2002/4/10━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.64 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 去年の9月、英国科学振興協会(BAAS)は、世界一面白いジョークを見つける計画を 発表。そして同年12月、BAASは結果発表。  シャーロック・ホームズと助手のワトソン博士がキャンプに出かけた。  ふたりは星空の下、テントを張って眠りについた。  真夜中近く、ホームズはワトソンを起こした。  「ワトソン君、上を見上げて君の推理を聞かせてくれたまえ」  「無数の星が見える。無数の星の中に、惑星を持つ星がほんの少しでもあるとした   ら、地球のような惑星が存在する公算は大きいし、地球のような星が少しでも   あれば、生命が存在する可能性もある」  「ワトソン君。君はアホか!テントが盗まれたんだよ!」 新しく登録して下さった人、はじめまして。  ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ━■トキの話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ トキはかつて、ソ連の南東部、中国の東北・中央および南東部、台湾、朝鮮半島や日 本に広く分布していたんだ。 だから個体数もそれほど少なくなかったはずなんだけれど、生息数を知る資料はほと んどない。 ソ連の南東部では、1850年代にトキが発見されるけれどその頃はすでに稀な鳥だっ た。20世紀に入ると湿地の乾燥化と狩猟が原因で減少。繁殖は1917年、生息は1963年 の記録を最後に絶滅。 中国では、1900年以降も地域によってはかなり普通に生息していたんだけれど、1950 年頃になると少なくなり、1964年の甘粛(カンスー)省の記録を最後にいったんは絶 滅したと考えられた。 朝鮮半島では、日本の研究者によって“幾千”羽もの群でねぐらにつくトキが観察さ れた。 でも1940年代から急速に減少し、74年に4羽、77年に2羽、78年に1羽、その後記録は ない。 日本では、江戸時代の前期は、北海道、東北、関東、北陸などに分布していたんだ。 江戸時代中期から後期には、さらに近畿、中国、九州へと生息域が広がった。 理由は、狩猟が特権階級のものとなり、御猟場や禁猟区が設けられたから。 さらに、金沢、広島、徳島では、トキを移入して放鳥するという増殖策も撮られたん だ。 こうしてほぼ日本全土にトキは広がって数を増していったんだ。 そして明治になって急激に姿を消すことになる。 これは江戸時代の狩猟制度が崩れ、新たな制度が設けられる空白期に、狩猟が野放し になった上に、高性能の銃が使われるようになったからだ。 トキが法的に保護されるようになったのは実に1908年(明治41)になってから。 その頃はすでに極端に数は減っていたんだ。 1920年頃には、トキは絶滅したと考えられるようになった。トキが普通に日本にいた ときから50年後の事だ。 絶滅した思われていたトキは細々と生き残っていた。 1929年に能登半島で20羽。1931年に佐渡で60〜100羽。 1952年に特別天然記念物に指定。 でもその20年の間にさらに数は減り、能登で10羽以下、佐渡で20羽。そして戦争。 戦後、再度トキの保護が叫ばれるようになった頃、その頃から水田で農薬が使われる ようになってきた。 農薬は餌動物を根こそぎ駆除し、汚染した餌のための中毒死という両面からトキを 脅かした。 能登半島のトキは64年以降1羽となり、6年後に佐渡に移され翌年死亡。 佐渡では営巣は1〜2巣あるけど、巣立ちは少なく、74年の2羽を最後に雛の巣立ちは ない。 1981年野生のトキ5羽は人工増殖のため、捕獲されて飼育下に置かれた。そして2年後 産卵直前でタマゴ詰まりを起こし雌が死亡。この時点で事実上日本産のトキの運命は 決定付けられたしまったことになる。 そうして現在、再発見された中国産のトキと交配し、日本産のトキの遺伝子を絶やさ ないように躍起になってニュースになっているんだ。 「トキの数が減ったのは、生物学的に滅びる運命にあったからだ」と考える人もい る。 だけどこれらのトキの歴史を知ると、とてもそういう事ではないと判るだろう。 ━●みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「島の食事と幸せ」 はるか遠い鹿児島県の薩南諸島。 