今月の旬


さぁ今回は昨年10月開催勉強会に続き第2弾
テーマは冬野菜、
冬野菜から熟成貯蔵のジャガイモ、豆、そして大根が登場する
料理人は横須賀雅明氏
Restaurant MiYa-Vieのシェフである
独特の世界感を持つ横須賀氏
それに私も惚れ込んだジャガイモ
プラス、フランスのオーガニックワインをあわせる
このテーブルを
レポートしたい
題して「美味しい勉強会 テーマ冬野菜
87回目のレポートである

 

2010年 3月のテーマ
 
「 冬野菜 ジャガイモ、豆、そして大根 」

 

 冬の野菜から ジャガイモ
村上夫妻、農園との出会い
 時は2009年2月28日、dancyuの取材でヤマケンこと山本謙治さんとdancyu編集さんとで上士幌の村上農園を訪ねた。5月号の掲載なのだが辺り一面真っ白、可愛いワンちゃんが歓迎してくれ、雪下貯蔵の風景なども撮影し、お父上が自らの手で建てた倉庫も、その中のジャガイモも見せていただいた。広大な畑にも感動だ。そして売られているジャガイモも、自分で収穫したジャガイモも見ているはずなのに収穫後の土落としの作業や機械にびっくり。気が付かないところにも手間がかかっているの
だ。それに普段、何気なく食べていても収穫時期以外に食べられるってことは保存という仕事があるから、いろいろ知らないことだらけの自分に寂しくなってしまう。
 その後、村上宅のキッチンで蒸かしたジャガイモやローストしたジャガイモを撮影、合間につまみ食いをしたのだが、またびっくり。そんなに違わないだろうと蒸したものを口に入れると、すぐにしまったとあまく見たことを後悔する。もの凄く甘いわけではない、が、水っぽい味気なさはもちろん無い。甘いのだが甘過ぎず、ベチャベチャでもポロポロでもでもない、否、どちらもあてはまるが感じ、程よいしっとりとホロリ具合でとにかく旨い。メイクイーンが一番びっくりしただろうか、ジャガイモ感が変わる体験だった。
 普段、事務所の実験農場で面倒を見ることの出来ていないジャガイモや収穫忘れからでてきた野良ジャガを食べている身には驚くほどの味わいだ。以来、恥ずかしいので2009年のジャガイモの栽培は「インカの瞳」のみに絞っている。どうしても栽培を止められないのはインカ系の品種の生みの親である亡くなった梅村芳樹先生を想ってである。今年こそ旨いジャガイモを作るぞ。
 今回登場のジャガイモは村上農園で絶妙の収穫のタイミングを計り、その後、凍らない低温で熟成されたもの。おっと、ひと言で言うにはあまりに軽卒だった。絶妙のタイミングと言ったが収穫が早過ぎても遅過ぎても味に影響が出るという。地上部の枯れ具合などを見ながら地中のジャガイモの様子を判断して収穫を決めていくのだそうだ。収穫してすぐ新ジャガとして出荷すれば売上にもなるだろうが、買い手が美味しい状態で食べられるように貯蔵・熟成、ここでもその熟成度合いを見極め満足な時点で初めて出荷する。なんとも収益を出すまで長く手を掛ける念入りな仕事だ、頭が下がる。利のみに走らず、仕事のあり方、存在の意義を考えた人生も感じる。
 1年の時を経て、記憶に残るジャガイモをまた食べたいと、この機会を作った。もちろん一人ではもったいないので、皆さんをお誘いしてジャガイモの味の再発見という形で今回の勉強会にしようと思う。読者の皆さんは見るだけで申し訳ないが、手近かな冬の野菜の再発見にお付き合いいただきたい。
 ジャガイモはペルー、チリの原産で栽培は8000年以上の歴史があるという。2008年はジャガイモ栽培8000年記念の国際ポテト年になったそうだ。世界への広がりは16世紀、インカ帝国時代の栽培をスペイン人が本国に持ち帰り、スペインからヨーロッパの国々に広まったと考えられている。さらに実験的な栽培から一般的な食料として広がり、現在は麦・米・トウモロコシとジャガイモで4大作物となっている。
 日本には江戸時代(1603年から1868年265年間)の初期、オランダ人によって現在のインドネシア・ジャカルタから長崎県の平戸に伝えられたとされる。当時ジャカルタがジャカトラと呼ばれ、ジャカトライモ、ジャガタライモが短くなってジャガイモと呼ばれるようになったという説もある。(そうそう、カンボジアから来たのがカボチャだとか)
 
