2002/6/20━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 幽玄の森羅万象の散歩道 動物行動学からの性♂♀の話・動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学 興味のおもむくまま“みかりん”の しゃべりんぐ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目指せ１万部！ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 　　　　　　　　やまねこ通信　Ｅ＝ＭＣ二乗 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　vol.71 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こんにちは。 みかりんです。 森の中に芝生の一角がある。 犬と一緒に森の中に入り、あまりに気持ちがいいので、芝生の上にごろんと 仰向けになって空を見ていたんだ。 視界はまぁるく、視界のフチに森の木々が見え、空には、少しだけホウキで掃いたよ うな雲が薄く見える。 そして白い半月状の月。半分しか見えない月の模様に目を凝らす。 天と地の間に、私は平行に横たわっている。 ＢＧＭは名の知らぬ小鳥のさえずり、遠くのヤマバトの声。そよ風がたまに木々を揺 らす葉ズレの音。 天と地の間に、私は平行に横たわっている。 新しく登録して下さった人、はじめまして。　 ここに↓バックナンバーがあるよ。『内容一覧』という所をクリックしてみて。 http://www.phoenix-c.or.jp/~daichi-m/yamaneko/yamaneko.htm ━■動物は閉鎖系の話━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 動物のシステムは、将棋型だ。 金、銀、桂馬、香車、胃、腸、肺、心臓などと役割分担が決まっていて、「王将」を 獲られてしまえば終わりだ。だから動物のアイデンティティは、「王将」つまり 「脳」だ。　「唯脳主義者」と言えるだろう。 植物のやり方は、囲碁に似ている。 そこには、金も銀も王将もない。すべてただの石。あらかじめ何の規則も役割も決め られていなくて、すべての石が、根でも花でも茎でも葉にもなれる可能性を持ってい るんだ。 しかも、この植物という囲碁の盤面には果てがない。 碁石が増えてくると、碁盤の目も際限なく広がって体が大きくなる。 古い局面は枯れさせて、放っておけばいい。 こうして縄文杉という碁は、7000年以上も続いているんだ。 １年草のぺんぺん草さえ、根が何年間地中で眠っていたかは、実は分からないんだ よ。 ヒゲノカズラは、根を枯らしながら茎を先へ先へと伸ばして、にょろにょろと林の中 を生き延びている。 つまり、環境と感応しながら生きるという点では、植物の方がよっぽど優れているん だね。 光、水、風、土。あらゆる外部からのシグナルを積極的に利用しながら植物は生きて いる。 生きていくきっかけを自分を、取り巻く環境に預けているんだね。賢いな。 そういうフウに考えてから改めて動物を考えると、動物はとても独りよがりだ。 環境からの情報をシャットアウトして自分だけで生きようとする。 だからヒトの尊厳は脳死を持って終わりとなるんだ。 王手をかけられて「王将」が詰みの状態を「植物人間」という。 お？！これは誤解だ。 植物こそ外界と濃密に情報交換しながら生きているんだ。植物に対して失礼な差別用 語かもしれない。 開放形の植物と、閉鎖系の動物では、その死生観は、まったく対照的だ。 動物は、個体つまり脳を守る「唯脳主義者」だけれど、植物は「細胞主義者」だ。 個体主義者の脳は、「私」を守るためなら子殺しだってやりかねない。 細胞主義者の植物は、環境次第で生き死にしてみせる。 光、水、養分などの条件に恵まれなければ、タネになって何百年でも寝て待つ。 だから動物は、自信過剰なんだね。 オレがオレがと我を張って、世の中が生きにくいならば、環境の方を変えてやろう じゃないかと凄んでしまう。 つまり、脳は本質的にナチュラリストじゃないんだね。 人間の作り出すテクノロジーは、ことごとく動物型の閉鎖系将棋型のシステムだ。 役割がカチッと決まっていて融通がきかない。ちょっとICがいかれるとただのガラク タになるカメラ。パソコンのソフトはすぐにゴミになる。 植物は、そんな人間の作りだしたコンクリートジャングルなど数百年、数千年で跡形 もなく消えるよ。という程度なのかもしれない。 でもね、心のシステムは、閉鎖系？それとも開放系？……と考えてみる。 愛しさ、ねたましさ、切なさ。心と感情に関する限り、決定権は私たちの体の内側に はない。 