『寝たきりゼロへの10カ条』

第3条.リハビリは早期開始が効果的。始めよう、ベッドの上から訓練を

(厚生省指針より。一部改変)


講師:リハビリテーション科部長 斉藤裕





〜病気と障害に対する考え方の変化〜
安静から早期リハビリへ

子供の時に隣の家にあたったおじいさんがいらっしゃいまして、いつもベッドの上で寝ているんですね。寝ているんですが、昔ですから竹尺を持って、それで色々なことを指示しながら生活していたということがありました。今になって考えてみましたら、そのおじいさんはあれだけ口で言ったり竹尺でそこらへんを叩いて色々なことを指示しているわけですから、座らせるとか立たせようとか色々なことを考えれば、もっともっと色々なことが実際には出来たんではないかなという気がします。

こういうことを考えてみますと、一昔前というのは病気が起こったら、まず何よりも安静にしておくということが一番重要なんだという考えのもとに、例えば便所で倒れたらそのまま1日も2日もその場で寝かせておいた方がいい、絶対動かさない方がいいんだと言われていたと思います。

そして、そういった安静ということが何よりも大事で、その状況の中で色々な治療が行なわれました。昔は往診が盛んでしたから自宅の方へ往診に行って治療も行なわれたりして、あるいは病院に収容されて病院の中でも色々治療を受けて、全体の治療が終った。さて終ったからリハビリを始めようか、というような考えで色々なことがなされた時期がありました。

リハビリというのはどうも戦争を中心にして発達するもののようで、第2次世界大戦が終って、そのあとベトナム戦争でも、足の障害の問題とか義足の問題に関して色々な物を開発してきましたけれど、そういった経過の中で、安静にしておくことが案外良くないんだということが実際に分かってくるようになりました。それで、出来るだけ早くから動かさなければならないというようなことが分かってきて、それはその当時の医学の中では画期的なことだったんですね。安静にしていなければいけないという考えから、それを早くから動かさなければいけないという考えに変わってきたわけです。そういう画期的な変化が起こって、そして現在のようなリハビリのものの考えに変わってきました。

現在の状態はどうかというと、「発病と同時にリハビリというものが始められていくべきだ」という考えなんですね。後遺症が残ったからそれに対してリハビリをやろうということではなくて、発病と同時にリハビリというものを始めていこうという考えです。だから、リハビリというのは非常に早い時期からやるのが何よりも効果的なんだということが、この第3条の中であらわされているわけです。




〜障害範囲とその推移〜
障害の経過の基本です

では具体的にどういうことなのかを、ふだん僕が考えていることを含めてちょっとお話ししたいと思います。




一番最初に脳卒中にあたるということが起こった。その時は、頭の中にこれくらいの量の出血、あるいは梗塞が起こったということです。ところが実際に我々の体というのは、手なんかを叩いたりぶつけたりした時もそうですけれど、実際にそこに外力が加わったり外傷が加わると、その周辺というのはこういう具合に腫れたり、色々なことが起こってきます。虫に刺された時もそうですね。本当に刺された所はプツンとなっているけれど、周りが広く赤くなってきます。

実際に病気が発症して脳出血や脳梗塞が起こった時に、本当に起こっている障害というのはこの幅の部分(図中「本来の障害範囲」)の筈なんですけれど、実際には障害を受けていない部分の変化、ここに出血や梗塞が起こると、一時的にそれに対応するように周囲の脳細胞なども一時的に巻き込まれたような状態(図中「影響の及ぶ範囲」)になります。だから、本当はこれだけ(本来の障害範囲)しか障害を残さないで済む筈なんだけれども、でも実際に病気が起こって病院に担ぎ込まれた時は、これぐらい(影響の及ぶ範囲)広くやられたような症状として運び込まれてくるわけです。実際には動けなかったり、口もきけなかったり、意識もなかったりしているわけです。

病気というのは、ここ(影響の及ぶ範囲)が本当にやられているわけではないから、実際には時間と共にこういうのは徐々に治っていって、本当にやられた所(本来の障害範囲)だけ残るような形になるのが自然な筈なんです。ところが実際に、病気のためにそのまま安静にしておいた場合にはどうなるかというと、こういう状態(影響の及ぶ範囲)が治っていくのが非常に遅いか、あるいは手足が固まってしまったり、筋肉が弱ってきたり、全身的なものが低下したり、床ずれが出来たりといった色々なことで、本来持っていなかったような二次的な合併症を作ってしまうわけです。一番大きいのは床ずれです。




