今月の旬

さて82回を迎えました「今月の旬」
御陰様で9年も続いております
これからも北海道の旬を料理人の心と一緒に届けます
「 magari 」(マガーリ)からの12回目
宮下輝樹氏ご好意により12回・1年の長期連載でしたが
今回で最終回になりました
12回目をお楽しみください

 

  2009年 7月のテーマ 「 花咲ガニ 」

 

  

 「ハナサキガニ」が今回のテーマ。この和名は水揚げで有名な「花咲港」「花咲半島」(根室半島の別名)から来ているそうだが、茹でた時の真っ赤な姿がまるで花が咲いたようであるからという話も。茹でる前は深い黒っぽい赤、小豆のような色だが、茹でると驚くほどに綺麗な赤になる。本当に見事な赤で、市場の箱の中の鮮やかな姿に魅せられたことも思い出し、花が咲いた様な蟹だから花咲ガニ、花咲ガニの捕れるところだから花咲半島になったのかもなどと考えてしまう。
 北海道の東側の太平洋やオホーツク海、それより北のベーリング海あたりに生息するタラバガニ科のカニで、カニの形はしているが正確にはヤドカリの仲間になるらしい。んっ?確かに足も2本少ない。タラバガニ科の仲間は同様でヤドカリの仲間、南にいるヤシガニと一緒だと考えると生命の不思議を感じる。
 タラバガニ科のカニはどれも大型で食べ応えも十分だが、寿命が長く、成長に時間もかかる。花咲ガニも漁獲サイズになるまでには実に8年もの歳月を要するという。近年は北海道、ロシアの資源量も減少しているため貴重である。獲り過ぎない事も大事だが、綺麗な海を守るのも大切。先日ラジオから流れて来た話で、釧路湿原でもゴミがいっぱいだそう。我々の身近なゴミが風で川に、川から海に、海ではあらゆるゴミが漂流し、堆積する。環境ホルモンが溶解し、ゴミを餌と間違えた動物が死ぬ。食物連鎖から生態系が大きく変わってしまう事で我々も食を失う。遠い事のようでもの凄く身近な話である。近所のゴミステーションの掃除に行かなきゃ。
 みなさんと一緒に環境の事、考えて行動できれば光栄です。またどんどん出来る環境にいいことなどお教えいただける方、よろしくご指導ください。
 花咲ガニ漁、今年も7月11日に初水揚げがあり、9月まで漁が行われる。
 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 とても尖っている花咲ガニの刺、タラバガニの比ではないほど鋭く多い。鉄砲汁だとこの刺と格闘する事は無いのだが、身肉を料理に使うとするとほぐさなければならない。片手に手袋をはめキッチン鋏で解体したカニに切れ目を入れ身を取り出す。毛ガニの時もそうなのだが地味で大切な仕込みである。
 幕別町出身の宮下氏、子供の頃に花咲までカニを食べに連れて行ってもらったこともあり、花咲ガニの美味しさは料理人になる以前から知っていたらしい。小さい頃、塩茹でで食べていた花咲ガニは旨くてとても大きなものだったそうだ。近年の流通しているサイズを見ると資源の枯渇は歴然だと教えてくれた。大きな花咲ガニに会ってみたい。
 さて、今回もパスタ料理。一度食材を食べてみてパスタのソースにしたらさぞかし旨いだろうと食指が動きパスタ料理に決定。多くは食べてのインスピレーションが決め手になるそう。子供の頃の記憶も創造のプラスになっているのだろう。
 大まかな作り方をレポートする。フライパンでオリーブオイルを熱し、ニンニクに丁寧に火を通し香りを移す。火が通ったら鷹の爪を加え、身をほぐした花咲ガニを入れる。次にザク切りのフルーツトマトを入れ、パスタの茹で汁(塩水)を加えて水分や塩味の調整をしながら煮る。このときは常に強火でカニとトマトが解け合いすぎないソースを目指している。弱火で時間をかけるとお互いが解け合いすぎてまったりと馴染みすぎ、それぞれの食材の輪郭がぼやけてしまうという。茹でた手打ちのタリオリーニをフライパンで合せ、軽く茹でたハマボウフウを大きめの微塵に切り加える。皿に盛り、刻んだイタリアンパセリを乗せ完成。

 

 

   

 

 

   

 

