今月の旬


今回は札幌を飛び出して赤井川村へ
ご縁あってアスパラを生産する熱血青年のところへ
料理人との協業だったはずが、勉強会に、生産者ルポにと大脱線
でも旬は外しません
アスパラ、旨いですよ
88回目のレポート、始めます

 

2010年 5月のテーマ
 
「 アスパラガス 」

 赤木陽介さんのつくるアスパラガス

 出会い
 先月号でdancyuの紹介をしたが、この道産羊とアスパラの取材は昨年の旬の時期だった。取材中に札幌のレストラン、ラ・サンテの高橋シェフになかなか良い遮光のホワイトアスパラを頑張って作っている人が赤井川にいると聞いた。dancyuの記事は安平町のアスケン・八木さんが軸で赤井川の方は登場しなかったのだが、高橋シェフのご好意で試食をさせていただいていた。
 年は変わって今年の3月6日、REFARM北海道の集まりがあり、私は農業家でもないのに顔を出し、ビールやワインを飲んでいい気持ちになっていた。その中、元気のいい発言をする男がいて、あれこれ話をしているうちに昨年の取材の話に。なんと前出の赤井川の頑張っている男だったのだ。男の名は赤木陽介、若き農業家だ。
 
 
 赤井川へ
 ということで赤井川に行く機会を探していたのだが、なかなか時間が合わずにとうとうアスパラの出荷時期に。今日は半日時間が出来る、動かせる仕事は夜にまわして日中は赤井川にいざ!突然の連絡にも対応してくれた赤木氏、御陰様で仕事が覗けます。
 写真はアスパラのビニールハウスの作成の様子。時期をずらしビニールを掛けることで収穫期をコントロールできるわけだ。しかし75メートルのハウス、制作も大仕事。パイプを運び、間隔を測り、パイプを土中に挿して固定、更に補強の支柱を結び強くする、次に全体を結びつけて固定、その後ビニールの止め用にパイプの外側四方をスコップで掘って一回り。見ているだけで腰が痛くなりそうだ。この日、天気も良く外の清々しさを味わうには気持ちが良いのだが、ちょっと散歩ってわけでもなく、ガシガシお日様の下で働く。「なんで農業を仕事に選んだの?」と聞くと「こんなに楽しい仕事ないでしょ」って、う〜ん参った。私も実験農場で昼も忘れてずっと何やらやっているのだが、本当に楽しい。そう農業って楽しいんだ。楽な仕事なんて無いしね。
 既に建っているビニールハウスの中を拝見。出てる出てる、ニョキニョキだ。ハウスの中で地温が上がり春を実感したアスパラたちのお目覚めである。顔を出したばかりの小さな可愛いアスパラに、もう獲る?と心配するぐらいのアスパラも。この時期のアスパラの成長は驚くほど早く、食べるところを多く、なんて思っているとすぐに長く伸び過ぎてしまう。自分の失敗経験でドキドキしてしまうが、よく見ると明日の朝ちょうど収穫に良くなるぐらいの大きさなのだ。プロの圃場の朝の収穫終了後だ、余計な心配であった。
 この品種、ドイツ系のもので日本では珍しいもの。名をグローリムという。種は非常に高価で金とほぼ同額になるほどだそう。入手には直接ドイツまで行って買い求めたという苦労話も聞かせてもらった。そもそもアスパラに品種があるというのは私もちょっと前に知ったことで、一般的には何処まで浸透しているのだろう。お米やリンゴ、いちごなどは品種名をマーケットの売り場でも見ることが出来るのだが、アスパラには産地表示はあっても品種名の記述は見られない。無頓着でもいいのだが、生産者や品種の違いをわかっていて自分の好みを探してみたり、贔屓を決めたり。これからのアスパラの市場はもっと深化できる余地を持っている。
 ハウスでアスパラと戯れていると外で小さなエンジンの音。なにやら機械で土の表面をほぐしている。ほったらかしで生えてくるだけでは商売にはならないらしい。表土をほぐすことで伸びやすくするのだそう。聞いてなるほど、うちの実験農場のアスパラで真っ直ぐ生えてこないものが何本もある。石など固いものがあればアスパラは伸びる方向も変え妙な形になってしまう。とぐろを巻いた様なアスパラの理由がわかったのと、真っ直ぐなアスパラが当たり前と思っていたけれどそのための手間を知り、アスパラへの有り難みも一層増すことになった。知らないとそれまでなのだが、知ることで仕事の意識を高めたり、感謝の念を持ったりと多くのことを感じることが出来る。旬を追いかけて赤井川に来たのだが、自分自身で精神的な収穫も出来た。陽介さん、感謝。
 エンジン音の主はスタッフの淳子さん。イスラム教の方?と思うぐらい顔にスカーフを巻いていたのだが、ちょっとした折に拝顔。とっても可愛らしい素敵な方でした。そうです、日焼けは女性の敵ですよね。
 転職してこの有機栽培のアスパラ畑に仕事に来ているという。陽介さんが安心して仕事を任せられる淳子さん、長靴姿かっこいいです。

