筋力回復の方法について

理学療法士 山崎利幸





1.末梢性麻痺と中枢性麻痺の回復過程の差




中枢性麻痺の特徴をひとことでいうならば、末梢性麻痺が筋力の量的変化であるとすれば、中枢性麻痺は筋機能の質的変化であるということができる。すなわち、(脳卒中による片麻痺をはじめとする)中枢性麻痺においては、回復の途上において、正常では見られない質的に異なった「異常」な現象が出現し、次第にその異常な現象が弱化し、正常な状態に近づくのである。この質的変化は二つに大別できる。


ひとつは、正常には潜在的にしか存在しない原始的な現象が抑制を脱して表面にあらわれた「陽性徴候」である。

もうひとつは、正常に存在している運動調節機構が妨げられた「陰性徴候」である。


陽性徴候の中で最も重要なのは、原始的な脊髄レベルの運動統合の表出と考えられる「共同運動パターン」である。これは片麻痺の回復初期に、わずかな随意的動きが可能になった時点から、自らの意志によって引き起こすことができる一定の固定したパターンによる半随意的・半不随意的運動である。回復が進むにつれ共同運動の支配的状態に陥ることもあれば、回復がさらに進み、共同運動から分離・独立し、個々の運動が可能になっていくケースも多い。回復の程度は障害の重症度に左右されるが、その後の訓練の方法や運動の仕方によっても影響を受けるので注意が必要である。




2.運動の基本型と訓練方法


(a)他動運動
・セラピストの徒手による「徒手他動運動」
・自動的に動く器具による「器械他動運動」
・自身の健康部位による「自己他動運動」
(b)自動運動
・自動介助運動
・自由自動運動
(c)抵抗運動
・セラピストの徒手によるもの
・器械器具によるもの
・自身の自重や抵抗によるもの

力源より見た運動の基本型は他動運動、自動運動、そして抵抗運動の三つに大別できる。

他動運動とはセラピスト、器械、自身の健康部位によって他動的に動かされる運動である。この運動の反復により、各関節の角度の変化に伴い、筋肉が伸びたり縮んだりする活動を大脳に送り込むことができる。

自動運動は自身の筋力で動かす運動である。自動介助運動とは大脳から筋肉に命令を送っても、関節運動を引き起こすことが困難なほど筋力が低下していたり、異常な運動の表出がある場合はセラピストや自身の健康部位を使って関節運動を起こし、正常な運動方向に誘導しながら行える方法である。自由自動運動は支助も介助もされずに自力で運動を行うことであるが、異常な運動の表出を強めないように行うことが肝要である。たとえ関節運動を十分に引き起こすことができなくとも、脳から命令を送った筋肉に正確な命令が届いていれば、やがては筋肉の収縮を促し、わずかでも筋収縮が認められれば十分な成果が上がっていくのである。力まずに根気よく運動を継続させることが大切である。

抵抗運動はセラピストや自身の徒手抵抗・自重、器械器具による抵抗や重量などに打ち克って行う運動である。この運動は筋力の回復と増強に大きな効果をもたらすことができる。具体的方法論はセラピストから指導・助言を受けるとよい。


以上が運動の基本型から見た筋力回復の方法であるが、どの運動を行うにせよ、中枢性麻痺に対しては運動の方向、強さ、スピード、回数、正確性などを十分に考慮し、あせらず、根気よく実行・継続していくことが大切である。

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