『 花咲ガニとフルーツトマトのタリオリーニ 』

 花咲ガニ、フルーツトマト、パスタの三様をそれぞれ感じながらまとまっている。この三者の適度な距離感を宮下氏は「美味しい三角関係」という。主役がいて、主役を活かす脇役がいて、お皿の上は差し詰め演劇の舞台のようである。その舞台で演じられるドラマの中の関係が三角関係で、上手くバランスがとれていて素材が活きていく。トマトとカニが抱き合うわけでなく、いや抱き合っているのだろうか、パスタも一緒に抱き合っている?でも混ざり合っているが溶け合ってはいない、そういうことかぁ〜。
 パスタの舌触りもトマトの酸味も、カニの甘みもそれぞれを感じ楽しむ事が出来る。でもバラバラな感じはしない。所々にハマボウフウの香りが、イタリアンパセリの香りがアクセントに登場する。それにしても花咲ガニの身、甘く旨い。鉄砲汁の出汁で花咲ガニを感じるのと全く違う楽しみだ。美味しい。

 ベタベタな関係でない役者の距離感、是非お楽しみを。
 個人的に三角関係は体験していないが、あれっ?あったかなぁ、あったかもしれない。そうではなく実際の人間関係とは違い、あぁ、違わないのかもしれない。やっぱりお皿の上はドラマなんだ。料理人は映画監督だ。
 
  
 
 
 
 
 
 
「 花咲ガニとフルーツトマトのタリオリーニ 」
アラカルトで2000円
漁があるうちは提供する予定
、ただ入荷次第なので事前の予約を。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、前回に続き今回も登場してくれた厨房スタッフの小松健哉さん。今回はプラムを使ったドルチェで旬を飾ってくれた。取材時の旬は山梨のもので、徐々に東北、そして北海道にも旬はやってくる。また品種でも収穫時期が違い、今回の品種は大石早生、少し後にはソルダムなど細かく見ると旬の時期も変わる。品種が変わることで酸味や甘みも違いそれぞれの状態を見ながらバランスをとってデザートに仕上げるそうだ。プラムとひと言で言っても品種があったり、味が違ったり。考えたらリンゴやいちごでも…。そりゃそうだ、ものを考える意識が低過ぎた。プラムもそうなんだ、反省。
 『 プラムのソルベ 』
 微かにしか見えないが下にはマスカルポーネチーズと黒胡椒のムースがプラムのコンポートとともに敷いてあり、その上ではコンポートの汁を使ったジュレがキラキラしている。真ん中にはプラムのソルベが座り、アップルミントのグラニテが優しいピンクのソルベの上に乗ってアクセントになっている。
 色同様、プラムの優しい酸味にグラニテの香りの広がりがアクセントになり、甘いだけのドルチェとは一線を画す。食事の最後の楽しみにこんな一皿、喜ぶ女性も多いだろう。
 このサクランボにも通ずる酸味、本当に今しかない味の様な気がする。冷凍や乾物ではこのフレッシュな酸味はない。夏を実感できる料理である。
このメニュー、アラカルトで1000円、コースに組み込む事も可能。楽しい食事の最後を美味しいドルチェで。プラムの品種が変わったり、組み立てが変わったり、そんな自由度も楽しみの一つである。夏が終わらないうちにどうぞ。

 

                

 

 

  

 

  

 「magari」は2006年9月にオープンしたイタリア料理のお店である。シェフは宮下輝樹氏。道東の幕別出身、幼いころから料理が好きで、19才から本格的に料理の道を歩みだし、テルツィーナの堀川さんと出会う。もう7年も前、テルツィーナ時代の2002年にこのページでも登場してくれたのだ。あれからまたイタリアでの修行、東京・アロマクラシコ、札幌・クレシェンテなどを経て magari のオープンとなる。
 常に素材に着目していて、電話をしたら襟裳町だったりニセコ町だったりと産地へ実際に足を運び、生産者との会話を大切にしている。この想いは一皿一皿に現れ、お店を訪れる人を楽しませる。宮下氏の料理をする時の楽しそうな顔がとても印象的である。
 その日に入荷した厳選素材で組み立てるコース、旬のおまかせコースは5500円、8000円から(2名様より)

 

    住所  札幌市中央区南11条西20丁目2−26

    電話  011-552-8172

  営業時間  ランチ  11:30〜14:00
         ディナー 18:00〜21:30

   定休日  火曜日  

 

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