無農薬カボチャから、基準超す残留農薬検出のショック!
 
 9月6日、函館市内の農家が生産したカボチャから、残留基準値を超える農薬「ヘプタクロル」が検出されたと函館保健所が発表し、新聞等でも大きく報道された。このカボチャは函館市亀田農協を通じて新潟県内に出荷されたもので、同農協は127ケースのカボチャを自主回収、焼却処分した。残留農薬の規制強化を図る「ポジティブリスト制度」が今年5月に導入されて以来、道産野菜から基準値を超える残留農薬が検出されたのは初めてで、国内では3例目。農薬使用量が全国で最も少ないとクリーン農業を標榜してきた北海道にとっては、大きな痛手である。しかも、新聞では報道されなかったことだが、こともあろうに、このカボチャは有機栽培(2年以上化学合成農薬、化学肥料不使用の畑で生産)による無農薬カボチャだった。これは、同じく無農薬有機栽培(非認証)をしている私にとっても大きなショックである。もっとも、基準値を超えたからと言って直ちに健康に影響があるような濃度ではない。健康リスク(慢性毒性)は濃度×食べる量で判断するべきだからだ。しかし、無農薬農産物から、基準以上の農薬が検出されたということ自体、大きな問題である。無農薬ではなく、非農薬と言わなくてはならないのかもしれない。
 ポジティブリストにより、今まで規制外であった農薬についても、非常に厳しい基準が課せられることになったのだが、これは消費者を守るという観点よりも、海外(特に中国)からの輸入農産物を阻止することが主な目的であることが明らかである。今回検出されたヘプタクロルは、有機塩素系の殺虫剤で、1975年に農薬取締法で使用禁止となったもので、この農家もそれ以降は使用していないと言っている。従って土壌に残留していた30年以上前のヘプタクロルがカボチャに吸収されたと考えるしかないのである。当時は生産性が最優先で、害虫に対して卓効のあった有機塩素剤は全国で使用されていた。ヘプタクロルは北海道では特にビート畑でよく使われていたようで、このカボチャも30年以上前はどうもビート畑であったらしい。このヘプタクロルは、分解性が低く発ガン性も疑われるために禁止されたが、30年以上たっても基準以上の濃度で検出されるとは驚きである。登録が抹消され、流通及び使用が禁止されたとしても、既に使用してしまった農薬を回収することはほとんど不可能なのだ。これほど昔の農薬が検出されてしまうのだから、生産者にとっては足元をすくわれた格好であり、輸入農産物阻止のつもりがやぶへびになってしまったわけだ。しかし、改めて化学合成農薬がいかに恐ろしいものであるかを再認識させられたという意味では、この法律には大きな意味があったと言える。
 もっとも、こんなことは当初から分かっていたはずなのである。食品衛生法のポジティブリストでは、本体と代謝物の両方を合わせたものが基準に設定されていて、今回検出されたものは、厳密には代謝物のヘプタクロルエポキシドであるらしい。これは今までも全国の土壌中から検出されている。だから、今回の函館の問題は、今後全国でも必ず問題になるはずである。  ヘプタクロルによく似た有機塩素系農薬であるディルドリンも、75年に登録失効となっているが、ディルドリンは現在でもキュウリにおいて検出される例が数年前から知られていた。カボチャもキュウリもウリ科であり、他の作物に比べて土壌中に残留している有機塩素系農薬を吸収しやすいと言えるのかもしれない。02年の東京都の調査では、814カ所の土壌を分析して約1割からディルドリンの残留が確認され、その内の95%は0.5ppm以下であったが、中には2.6ppmも残留している例があった。そういった土壌でキュウリを育てると、330サンプル中12サンプル(3.6%)が0.02ppmの基準超過となったという。かつて有機塩素系農薬を使用していた畑では、ウリ科作物を栽培するのは止めた方がよさそうだ。かつては、砒素や水銀なんて重金属も、農薬にかなり使われていた。マスコミではほとんど取り上げられていないみたいだが、これらの土壌残留は日本でも世界でも深刻な問題である。
 当園では私が入植して15年間ほとんど無農薬であり、その前の持ち主も新規で入植して15年間無農薬に近い低農薬を実践していた。だから、他の園地に比べれば極めてきれいだと思う。しかし、果樹地帯では、スピードスプレーヤという機械で農薬を霧状に撒き散らすので、風に乗って飛んでくるドリフトという問題を完全に避けることはできない。また、水田地帯などでは、いかに無農薬を実践しようとも、上流で使っている農薬や生活廃水なども流れ込んだりする。だから、無農薬栽培といえども、無農薬農産物という言葉は使えないのである。農薬は、水や大気の循環、そして何よりも食物連鎖による生物濃縮によって世界中を駆け巡る。インドでしか使われていない農薬(環境ホルモン)が、北極海のアザラシから検出されるのである。有機農産物を食べていれば安心という問題ではない。農薬そのものを追放しなければならないのである。 

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