険なんです。 自転車や自動車のハンドルを握りしめて運転していると、制御不可能な時にハンドルが 勝手に回転した時、衝撃が直接、親指にきて大変なことになります。 ツル渡り、枝渡りもこれと同じことが起きるんですね。 チンパンジーだけではなく、同じ引っ掛けて移動するタイプでは親指は邪魔になるので 小さめです。 次はゴリラ。(6)がそれ。↓ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243.htm ゴリラの、グローブのようにごつい外観の手のひらと太い指は圧巻です。 親指はしっかりとしていて、それは主食を食べるために強く握らなければならないからです。 ゴリラの主食は、トゲの多い太いツルや大きな草です。 草やツルを引き抜いて、取り上げ、食べる前に皮を剥いたり丸めたりなどの加工をします。 ゴリラもナックルウォークで歩きます。 チンパンジーは、指を曲げて指の関節を地面に付けているのに対し、 ゴリラは、手の甲を地面に付けて歩きます。 これは引っ掛けタイプのチンパンジーと違って、ゴリラが食物を処理するのに しっかりと強力に握りしめるための違いなんでしょう。 さて。ここまでが前振りです。やっと今日のテーマのヒトの話になります。 たぶん前振りの方が長いです。(笑) まず石川啄木のように「じっと手を見る」ことをしてみましょう。 親指が一番太いです。 これは力を込めて握ることのできる特徴です。 力を抜くと手のひらに楕円形の空間ができます。(←ここ大事) これって、直径5cmほどの物を握りしめるためにすごく適しています。 親指と人差し指は簡単に向き合うので、こまかなものをつまむ事ができます。 歯は、サルの仲間としては例がない平坦なすり合わせ面を持っています。 臼歯の表面はつるつるで、葉食のサルたちのようなギザギザの噛みあわせではありません。 そして他の霊長類に例をみない程、歯のエナメル質が厚いという特徴があります。 最も硬い物質はダイヤモンドです。(硬度10) ダイヤモンドは、ヒスイ(硬度6.4)を簡単に傷つけることができます。 でも硬度のほかに靱性(じんせい)という「欠けにくい指標」があります。 最も靱性の高いのはヒスイ(8)で、それはダイヤモンド(7.5)よりも上です。 だからヒスイとダイヤモンドをぶつけると、ダイヤモンドが割れます。 と、本に書いてありました。 誰か試してみて結果を教えてください。(にこっ) このヒスイの微晶質繊維状構造が、エナメル質の繊維構造と似てるんです。 エナメル質は歯の表面を覆うものです。 その厚さが他のサルたちに比べて厚いとなると、ヒトの主食の性質と深く結びついていると 考えられるということなんです。 で、ここでヒトと言ってしまうとものすごくざっくりとした話になってしまいます。 かと言って、ここで人類の系譜のおさらいをすると本題と離れて話は終わりません。 でも初期の人類は何を食べていたか。 あごや歯の形状から、 アウストラピテクスは、植物を食べながら肉食動物の獲物の残りを食べていた説や、 パラントプス・ロブストゥスは、種子を含む硬いものを食べていた説、 ホモ・ハビリスは、植物を採取し、狩りをして肉を食べていた説など いかにもありそうな解説がまかり通っていました。 つまり、狩猟仮説、種子仮説、堅果食仮説、植物食仮説、小動物・根菜類仮説、 スカベンジャー(残肉処理)仮説、 などの仮説が出ては検証され、否定され、そのあらゆる組み合わせで折衷案がでたりして いたのです。 ヒトの歯の特徴はエナメル質の厚さのほかにも特徴があります。 犬歯が小さいこと、上下の臼歯ですりつぶす動きが容易なことです。 そこで出てきた仮説が、ボーンハンティング(骨猟)仮説です。 ほとんど無視されてきたんだけど、矛盾がないんですね。 わかりやすく言うと骨あさりです。 肉食獣の捨ててしまった骨を集めていた説です。 このボーンハンティング仮説を紹介します。 肉食獣は満腹の時が最も安全です。初期のヒトは、肉食獣が危険な夕方や夜ではなく、 彼らが満腹な昼間に活動していたんです。 骨には栄養があるか。まずこの問題に行き当たります。 もし骨で栄養を取れるなら初期のヒトの未来は明るいです。 