日本の伝統野菜 その7 きゅうり       

きゅうり(胡瓜、黄瓜)ウリ科 キュウリ属
学名:Dcucumis sativus 英名:cucumber

 原産地はヒマラヤ山脈南部の山麓地帯で、インドでは紀元前1000年ごろには栽培され、ヨーロッパや中国にも紀元前に伝わった。日本にはマクワウリより遅れて、天平時代に中国の華南地方より伝わったと考えられる。『本草和名』(918年)に加良宇利(からうり)の名で記載されている。そばうりとも呼ばれた。現在でこそ、果菜類の中で消費量は最も多くなっているが、江戸時代の農書『農業全書』(1679年)には、「下品の瓜で田舎で多く作る。都にはまれなり。」などと書かれていて、栽培が盛んになったのは江戸時代後期に入ってからだ。明治時代には全国に普及し、各地に地方品種が成立した。しかし、現在は種苗会社の育成したF1(雑種第一代)が圧倒的になり、栽培地も集団化して品種の統一が進み、また単性花で自然交雑しやすいことから、在来品種の多くがすでに絶滅したり、危機に瀕している。かつては黒イボ系の品種が多かったが、現在は白イボ系が大半となり、しかもブルームレスといって、白い粉をふいたような果面を保護するろう物質のないものがほとんどになった。ブドウやリンゴでもそうだが、実際にはブルームがあるのは新鮮な証拠なのだが、農薬と勘違いされたことや、ブルームのない方が光沢があるために好まれ、キュウリではわざわざ特殊な台木に接木してブルームレスにすることによって、棚持ちがして流通に都合が良くなるので市場を席捲することになった。実際は、ブルームレスの方が皮が硬く味は劣り、漬物にも向かない。りんごの着色のための暗色袋掛けと同様、見掛け倒しであり、生産者にとっても消費者にとってもこのような栽培技術はメリットがない。
 キュウリの他にもウリ科の野菜は色々あるが、大別すると、トウガン(平安時代に渡来し古名はカモウリ)、スイカ(栽培的には野菜である、ちなみにキュウリでも中近東では皮をむいてフルーツとして食べる種類がある)、メロン(植物学的に同種なものとしてマクワウリ=北海道ではアジウリと言い余市は現在でも産地、シロウリ=シマウリ、カタウリもシロウリの一種)、カボチャ(植物学的には日本カボチャ、西洋カボチャ、ペポカボチャの3種がある)、ユウガオ(かんぴょうの原料、ヒョウタンも同種だが苦くて食べられない)、食用ヘチマ(沖縄ではナベラーと言い、鹿児島でもよく食べる)、ニガウリ(=ツルレイシ、沖縄ではゴーヤーと言い最近は全国区になってきた)、ハヤトウリ(大正時代に北米から入った)などが国内で栽培されている。
 日本在来キュウリの品種を大別すると、多くは華南系と華北系、一部にシベリア系がある。華南型が、より古く、華北系は日清戦争後の導入が多い。現在の一代雑種は華北系が主体だが多くは華南系の血も混じる。一般に成熟すれば4〜50cmにもなり黄色く熟すが、通常は15cmくらいの未熟で収穫し、10cmくらいで採ればモロキュウリ、3cmくらいで花びらのある段階で採れば花丸キュウリ、もっと小さい時に花も葉もつけて採れば葉付きキュウリと呼ばれ、つまや、あしらいに利用される。

1.華南系=黒イボ系、多くは春きゅうり=立きゅうり(支柱を立てて栽培)
@青大品種群(近畿以西)
A青長品種群(中部以東)
B青節成品種群(関東)
   針ヶ谷、落合(埼玉)
C半白品種群(各地)
   相模半白、馬込半白(東京)、淀節成(大阪)
D地這品種群=余まき胡瓜=夏きゅうり(関東)
   霜不知(しもしらず)

2.華北系=白イボ系、華南系との雑種は黒イボもあり
@春型雑種群(北陸、東北):半白系で、漬け物には最高だが、生食では見劣りし、廃れた物多し。
  刈羽節成(新潟)、加賀節成、金沢節成(石川)、聖護院(京都→韓国→アメリカ)、会津葉込、岡部(福島)、南館=堀込(山形)
A夏型雑種群(西日本)   毛馬
B北支型品種=長きゅうり:昭和になって導入。西日本で好まれる。しわが多いが、肉質よい。
  四葉(スーヨー、静岡など)、支那三尺

3.シベリア系
@ピックル型(東北、北海道):果実は短く5cm程で収穫するが、成熟すれば大きく、メロンのように網目が出る。江戸時代中期には、すでに栽培されていた。欧米では、キュウリに良く似たガーキンというものもピクルスにしている。
 酒田、最上、庄内節成、鵜渡河原、大町(山形)、森合(宮城)、青森地、糠塚(青森)、岩手地(岩手)、及部(北海道南部)
Aドッコ型(北陸、山陰):円筒形巨大で、黒イボ、網目(ネット)は出ない。アンカケ、肉詰め等に向き、漬け物にも利用する。
高岡太(富山)、加賀太(石川)

>>>> えこふぁーむ・にゅーす見出し一覧