鹿児島から船で5時間。硫黄島に近い黒島で、しゃがみ込んでおしゃべりしているお ばあさんたち。 明治生まれの、最年長で一番元気なおばあさんが先年、年下のおじいさんと離婚した という。 「食い物の好みが合わんようになったんじゃ」 連れ合いが、肉や魚中心の食生活を好むようになった。この島も現在では日常のほと んどの食材が鹿児島から船で運ばれてくる。 だけどおばあさんは、サツマイモと、野菜でこしらえた汁しか食べない。 一日二食。 こうした自給自足の食生活は老人世帯でも少数派になった。 「内地の物を買い食いするような贅沢な事を私はようしません」 彼女は生まれてから一度も「鹿児島には上がったことがない」と言う。 鹿児島に上がるとは、病院へ行くことを意味するんだ。 老人たちは鹿児島で入院することを極端に嫌がる。 それは死ねば火葬にされるからだ。この島では現在でも島内で亡くなった場合に限り 土葬が許される。 おばあさんたちは 「(埋葬してもらう)よか場所を決めた」 「どこな、どこな」 と声を上げて笑う。 島では過疎で公共工事に頼らなければ生きていけない現実もあるけれど このお年寄りたちから、幸せって何か考えさせられる。                    日高恒太郎 著                    「島の食事」(透土社刊)より ━●ネイティブ日本人の思想(4)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「“あの世”と“この世”をつなぐ柱」 こうして死んだ人間の魂は、行きにくい人も引導を渡されたりして、とにかくあの世 に行く。 あの世の人と、この世の人の関係はまったく断絶している訳ではないんだ。 その媒介物は「柱」。 古事記には「天の御柱(あまのみはしら)」というものが出てくる。これは天と地を 繋ぐ橋のこと。 この御柱を伝って神々が地上に降りてきたという話があるんだ。 古事記には「天の浮き橋」というものもある。これは虹のこと。この七色の橋を伝っ て神々が人間の世界に降り立ってきたし、人間も神々の世界へ行くと考えられたのだ ろう。 丹波風土記では、日本三景のひとつの「天の橋立(はしだて)」は、その名の通りに 天に向かって直立して立っていて、神々や人間が行き来していたという記述がある。 神々が眠っている間に、橋が倒れ、地上に細長く横たわってしまったというんだ。 柱は縄文中期から重要な宗教的な意味を持っていたらしく、北陸地方などに次々と ウッドサークルの遺跡が出てくる。 こういう遺跡からは、諏訪大社の御柱(おんばしら)の祭りの意味が解けてくる。 この祭りは、7年に一回行われる勇壮な祭りだ。 16本のオンバシラを建てる祭りなんだ。 柱を建てる話しは、推古天皇の時代にもあって、各氏族が競って高い柱を建てた。 この時代は、仏教の興隆時代で飛鳥寺、四天王時、法隆寺が建てられている。 それなのに仏教と関係のないこういう柱を建てる話しが語られるのは、日本の風習と して地上の神の渡る柱を建てるのが重要な意味をもっていたんだろう。 20年に一回行われる伊勢神宮の建造も「心の御柱」という本殿に埋められている柱 を建てることから始まる。 巨大な樹木も柱と同じ役割をするんだろう。 御神木といわれるものは、初めは神々の通路となる木だったんだろうけれど、 その内、木そのものが崇拝されていったんだ。 山も岩も、人間と神、あの世とこの世を繋ぐもの。 こうしてあの世とこの世は、お互いにつながりをもつ世界だったんだ。 ━▲やまねこ投書箱━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ アメリカ留学中のじろさんが、日本人と西欧人の思考方法の違いについて感じたこと を投稿してくれました。 ------------------------ [じろ]  僕の友人のトムさんが以下のようなメールをくれました。   ::::::::::::::::::::::::::   日本文化史の授業で今でも印象に残っているのが、小林達雄という人の残した   「美しい花がある。花の美しさというものはない」という言葉なんですね。   文化史の菅原先生は「前者が日本人の思考、後者が西欧人の思考」という風に   この言葉を説明していたんだけど、僕はこれを芸術へのアプローチの方法論だと   理解した。   つまり、「これは▲▲だから、この○○は良いものだ」というアプローチでは   なく「この○○は▲▲だ。