2002/4/20━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ1万部! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆         やまねこ通信 E=MC二乗                                vol.65 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 和名の春の色をちょっと並べてみるね。 ・若芽色(わかめいろ) 若芽のような薄い黄緑 ・若苗色(わかなえいろ)田んぼに植えたばかりの早苗のような淡い黄緑 ・若葉色(わかばいろ) 生え出たばかりの草木の葉の明るい黄緑 ・若草色(わかくさいろ)若草の新鮮な黄緑 ・萌葱色(もえぎいろ) 葱の萌え出る色、日本の伝統色の中でも黄緑色の代表色             萌黄色、萌木色とも書く。 北国の春はこれから。 木々は、これからいっせいにこれらの色の葉をまといはじめる。 今は、その直前。 新しく登録して下さった人、はじめまして。  ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ━■最後通牒ゲームの話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ まずゲームのルール説明をしよう。 ここに100ドルある。これをふたりで分け合わなくてはならない。 2人は別々の部屋にいて情報交換は出来ないし、相手が誰かもわからない。 コイン投げをしてどちらかが「提案者」になるか決める。 提案者は100ドルをどう分けるか、つまり相手の取り分をいくらにするかを1回だけ 提案することが出来る。 もうひとりは「回答者」となり、その提案に対してYESかNOを答える。回答者ももち ろんこの規則と金額は知っている。 回答がYESなら取引は成立し、提案通りの金額を各自が受け取る事が出来る。 NOなら100ドルは没収され、2人とも何も得られない。 ゲームは一回限りでやり直しは出来ない。 さぁ、あなたが提案者なら、どう提案する? お互いの取り分が半分ずつになるように提案するべきだと直感的に考える人が多いの だろうか? そればらフェアだから、相手も受け入れやすい。 でも大胆な人なら相手の取り分がやや少なくなるような提案でも相手が受け入れてく れて、まんまと過半を手に入れることができるかもと、考えるかもしれない。 あなたが回答者ならどう答える? 回答者に出来るのはYESかNOと答えるだけだ。 仮に取り分が10%のような提案が来たらどうだろう。10ドル受け取って提案者に90ド ルをみすみす持っていかせるのか、それとも2人とも何も得られない方を選ぶだろう か? もし、1%なら? 1ドルでもないよりマシ? 実際にこのようなゲームをすると、総額の40〜50%を相手に与える提案が全体の2/3を 占めたんだ。相手の取り分が20%未満になるような提案をしたのは100人の内4人だけ だった。 このような低額の提案は拒否されるリスクが高い。(実験ではこのような提案には半 数以上が拒否) さてここで疑問が出てくる。 取り分が少ないとはいえ、提案を拒絶する理由はどこにあるのだろう? 利己的で合理的な人にとっての選択は、どんな提案でも受け取る事ではないのか? 「ヒトは利己的で合理的に行動する」と仮定すると、「提案者は出来るだけ相手の取 り分を少なくし、回答者はどんな提案も受け入れる」はずなんだけれど、ほとんどの 人はそういう行動をしない。 生物が自分や自分の遺伝子にとって必ずしも有利と言えない行動をとるようになった のは何故だろう。 ダーウィン流の自然淘汰を通じてこうした進化がどのようにして起きたのは何故だろ う。 この最後通牒ゲームは20年前に考え出されて各地で実験されてきた。 結果は、各地で驚くほど同じ傾向を示したんだ。 インドネシアの実験では分配金の総額が参加者の平均月収の3倍でも、自分の取り分 が少な過ぎると思える場合、人々は憤然と拒否した。 このゲームは比較文化の研究に利用されて、小規模社会での実験も行われている。 アマゾン川流域に住むマチグエンガ族の場合、相手の取り分に関する提案額は平均で 総額の26%で、先進国の45%よりもずっと少なかった。 パプア・ニューギニアのアウ族では、相手の取り分が半分以上に提案する人が多かっ た。 ここでは、贈り物を受け取った際に生じる強い義務がある文化的伝統があった。 そのためアウ族の人は、取り分が少ないときだけではなく、多過ぎるときも拒否する 傾向があった。 こうした文化の多様性はあったものの、いずれの実験結果も「参加者が利己的に行動 する」という予想からは、かけ離れた結果になったんだよ。 世界中のほとんどの人は、公平性を重んじていて、自己の利益を最大にしようとする 利己的な人間ではなかったんだ。 私たちは日常生活のさまざまな局面で、利己と公平を天秤にかけている。 この最後通牒ゲームは、ほんとうは「ヒトは自分の利益を最大にするような行動をと る」と仮定していたゲーム理論なんだよ。 でも予測より寛容に振る舞う事が多い。 反対に不公平な振る舞いには損をしてでも仕返しする。 そのため仕返しを避けるため公平に振る舞う方が得になってくる。 ヒトは数百万年もの間、小さな社会で暮らす感情を進化させてきた。 