今月の旬

このページも79回です。
これからも北海道の旬を料理人の心と一緒に届けます
「 magari 」(マガーリ)からの9回目
宮下輝樹氏ご好意により12回・1年の長期連載になります
ゆっくりとお楽しみください

 

  2009年 4月のテーマ 「 毛ガニ 」

 

 

 今回は再登場の毛ガニ、同一料理人の手による時を経ての再登板である。
まずは2002年4月号を覗いてみよう。
 タラバガニ、ズワイガニ、花咲ガニに上海ガニ、ワタリガニ、毛ガニ。世界には5000種類ものカニがいると言うが食卓に登場するものはそう多くない。いや種類も多くないが価格の点で我が家の食卓にはそう、めったに登場しない。この中でも有名な毛ガニ、食料が統制されていて物のない第二次世界大戦中、統制品ではなかった毛ガニを北海道の国鉄・長万部の駅構内で売られたのが、世に多く知られる切っ掛けとなったらしい。こちらは北海道の噴火湾でとれたもの。いまでも長万部の「かにめし」は名物になっている。さて宮城県より北の大平洋に分布する毛ガニ、北海道には日本海、オホーツク海にも分布する。昭和30年頃には現在の10倍もの漁獲があったようだが、乱獲がたたり今では上限を決めての漁獲に切り替わっている。さらには春のオホーツク、夏の噴火湾、冬の大平洋と漁期を決め資源保護も考えられている。冬の大平洋の毛ガニも小振りながらその肉の甘味、みそ(肝膵臓)のコクも知られ旬とされるが、流氷が去り海明けをを迎えたオホーツクものの甘味、みその旨味もまた格別。流氷が運ぶ豊富なプランクトンにより豊かな漁場が形成されるオホーツク海ならではの春の味だ。オホーツクの毛ガニ漁解禁は3月中旬、今年は855トンの上限で、この数字になったらおしまい。6月中旬には漁は終わるという。浜茹でを急速冷凍したものは旬を逃しても食べることはできるが、オホーツクの新鮮な毛ガニを冷凍せずにいただけるのはこの期間だけなのである。

『毛ガニとブロッコリーと春菊のサラダ』

今回はサラダ仕立ての一品である。毛ガニは身をほぐし、みそは別に取り置かれる。歯触りを残す絶妙な茹で加減のブロッコリーと身、そしてみそがあわせられソースと出会う。皿の一番下にペーストになった春菊、こちらは茹でて野菜のブイヨンと一緒にミキサーにかけられたもの。下ごしらえ、盛り付けも素敵なのだがソースが格別なのである。ニンニクとオリーブオイルを火にかけ、バルセートを加えてまた少し火にかける。バルセートとはバルサミコ風味白ワインビネガーで白ワインビネガーより果実の甘味があるもので、火にかけることで酸味に丸みが生まれる。このソースを冷やして毛ガニ達とあわせるのだが、これが…。ソースの酸味が胃を刺激し食欲を促す。そこに毛ガニの甘味、みその旨味、春菊の香。口の中は入ってきたものを感じながら、思考は夢中にさせられる原因を突き止めようと必死になっている。
確かに塩茹での毛ガニをそのまま食べるのも美味しいのだが、このバランスとの出合いは何とも形容しがたい。以前、蟹食い処で披露宴の撮影を頼まれ皆が無言になり黙々と毛ガニを食べていたのを思い出すが、こんな一品で会話が弾む食卓も素敵だ。
 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 と、ここまでは2002年4月号の旬のページ。
上の写真のトラットリア テルツィーナ時代の宮下氏、当たり前の事だが7年分若い。
この時が連載14回目なので改めて考えると随分続けてこられている。
今までご協力いただいた方々に深く感謝いたします。
 さて、毛ガニは身を取り出すのに手間がかかる。
左は magari のスタッフ、白岩隆太郎さんが身をほぐしているところ。
丁寧にやらないと殻に身が残るので些かもったいない、しかも仕事なので素早くだ。
キッチンバサミを使い、黙々と手際よく手を進める。
後で自分でまとめて食べるためならば出来るのだが、これを人のためにとは私には無理だ。
「頑張れ!隆太郎」と脇で小声で応援しながらの撮影になった。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 料理の行方を追って見よう。
 まず前出のように茹でた毛蟹を身肉とミソ、殻に分ける。
殻は水を入れて、水が半分くらいになるま
で煮立てる。宮下氏曰く「出来るだけ自然な風合い」の濃く重過ぎない自然なカニの香りを持ったブロードが出来上がる。
 かにミソはクリームソースにして舞茸と合わせる。タリアテッレを使い「オホーツク流氷明けの毛蟹みそと舞茸のクリームソース」に。今回はこちらではなくもう一つのパスタが狙いで写真はなし。
以下は狙いのパスタの
大まかな作り方である。
 ニンニクをオリーブオイルをひいたフライパンで丁寧に香りを引き出す。焦げないようにじっくりと火を入れるとニンニクはパサパサと頼りない感じになり、その分オリーブオイルにはニンニクの香りが移る。そのフライパンに鷹の爪を加え、カニのブロードを入れる。もう一方で、手打ちのタリオリーニを打ち粉を落とすほどのごく短い時間お湯を潜らせる。あまりに短い茹で時間に、えっ?っと思っているとすぐに納得。カニのブロードが熱くなっているフライパンに先ほどのタリオリーニを入れ、ブロードを吸わせながら茹で上げるのだ。9割ほど茹で上がった時点でハマボウフウを和えて火を止める。余熱で調理する事でハマボウフウはシャキシャキを残したまま、さらにはエキスが出過ぎず味の邪魔をしないそう。お皿に盛り込み、仕上げはイタリアンパセリをあしらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