これはどうして▲▲なのだろう?」というアプローチ   が大切なのだということですな。   そういう観点から言えば、まずは心を空っぽにして「感じる」ことが大切なの   であろうと、自分にいいように楽なように解釈しているのであるがどうか。   ::::::::::::::::::::::::::  トムさんからのメールを読んで、vol.61の投稿であった鯨に関する討論を思い出し  ました。  「鯨は数が少なくなってきたから、この鯨は貴重だ。保護しなければ。」  というのが投稿のなかであったアメリカ人の考え方ですね。  「鯨の数が少ない。どうして数が減ったんだろう。」  つまり捕鯨だけが原因ではないし、他の要因もあるはず。また鯨そのものの動物的  能力、魅力を感じられたら幸せだなと思うこのごろ。 ------------------------ 私が、常日頃大事にしたいと思っている事は「感じること」です。 私は、絵を教えているのですけれど、生徒さんによく言うことのひとつに 「用意されたモチーフをただ描くのはやめて下さい。まずそのモチーフを“見て”下 さい。そして感じて下さい。感じるまで鉛筆を持たないで下さい」ということなんで す。 だから、じろさんの「鯨そのものの動物的能力、魅力を感じられたら幸せだなと思う このごろ。」 という言葉に感じ入ったのです。 「美しい花がある。花の美しさというものはない」 そうなんです。 花が美しいと思う感性があるんです。花の美しさというものがある訳ではないんで す。花はそこにあるだけなんです。 次は、宇宙ネタが得意なsho1さんの投稿です。 vol.63の「アポロ月面着陸はウソ?」の感想です。 ------------------------ [sho1]  まぁ、月に行ってない証拠のところは、一部だけ書きます。  ツッコミ所が多すぎて、書ききれません。  旗がなびいてるのは、針金で固定されているからです。  なびき方もそれっぽく固めてあるだけです。  写真をよく見たら、針金が通っているのがわかります。  ストロボですが、宇宙用のカメラには、特別に大きなフラッシュがついています。  これを使えば可能かもしれません。逆光の事もこれで解決と思われます。  月の影の温度は、マイナス250度よりも高いことがわかっています。  影というより、夜の気温は-170〜-185℃です。昼の温度は約130℃とされていま  す。  ココまでは、番組で言ってた内容への突っ込みですね。  ココ以降は、みかりんさんのコメントへの突っ込みに…  アポロ1号の火災事故は有名ですが、このときハッチは外開きだったはずです。  コックピット内の純粋酸素が火災によって急激な気圧低下を引き起こし、外部の大  気圧によってハッチが開かなくなったと記憶してます。  ちなみに、この事故現場は現在でも保存されていて、追悼のプレートが掲げられて  います。 (映画「アルマゲドン」に出てきます) ------------------------ vol.63のみかりんの叫び「アポロ月面着陸はウソ?」で紹介した番組「これマジ?」 を観ていない方に、どういうフウにしたら説得力あるかなと考えてこんなページを 作ってみました。↓ http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/flag.htm 旗がハタハタとはためく様子が見ることが出来るように工夫しました。 2枚目の画像をクリックすると旗がなびいているように見えるかも知れない動画を見 る事が出来ます。 読み込むのにちょっとだけ時間がかかります。 ダイアログが出てきたら「このファイルを上記の場所から開く」にチェックをして見 て下さい。 ・写真のサイズを示すメジャーの「+」印が対象物の後ろにある ・光源が複数ある という写真も紹介できればよかったんだけれど、用意できませんでした。 (光源については写真が不鮮明だね。もっと鮮明な写真を紹介したかった。) vol.63で紹介していなかった「怪しい点」をここで紹介。 ・アポロ11号のアームストロング船長が「人類の偉大な第1歩」を月面にしるすと き、カメラは下から撮っていた。そのカメラマンは月面に横にならなければ撮れない アングル。それは誰? ・アポロ12号から月面に降り立った飛行士は2人だけ。その2人が月の上を歩き回っ ていたとき、いったい誰がその写真を撮ったのか。 ・アポロ14号の時、月面でゴルフをやってみせる。そのとき打ったボールが右へスラ イスする。