二ヶ月だけ住んだ
あの町のマンションで私は
長電話をする事と
手紙をしたためる事と
レンタルビデオを観る事を
繰り返していた
「天使の涙」
「南京の基督」
「妹の恋人」
決まってアールグレイに
たっぷりのリキュールを入れて
それを片手に観るので
何度もトイレに立たなければならなくて
ビデオを観終わる頃には
紅茶にいれたリキュールのせいで
いつもほろ酔いだった
あの町にいたのは四月と五月
まだ春だったのに
この町で冬は越せないと
幾度も思った
リキュール入りのアールグレイは
あれから一度も
口にしていない
あれから一年
ただの一度も