今月の旬

86回目の「今月の旬」
今回の旬は「牡蛎」
取材に動けないでもがいていたときに天の声が
厚岸の牡蛎を食べる会に潜入して傍らで撮影
旨い冬の牡蛎のレポートです
場所KKRホテル札幌2階レストランマイヨール
大江廣嗣総料理長のお仕事です

  2009年 2月のテーマ 「 牡蛎 」

 厚岸の牡蛎 
何度か登場している素材である。
2009年3月号でも厚岸・中嶋均さんのカキを使ったお料理がマガーリの宮下氏の手によって登場。今回もその中嶋さんのもの、またまた登場である。
まずは牡蛎の整理を。
カキ・マガキ、イタボガキ科で、この科には夏が旬のイワガキ、大型になるイタボガキ、スミノエガキなどがある。マガキの産地は広島、宮城、岩手などが有名、北海道では厚岸、佐呂間、知内などが産地として知られている。旬は秋から冬で、この時期は養分を蓄えて美味しいとされている。春からは産卵期で食用は避けられているのだが、厚岸では低温環境を活かして通年出荷されている。
牡蛎にはグリコーゲン、タンパク質、タウリン、鉄分が多く含まれ、疲労回復などに効果があるようだ。グリコーゲンは直接ブドウ糖に分解できるエネルギーとなり、牡蛎はこれらの栄養に富んでいるため「海のミルク」と呼ばれている。
「カキえもん」とは北海道、厚岸のブランドである。通常は三陸の稚貝を購入して厚岸で育てるのだが、「カキえもん」は生まれも育ちも厚岸産。三陸生まれ厚岸育ちに比べ見た目は小さく厚みがある。厚みがあるためにプックリしている感じだ。少々小さめだが逆に味は濃く、火が入っても小さくなる率は少ない気がする。
 そもそも道東の厚岸はアイヌ語でアッケケシ・牡蛎の多い所という言葉からその名がついたという土地。別寒辺牛川から大地のミネラルを多く含んだ水が流れ込む厚岸湖、つながる太平洋に面する厚岸湾からは豊かなプランクトンがもたらされる。この自然がアッケケシの名を産んだのだが、近年は乱獲と森の荒廃で天然のものがいなくなってしまうほどになったという。そこで地元の牡蛎養殖家が植林を始め、シングルシード方式など厚岸生まれの牡蛎養殖も研究され今日に至っている。中嶋均さんはその先頭に立った方で、今でこそ「森を育てる漁業」は当たり前のように語られるが、始めた時は変わり者扱いされたと聞く。その採苗方式からシングルシードと呼ばれた厚岸生まれの牡蛎のブランド名が「カキえもん」である。
 
 
『 生ガキのカクテル ライム添え 』
 真っ直ぐに牡蛎を楽しむ。
遅刻した私は撮影の準備しながら驚いた。諸先輩方、あっという間に平らげて二皿目に突入。私が着席して一皿目に手をつけたときにはもう二皿目が空になって、いや殻だけになっているのだ。
 感想を尋ねると「濃さがあり甘みを感じる」、「一般的には深さもあるが浅いモノもある、総じて殻が厚くて堅い」、「クセがなくシャープ」、「繊細」。うん、なるほど、お見事です。このご感想、そのままいただきます。
 ひょっとしたらこのシーズン初めての牡蛎だ。慌ただしく毎日を過ごしていてあれっと思う、また1年経って味わうことが出来た。厚岸の中嶋さん、料理をしていただいた大江料理長を始めスタッフの皆さん、お誘いいただいた日高乳業の水戸さん、皆さんに感謝です。
 
『 牡蛎のクロケット 』
 牡蛎を貝から外し焼いてから冷ます。クリームチーズを盛り上げて、小麦粉、たまごフランスパンのパン粉をつけ揚げる。中にはポロネギにトリュフのソースといったもの。破裂するのでとっても難しく大変な調理方法だそう。
 何とも上品な牡蛎料理、生よりいっそう甘みや旨味を感じる。そして、この牡蛎殻の下のマッシュポテト、これがまた旨い。生クリームとオリーブオイルで仕上げたもので、しつこくなくサラッと、でも程よく甘くってちょっとクセになりそうな存在。ジャガイモって旨いんですよね。カレーに入っているジャガイモとひと味もふた味も違うんです。幸せです。
 
『 寒ブリと帆立貝の軽いスモーク サラダ仕立て
             ソース ブール ノワゼット 』
 ノワゼットとはヘーゼルナッツのこと、バターを淡褐色になるまで熱し、レモン汁とパセリを入れるソースをプール ノワゼットというそうです。
スモークの香りと温かさを楽しむ1品で、寒ブリは身が締まり程よい脂のり、帆立のスモークとの相性も抜群です。野菜たちと一緒に様々な食感や味わいを楽しみます。
 
『 池田牛ヒレ肉のポアレ ボルドー風 』
 ヒレ肉は柔らかく、フォアグラとポルチーニのソースでいただきます。後ろには頬肉も。秀逸なのは付け合わせに野菜たち。レンコン、ゴボウ、人参をキンニクの効いたコンソメで炊いてあります。温かいお肉に合わせるのにサラダではダメ、加熱した冬野菜をという組み立てなのです。この相性がとても良く、どう食べてもらおうかという作り手の気持ちを強く感じますした。
 憎い一皿ですね。この気遣い、意志の持ち方、自分の仕事にも生かせそうな気がします。勉強になります。
 
『 チョコレートブリュレ 』
 キャラメリゼされたバナナ、白い三角はアイスではなくてムースを固めたもの。これらがブリュレの上に乗っています。デザートでちょっと嬉しくなってお終い。食事の最後を飾りながら終わりのマークでもあるデザートの存在ってのは大事ですね。確かフラノデリスの藤田氏も修業時代にこの大事さを感じてパティシエを目指したと言っていた。うう〜ん、ブルースリーが映画の中でか「考えるな、感じろ」とも言っていたっけか、感じるのって大事ですね(あぁ今、考え過ぎてるかなぁ?)
 今回はいつもと違って気持ちはちょっと一休み。追っかけてのレポートでなくお誘いいただいての旬でした。美味しいもの食べたし、頑張っている人の姿も感じたし、また明日から頑張れる気がします。ただ単に腹を満たすだけでなく心も満たす、食事の醍醐味ですね。さて、来月は冬野菜のレポートを企画しています。ご期待くださいね。
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