今月の旬
もう52回目の今月の旬、
これからも料理人の仕事と季節の風をお届けします。
今月からは「レストラン ル ミュゼ」よりお送りします。
2006年
2月のテーマ 「牡蠣」
牡蠣。寒くなると気になる、この牡蠣。昔勤めていた頃、どうしても疲れがたまって撮影の帰りにスーパーの魚売り場で殻付きの牡蠣を購入。何だか力になりそうでナイフまで買って殻つきの牡蠣を手に入れ、駐車場で殻を開け食べたのだが、苦労して4個か5個を続けて食べたのでちょっと気持ち悪くなり車中でダウン。
もの凄い力のある食材である。調子が悪いと負けてしまう。
でも美味しい。
厚岸の船上で殻からむきたてのヤツも、カキラーメンも旨かった。
その牡蠣が今回の主役。2001年の11月以来の久々の登場だ。
今回は厚岸より東、昆布盛の中嶋さんの牡蠣に惚れた石井シェフ。
いったいどんな一皿に仕上げるのだろう。
厚岸の海へのオマージュ
『極寒の海をイメージ;雪が降り積もる景色』
シングルシード牡蠣 "カキエモン"と海のジュレと雪に見立てた百合根
次の文は以前、2004年3月ののものである。「皿をキャンバスに見立て絵画のように料理を盛り付ける料理人には何人かお会いしているが、これは絵ではなく三次元のオブジェである。味覚だけではなく視角でも春を伝え感じさせる一皿である。その高さは山を、土手を想わせ、白い牛乳の泡は陽射しを受けて少しずつ姿を消す儚い雪を感じさせる。そこにはイマジネーションを形にする技量と食べることの豊かさ伝えるメッセージが見える。シェフの料理に対する想いがあるからこそだろう」
前回はレストラン ル・フェスタン・デュ・ノール時代、今回の料理も変わらない石井氏の料理に対する姿勢がうかがえる。
羅臼昆布と羅臼の塩、そして牡蠣の汁を使ったジュレは凍てつく流氷をも想像させるし、冷凍の後に粉砕した百合根は雪そのものに見える。その百合根は水分を含むとまるで雪のように融け、儚ささえも感じさせる。
本人曰く、「ギリギリの足し算」。繊細な牡蠣の個性を壊さない範囲での塩味、レモンの酸味、絶妙である。松の実とエシャロット、ドライトマトのアクセントも旨い。
洗うのにも気を使う器、少ないスタッフ、オーナーシェフになったとは言えイメージを思い通りにするには苦労が絶えないだろう。面倒を面倒と感じないで進めるから料理は産まれるのである。何度見ても美しい料理だ。
今月からの6ヶ月、旬を伝えてくれるのはシェフ 石井 誠 氏 「レストラン ル・ミュゼ」のシェフである。2005年夏にオープンしたこのお店はシェフとシェフの想いをくみ取った建築家の仕事を見ることができる。
ソムリエでもあるシェフ 石井 誠 氏は専門学校で料理を学び、国内のホテルに勤務の後、フランス、イタリアを放浪、スペインで厨房に立ち、帰国後イタリアンのお店を経てエノテカの料理長となる。もともと体育・美術・技術が得意な学生であった石井氏、エンジニアの家系であったが突然変異なのか高校後の進路を料理の世界にしてしまう。料理を「表現すること」と考え、渡仏時期にルノアール、ゴッホ、マティス、シャガールなど多くの画家のアトリエを訪れる。美術の分野で生の文化に触れ、ゆっくりとした思索の時間を海外で持った石井氏、今は日々の料理に「絶対美」を反映させるべくひと皿ひと皿に向かっている。フレンチの技法をベースにしながら捕われず、縛られずに『石井』の料理を作る毎日なのである。その自由さ(石井らしさとでも言えようか)が日本古来の野菜を素材に使ったり、食材の持つ『美しさ』を皿に導くという心掛けを生んでいる。
紹介した料理 『厚岸の海へのオマージュ "極寒の海をイメージ;雪が降り積もる景色"シングルシード牡蠣 "カキエモン"と海のジュレと雪に見立てた百合根』
こちらは5000円のコースの一品、予約をされてからお楽しみを

住所 札幌市中央区宮の森1条14丁目3ー20
電話 011-640-6955
営業時間 ランチタイム 11:30〜14:00ラストオーダー
ディナータイム 18:00〜21:00ラストオーダー
定休日 第1、2日曜日、第3、4月曜日
URL http://www.musee-co.com/
陶芸家
中村裕氏の作品が店内に。
そのグラデーションは遥かな山の稜線を想わせる。
ミュゼで実物をどうぞ