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−ちょっと大変な時に、こんな道具や工夫はどうでしょうか− 講師:作業療法士 山田毅 今日は「こんな時、どうしますか?」ということですが、今日の話の中身は、皆さんのふだんやっている事がらを、ちょっとずつ僕が下の作業療法室で聞いて、それをいくつか紹介しようということで、今日はこういうテーマにしました。 一番最初が調理のこと、次に入浴のこと、それからベッドや椅子、そして杖のこと。このような話の流れにしようと思っています。 @まな板 ![]() まずはじめに、ここに持ってきた物をちょっと見ていただきたいんですが、このまな板は、皆さんが作業療法に来ている時に何回か見たと思います。特に女の人は見たと思うんですが、片手で調理ができるように、このまな板の一部分を外して、釘のついたまな板の一部分がそこにはまって、片手で物を押さえなくても済むようにしたまな板なんです。実際にこれを活用されているかたがいるんですが、その人の発想からすごいことをおそわりました。僕にこれを教えてくれたかたがこの中にいらっしゃいます。これを最初にお話ししたいと思います。 これは、片手で芋の皮をむくとか、にんじんを切るとかする時にぐらぐらしないように、この短い釘にぶすっと刺して、その上から包丁で切ったりするというように考えられた物です。教えてくれたかたは、魚を切ろうとする時、両手がなかなかうまく使えないので、片手で切るにはどうすればいいかということで、工夫されました。その工夫をちょっと紹介したいんですが、本当はこういったゴムではなくて、もっときれいなピンとしたゴムを使います。このまな板の両側にネジをつけまして、そのネジにこのようにゴムが引っかかるようにしてあります。これで何をするかというと、まな板のこっち側に魚の頭をぶすっと刺して、ゴムの側に尻尾の方を入れます。そして、3枚おろしも全部やってしまえるように工夫されています。 A千枚通し 大きな魚の場合どうするかということで、調理の欄のAに「千枚通し」と書いてあります。この釘の穴のところに、3か所ぐらい、下まで通るような穴をあけておいて、大きな魚の場合は、そこにぶすっと千枚通しを刺して、あきあじとか大きめのぶりだとか、そういった魚をさっきのゴムのところに入れるようにして、はさんで、さばいてしまう。お、これはなかなかだな、これは、1匹まんま買ってきた魚をおろす時とか、大きい物を切るということについてはすごい発想だなと思いました。使えない片手の代わりにゴムを使おうという発想です。 もうひとつは、こういった物をそのかたが作ってくれました(上図「まな板」の右下)。これは何をするかわかりますか? ちょっとわかりづらいと思います。こういうふうに板を組んで、釘が2本刺さっているだけなんですけれど、この人は野菜サラダとかオニオン・スライスが好きで、ここに玉ねぎを縦半分に切ったものを刺して、玉ねぎが動かないようにして、オニオン・スライスにする道具です。この板は、さっきのゴムのところにおさまります。この板は動かないし、オニオン・スライスも上手にできます。これは生活の知恵だなと思いました。 テレビのコマーシャルなんかでは、薄切りを作るような電動の物を売っています。ですが、まな板1枚を工夫して、こういった手作りの道具でもって、そこまでやれるんだなということを感じました。そのかたは自分で、スライスだけじゃなくて、先ほどの三枚おろしから刺身までも作ってしまうというかたですので、ぜひ皆さんも参考にして下さい。特に女性のかたはいいかなと思います。 @背中洗い お風呂で、特に脳卒中のかたは、作業療法室に来て、背中を洗う時にどうしようとかといって、タオルを二つ折りにして、端にひもやゴムをつけたのはどうだろうか、とやったことがあるかたもいるかと思いますが、なかなかこれでは背中が洗えないということで、こういう工夫がありました。 ![]() ここに柄の長いタワシがあります。そして袋になった垢すりがありますよね。タオルを入れてごしごしこする垢すりです。このタワシにそれをかぶせて、口を結わえて、それで背中をこすります。この長い柄のタワシは、棒の先が曲がっていますから、ちょうど裏返しにすると背中の後ろまで届きます。特に良い方の手の側の背中というのは、自分では手が届かないので、奥さんやだんなさんの手を借りてやっているところだと思うんですが、一つの工夫で結構やれるもんだなと感じたものです。 今ここに来られているかたの中には、全部自分でやられているかたもいれば、所々やっているけれどもできないところがあるんだというかたもいると思いますが、ちょっとした工夫なんですね、これは。結構いい線いけそうだなと思います。市販されている物の中には結構高額な物がありますが、そういった物もいいですけれど、自分の工夫というのはすごい物なんだなあと感じました。 A手すり 皆さん、お風呂に入る時に、手すりをどうしようと悩まれたかたがいるかと思うんですが、聞いた中で一番多い手すりのパターンが、横方向に1本つけるというパターンです。それから、その上に縦方向に1本つけるパターン。