〜安静であることの弊害〜

全身的には心臓の問題とか呼吸器の問題とか、体を維持していくためのものが低下してきます。局所的には、皮膚の問題からいけば床ずれを作ってしまったり、関節の問題からいけば関節が固まってしまったり、筋肉に関して言えば力が低下するために手足をうまく動かせなかったり、というようなことが起こってしまって、本来はこれだけの病気(本来の障害範囲)でしかないものが、放置されておくともっともっと大きな障害を作ってしまうということがあります。これを如何に防ごうかというのが早期リハビリの重要なところなんですね。これをどういう具合にやっていこうかということです。

実際に「影響の及ぶ範囲」が治っていくものとしては、自然治癒の力があるわけです。元々障害されていない部分ですから本来はやられない筈で、これは黙っていれば自然に治っていく筈なんだけれども、そうならない理由が寝かせておくことによって作られていくわけです。だから、そこのところを少しでも防ぐようにしなければならないということがあります。

それは局所的な話から言いますと、「筋力」をとって見ると、だいたい1日でその人が持っている力の3%ぐらいの力が落ちていきます。寝ていることによってそういう力がどんどん落ちていきます。こういうことは筋肉の問題にしても、呼吸機能の問題にしても、心臓の問題にしても、だいたい3%ぐらいと言われているんですけれど、そういうように力がどんどん落ちていってしまうということがあります。それを如何にして防ごうかなということでリハビリをやるわけですが、その中で最も重要なのは1日1回でも2回でも手足を動かすこと、起こして座らせること、色々な刺激を与えていくこと、そして少しずつ自分の手を使えるようにしていくこと。こういったことでその人の日常生活で出来ることを少しずつ能力を失わないようにしていこうということです。




〜日常生活を評価する〜
ADL表(バーテル・インデックス改訂版)

先ほどお配りしたADL表は、その日常生活の程度がどれくらいの状態にあるかというのを数字で表そうとするものです。その人が

−自分自身のことをどれだけ出来るか。
−自分の身の回りのことを座った状態でどれだけ出来るか。
−その人の生活空間をもっと広げるためにどれだけ移動する能力があるか。


そういう種類のことからその人の日常生活能力を判定しようとするものなんですね。これは皆さんも色々利用していただいていい物だろうと思いまして、今日持ってきました。




身の回りのことをする中で、

−完全に自分で出来るか。
−人の助けを借りなければ出来ないか。
−あるいは全く人に介助してもらわなければ出来ないか。

ということが数字で配点されています。


それを実際に採点する欄なんですが、これは、

−自立しているという所は全部自分で誰も手伝わなくても出来るという所です。

−介助という所は、実際に少し手を出して手伝うか、あるいは口頭で「これはそうした方がいいよ」などと教えて、それで出来るかどうか、そういう種類のこと。もうひとつは、時間が普通だったら5分で出来るものが10分かかってやっと出来る。そういうものが介助の欄になります。

−全介助はその全てがお任せスタイルになります。



水の入ったコップを持ってきた時に、目の前にある時に自分で飲むことが出来るかどうか。それから目の前に食事の用意がされた時に出来るかどうか。そういうようなことでこの点数を見ていって、全部出来ると100点になります。

健康な人は100点ですけれど、これが50点ぐらいの点数になると、人の手を借りなければ出来ないということが多くなってきます。そして、自宅での生活が出来るようになるためには、少なくても70点から80点近くになっていることが望ましいんですね。そういうようなことを表現するものです。

だから、最初点数をとってみて50点ぐらいだった人が1か月ぐらいして70点ぐらいに上がっていると、だいぶ良くなっているなということが分かりますし、例えば60点なら60点の中で、便器に移るとか車椅子に移るとかといった移動のところで点数が非常に悪かったというような人であれば、その移動が出来ない理由は何か、筋肉の力が弱いか、あるいは関節が曲がっているかとか、色々なことがあります。そういうことを集中的に治療して点数が上がっていけば、全体の点数として良くなっていくという変化を数字で見ることが出来るので、なかなかいいものです。