 

 

 

 

 

 

 

 世代
 幾ら高い種でも寿命がある。世代交代をしていかなければならない。
左の写真はマッチ棒よりも細く小さなアスパラの赤ちゃん。もみ殻に包まれ暖かいハウスの中ですくすく育つ。何年か後にこの株から立派なアスパラが出てくるだろう。ハウスを作り、収穫をして、発送して、更に次の世代の育成も考え動かなければならない。マニュアルなどなく、際限なく仕事が生まれる。先ほどの作業のパイプ、予め曲げられた物は高価なので真っ直ぐなパイプを買って自分で曲げたという。知恵を使い体を動かし、そこには誤魔化しはない。そこが陽介氏曰く面白いところ、なのだろうか。
 世代といえばアスパラの赤ちゃんの部屋にはこちらも赤ちゃん、生後1ヶ月の豚のボイルちゃんがいた。野菜にしても動物にしてもなぜか赤ちゃんは可愛い。きっと守られる存在となるように神様が設計しているのだ。
 ここ赤井川コロボックル村のスタートは25年前の1986年、陽介氏の父上と母上、赤木正友さんと良子さんが仲間と建物を建て、ハム・ソーセージを作り、畑を耕したのが始まり。食品添加物を使わないハム・ソーセージは肉の味をギュッと詰めた肉本来の味、薫製の香りがする。ボイルちゃんも今年の12月には製品になり命から命のリレー、つなぐ役目を果たす。また鶏のひな、200羽も正友さんと陽介さんに温度管理をしてもらいスクスク育っていた。このひな達が大きくなって産んだ卵をもらうのもまた命をいただくこと。命をいただくことをうやむやにしないのはコロポックル村の理念にも通じることなのだと思う。
 
 
 余談 
 のどかな空気の中、エゾエンゴサクやエゾノリュウキンカが咲いている。敷地内には宿泊用のログハウスやカフェもあり、山村の風景と共に楽しむことが出来る。贅沢な空気だ。
 
 さあ、そろそろ気になるお料理を見ることにしよう。
 

 

 

 

 

 

『 極太アスパラセット 
 内容は季節のホワイトアスパラ2本とグリーンアスパラ1本と温泉卵にベーコンのセットでここの名物を一度に味わえる。触れていなかったが、ここコロポックル村のアスパラは有機JAS認定、土作りから手がけ認定を取得している。
 味わいはほんのり甘く、苦みは少ない。日光を当てずに遮光して栽培したホワイトアスパラは土盛りして遮光したものより苦みが少ないのかもしれない。春の山菜に多い、あの独特のエグ味に近い苦みが少なく食べやすい印象だ。そしてこんなに太いのに軟らかい。軟らかいと言っても、よくある細長いアスパラの缶詰のベチャベチャとは違い、シャキッとしていてでもスジなどが口の中で邪魔しない軟らかさである。ナイフで切りながらホワイトやグリーンを交互に食べて楽しむ。それぞれ香りや食感が少しずつ違い面白い。間にちょっと寄り道、ここコロポックル村の卵で作った温泉卵や同じく名物のベーコンにホワイトアスパラのピクルス、全てシンプルだが堪能出来る力を十分に持っている。薫製の香りが口中をくすぐり、またアスパラに、ピクルスを摘んで今度はグリーンへといった具合だ。
 パンと飲み物が付いて1260円
 
