写真でNEWS  3.20版

〜遊馬ランドグラスホッパー10周年を迎えて〜

 

 ‘人生50年’昔から日本人としてその一生をどのように生きるか、そのようにこの言葉が使われてきたように思います。それだけに深い響きがあります。私も今、40歳。もうすぐ次の誕生日を迎えます。
 思えば遠くへきたもんだ、歌の一節にもありますが、しがらみのない夢追い人は北に向かうものです。大阪出身の私が最終的にここ、新冠の地に入植したのが29歳のときでした。当時の新冠町長だった岡さんにとてもめんこにしてもらって、その流れをくむ我妻町議さんの懐、古岸に新規就農第1号として入らしてもらいました。土地を探すに当たっては、新冠町農協現在の参事、北所さんや、長野部長が中心となって、全面的に協力してくださったことを今でも、昨日のことのように思い出します。
 馬とは言っても、体系的に見れば、競馬は数ある分野のひとつに過ぎず、地球上の何十種類にもなる馬族には、それぞれの果たしてきた役割があり、その功績を讃えるべく、今なお生活をともにする馬好きな人々が数多く存在しています。
 そんな愛すべき馬の世界が、私をとりこにしたのだと思います。
 獣医師として酪農学園大学在学中よりお世話になった宇毛親師匠は、競走馬の生産地として飛躍的に伸びた日高地方を、根本から形作ってきた、先代、宇毛功先生からの柱をとても大事にされておられます。

「病気だけではなく、馬を診れる獣医師になれ」

 馬と言葉を交わすことができたら・・・という思い、馬一頭一頭が持つ最高の個性を引き出してあげることは、馬を本当に愛していなかったらできない芸当です。これが宇毛家の精神の根幹にあると思います。私は馬の獣医師として、またホースマンとしても、これ以上ない最高の環境の中で‘本物’を常に教え込まれてきました。荻伏牧場や社台ファーム、錦岡牧場、本桐牧場、デルマークラブの鶴巻さん、名伯楽佐藤伝二さん、大樹ファーム、また、そこから始まる様々な人間模様や最高の競走馬たち等々、ホースマンとして、ふつうでは出会えない人々に接する機会をお与え下さいました。
 そして、2004年7月(有)ノマドックの設立と同時に、獣医師4代目として跡を継ぎました。先代の前に服部というおじさんが獣医師だったので、私が4代目と聞いております。35歳の時でした。

「年老いた馬が、若い馬の中に混じって、自分も元気に跳ねまわることができるような、牧場、遊馬ランドグラスホッパー」


 30、31歳の時に結婚・出産そして、(有)遊馬ランドグラスホッパー設立、と、今振り返っても椅子に腰かける間もなく、事故をきっかけにして命のはかなさにも直面し、かけ足に生きていたころでした。築50年のあばら屋に引っ越してきて厳しい冬を3年越し、初心を忘れない様にという意味を込めて、長女に三冬という名をつけました。
 遊馬ランドグラスホッパーの最初のお客さんが、九州から遊びにきた山鹿さん。当時獣医師になる夢を持つ、高校生でした。その彼女が先日、立派に女性獣医師になり再度訪門してくれたのです。それだけではありません。遊馬ランドグラスホッパーで生まれて初めて馬に乗ったというお客さんが、「その時のことが忘れられず、帰ってからは馬に乗ることに夢中になり、今では地元の乗馬クラブに通いつめています。」というお手紙をいただくことが、一人や二人ではありません。
 私の名は、アキ。しかし密かに自分自身の中で男名前のツグノリと思っています。亜紀、という漢字は‘次の世代を継ぐ’という意味があり、ツグノリと読むことができるのです。その意味では、2000年という節目に子供を授かった、不思議な御縁も感じています。母親として、そして人として人を育てることが、これからの自分に与えられた使命だと考えています。
 窓の外に目をやれば、自然にのびのび過ごすグラスホッパーの馬たちが、山の木々をかじったり、背中をこすったりいたずらをしています。玄関を出れば、犬の元気がやってきて私を見上げ、どさんこの光輝がポニーのジョン・レノンを追いかけて遊んでいます。もうすぐ春。湧水がわき、山菜も豊富なこの山。ミニチュアホースのワンダーとグラミーのお腹には、2009年生まれのグラスホッパーっ子が宿っています。アラブやロッキーマウンテンホースといった種類の馬たちも、大好きです。
 馬の獣医師として、馬と人が多様に接する機会を増やし、次世代に、

「美しく、誇り高く、気高い動物でありながら、自分たちにとってかけがえのない従順で正直な動物」

であるということを、伝えてゆかなければなりません。
 不器用ながらもお伝えしてゆくためには、これまでにも増して、理念をご理解いただき、ご協力をお願いし続けるしかないと、自負しております。次なる20周年には、必ずまた、為し得た10年間をお話しできますよう、勉強に次ぐ勉強を自分自身に課し、与えられた任務を遂行したいと希望しています。
 微力ながら、遊馬ランドグラスホッパーの10年間が、こんなにも成長し続けてこれましたのには、蔭になり日向になり支えて下さった多くの方々が居らっしゃったおかげです。今日ここに、感謝の気持ちを、10周年記念行事を開催し、ご挨拶と代えさせていただきます。ありがとうございました。
 

 

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