来週から市のリハビリ教室というのが始まります。それに僕達も参加しますけれど、市の保健婦さんがたにはこれを使ってもらうように統一しています。

だから、病院の中で評価出来る点数と、病院から出た状態で同じように評価出来るように統一性を図るためにこれを使うことにしました。




〜脳卒中の歩行の予後判定に
必要な3つのADL〜

脳卒中にかかった場合に、どういう改善の仕方をするか。予測ですね。この人は歩けるようになるかどうかという予測が病気の初期に大変重要になってきます。その大まかな予測というものをお話しします。その際に非常に重要なものとして、基本になるADL(日常生活動作)というものが3つあります。それは何かというと、

1.寝返りが出来るかどうか。物につかまろうが何しようがどうでもいいんです。とにかく、自分の身の回りのものを使って、いくらかでも寝返りが出来るかどうか。

2.尿意があった時に、それを人に教えて、そして漏らすことなく待つことが出来るかどうか。

3.食欲です。目の前に持って来られた物をどんな形でもいいから、手づかみでも何でもいいから、それを食べようとすることが出来るかどうか。


この3つを出来るかどうかで、この人は将来歩けるようになるかならないかというところで、非常に大きな違いがあります。

これは欲求の部分ですね。自分がどうしたいかという欲求の部分をうまく表に出せるかどうかという種類のことと、それが出来る神経系統の指令がうまく伝わってそれが機能出来るかどうか。欲求があってそれを果たせるかどうか。それがレベルの低い状態なんだけれど出来るかどうかというのが、やっぱり物事が改善していく上で大変重要なことのようです。


●3段階の時期でおおまかに判定します

この人が歩けるかどうかという時に、

−まず入院時に、病気が起こった段階でどんな状態であるか。
−それから、2週間後にどんな状態であるか。
−1か月後にどんな状態であるか。

というのが目安になるわけですね。

●3つのADLのうち2つ以上を出来ることが歩行につながります

入院したその段階で、前ページの3つのADLのうちの2つ以上が出来るようだったら、その人は将来歩けるようになるだろうと言われています。その将来というのはだいたい1か月から1か月半です。6週間くらいです。その間にかなりのレベルまで達するだろうということです。今ここに歩いて来られているかたはたぶんそういう経過をたどったんだろうと思います。この3つのうち2つはその段階で出来たんだろうと思います。


●座って起き上がることが出来たかどうかも大きなポイントです

もうひとつは、能力的には自分で何かにつかまって起き上がることが出来ただろう、座ることが出来ただろうということです。この能力がひとつでもいいわけです。全部あれば当然いいわけですから。


●ブルンストローム・ステージが4以上であれば歩行につながります

神経の回復段階を示す言葉で、ブルンストローム・ステージというものです。以前に一度お話ししたことがあるかと思います。ブルンストロームというのは人の名前です。脳卒中にあたった時から治っていくまでどういう経過をたどるかを、神経回復の段階を1から6までに分けて考えた表し方です。

1というのは全然動かないんです。あたった当初の時というのは殆ど動きません。それから6というのは我々と同じ動きが出来るものです。真ん中に3度というのがありますけれど、3度というのは手を曲げようとするとこんなふうになり、伸ばそうとするとこんなふうになるというように、ひとつの固まりの運動しか出来ない状態です。足であれば、仰向けになって曲げようとするとこういうふうになり、伸ばす時はこういうふうになります。そういう動きしか出来ません。例えば膝を伸ばしたまま足を挙げるということが出来ないわけです。それをやろうとするとこの3度の人はまだこういう具合に曲がって挙がってきます。

ところが入院時に、もうひとつステージの高い4度の人になると、膝を伸ばしたまま足を挙げてごらんと言うと、それが出来るわけです。この段階の人は少なくとも1か月半ぐらいの間に歩行が自立出来るようになってきます。そういうグループだと言われています。


これはだいたい、年齢が70歳以上か以下かで色々分けているところもありますけれど、70歳以上の人はそれより2割か3割を割り引いた状態で見ていった方がいいと思いますけれど、少なくともこれに関しては入院時にこのどれかが出来ている人はだいたい、年齢が60歳以上でも70歳以上でも何とかいけるという目安になるようです。