 
 
 
『 Bセット 
 
極太アスパラセットで十分堪能したのだが、どうにも迷いがぬぐい去れない。ベーコンが気になる。メニューに「昔からの手作業でゆっくりと時間をかけ肉の旨味を十分に引き出す」とある。巷のベーコンと一緒には出来ないようだ。
 例えばマーケットで100グラム128円の豚のバラ肉、加工肉売り場でそれより安いか同等の売価のベーコンがある。肉の仕入れ値が売価より安いのは理解出来るが、手間や材料を使い加工しているのに同じってのはどういうことだろう。答えは製造方法にあると思われる。水分が抜けないように、もしくは水分を追加して作れば歩留まりは良いのだ。材料あたり効率よく稼ぐことが出来る、出来たものが美味しいかどうかは別にして。薫製の香りさえしないものがほとんどなので容易に想像できるだろう。
 安くいっぱい食べられることも大事だが、効率を考え過ぎ作られたものが本来のものとかけ離れていくのも問題である。また、本来のものと効率から作られた「〜のようなもの」との違いが曖昧になっているのも問題だと思う。少々高くても本来の美味しいものをいただくことは、先達の知恵や技術に敬意をもって「ものつくり」の意味を感じることも出来る。その「ものつくり」の意味には命のリレーも包まれている。まぁ私の場合、稼ぎが少ないので本物に触れることも本当にたまになのだが、たまにだから憧れるのだろうか。
 メニューの誘惑と憧れで頼んでしまったのが左、『厚切りベーコンステーキのワイン蒸し』パンと飲み物が付いて1050円
 ナイフをあてると薫製の香りがプンと立つ。何とも贅沢な厚さのベーコンである。噛むと脂の甘みを感じる。ソースも何もいらないぐらいの力を持っている気がする。添えてあるハムも秀逸だがやはりベーコンの旨さは格別。主題であるアスパラを一瞬忘れてしまった。
 
 
『 たまごプリン 
 
ベーコンで終わりにせず、ある時が限られているというたまごプリンも頼むことにした。このプリンも運動出来る状態で鶏を飼い有精卵を作るコロポックル村ならではのもの。「本日はあります」と聞くと見たい、食べたいという欲求で頭の中がいっぱいになる。
 餌に唐辛子などを混ぜて黄身を美味しそうな黄色にしていない自然な色の卵だからプリンも白い。甘過ぎず、ギリギリのユルユルでもなく、ほんわか美味しい。美味しい卵と美味しい牛乳があってこそのこの味だろう。仔牛の飲み物を分けてもらっているという牛乳の素性、命の出発点である卵、それぞれが持っている特性からか、尖った強さではなく柔らかい優しいものを感じる。1つ250円

 

 

 

 

 

 

 

 

 極太アスパラ
 先にも触れたが、ホワイトアスパラの栽培は土盛りをして軟白させたものと、遮光素材のもので光を当てずに軟白させたものがある。近年は遮光したものが多くなりつつあるようだ。ここコロポックル村でのホワイトアスパラは遮光もの。遮光の具合などは秘密で写真も無し、でも陽介氏、オーダーが順調でしかも低温で出荷が遅くなった状況で品薄なのに、以前話を聞いていた極太のホワイトを見せてくれると何やら準備をしてくれた。頭にはライトが装着されビニールハウスの中の遮光部屋へ。しばらくして汗をかきながら驚くほど太いアスパラを持って出てきた。写真を見てわかるだろうか、指2本、いや3本くらいの太さだろうか、見たことの無い太さのアスパラを持っていた。持たせてもらい親指と人差し指をアスパラにまわすとわずかに届かない。それぐらい太いものが出来るのだ。品種か、土作りか、いろいろな条件が揃わなければ出来ないだろう。フランスではこの時期、アスパラの太さを競うお祭りがあるという、北海道でもそんな風景を見ることが出来るようになるのだろうか。
 
 
 