 日本での本格的な栽培は明治時代以降で欧米品種の導入、のちに国内での育種が行われ今日に至る。現在、世界での生産量は3億万トンを超え、日本での生産は275万トンほど。秋に収穫される北海道のものの他に2月から超極早生収穫の始まる長崎のものも名産とされる。こちらの旬は春である。九州・四国は5月が収穫期、近畿・関西・東海・関東では6月、甲信越・東北は7月に収穫される。国内生産の都道府県別収穫量は北海道が8割近く、次に長崎、鹿児島、こちらは3〜4%程度。
 和食の世界では春が旬というから、長崎産の新ジャガを指すのだろうか。ここ最近は低温・高湿度下で保存することででんぷんの一部がブドウ糖に分解されるメカニズム「低温糖化」が解明されつつある。市場でもその食味の良さは認められだして老いるので、旬の季節が書き換えられるのはそう遠くないことかもしれない。

 豆
食品の保存、エネルギーを使わないで保存するには、、
 塩蔵したり、薫製したりと古来の方法を使うことで冷蔵庫などのエネルギー使用量を減らす手は?と考えていたら、それ自身、保存性の高いものがあるではないか。米も保存性は高いが豆はどうだろう。乾燥していれば保存にエネルギーを使わない。
 事務所には調理法に困りそのままにしている黒小豆や大豆がある。もう古く固いのだが、一応、調理法を見かけると挑戦をする。今のところのヒットはインゲンで作った豆カレーだろうか。茹でておいて、さぁ何を作ろうかと考えた。スープは豆が崩れてしまい濁って不評、粉質からヒントを得て作ったドライカレーは、なかなかの出来。長い間かかってレパートリーが一つではほめられたものではないのだが、、
 その重さのほぼ20%がタンパク質、60%が炭水化物で、途上国でもタンパク源を得られる重要な作物となっている豆。北海道では小豆、いんげん豆、えんどう、大豆などが国内生産の1位である。若いサヤを食べる野菜としての豆ではなく、保存の出来る乾燥種子としての豆。エコの観点からも優れた豆、その美味しい調理法、料理は北海道の郷土料理になってもおかしくはない。昔からの餡や煮豆しかないのだろうか。
 豆の種類と歴史
 麦・米・トウモロコシ・ジャガイモで4大作物といったが、世界で食用にされている豆科の作物は非常に多い。タンパク質、炭水化物を含むので多くの地域で優秀な食材となっている。大豆、インゲン、落花生、そら豆、小豆、レンズ豆、ひよこ豆、キマメなどなど。
 レンズ豆の発祥は紀元前7000年〜6000年ころメソポタミアから、えんどうも同じ時代のメソポタミア。いんげんは紀元前5000年ころ中央アメリカから、ヨーロッパに広まったのはジャガイモと一緒の時期にスペイン人の手による。大豆は紀元前3000年ころの中国、そら豆は紀元前3000年ころのメソポタミア、落花生の原産は千葉ではなくてアンデス山中、古く文明の栄えたところに豆の栽培の発祥が重なる。
 
 発祥から世界各地に伝播した豆たちはその地で独特の食文化を生み出している。アメリカのポークビンズは大豆、メキシコのチリコンカンはインゲン、ブラジルのフェイジョアーダはインゲンの種のフェジョンという豆、小豆は日本の他、韓国、中国、ブータンなど東アジアの食の場面に、豆腐、みそ、醤油は大豆、インドではキマメ、ひよこ豆、レンズ豆などをカレーに、エジプトはそら豆をターメーヤやフールに、フランスにも青えんどうを使った料理も。
 余談 
 豆には一部有毒物質を持つものもあり、煮汁を捨てたり、水で晒したりして利用されているものもある。サバイバルでもし豆を見つけても、毒性を考え食用にしないのが鉄則だそうだ。
 
