安全・安楽な移動について
−介護者の負担を軽減する−


講師:看護部 佐藤香苗



1.廃用症候群
寝たきりになるとどうなるのでしょうか?



今日のテーマは「安全・安楽な移動について」。サブテーマとして「介護者の負担を軽減する」ということをあげました。現代社会というのは高齢化が進んで、今はもうすでに日本は高齢者の社会になってきています。平均寿命も世界で1位になっていますよね。それはすごくいいことだと思いますし、自分も長生きしたいと思いますが、その反面、寝たきりの老人が増えてきているのもたしかです。

それから、食生活も変わってきて美味しいものがたくさん増えてきているのは私も嬉しいんですけれど、そういう色々な物が食べられるようになった。

そして、新聞などで騒がれていますが、現代社会においてはストレスがすごく多くなってきていて、それを外に発散してしまうと殺人や通り魔がはやってしまいますけれど、内にひめてしまうとそれが病気などに関連してしまって成人病なども増えてきています。成人病の中でも脳血管障害といいまして、脳の血管が切れてしまうことも増えて、体が麻痺してしまって寝たきりになるということもあります。この脳血管障害というのは年齢を問わず、若い人でも障害を持ってしまいます。30代の働き盛りで麻痺が起こってしまう人もいます。寝たきりの原因の1,2位は脳血管障害と老衰といわれています。

人間というのはお年寄り・若い人に関係なく、体を使わないで寝ていると様々な弊害が出てきます。皆さんにお渡しした資料の中にも書かれていますが、この弊害のことを「廃用症候群」と私たちはいっています。



1.骨が萎縮する:具体的にいうと、骨がもろくなって骨折しやすくなってしまいます。体を支えることを必要としなくなるので、骨も一緒になって萎縮してしまうというものです。

2.筋力が低下し関節が硬くなる:ベッドで1週間ほど寝たままでいると、ふくらはぎのところがぽたぽたとして筋肉がなくなってきますが、経験のあるかたもいらっしゃると思います。筋肉が全然なくなってきてしまって、いざ立ち上がろうというときに全然立ち上がれなかったりします。関節もずっと伸ばしたままでいると曲がらなくなったり、反対に曲がったままで伸びなくなったりということになります。これを「拘縮」といいます。

3.内蔵の機能が低下する:胃や肝臓の機能も落ちてしまいます。

4.精神機能が低下する:痴呆が始まってしまうこともあります。

5.床ずれなどの合併症を招く:寝たままでずっと同じ姿勢でいると体の一部が圧迫されて床ずれを起こしてしまいます。寝たままでいるということは「百害あって一利なし」ということで、いいことではないということが分かると思います。



普通、人間は夜が明けたら目が覚めて一日を迎えます。起きたらベッドや布団から抜け出して生活が始まるんですが、食事をしたりおトイレに行ったり、お風呂に入ったり、おもてに外出したりといった、生きていくために必要な全ての生活行動は「移動」から始まっています。つまり、移動は人間らしい社会生活を維持するためにどうしても必要な動作といえます。「起きること、動かすこと」の重要性をもっと認識する必要性があると思いますし、もちろんそのためにはマンパワー、すなわち介護者の力が必要になってきます。




次ページへ
「2.リハビリ教室講演録集」へ戻ります Home page(Top page)へ戻ります