愛する人の笑み、友人の成功、届かぬ想い。外部からのシグナルに動かされて、 笑みはこぼれ、嫉妬は燃え、涙がこぼれる。 ＡならばＢ。ＢならばＣだ。と思考する脳の論理は、閉鎖系システムだけれど、心は 開放形だ。 脳は、動物に似ている。 心は、植物に似ている。 ヒトの脳という閉鎖系は、自然を利用しやすい形に開発して生き残ろうと考える。 でも心の開放系は、時として植物を食べるというときですら、ひたぶるに、うら悲し い。 ━●みかりんの叫び━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「羽毛に覆われたティラノサウルス」 現在知られている恐竜の外観は、丹念に骨を集めて組み合わせて試行錯誤しならがら 作り上げた物だ。 ああいう形になるまでに幾たびも修正作業が行われたんだ。 日本映画の怪獣「ゴジラ」のような立ち姿で尻尾を引きずるってことは、恐竜はな い。（最初のうちはああいった立ち姿で考えられていた） だいたい頭から尻尾まで一直線で、活発に動く足を持っている。 ゴジラタイプだと動作は緩慢になるよね。 大型爬虫類って事で、体温が調節できない変温動物と言われてきたのに、もしかした ら温血動物でそうとう活発だったかもという説が有力になったり。 とにかく滅多にでない化石を丹念に集めるしかないので、判らないことだらけなん だ。 で、このたび、中国東北部・遼寧省の白亜紀前期（１億２８００万年前）の地層か ら、鳥そっくりの羽毛をもつ肉食恐竜の化石が見つかったんだ。 赤い羽根共同募金のような羽毛をもつ恐竜だよ！ 羽毛恐竜の化石が中国で相次いで発掘されて、鳥と恐竜の間の「線引き」がどんどん 怪しくなってきているんだ。 国立科学博物館の真鍋真・主任研究官は言う。 「系統が分かれた時期が古い中華竜鳥に羽毛があったことなどから考えると、ティラ ノサウルスやシノベナトルに羽毛があってもおかしくない。そんな見方が世界の古生 物学者の間に広がりつつある。化石ではまだ確認されていませんが」 ふわふわの羽毛を持つティラノサウルス！ 羽根の色は何色だったんだろう。（はやまるなってば、まだティラノに羽毛が あるかもって話は、想像なんだってば！） あぁ、そうなると私が昔から提唱している「恐竜の耳説」も「あり」だな。 恐竜には、耳介があるの。 日本犬のような三角耳、洋犬のようなタレ耳、大きい耳、小さい耳、長い耳。 そして、もしかしたらゾウのような長い鼻。 恐竜の事は何も判らない。 想像で遊ぶ余地がたくさん残されている。判らないという事は楽しい。 私はよく想像の恐竜の世界へ遊びに行く。 今度は羽毛に覆われたティラノに会いに行こうっと。 ━▲やまねこ投書箱━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前号vol.70のみかりんの叫びで「クローン」について語りました。 まず、クローンネタを３つ続けて。 ------------------------ [工原] 　私はクローンには反対です。ゼッタイ反対！というほど強い意見も知識もないです 　が、漠然と、人間が手を出してはいけない領域のような気がします。 　わけのわからないものに対する不安感というか。深く考えると生命とは、魂とは、 　アイデンティティーとは何か、ってことになってしまいますね・・・ 　私は無宗教なので「生命は神の領域」とは思いませんが、人間が自分達の都合だけ 　で自然界に手を出すとバランスを崩すだけでロクことがない気がして。 　これは、野生動物との共存に関するコラムを読んでいても感じたことです。 　人間だって自然の一部だから、自然界のバランスが崩れれば人間にも影響するのは 　当然だと思います。 　先日、スターウォーズ・エピソードII を見ましたが、Attack of the clonesとい 　うタイトルの通り、一人の男性をオリジナルにしたクローン兵士の一大部隊が 　作られているんです。 　みんな同じ顔しててかなり不気味ですよ〜 ------------------------ [えん] 　「人の突然変異はクローン人間から始まるんじゃないか？」 　と、いきなり感じました。なんの理由も根拠もないんですが・・・ 　今までは、あるマンガの影響で 　「人は宇宙に住むようになると変わる」って思ってました。 　その思いは変わってないんですけどね。 ------------------------ [やまねこ] 　クローンは反対です。 　絶滅種を甦らせたとしても生態系のサイクルの中に組みこめないのだから， 　単に標本としての意味しかもたない。 　もし自分が人類の代表で残されるとしたら，ぞっとする。 趣旨ははなれますが，個体としての部品の維持に留めて欲しいと思う。 　金持が何でもやってしまうというのは，手塚の未来マンガにある，おそろしい社会 　の現実化に過ぎない。 　