不公平に対して仕返しをするという行動は、長い目で見て社会にとって利益をもたら したんだろう。 ━●みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「イルカはヒトを癒している訳ではない」 自閉症児やダウン症児や心に傷を負った子どもに、イルカと遊ばせると症状が劇的に 好方に向かうという。 イルカにはあのきゅるるるるといいう声の他に、カタタタタタという声が出る。 どうもその音を浴びるとヒトの脳にシーター波が現れるらしい。ベーター波やアル ファ波と違って、シーター波は通常覚醒状態では現れることは珍しい。 イルカと泳いだ人は、「イルカと遊んでいると何かを浴びたようになって、それがと ても気持ちよくそして癒されたと感じる」と言う。 そして「イルカには人を癒す力がある」「イルカはすばらしい」「イルカには未知の 力がある」と絶賛する。 う〜ん。私はこの手の話は胡散臭く感じる感性の持ち主なんだ。(笑) イルカは肉食動物で、砂に隠れている魚をカタタタタタという音で見つけだし、 ハンターなので魚を追いかけハンティングする。 イルカはイルカが生き抜くために必要な機能を持っている。それだけだ。 もちろん、イルカにはヒトを癒そうなどという意識はない。 もしイルカにヒトを癒す力があるのなら、それはイルカが意識したものではない。 その能力をヒトが利用しただけの事だ。 ウシやヤギの乳を利用するのと同じ、動物を利用するヒトの知恵だ。 花は何のための咲くのか。 その美しさや可憐さを楽しんだり慰められたりしているのはヒトの勝手だ。 花はそんなことを目的に咲いている訳ではない。 水や温度など条件が合えば咲く。誰かが見ていようが見ていまいが咲く。つべこべ言 わずに咲く。 イルカは水の中で、形や距離を判断するのにカタタタタタという音を出しているだ け。 そういう性質の生き物なんだ。ヒトに喜ばれようとイヤがられようとそれはイルカの 知ったことではない。 「何故生まれたのだろうか」とか「何のために生きているのか」など理由付けに忙し いヒト。 水をやったら芽が伸びて花が咲く。そういう明快さで十分カッコイイ。 ━●ネイティブ日本人の思想(5)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「あの世の人が来る」 ときどき、あの世の人がこの世へ迷い込んでくることがある。 犬は、あの世からこの世に迷って来た人を見分ける力があると思われ、大事にされて きた。 縄文時代には丁寧に犬が葬られている。これはあの世の人を見抜く力を尊敬されてい ることを示していると考えられているんだ。 あの世の人が時を決めずに、この世に迷い込んで来るのは困るので、お正月とお盆 を、あの世の人が帰ってくる特別な日と決めたんだ。 門松はご先祖様がこの世に帰ってくる目印なんだよ。そして本当は家々ごとに作り方 があって、自分の家の門松と隣の家の門松は違っていたんだ。 今では、門松を作らなくなった。それは土地が狭くなっただけではなく、祖先を迎え る儀式としてのお正月の意味がなくなったからなんだ。 お正月にはたくさんの人がお年始にくる。すると祖先は相手にされない。それでお正 月に祖先を迎える意味がだんだん失われてきたけれど、お盆はまだこのような意味を 持っている。 お盆は公式の休日ではないけれど、ほとんど事実上、官庁や会社も休日となる。 日本の祝祭日は、この世の人を中心に決められているので、あの世の人を迎える日だ という理由で設けるわけにはいかないんだ。 で、お盆は公式には休日ではないけれど、祝祭日以上の祝祭日としてお休みになるん だよ。 お盆は、田舎へ帰ってお墓参りをするものという考えもまだ残っている。 そして年一回のお盆にお帰りになったご先祖様に出来るだけご馳走を作って召し上 がってもらって、自分たちも一緒に食べる。 日本の祭りでは、一緒にものを食べる共食というのが大事なんだ。 そうしてご先祖様は送り火に送られて、あの世へ帰っていく。 お盆には、ご先祖様と一緒に、救われぬ霊も一緒に帰ってくるんだ。そのような霊の ための供養もしなければならない。それがお盆なんだ。 「死ねば何処へ行く?」と聞けば、多くの日本人は「極楽浄土」と答えるかなぁ。 でも極楽浄土って所は、西方十万億土にあって二度と帰ってこれる所ではないんだ よ。 でも、死ぬとご先祖様になって、ときどきお正月やお盆に(今はお盆だけになっ ちゃったけれど昔はお正月も。それとお彼岸)里帰りしてくる。 里帰りするのは、極楽浄土じゃなくどこか近くのお山やお山に近い“あの世”へ 行ったんだね。 日本人の心にある、死んでから行くあの世のあいまいさ。 それは極楽浄土のようでいて、あの世っぽい。 表面的には仏教だけど、実質的には土着信仰のあの世。 ━▲やまねこ投書箱━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前号vol.64で「トキの話」を紹介しました。 で、「『トキ』について知っている情報を提供したい」とメールを貰いました。 ---------------------- [Aティガ]  ・トキを材料にしたトキ鍋は明かりをできるだけ暗くして食べることになっていた  そうです。基本は小さなろうそく1本だけの明かりで食べること。理由はトキの肉  は煮ると真っ赤な血の色になるので白日のもとでは食欲を失ってしまうからだそう  です。  ・北海道にも実はトキの剥製があります。