骨髄には栄養があります。 今でも、骨からダシを取ってますしね。 ここで言っているのは骨髄はもちろんの事、骨そのものに栄養があるかという話です。 で、今、私が参考にしている「親指はなぜ太いのか」という島 泰三さんの著書によると たんぱく質、脂質、エネルギー、カルシウム、鉄、これら全部、 牛骨、豚骨、鶏骨は、ブタ肩肉に勝っているんです。 鉄分はホウレンソウの倍はあります。 そうなると次は、骨を食物にする手段の話しになります。 大型の肉食動物が見捨てた骨は、かなり大きいと考えると、それを口に入れるほど 小さく割る道具が必要です。 それがヒトの手です。 手の最もリラックスした形が作る空間に入るのは、石です。 これを下に向かってたたきつければ骨は割れます。 親指と人差し指で、石をしっかり握りしめることに向いているのがヒトの手です。 アイアイが堅いラミーの種子を歯で削るために、ラミーを押さえるために 体や手の割合に対して太い親指を持っています。 ヒトの親指も、他の霊長類に比べると親指が太い訳は、握りしめる必要があったからです。 それでは「ヒトの歯は、骨をすり潰すことができるのか」という問題が残ります。 ここで本の筆者は、実際にウシの肋骨を食べています。 ウシの肋骨を包丁の背でたたいても骨は砕けなかったで、躊躇したと言います。 もう一度たたくと、骨の端がわずかに欠けたのでそれを口にいれました。 当然、堅くて噛めません。 でも空腹のアウストラピテクスを思って、噛みしめるとわずかに骨が口の中で こぼれたんです。 いったんこぼれはじめると、歯で崩す要領がわかってきます。 ゆっくりあせらず「弱い部分を探し出す」という口の動きです。 あせらずゆっくり、歯の間で骨のかけらをころがしていって、 臼歯で前後左右にすり潰します。 骨は食べられます。 骨髄だけでなく、骨そのものも食べられるんです。 ヒトの持っている平らな歯列で、 下あごを前後左右上下に回転させて骨をすり潰すことができて この運動を根気よく続けると骨は食物になるんです。 世界の主食は、小麦、米、トウモロコシの三大穀物が中心です。 でも、これらはせいぜい数千年くらいの歴史しかありません。 この小麦、米、トウモロコシが保存ができることで、文明が生まれました。 でも、ヒトの体は穀物を主食として食べるようにはなっていないと思うんです。 さまざまな病気のモトもこのあたりに原因があるんじゃないかと感じています。 だったら何を食べればいいのか。 骨と同じ成分とその割合のものを食べればいいのではないか。そう思っている所です。 サルとヒトが分岐したのが、数百万年前。 ヒトは長い長い時間、骨を食べていたとしたら。 歯と手はそのために特化したとしたら。 ウシ、ブタ、トリの骨、かじってみる? ━■みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前号のこの欄で「人魚について考える(尾びれの向きからの考察)」という話を書きました。 それを読んだ「はるたまご。さん」と私のやりとりを紹介します。 ちょっと長くなるけど面白いです。 どうぞ〜。 --------------------------------------------------------------------------------- 【はるたまご。】 中生代のヒレを持つ水生爬虫類には、首長竜のほかに、「魚竜」というのがいます。 進化系統はあんまりよく判ってないんですが、 首長竜を含む鱗竜類(トカゲ・ヘビ系)や、カメを含む主竜類(ワニ・恐竜系)とは、 別の系統の陸生爬虫類から進化したもの、と考えられています。 魚竜の代表格であるイクチオサウルスは、めちゃくちゃイルカに似ています。 ただし、口はワニさんのように長く、鋭い歯を持ち、ぎょろりと大きな目玉があります(笑。 背びれと尾びれがあって、尾びれは垂直方向です。 なのでたぶん、泳ぎかたは「魚方式」、ジタバタ型だったんだと思います。 もう一種類、有名なものに、ショニサウルスというのがいます。 こちらには背びれがなくて、尾びれは水平方向です。 魚竜の中でも「変わり種」で、あまり鋭い歯はなく、手足のヒレがとても大きい。 