今月の旬

今月で76回目の旬のページ
これからも北海道の旬を料理人の心と一緒に届けます
「 magari 」(マガーリ)からの6回目
宮下輝樹氏のメッセージです
お楽しみに

 

 2009年 1月のテーマ 「 ゴボウ 」

 

 牛蒡、ごぼう、おせちでゴボウ巻き食べました?
今月はゴボウが今月のテーマ。
実は小さい頃はキンピラゴボウが苦手だったのだがいつの頃からか好きになった
ご飯にキンピラゴボウ、旨いでしょ
あの土臭さがわかるのは大人になったからかなぁ…
まずはゴボウのお話
キク科の2年草の植物でまっすぐ伸びた根を食用にする。
他に春から初夏に出回る若い根や茎を食べる「葉ゴボウ」もある。
また京野菜で太く育てられた「堀川ゴボウ」も有名だが、これは特定な品種ではなく特殊な栽培なのだそうだ。
多くは基本となる「滝の川」から選抜、改良されたもので、これらは江戸時代には栽培されていたようだ。
近年は収穫の労力を減らすために短いものも栽培されているという。
中国北部からヨーロッパ、ユーラシア大陸に広く自生していてこの範囲が原産と思われる。中国経由で10世紀頃には日本に伝来していたようだ。食用として栽培しているのは日本だけ、日本独特の野菜とされる。
「ヨーロッパにはゴボウは無いのか?」大根や人参、株、芋とも違う独特な土臭さを持つゴボウ、唯一無二の存在なのだろうか。図鑑を見ると「セイヨウゴボウ」なるものがある。ヨーロッパ南部の原産でゴボウと同じキク科の2年草だ。サルシフィー、ブラックサルシフィーなどがそれでスープなどの煮込みに用いるという。ギリシャ、ローマ時代には栽培されていたが広まったのは18世紀頃で新しい存在だ。こちらは食べる機会が無いので想像でしかないが、アクの強さ、白さと変色などずいぶん似ているようだ。
ゴボウ巻きにキンピラゴボウ、炊き込みご飯や豚汁と多くの日本の料理に無くてはならないゴボウ、やっぱり日本独特の野菜で良いかなぁ。
あれっ?去年植えたゴボウは畑でそのままだ…
栽培は春に種を蒔いて秋に収穫する方法と秋に種を蒔いて春に収穫する方法があるという。北海道では越冬が不可能なのか春の播種の方法が一般的なようで、冬の間寝かせたものが今回の旬に登場である。
もう一つ寄り道、ゴボウは中国では薬用として用いられるそうだが、食後の血糖値の急激な上昇を防いだり、コレステロールの吸収を抑制する食物繊維を多く含む。含まれる炭水化物中の多くはイヌリンという多糖類の一群で腸内の善玉菌にとって栄養素となったり、カルシウムの吸収を助けるという。なかなかの力を持つ食材だ。
大人だからニュアンスがわかる食材か、大人が必要としているから旨く感じる食材か、不思議だ。
う〜ん、どっちもありだ、ね。
さてその日本独特の野菜をイタリアンのシェフである宮下氏はどう料理するか、さぁお楽しみである。
 

 

  

  

 

 

 

 

  

『 フォアグラと牛蒡の香り 』
 このゴボウは留寿都村の生まれ、知り合いの農家さんが作ったものを分けてもらっていて、なくなったらお終いだそう。ゴボウの味は土なのか作り手なのかちょっとの違いで変わってしまい、太いゴボウほど甘く、スが入っているぐらいの方が甘かったりすると宮下氏。出会いは素材として送ってもらったゴボウをピュレにしたら美味しかったので食材として使用するようになったと語ってくれた。モツ煮のゴボウ、豚汁のゴボウ、組み合わせを考えると肉・内蔵との相性は良く全く合わせる形に苦労はしなかったとも、なるほどわかりやすい話である。
 甘い。思っていたより甘い。ゴボウのピュレも甘いのだが、素揚げしたゴボウもまた甘い。ほんのりと甘いゴボウにフォアグラの組み合わせには何とも言えない。甘過ぎないこの甘さは大人のニュアンスで普段食べる固いゴボウの食感も好きなのだが、この一皿のゴボウもとっても素敵だ。赤ワインを蜂蜜と八角、シナモン、グローブを加え煮詰めたアクセントも良いバランスである。普段と違うゴボウの世界を感じる。
 