『 オホーツク流氷明けの毛蟹たっぷりのタリオリーニ 』

 流氷で閉ざされていた海が春を迎える、オホーツクの海明けである。この海では北の大陸から流氷とともに豊富なプランクトンがやってきて幸をもたらす。海明けの時期の毛ガニもぎっしりと身入りが良く旨い。
 今回の毛ガニ、道北は枝幸町、北海風おがわの扱う毛ガニであった。北海風おがわの毛ガニは必ず小川社長かスタッフの手を通っていてモノにハズレがないという。評判に間違いは無く、個人的に数回お送りいただいているがいつもぎっしりと身入りの良い毛ガニに出会える。宮下氏曰く身入りが良いのと茹で加減、塩加減が良く、匂いがきつかったり、塩辛過ぎない良い状態のものを使う事が出来るという。実際に枝幸にも足を運び現場を見学してきたそうである。
 そんな抜群の毛ガニを手間をかけ一皿にする。旨くないわけがない。出来立てをメモも置いていただくとタリオリーニが口の中に海の恵を運ぶ。絡まった毛ガニの身とブロードを吸ったタリオリーニの二重奏だ。時折シャキッとしたハマボウフウも楽しい食感である。余韻に微かに辛みを感じるのは鷹の爪、穏やかな2重奏を締める役割か…
 旨いパスタを食べながら、壮大な自然がもたらす恵を感じる。
北の春のささやかで豪華な一皿である。

 

 

 

「オホーツク流氷明けの毛蟹たっぷりのタリオリーニ 」
「オホーツク流氷明けの毛蟹みそと舞茸のクリームソース」
どちらもアラカルトで2
000円、毛蟹の入荷状況で出来ない場合もあるので予約と確認を。 
 

 

 

 

 

 

 

 

 左の女性はサーヴィススタッフの吉田智亜紀さん。予約の電話できれいな声が聞こえてきたらこの人だ。10月16日生まれのB型、生年は内緒…。福島真理子さんがカンティネッタ サリュに移動してからは男だけの magari に紅一点、柔らかい空気を作っている。
 メガネをかけているところもコンタクトの時もどちらも可愛いかも。宮下氏の料理と笑顔のサーヴィス、お楽しみに。
 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 「magari」は2006年9月にオープンしたイタリア料理のお店である。シェフは宮下輝樹氏。道東の幕別出身、幼いころから料理が好きで、19才から本格的に料理の道を歩みだし、テルツィーナの堀川さんと出会う。もう7年も前、テルツィーナ時代の2002年にこのページでも登場してくれたのだ。あれからまたイタリアでの修行、東京・アロマクラシコ、札幌・クレシェンテなどを経て magari のオープンとなる。
 常に素材に着目していて、電話をしたら襟裳町だったりニセコ町だったりと産地へ実際に足を運び、生産者との会話を大切にしている。この想いは一皿一皿に現れ、お店を訪れる人を楽しませる。宮下氏の料理をする時の楽しそうな顔がとても印象的である。
 その日に入荷した厳選素材で組み立てるコース、旬のおまかせコースは5500円、8000円から(2名様より)

 

    住所  札幌市中央区南11条西20丁目2−26

    電話  011-552-8172

  営業時間  ランチ  11:30〜14:00
         ディナー 18:00〜21:30

   定休日  火曜日  

 

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