●入院時の状況で予測する

入院した段階で病院に担ぎ込まれて1週間以内の段階でこういうことが出来る。それからどうやってでも寝返りが出来る、おしっこをしたいと思ったら誰かが取ってくれるまで待てる、それから食事はどんな格好でも良いから口に持っていって食べることが出来る、そういうことが3つのうち2つ以上出来る人は歩けるようになります。それから、とにかく自分で何かにつかまって座ることが出来る人。この人も歩けるようになります。それから、寝かせて膝を伸ばしたまま足を挙げてごらんといった時に、その通りに出来る人、この人も歩けるようになります。その時に、膝を伸ばしたまま足を挙げてごらんと言って膝が曲がるようだったらちょっと危ない。その段階で将来歩けるようになりますよとはちょっと言えないんですね。


●2週間後の状況で予測する

あたった人が2週間治療を受けて、そしてもし自分で座れるようになったら、この人も将来、自立して歩くことが出来るようになります。

ただ、2週間経っても3つのうちのひとつ出来るか出来ないかというような段階であれば、この段階でこの人はだめだろうと言えます。2週間の間にこういうことの少なくとも1つ以上出来るようにならないとだめなんです。2週間の間にこういうことが出来るようにならないという時に考えられるのは何かというと、意識が非常に悪い場合です。意識が悪ければそれだけ脳の損傷されている範囲も広いわけですから、かなり難しいと言えます。


●4週間後の状況で予測する

今度4週間経って、その時点で判断しようとする時はどうかと言うと、4週間の時点でとにかく自分で起き上がって座ることが出来るということが必要です。だから、この座るということはどの段階でも非常に大事なんですね。4週間経って自分で座ることが出来るという段階に到達した人は、いずれ歩けると言えます。1か月半から2か月くらいは遅れるかも知れないけれど、その先に歩けるようになるということです。しかもここで、この大事な3つのうちの、依然としてひとつ以上のことが出来ていないようであれば、これはやっぱりだめです。1か月半経過してもなおかつ出来ることが増えていないということであれば、この人は歩けるようにはならないということです。これは非常に大ざっぱな表現ですから、個々の患者さんによっては違ってくる点はあると思いますけれど。

そしてもうひとつ歩けないという条件の中に、両側があたっている場合があって、その場合には歩けません。

患者さんがこういうことが出来るかどうかというのは大変重要なことなので、施設に入られている患者さんも、もう一度改めてこういうものを見てみると、もしその人が紐でも手すりでも何でもいいから利用してでも、とにかく起きようとして起き上がれるところまで来る人は、それから先うまくやれば歩けるようになる可能性は非常に高いということになりますので、この3つは大変重要なことです。寝返りが出来るかどうか、おしっこが我慢出来るかどうか、それから食事を取ることが出来るかどうか、そのへんが非常に大事なことだと思います。

今日の話の中では、安静ということを少しでも避けて、出来るだけ早くからこういうことの訓練が必要です。だから寝返りを誘発しようという訓練なんかも随分重要な訓練なんですね。それから、食事は時間がかかっても、周りを汚しても、自分でそれをやろうという意欲そのものがあればかなり違うんだということですね。そんなことが、今日のお話ししたいことの大きなものです。




〜質疑応答〜

問:この前、市の保健婦さんが来て、7月の中旬から身体障害者を対象にして「寝たきり防止、元気はつらつ教室」というものを米町の老人ふれあいセンターでやるからと勧誘に来ました。去年出たんですが、たいがいの人は車椅子を使っているので、我々の段階ではちょっと参加するには抵抗があるような気も起きるんですが、そのへんの先生の考え方を聞かせて下さい。

それからもうひとつ、ブルンストローム・ステージの中で、度数が1度から6度までとありますが、これに10度というものがないのはどういうことですか。

答:このステージは6度までなんです。全然動かない状態から完全に回復した状態を6というぐあいに決めたんです。そういうふうに決めて、どの段階が1度と言おうか、どの段階を2度と表現しようかという言い方です。せっかくのご質問ですから、ちょっと詳しくお話しします。




〜ブルンストローム・ステージ〜

2回目ぐらいの時にお話ししたんですが、脳から神経が出て、脳が下の方の末梢神経というところをコントロールしているわけです。脳がやられてしまうと上からのコントロールが、すなわち「押さえつけ(抑制)」がなくなるから、末梢の方が勝手な動きをしてくるわけです。その例えで、病院長や副院長がいないと我々も大変気が楽で、気楽に色々なことが出来る。しかし病院長がいればやりたいことも何となくやりにくいという例えをしたと思います。上の人がいないと自由気ままに動いてしまうわけですね。そういうことの変化を言うんです。