 
 作り方を覗いてみよう。
まずゴボウをタワシでこすってきれいにして小口に切る。次にごま油で炒めてから鶏のブロードで20〜30分じっくり煮て熱いうちにミキサーにかける。この時ほんの少しの塩を加え甘みと旨味を引き出す。小口に切った生のゴボウ、煮て少しだけ塩を加えたゴボウ、ミキサーにかけてさらにほんの少し塩を加えたゴボウ、途中で味見をさせてもらったのだがその変わり様は驚くほどだ。塩の凄さを実感した。塩が過ぎても足りなくてもこの甘みと旨味の構成は完成しない。引き出された甘みと旨味は試食時に堪能したのだが、作り方を目の当たりにして事の凄さをさらに感じる。塩、一つの大切さを知る事でこんなにも幸せになれる、今回も楽しいレポートだ。
 作り方の続き、上に乗るのはゴボウの素揚げ。ここでも皮は剥かず、こすってきれいにしてからピーラーでスライスして素早く揚げる。ピュレも素揚げも切るそばから変色するので手早く作業するのがコツ、水に晒すと白いままだが固くなり過ぎ、のんびりすると真っ黒に。皮ごとは使うのは皮近くに旨味が強いからだそう。一つ一つに意味があるのだ。
 フォアグラは牛乳とマルサラ酒に30分から1時間ほど浸し生臭さを抜き香りを移す。ゴボウのピュレを敷いてフォアグラを乗せその上にゴボウの素揚げ、赤ワインと蜂蜜を煮詰めたアクセントを添え完成。崩しながら一緒に食べる事でフォアグラのコクやゴボウの甘み、それぞれの食感を楽しむことが出来る。うん、楽しい一皿だ。

 

 

  

 

  

 

 調理中の宮下氏、楽しそうに仕事をしていたかと思うと時に集中した表情を見せる。素敵なコントラストだ。
 先の写真でゴボウの仕込みをしているのは白岩隆太郎さん、宮下氏のもと修行に励む若者だ。先月賄いご飯を食べる邪魔してしまったのは前田郁也さん、彼も寝る間を惜しんで仕事に励む。厳しいながらも楽しい厨房のようだ。88年生まれに85年生まれ、どんどん若い元気が出てくる。私も負けられない、頑張らなきゃ。

  

 

 

 

 

  

 

 

 

 

  

 

 

 

『 フォアグラと牛蒡の香り 』は2000円
良い具合の牛蒡がなくなればお終い。
要確認、要予約です。
 

 

 「magari」は2006年9月にオープンしたイタリア料理のお店である。シェフは宮下輝樹氏。道東の幕別出身、幼いころから料理が好きで、19才から本格的に料理の道を歩みだし、テルツィーナの堀川さんと出会う。もう6年も前、テルツィーナ時代の2002年にこのページでも登場してくれたのだ。あれからまたイタリアでの修行、東京・アロマクラシコ、札幌・クレシェンテなどを経て magari のオープンとなる。
 常に素材に着目していて、電話をしたら襟裳町だったりニセコ町だったりと産地へ実際に足を運び、生産者との会話を大切にしている。この想いは一皿一皿に現れ、お店を訪れる人を楽しませる。宮下氏の料理をする時の楽しそうな顔がとても印象的である。
 その日に入荷した厳選素材で組み立てるコース、旬のおまかせコースは5500円、8000円から(2名様より)

 

    住所  札幌市中央区南11条西20丁目2−26

    電話  011-552-8172

  営業時間  ランチ  11:30〜14:00
         ディナー 18:00〜21:30

   定休日  火曜日  

 

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