社会がそのような社会に進んでいるのではないかという畏れがだんだん現実のよう 　になるようで大変こわいです。 　体調から行って私が目にすることはないように思いますが，思っているより急速で 　目にしてしまう可能性も無くはありませんが。 おそろしい。おそろしい。 ------------------------ 前号で紹介したCC（カーボン・コピー）というクローンネコは、依頼主の犬のペット のクローンの前段階のための実験なんです。 まずはネコで。という事らしいです。 犬は結構難しいらしいのです。簡単な動物と難しい動物がいるようです。 工原さんの言う「漠然と、人間が手を出してはいけない領域のような気がします」と いう感覚は多くの人が持っている健全な感覚だと思う。 たぶんとても多くの人がそう思っているんだ。 でも、流れはそうなっていない。　それは何故かというとね、この方面は「お金」に なるからなんだよ。 ここに心を置き去りにした資本主義経済の限界があるんだと思っているんだ。 えんさんの言う「人の突然変異はクローン人間から始まるんじゃないか？」という感 覚は、私も持ちました。 同じように私も「人は宇宙に住むようになると変わる」と思っていたのです。この両 方から人類は形態が変わってくるかもしれません。 そう。やまねこさんが言うように、絶滅動物を甦らせても、生態系のサイクルの中に 入れる困難さを考えると、無理なんだよ。 絶滅危惧種の保護も同じ事なんだ。その種だけを保護しても、保護になっていないん だよ。 その動物の生活圏である環境をまるごと保護の対象にしないと。 点の保護より面の保護。 難しさはここにあるんだ。 ------------------------ [Toshi] 　「ネイティブ日本人の思想」の特集が始まった時、私のなかには違和感はありませ 　んでしたよ。 　やまねこ通信が、科学や自然や宇宙をとらえる目には、常にエコロジカルな考え方 　があり、その問題点についてのギャップを埋めるものは「ネイティブな思想」に 　行き着くのではと思います。 　たとえばクローンの事にしても、食料問題とか不妊に悩む人の夢の解決策になるの 　か、自然を人間がコントロールしてもいいのかという倫理的なギャップがあると 　思うのです。 　うまく言いたい事が書けないのですが、科学は心を持たなくてはいけないのではと 　思います。 　そしてその科学と心を結びつける考え方が「ネイティブな思想」という事になると 　思います。 ------------------------ 私は、食糧問題は遺伝子操作では解決しないと思っているよ。 だってね、遺伝子操作で食料増産が可能なっても、増産したことによって人口がまた 増えるという悪循環を解決出来ない。 不妊に悩む人というのもわからない訳じゃないけれど、不妊という条件を持って生ま れたなら、不妊であるという人生を意味あるものにするのが、不妊の人の生き方では ないのだろうか。そう思うんです。 遺伝子操作は「お金」になる。それじゃ科学はダメになってしまう。 科学はロマンを持たなくてはならない。科学は心を持たなくてはならない。 科学は森羅万象に手を合わせる気持を持たなくてはならない。 だから私は、やっぱりネイティブな思想に行き着くんだ。 ━●編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ティラノに羽毛があるかもしれないと知った感動を知人にする。 「ティラノに赤い羽根募金のような羽毛があった可能性があるんだって」 「え？　ティラノは真っ赤だったの！？」 違う〜。赤い羽根募金のような「色」ではなく、「形」のつもりで言ったのにぃ。 真っ赤で極彩色のオウムのようなティラノ……。う〜ん、う〜ん。 ティラノザウルスのイメージがぁ。イメージがぁ。ＵＰなのか？ＤＯＷＮなのか？ ★vol.71の参考文献　 　　　　　　　「カマキリのエクスタシー」　小学館　高橋団吉 　　　　　　　　2002年3月7日付け朝日新聞 ★次回配信予定は、６月３０日です。 ★「やまねこ通信Ｅ＝ＭＣ二乗」では、あなたからの投書を受け付けています。 　動物・植物・環境・宇宙・時間・哲学このメルマガの趣旨に合うような投書を 　気軽にメールに書いてね。 　過去に取り上げた記事からの話題も歓迎しています。 ★メルマガ相互宣伝です！ 　バックナンバーを読んでみて、気に入ったら購読すると良いよ。 　┏━ おもしろ電脳ニュース！明日の技術 ━━━━┓ 　┃　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃ 　┃ 創刊１周年!!　ライトな技術系メールマガジン ┃ 　┃　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┃ 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