小樽潮陵高等学校の理科室です。明治時  代にこの学校に寄贈されたそうですがなぜか現在の管轄は環境省になっています。  このトキの剥製をみることは自由なんだそうですが勝手にクリーニングをすること  は許されず、必ず環境省に伺いを立てなければならないとのことです。  ・トキは動きが鈍く、よたよたと歩く鳥なので捕獲されやすかったそうです。  この点はドードーに雰囲気が似ているかもしれません。 ---------------------- トキ鍋なんてものがあったなんて。 しかも食欲をなくすようほどの紅色の鍋!。「ロウソク1本の灯りのもとで食べる 事」などという約束事……。いやぁ、想像力を刺激されます。食べ終わって電灯を ともすと口のまわりを赤く染めた幾人かの顔と、中央には赤い汁が残っている鍋っ! いったいあなた達は、何を食べたの! 食べ終わった現場だけ見た人はそう叫びたく なるのでしょうか。(笑) ドードーは、美味しくなかったそうですね。 ドードーは、1505年頃にポルトガル人に発見されたんです。 その時のポルトガル人は、もうほとんど遭難状態で餓死寸前に、ドードーの楽園モー リシャス島に漂着したんです。 で、上陸したポルトガル人は、さっそくドードーを捕まえて焚き火で焼いて食べよう としたんだけれど、あまりのまずさに吐きだしてしまったんだそうだ。餓死寸前の人 も吐き出すまずさ!(笑) ドードーの住んでいたモーリシャス島の特産の大木のカリヴァリアは、ドードーの絶 滅によって絶滅しそうなんだ。 この木は、かつてモーリシャス島に繁茂していて用材として切り出されていたんだ。 でも1973年には13本の老木しかなくていずれも樹齢300年を越えていた。 カリヴァリアの木は毎年種子を落としていたのに若木がないんだよ。っていう事は 300年も発芽していないって事なんだ。 ドードーは巨大なクチバシで地上に落ちている直径5cmもあるカリヴァリアの種子を 食べた。種子はドードーの砂嚢(さのう)の中で1.5cmもある硬い殻を削られ、消化 管で溶かされ排泄されて、初めて発芽したらしい。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★「イルカはヒトを癒している訳ではない」の補足。 今年の3月7日のニュース。 米海洋漁業局(NMFS)は、海に生きる哺乳類保護を徹底するために、人間と海洋哺乳 類の接触行為を法律で規制する事を決めたんだ。 これは、クジラに触ったり、野生のイルカと一緒に泳いだり、カヌーなどで静かに近 づき、近距離から写真を撮ったり、陸上にいるオットセイやアシカと一緒に写真を 撮るっていう事も含まれる。 クジラやイルカと、ボートとの接触事故や、人間の影響で海洋哺乳類の親が、子育て を放棄した例が増えているんだ。 人間や人間が飼育する動物と共通した病気に、海洋哺乳類が感染する危険も出てきた んだ。 ★次回配信予定は4月30日です。 ★「やまねこ通信E=MC二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。  動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を  気軽にメールに書いてね。  過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 ★みなさんの中にメールマガジンを発行している方はいませんか?  相互で宣伝しあいませんか?  連絡ください。 それじゃ、今週はここまで。 あなたのお便り待ってるよ。 daichi-m@phoenix-c.or.jp じゃね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先日、犬と湿地を散策していたら蛙玉を見つけた。 1匹のメス蛙に数匹のオス蛙が群がって交尾しようとしているんだけど、 それがもうワヤ(方言?)になってしまって、蛙の玉になってしまっているんだ。 メスの姿は見えていない。たぶん玉の中心にいてもうそれはそれは大変なことになっ ているんだろう。 周囲には散乱した産卵。(駄洒落か?) いったい何匹のオス蛙が絡まっているのだろう。 棒でつんつんしてみた。 蛙玉は、ほどけなかった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ○ やまねこ通信E=MC二乗 vol.65  2002年4月20日発行 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○発行編集者 みかりん daichi-m@phoenix-c.or.jp ○発行システム: ◆インターネットの本屋さん「まぐまぐ」ID:0000052530 http://www.mag2.com/ ◆メルマガ発行サービス「メルマガ天国」ID:3743 http://melten.com/ ○登録/解除 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ○週刊やまねこ通信は、素人みかりんが趣味で発行しているもので、情報の正確さに はまったく自信がありません。引用して弊害が起きても責任は持てないよ。 それから誤字脱字変換ミスは大目に見てね。気を付けるけれどさ。えへ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━