こちらはたぶん、「ドルフィンキック」方式で、バタフライ型だったんでしょうね。 尾びれや背びれのある爬虫類は、魚竜の他には見つかっていません。 もちろん、彼らの祖先である陸生爬虫類には、ヒレなんかありませんでした。 魚竜はなぜ突然、こんなに見事なヒレを獲得したのでしょうか。 魚竜の全盛期は、三畳紀からジュラ紀にかけてです。 白亜紀には、海の王者は首長竜となり、魚竜は恐竜よりも早く絶滅してしまいました。 せっかく獲得した背びれと尾びれは、どうも爬虫類向きではなかったみたいです。。。 --------------------------------------------------------------------------------- 【みかりん】 はるたまさんの「ショニサウルスは水平尾びれを持つ」の主張には、 私は賛成しかねる立場をとる者になります。 魚竜イクチオサウルスは知り合いです。(笑) 私は尾びれの向きに関心があるのと同じくらい、「収斂進化」という現象が好きなんです。 その収斂進化のわかりやすい例として、 哺乳類のイルカと、魚類のサメと、爬虫類のイクチオサウルスの姿が似てるって説明に 出てきやすいんです。 まったく別系統なのに生活圏や生活様式が同じだと形が似てくるっていうのが収斂進化です。 話を進めます。 魚の左右ジタバタ方式は、水辺の両生類や陸に棲む爬虫類に引き継がれます。 陸に棲む両生類は足があるものでも、哺乳類の足のつき方が全然違うんです。 ワニやトカゲの足のつき方は、胴体から足が生えるときに一度地面と平行に突き出て、 そして地面と垂直になっているんです。 言葉だとわかりづらいですね。 つまりこれです。(笑) ┌(┌ ^o^)┐ホモォ この足のつき方だと体を左右に振るジタバタ方式で推進することになります。 このgifアニメを見てください。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/243-1.htm 左右ジタバタ動きになっていますね。(なんていう例だろ。(笑)) 足が胴の横に伸びていると、足を前に出す時、胴をくねらせなければなりません。 歩くたびに胴が動くので、呼吸がジャマされ、長時間活発に動くのは難しいのです。 ワニは走る時に、胴の真下に足をたくしこんで、走ることができるんだけど 長時間持たないんです。 哺乳類の足のつき方は違います。 胴体からいきなり垂直に地面に向かうんです。   /ヽ,,,/ヽ     (¬ ¬)   /ヽ,,,A) ̄ ̄ヾ〜   (       )   ||  |─┬| |   (__(_ _( _) で、このように胴体からいきなり足が向かうと、背骨が上下にというか前後にというか チーターが草原を走るときのように、背骨を一度縮めて、そして伸ばすという動きが できるようになります。 こういう動物が再び海で生活するようになると、体を前後というか上下というか そういう動きで泳ぐことになるので ドルフィンキックになって尾びれは水平になるんです。 だから、ショニサウルスがイクチオサウルスと同じ魚竜なら、垂直尾びれになるはずなんです。 もし水平尾びれなら一度陸にあがった動物が、 胴体から直接地面に足が生えるようになったものが再び海へという過程を 踏まなければなりません。 そうすると、イクチオサウルスとショニサウルスは同じ魚竜ではなく、 ずいぶん系統の離れたものになります。 足が胴の真下に伸びている場合、足を振り子のように動かすことで胴は影響受けないんです。 歩いても走っても、呼吸がジャマされないので、長時間活発に動くことができます。 足が胴の真下に伸びているのは恐竜、哺乳類、鳥類だけなんです。 そう、恐竜って直接地面に向かって足が生えているんですよ。 私が子どものころ、今の爬虫類の祖先は恐竜だって教えられました。 でも、今は違います。 現在の爬虫類と大昔の恐竜は別系統です。 恐竜は爬虫類の祖先ではばく、現在の鳥の祖先です。 足のつき方からもそれがわかるんです。 以上が、ショニサウルスが水平尾びれを持っていたとする説には 私は反対意見のものであるという説明であります。 wikiでショニサウルスを見ると、水平尾びれの魚竜のイラストが出てくるけどね。 