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1度:最初にバーンと脳の方に病気が起こってしまったら、末梢の方もショックを受けて自由気ままではなくなって、動けなくなる。手足も動けなくなるというのが「1」なんです。

2度:「2」になると、良い方の手足に力を入れた時に悪い方の筋肉が一部収縮する、動こうとする、というのが「2度」なんですね。だけど悪い方を動かそうとしても動かせないわけです。良い方を動かそうとした時に悪い方がちょっと動くというのが「2」です。

3度:そうこうしているうちに、だんだん末梢の方が目覚めてきまして、3度というところになると、自分達の動きを少しずつ始めてくるわけです。ところが、自分達の動きを少しずつ始めるんだけれども、同時に脳からの指令も少しきき出してくるわけです。通常我々は、ある関節を曲げてある関節は伸ばしてというふうに一つ一つの関節を別々に動かすことが出来るんですけれど、この3度の段階ではそれが出来なくて、ひとつの動作をしようと思ったり、どこかを曲げようと思えば、それにまつわる全部の関節、例えば手1本の全部が動いて反応してしまいます。伸ばそうと思えば全部が伸びてしまうということになります。ある1か所だけを自由に動かすということが出来ないんですね。しかし、出来ないんだけれども、自分の意志をもって動かすことは出来るという段階なんですね。「2度」では意志では動かせないんです。「3度」は意志で動かせるんだけれど、自分の思い通りではないんです。動くことは動くんだけれど、思った通りには動かせないんです。どこかだけを曲げようとすると、手でも足でも1本の全体が動いてしまうという「かたまりの運動」になるわけです。

4度:この4度になると、上からの指令がもう少しきいてきて、腕1本や足1本全部の動きから少し解放されてくるわけです。上肢では普通は体に近い肩の方から解放されてきて、末端の手は自由に動かせない。かたまりの動かし方しか出来ないというぐあいのことが起こってきて、

5度:5度になったらそれがもっとうまくいって、

6度:6度になったら自由に動かすことが出来るという変化です。

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動かないものがだんだん自分の意志で動かせるようになって、それが分離して、関節の一つ一つを分けた動きとして表すことが出来るようになってきます。4度というのは真ん中にきて、折り返しを少し過ぎた状態になるわけです。これがブルンストローム・ステージの「神経がどれだけ回復してきたか」ということを表すものです。ステージの高いものほどいいんです。

それから先ほどの米町の集まりというのは、そういう所に色々なかたが集まってそこに出ていくということ自体に、大変重要な意味があるんだろうと思います。そこで色々な人達と情報を交換するとか、うちに引きこもりにならないでそういう所に行くということが、例えば車椅子のかたばかり来て自分達は歩けるといった場合、それこそステージが違いますね。しかし、ステージが違っても、そこで共通の体験をしてきた仲間ですし、そういう所でステージの高い人が励ますことも出来るだろうと思いますし、ステージの低い人から学ぶこともあるかと思いますし、色々な面で交流が出来ていくというのは、僕は重要な意味があるだろうと考えていますので、ぜひ行かれるといいなあと思います。

我々が参加して来週の木曜日から行なわれる市の機能訓練事業にも、お二人が参加されることになっていますよね。名簿が来ていました。月に1回僕達が行くわけですが、来週は僕と理学療法士の山崎先生と二人で行きます。あとの3回は保健婦さんがたが中心になって色々なことをやると聞いています。




〜質疑応答の続き〜

問:その教室(機能訓練)には年齢制限はあるのでしょうか。

答:老人保健法に基づいた法律でやっていますので、その法律が適用されるなら、60歳でしたか、65歳でしたか、年齢制限はあると思います。

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問:私の思い過ごしかも知れませんけれど、本を読んだり、この教室でのお話を聞きますと、寝たきりというのは「悪」だという感じに受け取れるんですが、「寝たきりは不利ですよ」というような、もう少し良い言葉がないものかなあと感じますが。そして、日本的な精神論を出されると不安が出てきます。

答:それはあるかも知れません。それに関しては我々はもう少し適切な言葉を使うべきなんだろうと思います。みんな好きで寝たきりになっているわけではありませんし、色々な理由があり、事情があってそういうふうになっているのでしょうし、今までにこれほど医療が発達した時期もなかったし、社会構造も家庭構造も変わって、家庭でお互いに皆で看ていくということもだんだんしづらい世の中に変わってきているので、それを捉えて「悪だ」という言い方は適切な表現ではないと思います。そういうことを如何にして防ごうかということにさえも、今は世の中がまだ模索している最中なんだろうと思います。