 さあさあ、そろそろ気になるお料理に話を移そう。
 

 

 

 

 

 

『 ジャガイモ・豆・大根をいたってシンプルな調理法で 
村上農場の3種の豆 白花豆・紫花豆・音更大袖振大豆のサラダ、
蒸かした村上農場のジャガイモ <サッシー>と日高乳業のフレッシュチーズを使ったクリーム、極軽い鶏のブイヨンで煮込んだ大根
 3種の豆のサラダはレモンヴィネグレットソースで、それぞれの豆の甘さ、舌触り、粉質感なども感じられる仕掛けである。ジャガイモも同様。<サッシー>は皮付きに、皮なしが<はるか>、楊枝をさしてあるものが<メイクイーン>。これに添えてあるクリーム、日高乳業のフレッシュチーズにエシャロット、ニンニク、バルサミコを加えて作ったもの。そのまま食べたりクリームをつけたり、単純だけど、わかりやすく楽しい。大根はおでんと違うのだが、おでんを想像させる。透明感のある上品な洋風おでんといったところ。これもめっぽう旨い。
 素材を伝えつつ、サラリと仕事してますな、横須賀シェフ。この後の展開を楽しみにさせて、素材の本質のものさしをもらった気がします。
ワインはヴァン・ド・ぺイ・デュ・ヴァール ロゼ プロヴァンス地方のロゼ 作り手はドメーヌ・パンシナ(ド・ウェル家)
品種はメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、グルナッシュ、シラー、サンソー、色だけではありませんぞ。綺麗なだけでなく旨いロゼでした。
これで乾杯です。

 

 

 

 

 

 

 

 

『 カスベを載せた、村上農場の < 白花豆 > とレタスのブイヨン、
             泡立てた、村上農場の < 音更大袖振大豆 > のクリーム

 大きな白花豆にレタス、ブイヨンはカスベのもの。淡い味での組み立ては大袖振大豆の泡立てたクリームを感じさせるためか。上部に乗ったディルの香りを感じながらしっかりとカスベの食感や白花豆のポロリを楽しむ。大豆の泡は豆乳のように、いや、もっとふわっとカスベに香りを添える。カスベの柔らかさ食感、フカヒレより好きかもしれない。
 色数が少なくシンプルな一皿、時間で消え行く泡がまるでこの時期の雪の様な気がしてならない。
 
 
 
 ワインはフランス・コニャック地方のル・ヴュー・スーショ(セガン家)の作、シャランテ。ブドウ品種はコロンバール、ユニブラン、爽やかな酸味の白でした。実は試飲の時とエチケット(ラベル)が変わっていて勉強会のスタート前はドキドキ。よく見ると名前は変わっていないし大丈夫、味も少し良くなっている様。あぁそういえばラベルの変更の話、聞いていた様な気がしてきた。ご心配をおかけしたスタッフの皆様、ごめんなさい
 
 
 
 
    
  
 
 
 
 
『 村上農場のジャガイモ< サッシー >のフラン、バターでコンフィした< はるか >、
                       < メイクイーン >
のチップスを鱈と春菊とあわせて 』
 
すだちのヴィネグレットを絡めた春菊がメイクイーンのチップスと一緒に蒸し焼きの鱈の上に乗る。カリッとした食感は香ばしく、次の手を誘う。鱈はシンプルだが絶妙の蒸し加減でプリップリッとしている。その下のフランに行き着くまでにちょっとため息が出そうになる。大きくない器でモリモリ食べるわけではないのだが、もの凄い満足感がこみ上げる。仕上げの完成度やそこからもたらされる上質さが満足感を生むのだろうか。普段食べているジャガイモだけに私は料理といっても野暮ったいものをどうも連想していたようだ。横須賀シェフに自分から依頼しておいてなんという想像力の無さだ。はるかもサッシーもバターとの相性やフランのやわらかさなどと綺麗なバランスを保っている。ため息の次は加速度的にスプーンを動かしあっという間に器を空にしてしまう。やられちゃった、、
 
 
 
 
 
    
 
   
    