で、画像検索すると垂直尾びれのイラストも出てくる。 化石から体を想像するっていうのは、それはそれは大変な事で、やっぱり想像なんです。 今までも、「こういう形だった!」と宣言したあとに、 上下さかさまだったりっていう例は結構あるんです。(笑) あれ? はるたまさんの文を改めてよく読むと、 >魚竜は、首長竜を含む鱗竜類(トカゲ・ヘビ系)や、カメを含む主竜類(ワニ・恐竜系)とは、 >別の系統の陸生爬虫類から進化したもの、と考えられています。 って書いてあった。 「陸生爬虫類から進化したもの」の可能性があるって事なんですね。 それならもしかしたら、水平尾びれの可能性があるのかもしれません。 ただ私の言いたかったことは、イクチオサウルスとショニサウルスは、 同じ「魚竜」枠に入れるなら、水平にしろ垂直にしろ同じ向きの尾びれでないといけません。 違う向きなら別系統って言いたかったのです。 --------------------------------------------------------------------------------- 【はるたまご。】 魚竜については進化系統があんまりよくわかっていないので、 イクチオサウルスとショニサウルスがまったく別系統の可能性はあると思います。 ただ、頭骨の形は両方とも「双弓類」で、爬虫類(恐竜・鳥も含む)であることは 間違いありません。 現生の双弓類は、「竜類」しか残っていません。 竜類は、「鱗竜類」と、「主竜類」の二大グループに分けられます。 で、魚竜はもっと前の段階で別れたグループなんじゃないの? って考えられているんです。 ええと、文章で書くとものすごくわかりにくい(笑。 つまり、こういうことです。 <双弓類>  ・魚竜類  ・竜類    →鱗竜類(首長竜・トカゲ・ヘビ系)    →主竜類(カメ・ワニ・翼竜・恐竜・鳥系) ショニサウルスの尾びれがほんとうに水平であったか、垂直だったのかはわかりませんが、 竜類の中でも、鱗竜類と主竜類はこれだけ形が違うので、 魚竜類の中でも、イクチオサウルス型とショニサウルス型がいても不思議はない気が するんですが、どうでしょう? --------------------------------------------------------------------------------- 【みかりん】 あー。 わかった。 やっと理解した。 爬虫類のジタバタ動き(尾びれ垂直)から、足が胴体から垂直に生える進化が起きたように、 魚竜類の中で、同じ分化が起きたって事なんだね。 だから、 <双弓類>  ・魚竜類    →イクチオサウルス型(泳ぐとき左右に背骨を振る)    →ショニサウルス型  (泳ぐとき上下?前後?に背骨が動く)    ・竜類    →鱗竜類(首長竜・トカゲ・ヘビ系)    →主竜類(カメ・ワニ・翼竜・恐竜・鳥系) っていう意味ね? うわぁ。それはどうだろう。 足の生えてる向きが違うってものすごく大きい変化だと思うんだよ。 そう頻繁に起きるのかなぁ。 そうしてどっちも現在に繋がらないでいなくなってしまう。 う〜ん。う〜ん。知りたいなぁ。 それから、これらの文を書いていて、突然インスピレーションがきて、判った事があった。 私の大好きなプレシオザウルス。 「のび太と恐竜」にでてくるピースケのような水棲爬虫類。 あれってたぶん海上から首出さないよね。 なぜ首が長いかというと、捕食のためだよ。海上に首を出す理由がないよね。 ティラノザウルスの姿勢が、 ゴジラのようにほぼ直立姿勢で尻尾を引きずっていたのに(これでは走れない) 現在では、頭から尻尾にかけて水平に直線でバランスをとって 二本足で走る事ができる形に訂正されたように。 たぶん、プレシオザウルスは海の上から首を出してはいない。 今、急にそういうイメージが来たよ。 水中で首を伸ばして獲物を追いかけているイメージ。 もし空気を吸う必要があるとしても長い首を全部出して伸ばす意味はない。 鼻だけちょっと出せば用は足りるし。 --------------------------------------------------------------------------------- 【はるたまご。】 