今月の旬

今月で77回目の旬のページ
これからも北海道の旬を料理人の心と一緒に届けます
「 magari 」(マガーリ)からの7回目
宮下輝樹氏ご好意により12回・1年の連載になります
お楽しみに

 

 2009年 2月のテーマ 「 おおすけ 」

 

 今回のテーマは「おおすけ」、標準和名は「マスノスケ」、英名は「キングサーモン」、鮭の王様という名を持つ鮭である。分布と漁を聞くと滅多に出会える事のないしろもの、王様だからね。
 まずは「おおすけ」の勉強から。
サケ科の魚で世界最大、大きいものは50キロを超えるという。シロサケは70㎝くらいで3〜4キロなのを考えると名前の通り、王様だ。
 ちなみにサケ科の魚は新巻などになり一般的にサケと呼ばれるシロサケ、昨今、鮭弁当でシロサケの場を奪いつつある紅鮭、カラフトマス、カムチャッカから北アメリカにいるギンサケ(最近は東北沿岸での養殖が盛ん)、ノルウェー・南米からの輸入が多い大西洋鮭、北海道では春先に旬を迎えるサクラマス、サツキマス、オオスケ。海に降りず河川で生活するものもいる。ヤマメ、アマゴ、ヒメマス、ニジマス、イワナにイワメ、アメマスなど。
 食料としてのサケの利用は古く紀元前1万年前のフランスの壁画にも見られる。日本では縄文時代の痕跡としてサケの骨が発見されている。アイヌ民族も鮭の皮で靴を作ったり、余すところなく大切に利用している。近年は人工ふ化によりシロサケの放流事業が成功し漁獲量が多くなり、我々の食には欠かせない存在である。
 そのサケ科の中の「おおすけ」。北太平洋のアラスカやカナダ、ロシアの大きな河川に遡上するが日本の河川に遡上する事はない。北海道の沿岸に見られるのは回遊しているもので1〜3月に刺し網にかかる事がある程度のもので極めて少ない。10キロ以上のものが脂のりも良く旨いとされるが、値段もキロ4000円以上、価格も王様だ。
 体の背の部分、背びれ、尾びれに小さな黒い斑点があり、下あごの歯の付け根が黒く、クチグロマスの別名もある。今回のまな板の上は8キロ強、15キロ〜50キロもあるのはどうやってさばくのだろう。マグロより小さいとはいえマグロを1本で仕入れて店先でさばくところも少ないと思う。20キロだと米袋二つ(もちろん10キロのお米)、とんでもなく大きい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、まな板の上の50キロの想像は置いて、今回のテーマ「おおすけ」宮下氏はどう料理するか、仕事を覗いてみよう。

 

 

 

  

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

『 おおすけのレア仕立て ガスパチョ風ソース 』
 おおすけを三枚に下ろし、切り身にしてから冷凍。念のため冷凍する事でアニサキスを殺すのである。ちなみに厚生労働省では-20℃以下で24時間以上の冷凍を指導している。冷凍してからはゆっくり常温に戻して串を打ち、炭火で焼く。常温に戻すのは身割れを防ぎ、皮と身の間のゼラチン質をもった脂を炭火で上手く焼くため。
 ン?イタリアにも炭はある? 宮下氏に聞くとカルボナーラとは「炭焼職人風の」ということで、力仕事をする炭焼き職人(カルボナーリ)が食べていたパスタの一種とも、炭焼き職人が作ったら炭の粉がパスタにかかりこうなったとも、かけた黒コショウが炭のようだからとも言われるそう。勉強になりました。ちなみにカルボナーラに生クリームを使うのは日本の料理人が食べやすい味付けにした日本だけのオリジナルで、本来イタリアでは使わないのが普通。あぁ、カルボナーラではなくて炭の話、イタリアにも炭はあり調理にも使いますと、ハイ。
 ガスパチョ風ソースは、この時期宮下氏お気に入りの高知県のフルーツトマトを細かく切って、セロリ、キュウリ、エシャロット、青唐辛子を小さい賽の目に切って加え、さらにディルを細かく切って合わせる。そこに蜂蜜入りシードルビネガーと辛い唐辛子オイルを数滴、プラスオリーブオイル。ビネガーの酸味はオリーブオイルでまろやか且つ爽やかなものとなりディルの香りとともソースを完成させる。濃いめの脂に爽やかなソース、構成の王道ともいえるだろう。
 右の写真はさばいた「おおすけ」をサーモンマリネにしているところ。伯方の塩にサトウキビの砂糖、それにフェンネルをふんだんに使い1日から1日半つけ込み、その後は水で塩を落としオリーブオイルで全体を塗って保存。野菜と組み合わせこちらは前菜へと変身。脂ののったサーモンマリネも引かれるなぁ〜。
 いやいや本編、仕上がりが先のマリネより目の前の一皿へ。
 口に運ぶと酸味、甘みのソースもさっぱり、すっきりして、その後にちょっぴり辛みもあり複雑な組み立てが飽きさせない。何より引き込まれるのはおおすけの身肉がパサパサしない絶妙の火加減。料理名にもあるように「レア仕立て」というのは火が入り過ぎず、また入らなさ過ぎず、絶妙の具合なのだ。しっとりしながらベタベタしない身肉、そしてさっぱり・すっきり、皮目はパリパリ…。
 マルドン・クリスタル、イギリスの海塩とおおすけの脂とが溶け合い、ソースはすっきりとアクセントをもたらす。
う〜ん、シロサケごめん、こいつは凄い。北海道の地方色豊かなシロサケ応援団なのに希少「おおすけ」の誘惑に負けた。
大きく官能的なヤツ、これは御馳走だ。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3ヶ月が一括りの旬のページ、以前も2期・半年の連載もあったが、今回はそれ以上のロングラン。1年の連載を目指します。季節により食材の変化を楽しみ調理に向かう宮下氏、お話を聞いて次から次へと出てくる素材に興味が溢れます。これ以降の連載もお楽しみに。
 そうそうお店に新しいスタッフが入ってました。吉田智亜紀さん、10月16日生まれ、年齢はお聞きましたが公表しません。血液型はB型。電話をするとかわいらしい声が聞こえます。福島さんが カンティネッタ サリュを仕切ってから男ばかりになった店内にちょっと花が咲きました。えっ、ひょっとして三人とも全員B型?
『 おおすけのレア仕立て ガスパチョ風ソース 』は2000円
希少である故に確認が必要、要予約です。
 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 「magari」は2006年9月にオープンしたイタリア料理のお店である。シェフは宮下輝樹氏。道東の幕別出身、幼いころから料理が好きで、19才から本格的に料理の道を歩みだし、テルツィーナの堀川さんと出会う。もう7年も前、テルツィーナ時代の2002年にこのページでも登場してくれたのだ。あれからまたイタリアでの修行、東京・アロマクラシコ、札幌・クレシェンテなどを経て magari のオープンとなる。
 常に素材に着目していて、電話をしたら襟裳町だったりニセコ町だったりと産地へ実際に足を運び、生産者との会話を大切にしている。この想いは一皿一皿に現れ、お店を訪れる人を楽しませる。宮下氏の料理をする時の楽しそうな顔がとても印象的である。
 その日に入荷した厳選素材で組み立てるコース、旬のおまかせコースは5500円、8000円から(2名様より)

 

    住所  札幌市中央区南11条西20丁目2−26

    電話  011-552-8172

  営業時間  ランチ  11:30〜14:00
         ディナー 18:00〜21:30

   定休日  火曜日  

 

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