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   
 『 ローストした日高ポーク肩ロース、薄くスライスした大根、
             みかんのペースト、削った辛味大根、貝割れ大根 』

 ブロックのままローストした肩ロースの旨いこと。肉が火傷しない炎なのか、美味しくなる温度域を完璧に利用しているロース、お見事。また大根がミカンのペーストや肉と口に運ぶのに良い具合のしんなり感だ。塩をして水を出し、バターでサッと火を通してあるという。ソースは柑橘系のソースでもみかんを用いているのでその甘さも加わる。ジビエの組み立てのようでそうでもない。大根などの所為かみかんの所為か、全体にやわらかくまとめられ春の日だまりの様な印象を受ける。
 最初に食べたブイヨンで煮込んだ大根と、この大根。同じ大根なのにこの違い、料理って本当に面白いですね、ねっ と淀川さんのように話したくなる。

ワインはヴァン・ド・ペイ・デュ・ガール フランスのローヌ地方のワイン 作り手はドメーヌ・デ・セードル(ポンス家)ブドウ品種はシラー。主張し過ぎない優しい香りとボリューム、ローストポークにバッチリの相性。手頃の値段で十分な満足を得られる。あぁ飲み過ぎると最後の乾杯のときに足りなくなる、、まぁ料理とワインあってのテーブル、どんどん楽しんで下さい。
 
 
 
 
 
         
 
 
 
『 カラメルでコーティングした村上農場の < 紫花豆 > のクリーム、アーモンド風味のビスキュイ、
                      洋梨 < パートレット > のシャーベットとカカオ風味のヘーゼルナッツ 』
 紫花豆のクリームはクレームブリュレのように表面を焼いてパリッと、その上の甘く煮た紫花豆をあしらう。下には2度焼きして香ばしいビスキュイ、周りにはカカオ風味のヘーゼルナッツ。パートレットのシャーベットはピューレのようなイメージで濃厚な仕上げ。前菜だけでなくデザートにも豆を使って煮豆とクリームといった違う調理の仕方を提示している、もちろん横須賀シェフの料理として昇華した形で登場している。テーマを真っ直ぐに受け止め構成を考えてくれたシェフに感謝。もちろんテーブルの最後を飾るに相応しい一皿となっている。食感や香りといったいろいろな刺激を楽しく感じつつ、ゆっくりと宴の終わりを受け入れる。
 
 
  
  
  
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『 ミニャルディーズ 』
 本当の最後に小菓子とコーヒーが登場した。
ここでは村上農場の豆ではないが豆を使った菓子がひとつ、日高牛乳とヒヨコマメの蒸し羊羹である。明るいクリーム色にヒヨコマメのアクセントも美味しい、これを手持ちの豆で作ってみたいな、という衝動に駆られるも最
後のご挨拶などでとうとう聞けず仕舞い、残念。
 そのうちに家庭向けに作り方を聞き出し、是非とも掲載しよう!

 

 
  
 
 
 
 
 
 
 またこんなに素敵な方々と美味しい勉強会を開けて嬉しく思います。美味しいものは笑顔を生みます。笑顔は元気の源、日々頑張って、また皆さんと笑顔で逢えたらと思います。その日まで少々お待ちくださいね。ありがとうございました。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お店の情報
  Restaurant MiYa-Vie
   札幌市中央区南6条西23丁目4-23 アールブラン1階
   011-532-6532
   営業時間 ランチ  12:00〜14:00(ラストオーダー)
        ディナー 18:00〜21:00(ラストオーダー)
   定休   火曜日・第4水曜日(終日)
        水曜日ランチ
   http://www.miya-vie.jp/
今回はこの時だけの特別メニュー、気になった方はWebをチェックして予約の上で楽しんで下さい。
協賛情報
村上農場
北海道河東郡上士幌町字居辺東7線213
  TEL 01564-2-4614
  FAX 01564-2-4624
オーガニックワイン専門店
マウ゛ィ札幌店
札幌市白石区東札幌4条1丁目1-1
イーアス札幌Bタウン1階
  TEL 011-824-8228
http://www.mavie-sapporo.com
  営業時間 10:00~21:00

 

  ご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。

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