プレシオサウルスは爬虫類なので、肺呼吸です。 なので、海面に鼻先を出して呼吸する必要はありますが、 みかさんの仰る通り、首を上に高く突き出す姿ではなかったと思います。 骨の構造を調べてみて、下向きには可動範囲が広いけれど、 上向きにそっくり返る姿勢はできないことが判ったんです。 ちなみに、上のコメントでは省略しちゃったんですけど、 主竜類も、もっとちゃんと書くと、こうなります。 <主竜形類>  ・カメ  ・主竜類   →クルロタルシ類     →ワニ  ・鳥頸類   →翼竜   →恐竜     →鳥盤類(トリケラトプス・ステゴサウルスなど、角や盾、剣などを持った草食恐竜)     →竜盤類       →獣脚類(ティラノサウルスなど、強い肉食恐竜)         →鳥       →竜脚類(マメンチサウルスなど、首の長い草食恐竜) テストに出やすいのは、「鳥の祖先は竜盤類か、鳥盤類か、どっち?」というところですね(笑。 つい、「鳥盤類!!」と答えたくなりますが、正解は「竜盤類」であります。 カメさんの位置については、まだまだ議論が紛糾していますが、 いちおう、今のところは「このへん」っていうのが主流です。 ステゴサウルスなどの鳥盤類が哺乳類のような「まっすぐ足」を持っていたことが判ったのは、 ほんの数年前です。 そもそも、こんなにいろんな種類がいる「恐竜」を、一括りにしちゃっていいの?  という議論もまだ続いてます。 恐竜の中でも、鳥の祖先はごく一部なんですよね。 イクチオサウルスとショニサウルスについても、 今のところは他に分類ができていないので、「魚竜」として一括りになっちゃってますけど、 もしかしたら近いうちに、全然別の種類として分けられるかもですねー。 --------------------------------------------------------------------------------- 【みかりん】 プレシオザウルス。 >骨の構造を調べてみて、下向きには可動範囲が広いけれど、 >上向きにそっくり返る姿勢はできないことが判ったんです     ↑ ここ重要ですね。テストに出ますね。(笑) これで「のび太と恐竜」がどんどん間違ってることに。 ピースケは「恐竜」ではなく「水棲爬虫類」で、水面から首を長く出さないし。 この水面から首を長く出すというイメージで描かれた本が他にもあって 皆、台無しですね。 「遠い海から来たCOO」 景山民夫 「霧笛」        レイ・ブラッドベリ 私の大好きなプレシオザウルスが出てくる物語は、 皆、水面から長く首をもたげるイメージで描かれています。 >テストに出やすいのは「鳥の祖先は竜盤類か、鳥盤類か、どっち?」というところですね(笑。 >つい、「鳥盤類!!」と答えたくなりますが、正解は「竜盤類」であります。 うんうん、ここテスト問題の引っ掛けですね。 私もこの事実を知った時、なんだよー、騙そうとしてるじゃんって思ったし、 たぶん知った時そう思った人は98%以上いると思われ。 たぶんね、混乱のすべての原因は、はるたまさんの以下のお言葉に集約されますね。                 ↓ >そもそも、こんなにいろんな種類がいる「恐竜」を、一括りにしちゃっていいの? ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★私は固いものを噛み砕くのが好きで、飴なんかは口に入れても最後まで舐めて  いることができません。齧り割ってしまうんですね。  ケンタッキーフライドチキンの骨なんかは、  他人様の目がなければ噛み砕いています。(笑)  だからメイン記事で紹介した、本の筆者のウシの骨を食べる描写に違和感はなく、  「そうだろな、口の中でゆっくりなぶっていれば骨は溶けるように崩れるだろう」と  感じました。 ★前号に引き続き、尾びれの水平・垂直問題について思う存分書けたことに満足です。  で、スターバックスのロゴの話をしたくなりました。  スターバックスのロゴは、人魚なんです。  http://hitoriokaken.com/?eid=180  ここ見て。  