 
 鮮度が命のアスパラ、ポキッと折ると見る間に水分が溢れ出て滴となって落ちる。朝早くから収穫してその日のうちに発送してしまうのは鮮度が少しでも落ちないようにするためだ。採れたての枝豆やアスパラを食べてしまうと収穫して時間が経ったものを見たくなくなってしまう。甘みやしなやかさが全く違うのだ。
 ここ数年、季節が反対の南半球から冬にアスパラが輸入されていたり、この時期にメキシコなどから輸入されて店頭に並んでいたりする。それらを見てそんなに旅させて大丈夫?とよく思う。船では時間がかかりすぎるからきっと飛行機に乗ってきたのだろう。ところが飛行機に乗ってきたのに安いのだ。現地の価格に為替があって、送料がかかっても売れる値段となるのだろうが、産地からの時間はどうしようも出来ない。鮮度が落ちていると思われるアスパラは売れているのだろうか?それでも喜んで食べるくらいアスパラ好きがいっぱいいるのか?
 旬の季節になっても太い旨いものは近所のスーパーマーケットの売り場で見かけない。あるのは細めの価格も安いものが多い、ホワイトアスパラはほんの数束、これも細いものが並んでいるだけ。そうか、輸入ものを喜んで食べるくらいアスパラ好きがいっぱいいるのではなくて、少々鮮度が落ちても値段ありきなのだ。少しでも安いものを求める消費者にこたえるべく商社やスーパーマーケットが呼応しているのか。
 旬の旨いものを一度だけでも食べる、違いがわかっている人生の方が豊かではありますまいか。無理しすぎるのもいけないけれど、ちょっとで手が出るなら本物を感じることは大事でしょ。まして子どもはそれが物指しになるから経験、体験する機会を作るのはとっても大切な気がするのだ。
 
 
 コロポックル村の鶏は「もみじ」が400羽と「ボリスブラウン」150羽、そして「もみじ」のひなが200羽。住まいには雄鶏もいて雌は有精卵を産む。下の写真、フラミンゴのように片足でポーズをとっているのが雄鶏、雌に求められ突かれ少々禿げもあった。モテるのも辛いんだなぁ。自家配合の餌で飼育し、春から秋にかけてはアスパラ畑が運動場になり走り回るという。よく運動している親鳥、きっと旨いスープが取れるんだろうなぁと尋ねたら肉としての出荷はしていないという。手続きが大変らしいのだがもったいない。是非とも最後まで美味しくいただいて命を全うしたい。そう思うのは私だけだろうか。
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 素敵な二人
 スコップを使って土を掘る陽介さん、少し寒くなってきた夕暮れ時なのに額には大粒の汗が浮かんでいる。つなぎや作業服は着ないのがスタイル。ジーンズにスニーカー、スニーカーは靴下が汚れるので奥様の江梨子さんには嫌がられるそうだが、いかにもという姿はしないでいきたいと語る。新しい世代のこれからをつくる気概のようなものを感じた。かっこいいね〜、可愛い奥様が陽介さんに惚れるわけだ。江梨子さんのお腹には赤ちゃんがいて、もうすぐ誕生という。お父さんになったらもっと頑張っちゃうのかなぁ。頑張れ、陽介さん
 
 
 
 
 
  
 
 
  
 
 
 
 
  
 カフェには『熱々ソーセージのマスタード添え』1050円や『自慢の卵で作るオムレツ』840円もあり、しばし悩んでしまう。
『極太アスパラセット』4〜6月の限定メニュー。
レギュラーベーコンは250gで890円、パンチェッタは100g365円、野菜ソーセージ200g630円なども購入可。
カフェで楽しむも良し、アスパラが店頭にあればアスパラやベーコンで抜群のアスパラベーコンを自分で作るのも良し。
年4回の頒布会も企画しているというお話なので長い付き合いもあり。
旨いものを通して頑張っている人から元気をもらうのはどうだろう
  
  
  
 
 
 取材先の情報
  赤井川コロポックル村
   北海道余市郡赤井川村字都209
   0135-34-6434
   http://www.koromura.com
   カフェもあります
   webでチェックしてからどうぞ

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