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食人、という風習が中国には有る。
有るといっても非常に困窮しきった時にしか使わぬ最後の最後のその又最後の手段であり、
中国でも蔑視される恐るべきもの。
然【しか】し実際に有る、これだけは紛れも無い事実だと、十四歳の阿懿は知っていた。
あの時医者がどんな治療をしたものかは知る術は無いが、
阿懿は寝込んでから三日後にはすっきりと、ただし持ち前の病弱さで顔色は優れぬし健康とは言えぬ体であるが、
それでも治った。
だが精神は逆に病んだ。阿懿が病に臥している時の、兄と医者との会話を阿懿は忘れる事はできなかった。
切り刻む。調理する。太らせてから。旨く。
そうした数々の言葉は阿懿に全く驚きと恐怖とを覚えさせた。
確かに今年は何所も平均的に農作物の実りが悪い。又阿懿の家は誰の目から見ても貧乏だ。
だからといってあの忌わしい食人などという風習を、しかも優しい兄が、
己を、阿懿を食べるという事で復活させるなど、阿懿はそう信じてよいものかどうか困惑しきった。
結論から言うと、信じなくとも好いのである。
何故ならそれは阿懿の誤解に他ならないからだ。
あの時阿懿の兄は、薬草の事を話していた。
兄は直ぐに薬を阿懿に飲まそうとしたのだが医者に押し止められた。
この薬草はちと強すぎるので少し待って体力が回復してからの方が良いでしょう、と。
事実その次の日に阿懿は調理済みの薬を飲んだ。
だが阿懿はそんな事、説明されてはいない。
阿懿はただただ気を重くし、兄が自分を食べようとしている、という意識を日増しに強くした。
〜続劇〜
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