今月の旬

祝!80回。
これからも北海道の旬を料理人の心と一緒に届けます
「 magari 」(マガーリ)からの10回目
宮下輝樹氏ご好意により12回・1年の長期連載になります
ゆっくりとお楽しみください

 

  2009年 5月のテーマ 「 シャコ 」

 

  

 小樽の鮨屋 伊勢鮨で食べた春シャコ、旨かったなぁ〜、やっぱりオスで。
という事で今回のテーマはシャコ。シャコは北海道から九州、台湾、中国と広く分布する。中国料理でも登場するらしいが日本ではもっぱら鮨種として有名だろうか。三河湾や東京湾、瀬戸内海のものが有名だが、北海道の石狩湾近辺でも漁があり市場に出回っている。漁は春と秋、夏は身がやせ動き回らないため休漁、旬は1年に2回である。シャコ漁は底引き網を用いることが多いようだが、石狩湾では刺し網を用いる。底引きで小さいものも網にかけるのではなく、刺し網で大きなものしか捕らない事で資源が安定し、市場では大きなシャコと評価される。
 春シャコのメスで卵を持ったものが珍重されるがやっぱり食べて美味しいのはオス。シシャモもシャコも身が美味しいのはなんといってもオスなのだ。
 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャコの行方を追って見よう。
 鮮度が落ちると身が融けてしまうシャコ、多くは浜ですぐに茹でられる。なのでシャコといえば塩茹シャコや煮シャコが一般的なのだが、宮下氏は石狩湾に出かけ、活シャコを現地で購入して厨房に戻りすぐに蒸す。蒸す事でパサパサにならず、茹で汁に旨味が逃げる事もない旨い素材となるという。ただ蒸し器の大きさが限られるために何度も何度も蒸す作業をしなくてはならない。活を手に入れるために浜まで行かなくてはならないし、蒸しの作業もかかる、何とも手間のかかる素材である。
 ところが、今の今まで塩茹でのシャコを旨いと思っていたのだが、蒸したものにもの凄い驚きなのだ。甘みも、柔らかさも抜群なのである。宮下氏のニヤリに言葉無く、ただ頷くだけの私であった。

 

 

 

 

 

『 山菜と春シャコのオーブン焼き 』

 宮下氏曰く、魚という素材を扱うにあたって、その素材を美味しく食べる『鮨の技法』は避けては通れない世界である、と。よく鮨屋での話が出るのはそういう事だったのか、納得。勉強熱心な姿勢にも頭が下がる。
 そもそも宮下氏、料理人になってテルツィーナ時代に食材としてシャコに出会っている。その時も格別な美味しさを感じてはいなかったし、鮨屋で食べるシャコにも美味しいと思った事が少なかったという。ところがあるお店で「活シャコを蒸す」という仕事を知り、その味を感じて、素材としての魅力に気付き、旬の時期に使うようになったそうである。
 素材は蒸しシャコの他には筍、アスパラ、こごみ、ギョウジャニンニク、タラの芽、浜ボウフウ、そして温度卵。素材によってオーブンに入る時間を変え、シャキシャキなどの食感を損なわないようにローストする。ソースはバーニャカウダソース。直の塩は使わず、蒸しシャコの海水由来の塩味とバーニャカウダソースのアンチョビ由来の塩味のみ、これだけでローストした素材を楽しむ前菜に仕上げる。
 温度卵を崩してソースを絡め、こごみのシャキシャキやタラの芽の苦み、浜ボウフウの苦み、アスパラの甘みなどを感じながらシャコの身も楽しむ。アスパラの甘みとも違うシャコの甘み、なんとも旨い。蒸しただけのシャコより卵のコクがさらに濃厚さをプラスしている。頭付きに場合にはシャコ爪の肉を食べる楽しみもあり。
 この前菜は季節を、またこの後に出てくる料理たちのワクワクも感じる絶妙な存在だ。 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 春シャコのトマトソース タリオリーニ 』

 こちらはパスタの1品。
 ニンニク、アンチョビ、パセリなどのみじん切りにオリーブオイルを合わせたピストと言われる調味料をフライパンで熱して香りを出す。次にシャコの頭を入れて軽く炒めシャコの旨味を引き出す。そして白ワイン、アルコールをとばしてからパスタの茹で汁、水を加え、刻んだシャコを入れる。今度のシャコはパスタに絡まる大きさにシャコを切って使うのだ。そこにトマトソースをスプーンに2杯ほど入れて軽く煮込む。ほんの少しなので赤というよりオレンジ色にソースが変わる。多過ぎるとトマトの味で支配されてしまうためにこの量でいいのだそう。
 一方でパスタを延ばし、切り、茹でる。先ほどのソースと魚介に合うエグミの無い青い香りのエクストラバージンオイルとでパスタを絡める。刻んだイタリアンパセリを乗せて出来上がり。
パスタにシャコが絡まり旨い旨い、あっという間に平らげてしまった。トマトソースの量もなるほど、酸味や甘みを感じる程度にとどめられている。最後には鷹の爪のほんのちょっとの辛み。赤一色に塗り込めるのを止めて他の色やグラデーションも楽しめるようにしているというわけだ。満足。
「山菜と春シャコのオーブン焼き」
春シャコのトマトソース タリオリーニ
どちらもアラカルトで2000円
シャコの漁は5月から6月いっぱい、
漁模様で素材が無い場合もあるために確認、予約が必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 左の男性は厨房スタッフの小松健哉さん。magari唯一のA型のスタッフである。(他の三人はB型)今回は彼の仕上げるデザートを掲載する。ここでも旬の素材「いちご」を使って登場してくれた。
 『 由仁町のさちのかの一皿 』
 由仁町のはた農園さんの「さちのか」を使ったデザートである。
いちごをシロップで煮てコンフィチュールを作る。一方で生のいちごをカット、一晩砂糖をまぶして休ませ、次の日にミキサーにかけスープ状に、これにライム汁を加える。さらにあと二つ、シャルドネのシャンパンでゼリーを作り、アールグレーのジェラードも作成。
 これらが合体して一皿にそろう。仕上げは自家製ミントと生のピスタチオ、黒胡椒。
 いちごの甘みだけでなく、アールグレーの香り、スパイシーなピスタチオ、爽やかなシャンパンのゼリー、楽しい一皿である。あぁ鼻に抜けたのは黒胡椒とアールグレーか、いちごの酸味も甘みも◯。食事の最後にもこんなに楽しいデザートに出会えるなんて幸せである。

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「magari」は2006年9月にオープンしたイタリア料理のお店である。シェフは宮下輝樹氏。道東の幕別出身、幼いころから料理が好きで、19才から本格的に料理の道を歩みだし、テルツィーナの堀川さんと出会う。もう7年も前、テルツィーナ時代の2002年にこのページでも登場してくれたのだ。あれからまたイタリアでの修行、東京・アロマクラシコ、札幌・クレシェンテなどを経て magari のオープンとなる。
 常に素材に着目していて、電話をしたら襟裳町だったりニセコ町だったりと産地へ実際に足を運び、生産者との会話を大切にしている。この想いは一皿一皿に現れ、お店を訪れる人を楽しませる。宮下氏の料理をする時の楽しそうな顔がとても印象的である。
 その日に入荷した厳選素材で組み立てるコース、旬のおまかせコースは5500円、8000円から(2名様より)

 

    住所  札幌市中央区南11条西20丁目2−26

    電話  011-552-8172

  営業時間  ランチ  11:30〜14:00
         ディナー 18:00〜21:30

   定休日  火曜日  

 

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