こちら側が洗い場としたら、この風呂場の向こう側に1本とか、それからこちら側が壁だとしたらここに1本、それからこちら側に1本とか、色々なパターンがありました。 私達の作業療法室の入浴訓練室には縦棒がついていないんですね。それで横棒とか、お風呂の向こう側に手をついたりして練習しているんですが、それ以上に、この縦棒1本というのがかなり有効活用されているというのを聞いております。自分にあった手すりの付け方ということで、この縦棒も頭に入れて、特に立って足を自分で入れられないような人の場合、家族のかたが足を持って入れてあげるという場合には、この縦棒というのがすごく有効だなあと感じました。 こちらの横棒については、立っている時ではなくて、お風呂の中に体を沈める時、そして立ち上がる時に、皆さん有効に使っているようです。 B滑り止めマット 皆さんの中には、浴室で滑り止めマットも何も使っていないかたもいると思うんですが、お風呂の中のタイルの上、ステンレスの上というのは滑ります。特にお湯の中というのは滑ります。それで、斉藤先生の手術を受けたかたはよくわかると思うんですが、特に足の指がこのように曲がっている人がいますね。こういう人達というのは、足を全部べたっとつけることができませんから、立ってお風呂に入ろうとする時に、足がつるんと滑ることがあります。 ですから、手術を受けられていないかたの工夫なんですが、石黒ホーマで売っているバスマットがありますよね。だいたい、このぐらいのサイズだったり、そういうのをブロックのようにべたべたと大きくしたり、そういった物を下に敷いて、滑り止めに使っています。そういった物も有効活用されています。 今日は皆さん、だいたい歩けたり立てたりするかたですから、ベッドの高さや椅子の高さは、あまり気にされなくてもいいかもしれないんですが、ベッドの高さと椅子の高さで、ふだん自分の家で高さを変えているというかたはいらっしゃいますか? だいたい同じぐらいかなという感じがするんですが。お聞きしたかたの中に、ベッドの高さと椅子の座面の高さが違うというかたがひとりいらっしゃいました。ベッドはゆったり寝るということで自分の膝よりもちょっと低めにしているけれど、椅子はちょっと高めにしているんですという人です。これはなるほどと言うか、よく考えていると思いました。 車椅子なんかでもそうだと思うんです。車椅子に乗った時の足の裏が、だいたいぺたっと床につくような高さに僕達は設定するんですが、それは立ちづらい高さだったりすることがあります。お尻が重たいでしょう。そのかたも椅子から立ち上がる時に重たいということで、椅子の高さをベッドよりも少し高めに設定していました。ベッドはだいたい膝ぐらいだけれども、椅子はそれより5センチか10センチぐらい高くして、立ち上がりやすくしていたというのがありました。 このへんは、ふだん使う椅子なら高めの設定でいいというのが、使っていた本人の意見でした。僕も自由に高さの切り換えのできる車椅子があればいいなと思いながら聞いていました。 だいたいここまでが今日予定していた話なんですが、最後に「杖の雪落とし」とあります。これを考えたかたが今日は見えられていないんですが、雪の降っている時期に、王冠型の滑り止めを付けている人が結構いますよね。その滑り止めの王冠の中に雪がたまってしまって、なかなか雪が取れない。そうなると、雪から氷の所に移動した時に、そこに雪が詰まってしまうために、かえって滑ってしまう。 ![]() そこでこの王冠の中に、堅めの丸いスポンジを張りつけたんです。このスポンジが王冠にたまった雪を、杖を上げた時にぽんと押し出してくれるそうです。これは特許でも取れるんじゃないかと、本人もその気がありまして、ちょっと調べてもらっているということです。来シーズンに見られることもあると思いますが、堅めのスポンジが王冠のキャップの中におさまっているだけなんです。このスポンジが雪をぽんと出してくれるという、こういった工夫をされているかたもいらっしゃいました。杖に取りつける滑り止めの中にはこういう尖った滑り止めもあるんですけれど、どちらかというとこちらの王冠型の滑り止めを持っているかたが多いので、ここに雪がたまって氷の上で滑ってしまうという経験をされたかたが何人もいるかと思うんですが、こういったこともすごいなと思いました。 今日色々とお話しさせていただいたのは全部、患者さんの方から「僕はこういう工夫をしているよ」と聞いたものです。皆さんの中で、「こうこう困っているんだけれど、皆どうしているんだろうか」というのがあったら、この中で意見の出し合いをしてみたいと思います。たとえば、お風呂に入る時になかなか足を上げられないとか、色々あると思うんですが、経験を積んでいる皆さんの意見のやり取りをしてみたいと思います。人のたくさんいる中ではなかなか話しにくいかなと思います。下の訓練に来た時に、「こういうのあるけれど、どうしたらいいだろうか」とか、「僕はこういうのをやっているよ」というのを教えていただければ、今度はそういうのをビデオとかスライドに取らせていただいて、皆さんにもっとイメージがわくような形でお見せしたいなと思います。自分達には当たり前のことになってしまって、工夫している事がらがふだんの生活になっていることもあるとは思うんですが。 