スタバの人魚の後ろ向きからのイラスト。(笑)  で、このサイトを読んでいくと、スタバの人魚は尾びれが二つあったらしい。  なんで尾びれがふたつなんだ?って疑問に思ったんだけど  足が二本あるから尾びれが二つなんだね。  そうなると泳ぎ方はバタフライではなく、バタ足になるんだよ。  人魚はドルフィンキックではなく、バタ足の可能性あり。  また私の脳内での「尾びれ問題」に新しい風が吹いたようです。(笑) ★vol.243の参考にした本      親指はなぜ太いのか  著/島 泰三    中央新書 ★ラジオ山猫通信の過去の放送 (2010年1月4日第9回放送〜2015年12月22日第152回放送)が、  パソコン、スマートフォンから聴けます。  http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm  ↑ここの右側「ラジオ山猫通信」って所をクリックしたら聴けます。  1回〜8回の放送分は聴けません。  あまりにしゃべりがヘタ過ぎて、音源を貰えなかったんです。  後半になるにつれてどんどんしゃべりが上手になっているように聴こえます。  でも、それは編集がどんどんうまくなってきているんですね。(笑)  語るテーマによっては、とてもしつこくて何言ってるかわからないものもあります。(笑)  やまねこ通信ってのは読み物であって語るものではないんだなと思い知りましたよ。  でもラジオでしかやれない事もいろいろ挑戦しました。  どうぞお時間のある時に聞いてみてください。  そして過去のメルマガ版もどうぞ読んでみてください。   ★私はいつも「やまねこ通信 E=MC二乗」の事が頭の隅にあります。  次回テーマは何にしようかと常に思っています。  「やまねこ通信 E=MC二乗」は、私みかりんを構成している大事な要素です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹     ★彡★彡★彡★彡★彡『蟹屋 山猫屋』★彡★彡★彡★彡★彡 生まれも育ちも北海道育の“みかりん”が、北海道の味覚を全国の方に広めるために 『蟹屋 山猫屋』を立ち上げました。一級品の道産品をお手ごろ価格でネット販売! 読み物としても楽しめるものを目指しているよ。    登録はここ→ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/kani/   山猫屋の蟹は冷凍ガニではありません。ボイルしたてを食卓に直送! 蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹蟹    ↑↑↑  私、みかりんのもうひとつのメールマガジン。  北の味覚。海産物。蟹おいしいよ〜。海水ウニもありますよー。  予算はこれくらい。食べる人数はこれくらい。と教えてくれたら、その中で  できる限りのご提案をします!山猫屋の蟹は冷凍物は扱っておりません!  さぁ、タラバ食べたいよう、毛ガニ食べたいようのメールをみかりんに書こう。  毛蟹の良いのが入荷してきています。  北の食材たちは脂が乗っておいしいです。  この機会に、どうぞ冷凍ではない蟹を!  ご贈答に、山猫屋の海産物を。 それじゃ、今回はここまで。 あなたのお便り待ってます。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「原猿」と書きたくてキーボードを打って「減塩」と表示され、 何が起きたのかわからず、しばしフリーズした。(笑) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.243  2016年6月5日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さには  まったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。  それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━