我々が今回、この(当院の)リハビリ教室を開いたのは、そういうものをどうやって防いでいけるかを考えようということが一番の目的なんですね。

それで、何と言っても人手がないことにはどうしようもないという問題が現実としてあります。しかし、人手がないということをすぐに改善しようとしてもなかなか出来ない。そうすれば、何か家庭にいてちょっとしたことでそういうことを防げるようなこと、あるいはそういう方法があれば、少しでもそれを家庭の中で生かしていければ、とりあえずはいいことが得られるかも知れないという程度のことなんですね。実際に、我々がここで色々なお話を皆さんにすることで、それを防ぎきれるとは思えません。それから、それを自分達の力で何とか出来るんだというぐあいにも思えません。こういうことを通して少しでも色々な人の耳に入ることによって、自分達がこんなことに気を付ければこういう違った面もあるんだなあということが少しでも広まってくれればいいんだ、という考えで我々はやっています。

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問:この病気(脳卒中)になってから8か月ぐらい経つんですが、最初は先生がおっしゃったように、寝返りや自分で用をたすことが出来なかったんです。それがリハビリに通っている間にだんだん出来るようになって、今は寝返りも出来るし、用もたせるようになってきました。これは治ってきたんじゃないかなという感じを持っているんですが、はたして元のように治るかどうかということをお聞きしたいんですが。

答:治っているかどうかという表現なんですが、それは先ほどお話ししましたように、初めこれだけ(図中「本来の障害範囲」)の問題がある。しかし実際にはこれだけ(図中「影響の及ぶ範囲」)がやられたような症状が出ています。本当はこの人は最初からここの障害(図中「本来の障害範囲」)を残すだけなんですね。だけれども他の色々な、関節の動きが悪くなるだとか筋肉の力が衰えるだとか、そういうことさえ防ぐことが出来たら、このかたはここ(図中Aの状態)に行く筈なんです。だから、治っていると言うのではなくて、その人がそういう力を出そうというものを邪魔しているものがあるわけです。その邪魔しているものを作らないようにするのがリハビリなわけです。

だから、それを治しているという表現が正しいかどうかは、僕自身もいつも疑問を持っていますけれど、僕自身としてはむしろ治しているというのではなくて、その人が本来持っている力が出やすくしているだけの話なんだと考えています。水が高い所から低い所へ流れるのと同じように、その障害になるものを作らないでおけば必ずその人の能力は流れ出てくる筈です。だからリハビリというのは早くからそういうことをやって、その障害になってしまうようなものを作らないようにする、そうすることによってその人の持っている力が外側に流れ出てきて、色々なことが出来あがってくるんです。

実際に、僕らが医学の中で習ってくるもの、ここでやられたもの(本来の障害範囲)はそのままどうやったって、今の医学でどんなに頑張ったって何したって治らないものは治らないわけです。ただ、それに伴って別な障害が出てきてしまうので、それを作らないようにすれば、必ずその人の持っている能力とか力は外側にあふれ出てくるだろうと思っています。

先ほどのお話のあたってから8か月のかたも、本来そういう力を持っているかたなんですね。その力を出すのを邪魔するものがあったので、その邪魔するものがリハビリをやることで少なくなっていった、だから本来の力が出てきたんだろうと思います。

そういう力が出てくるのを邪魔するようなものが、だんだん出来上がっていくのを黙って見てるのは大変もったいないことなので、そういうのを少しでも自宅にいて何とか出来ればいいだろうな、と考えてやっています。

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問:市の機能訓練というのはこの教室と共通しているんですか。

答:僕達が主導してやるという形ではなくて、保健婦さんがやりやすい形を僕らが僕らのもっている力でバックアップしようということでやりました。その時に保健婦さんが考えてきたのは、こういう形よりは診察をして欲しいということだったんですね。僕が診察をして指示を出したら、理学療法士の山崎先生が一緒に行きますから、彼がそれをやって、保健婦さんがたも一緒にやるという形で始まるようです。それがそのまま続いていくかどうかは、皆さんの要望が強い形にしていくのがいいんではないかなと考えています。