問:朝から晩まで椅子に座っているもんですから、床ずれみたいな、座りだこみたいなものがお尻にできてしまうんです。良い円座を探しているんですが、適当なものが見つかりません。何かいいものがないでしょうか。 山田:お尻のここですね。1日中車椅子なんかに座っていると、そういう問題が出てきますよね。なかなかお尻をずらしたり、浮かせたりということがゆるくないですからね。皆さんの中でそういう経験をされたかたはいらっしゃいますか? いましたね。では、ぜひ意見をお聞きしたいと思います。 A:私もそういう状態で苦労しています。今のところ特別な対処はしていませんが、悩んでいます。座布団にあぐらをかいて座っているものですから、皮膚ががさがさになってきて、たまに軟膏をつけたりしていますけれど、考えてみれば、座っているのが悪いということがわかりました。なるべく座る時間を短くして、暇があったら散歩などした方がいいとはわかっているんですが、帳面づけなんかやっているとほとんど1日座っている場合があります。なるべくなら座っている時間を短くすることが大事だと思います。と言って、今の患者さんだったら自分で立てない場合は大変だと思いますが、私の場合は自分で立てますから。軟膏は効きました。 B:私の場合はもう治っているんです。円座を使ったことがあるんですけれど、円座は軟らかいんですよ。どうしても傷口がぶつかることがあるんです。そこで、女の人のストッキングに綿を詰めて、堅さを調節して、大きくしようと思えばいくらでも大きくなりますから、それで治しました。 山田:ここは床ずれを作ると治しづらいし、なかなかやっかいな場所ですね。 こっちのあたりは、横を向いたりして除圧して乾かしたりできるけれど、ここはなかなかやっかいな場所ですね。今まで円座とかマットとか試したんですが、なかなかうまくない、あたってしまうんですね。 空気の入ったマットとかあることはあります。そのへんはお金を出してという形になるんですが、時々うちの病院に福祉機器の業者さんが来て、たまにデモンストレーションで使わせてもらったりすることがあるんです。それだったら1回借りて使ってみましょうか。高さも5〜6センチの物から、足が全然動かなくて感覚のない人用の10センチぐらいの物まであるんですよ。前にデモンストレーションで持ってきたのが5〜6センチぐらいの物だったんですけれど、それはちょうどあたってほしくないところの空気を抜いて、あたらないようにお尻の形に合わせるような仕組みなんです。だから、ほかのお尻の部分というのは十分支えられると思います。他にこんなのどうだろうというのはありませんか。 問:私は6年前に左側があたって、去年あたりから左足が指も含めて丸まったんで、今回手術のために入院したんです。手の指の方も去年あたりからようやく動いてきたんですが、親指だけが現在動きません。家に帰れば、桜の木にゴムを上からつって腕の体操はできるんですけれど、左右に手首が動かないんです。それで、上下に動かす運動は、畳に手を置いて上から押さえつけるという方法があるんですが、左右に動かないと拍手もできないので、家庭に帰ってリハビリをするのに良い道具があるのかなと思って。ここの訓練室にはあるんですよね。それに代わる道具はありませんか。 山田:今のように、自分の体をもう少しよく動かすのに、何かいい道具はないだろうかというかたは、やっぱりいらっしゃいますね。今、質問されたかたの話の中身というのは、手を上に挙げたりするのは結構いいんだけれども、手をねじったり横に開いたりするのがなかなか家ではうまくできないんで、家でやるのに何かいい道具はないだろうかという質問ですよね。 なかなか家でやるとなると難しいですよね。病院にいた時には上に挙げるのも横に挙げるのも、自分達でできたり、先生達にやってもらったりしてできていても、いざ家に帰るとそういったことがなかなかできなくて、たまに病院に来て動かしてもらうと、「痛い!」とかいうことが結構あったり、訓練している時は自力で動かせていたのが、なかなか手が固くなったりして動かしづらくなったりというのはありますよね。 今の質問はなかなか答が難しいですね。下の訓練室にあるねじるような道具とかは、自宅に設けるとなると難しいですよね。ですから、ああいった物を握れるんであれば、かえって軽い30センチぐらいの棒を1本用意して、手でもってそれをねじったりという簡単な物の方がいいかなと思います。桜の木にゴムをぶら下げて手を挙げる運動をやっているんだと言っていましたけれど、それも訓練室でいうと、紐に滑車をつけてやるという発想と同じだと思うので、30センチぐらいの棒で、手をねじったり、その棒を横にずらすというのは、棒体操のような発想でいいかなと思います。 棒体操というのは、PTの訓練室で朝の8時半から振動障害の人達がやっていますよね。ああいった運動の一部分を、自分にいいところをとってできないかなと思います。 本講演の印刷用ファイルのダウンロード(モノクロ)が可能ですが、 閲覧・印刷には「Adobe Acrobat Reader」(フリーソフト)が必要です。 配布は自由にされてけっこうです。必要なかたはどうぞご利用下さい。 印刷用ファイル ← ここからダウンロードしてください 釧路労災病院 リハビリテーション科 |