スライスというのはボールの表面を流れる空気流が均等でないときに 起こるのではないのか。 ・アポロ16号が月面から飛び立つときに、無人のはずのカメラがアングルを追ってい る。 ・月面から撮った写真は、どれも背景の夜空に星が写っていない。ハッブル望遠鏡で は星が見えるのに。 他にもまだ色々あるけれど、この辺でやめておこうっと。 さて。前号を読めば解る事だけれど、誤解して欲しくないのは、私は「アポロの月面 着陸をウソだろ?」と言っているのではないんです。私にとってアポロ月面着陸は 「疑う」という観念さえなかったんです。不動の認識だったんです。 けれど、このアポロの偉業に「妙だ」と難癖をつけた人々がいる。しかもその理屈は それはそれでスジが通っている。って事にとてもショックを受けたんです。 本当の事なんて何も解っていないし、知らされていないし、こりゃぁ、世界っての は、私が生きてきて見聞してきたよりも、もっともっと混沌としていて面白いかもし れない。って事の一事例としての「アポロは月面着陸に行ったか」なんです。 あの番組で取り上げた視点は、私の脳を刺激しました。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★やまねこ通信vol.44のみかりんの叫びで「国鳥トキから思うこと」を書いた。 その時、末尾で「(トキについて)改めて書いてみようと思う」と書いた事が やっと日の目を見たよ。 この「トキの話」で紹介したように、世界的にトキが減っている中で、日本では江戸 時代に分布域を広げ、数を増やしているんだよ。 ここにヒントがあると思うんだ。 どうもね、「自然保護の重要性を一般の人に説得するより、富豪の理解を得る方が早 道かもしれない」って事なんだ。(苦笑) 生態系全体をがまるごと収まるほどの広大な土地を買い上げる。気候変動が起きても 生物が南北に移動して対応できるような、とてもとても広い土地。 実際そういう例があるんだよ。 ターナー(CNNの創設者)、ムーア(インテルの共同設立者)、マッカウ(情報通信 産業界の大物)といった支援者からの寄附金で南米の原生林を木材企業の手に渡さず に済んだ事例があるんだ。 ★冒頭の挨拶文の所に載せた話は、英国発です。 去年の9月といえば、911のテロ事件で世界は騒然としていた頃。英国人ってのはど うも妙な所のある国民性のような気がしてきたよ。(笑) だいたいね、ネス湖のネッシーを私は小学生の頃からすっかり信じ切っていて 「確かな証拠を見つけることが出来ないのなら、私が大人になったとき絶対イギリ スに行ってネッシーを見つけちゃる」。そう思っていたんだよ。 それが模型だったなんて白状されても。 ミステリーサークルもあれはイギリス人の仕業だしね。 ★次回配信予定は4月20日です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 ★メルマガ相互宣伝です!  バックナンバーを読んでみて、気に入ったら購読すると良いよ。 ==PR==================================================================  ━━━━━━━━━━━━━   ■ ホームワーク  数学Lecture 〜初歩から応用まで〜 ■ Perspective  ━━━━━━━━━━━━━ ● 発行・毎週月曜日+木曜日  >>> 登録・・・→ >>> http://yuki.to/math2/index.html ==================================================================PR== それじゃ、今週はここまで。 あなたのお便り待ってるよ。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ギョウザの大量生産〜♪ このところ怖くて体重計に乗っていない。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.64  2002年4月10日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: ◆インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ 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