問:それには身障者のかたたちしか行けないんですか。一般の人達とは参加や見学は出来ないんですか。

答:それは可能だと思います。市の健康保健課に問い合わせていただければ分かると思いますが。


問:それに参加するのも結局は65歳以上ということですか。

答:基本的には法律の根拠がそうなっている限りは、たぶんそういう制限が付くんだろうと思います。


問:私が思うには、障害者は65歳にならない人でもいっぱいいると思います。でも一般的に65歳以上の人とか、新聞でも色々と65歳以上というのが多いんですよね。その年齢以下の人がたのそういった集まりとか訓練場所というのはないのでしょうか。

答:そういう行政が動くものというのは法律という根拠にのっとってやっています。そうでなければ動けないようです。年齢的な制限は理屈に合わないことなんですけれど、そういうことのようです。だから、本当はここを使って実際にPTの人、OTの人がやるという形のリハビリ教室も僕はやりたいんです。

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問:私は私立病院で「あなたはもういいですよ。おうちでやって下さい」と言われたんです。でも、言葉も不自由だし足もうまく動きません。その時に市の方へ個人で行って相談して(機能訓練を)やって下さいと言ったのは私達なんです。リハビリをやってもらえる人はいいですが、あなたは非常に良いと言われて、喜んでいいのかどうか困りました。2年間黙っていました。

でも私はすごく不安になってきたんです。言葉が不自由で。そして(症状が)戻るんです。戻るということはまたぶり返しということが心配で、相談しに行ったのが保健婦さんのところです。(機能訓練を)やって下さいと1年以上頼んだんですが、ようやく動いてくれたのが去年からです。ですから、この1年間は空白の中でいました。

答:市の機能訓練は今年から始まるようにはなりましたけれども、実は去年から始まるという予定があったんです。その前の年に僕がこっちの病院に来まして2年経過した段階で、やっとこちらの方のことが分かってきたものですから、市の方にそういうことをやるというのはどうなのかということを、市役所の保健課の課長さんとお話をしました。他の町村ではもう始まっているわけです。釧路だけなかったんです。だから釧路でも始めなければいけないと思いましたし、だけど、原則的には、市で行なわれることであれば市立病院があるんだから、市の病院がその責任を持つべきだというような原則論というのはあります。しかし、その原則論を待っていたのでは、結局困る人ばかり多くなってくるだろうと思います。それで、僕らは市とは別のところで働いているわけですけれど、うちの病院にそれだけのスタッフがいて医者がいる。これは地方での財産のひとつだと思うんです。そういう財産というものをその地方で使うべきだと思います。当然僕らは病院の職員として仕事をしているわけですから、外へ出て仕事をするというのはおかしいことなんですけれど、それを病院の方とも話をして了解を得た上で、うちの病院長も地方の役に立つためであれば、という広い考えがあったから、来週から機能訓練を出来るようになるんだろうと思うんですが、僕達はいつまでやるようになるかは分かりません。基本的には1年ごとの契約ということになっているようですから。市そのものでもきちんとした形を作っていくようになって、市の職員としての理学療法士、作業療法士が出来あがって、市立病院にリハビリの医者が出来あがれば、僕達はそれ以降は行かなくなるんだろうなと思います。だから、基礎作りの段階なんだろうと思うんですけれど、それに参加出来るのは自分でも大変嬉しいと思っています。

65才以下のかたがいかれる場所がないということがありますよね。それは、児童福祉法の年齢を過ぎてから65歳までが大変なんですね。だから、養護学校なんかにしてもそういう所を卒業したあと、もう行くところがないんですね。大変良い指摘をしていただきました。




〜おわりに〜

こんなような話が出来るということがいいなと思います。僕らもここで機能訓練そのものを出来れば良いなと思っているんです。だけれども、理学療法士、作業療法士、医者の数も、施設内での仕事に見合うだけの数しか、人員の枠があっていないものですから、実際には訓練室でやっている人数で目一杯ということになるんですね。僕はこの病院に来る前はこういう公的な病院ではなく私設の病院にいましたから、そのへんは非常に融通がきいて、色々な試みをしやすかったですね。しかしここは公的な病院ですから、こういうことをひとつやるのにも判こがいるわけです。1月に始めて24回を迎えることが出来ましたが、これからも出来るだけやります。うちのスタッフは皆、1人でも聞きに来てくれるかたがいる限り続けるという気持ちでやっていますので、少しでも長く、皆さんにニードがある限りそれに答えて僕らもやっていきたいと思っていますので、これからもどうぞ宜しくお願いいたします。どうも有り難うございました。




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