56回目の今月の旬、
これからも料理人の仕事と季節の風をお届けします。
2006年 6月のテーマ 「 仔牛 」
「仔牛」、あれ?56回もやってて登場していない?いえいえ2003年5月にイタリアンcapri
capriで登場しているのだ。前回は季節はないと解説していたが、出産時期である春から考えると今は生後2ヵ月ということになる。欧米では2〜3ヵ月くらいを仔牛肉の表現に使うそうなのでドンピシャのタイミングでの登場である。
仔牛、フランス語で「ヴォー」veau、英語では「ヴィール」veal、まだ脂肪が少なく赤い色も薄い。特徴は香りやクセがなくとても柔らかい。その分バターなどコクのある食材とあわせる場面が多い。ウ〜ン、普段口にする機会はないなぁ〜と思いつつ石井氏の仕事を覗く。肉の掃除をどんどんすすめる石井氏、伊達産のアンガスの仔牛が調理されていく。やはりうすいきれいなピンクで牛と思えないほどである。
『 ブランケット ド ヴォー、伊達産 乳飲み仔牛の炭火焼き』
実は今回、メニューにある炭火焼きではない。ランチとディナーの間にお伺いしているので炭の火を起こさずにフライパンでソテーしたものを出していただいた。炭火での焼き上げとは香りが違うのだろうが、バターを使ってフライパンで少しづつ、丁寧に焼き上げていく。この楽しみ方も脂肪が少ない仔牛の肉には適っている。少しずつ温度を上げ、焼き汁をスプーンですくってはかけ、またすくってはかける。骨から内部に火が通り、また焼き汁をすくってはかける「アロゼ」をし、焦げないように少しずつ熱を通す。焼き上がりはふっくら、骨の周りはカリッと、元の白いきれいなピンクを残しつつである。
それだけで垂涎なのだが、ホワイトアスパラ、ニンニク、新玉ねぎ、じゃがいもがついている。ローストされたホワイトアスパラはみずみずしい甘さ、おなじくローソトされたニンニクもアスパラとは違う甘さである。蒸したじゃがいももさつま芋を思わせるほどで、姿を見ているのにあれ?栗?さつま芋?と考えてしまう。圧巻は新玉ねぎ、低温で自らの水分で蒸し焼きされている新玉ねぎは口に入れると甘みを感じながらスッと消えていく。口の中で消えるのだ。
ひと皿の中に楽しみが計算され配置されている。まとめるのはジュ
ド
ボー、透明感のあるジュは仔牛のやさしい旨味と野菜の甘みをとりもつ。ガツンとくるインパクトではなく、食べ手にストレスを感じさせず流れるように食事を進めさせるひと皿である。仔牛肉の素直さと演出家である料理人の仕事を感じる。
2月から旬を伝えてくれるのはシェフ
石井 誠
氏
「レストラン ル・ミュゼ」のシェフである。2005年夏にオープンしたこのお店の空間は、シェフとシェフの想いをくみ取った建築家の仕事を見ることができる。
ソムリエでもあるシェフ 石井 誠
氏は専門学校で料理を学び、国内のホテルに勤務の後、フランス、イタリアを放浪、スペインで厨房に立ち、帰国後イタリアンのお店を経てエノテカの料理長となる。もともと体育・美術・技術が得意な学生であった石井氏、エンジニアの家系であったが突然変異なのか高校後の進路を料理の世界にしてしまう。料理を「表現すること」と考え、渡仏時期にルノアール、ゴッホ、マティス、シャガールなど多くの画家のアトリエを訪れる。美術の分野で生の文化に触れ、ゆっくりとした思索の時間を海外で持った石井氏、今は日々の料理に「絶対美」を反映させるべくひと皿ひと皿に向かっている。フレンチの技法をベースにしながら捕われず、縛られずに『石井』の料理を作る毎日なのである。その自由さ(石井らしさとでも言えようか)が日本古来の野菜を素材に使ったり、食材の持つ『美しさ』を皿に導くという心掛けを生んでいる。
登場した料理『ブランケット
ド
ヴォー、伊達産、乳飲み仔牛の炭火焼き』7350円のコースのメイン。予約してお楽しみを
住所 札幌市中央区宮の森1条14丁目3ー20
電話 011-640-6955
営業時間 ランチタイム 11:30〜14:00ラストオーダー
ディナータイム 18:00〜21:00ラストオーダー
定休日 第1、2日曜日、第3、4月曜日
