反農薬の闘いは、反基地の闘いだ!
『小樽を再び軍港にしないために』(米空母に反対する会刊行)寄稿論文

    私は今、無農薬で作物を育てている。それは命を守るためである。消費者の命を守り、自分自身の命を守ることはもちろん、それだけのためでもない。この畑のまわりにも色々な虫や鳥や多くの生き物がいるし、健康な土の中には1gに2000種類、1億個もの微生物が生きていて、しかもそれらがすべてお互いに影響しあって生きており、一つとして単独で生きることのできる生命など存在しない。すべてがかけがえのない命なのである。それらの小さな命のためにこそ、農薬や化学肥料は使えない。そして、最近環境ホルモンというものが知られるようになったが、それらの化学合成物質は、たとえどんなに微量でも、世界中に拡散して生命を脅かしているということがわかってきたのである。自分だけが有機農産物を食べていれば大丈夫なんて問題ではない。農薬の存在自体が悪なのである。農薬は、適正に使用すれば安全で役に立つなどという考え方は、完全に破綻してしまっているのだ。
 そして、人殺しの兵器と兵士を備える基地というものもまた、農薬と全く同じ悪である。正しい戦争などというものはあり得ない。したがって、戦争の準備のための基地は、あってはならないのである。巨大空母の入港を歓迎して、友好だのとうかれているのは、全く馬鹿げているし、許せないことでもある。ベトナム戦争でも湾岸戦争でも多くの人を殺してきたインディペンデンスが、今またペルシャ湾で多くの人を殺して最期の時を飾ろうとしているではないか。小樽での歓迎は、一体何だったのか。
 有機農業を営むことと、戦争や基地に反対することは、何か結びつかないように思われるかもしれないが、これが実は切っても切れない関係にある。化学肥料とは、第1次大戦での火薬産業が生き延びるために発明され普及されたものであり、合成農薬もまた、第2次大戦の毒ガス製造産業が、民需に転換して使われるようになったものなのだ。決して、農民の側の需要によって生まれたものではない。一般に、有機農業では生産性が十分に上がらないと考えられているが、全くの誤解である。化学肥料や合成農薬が生命を殺すものだと言う本質は、その誕生の時点から不変である。反農薬と反基地の闘いは、生命を脅かすものに対する共通の闘いなのだ。
 さて、本日('98.2.11)のニュースといえば、長野オリンピックでこの余市町が生んだジャンプのエース船木が銀メダル、女子モーグルで札幌出身の里谷が女性では日本初の冬期五輪での金メダルと、まことににぎやか。スポーツは悪くはないのだが、一方でその陰に隠れてしまったニュースの方がとても気になる。まず、アメリカが母港の横須賀から空母インディペンデンスを始めとして、多数の軍艦と5万人もの兵士をペルシャ湾に集結させ、大義名分のないままにイラクを攻撃しようとしていることである。隠し持っているかもしれない大量破壊兵器に対する強制査察をイラクが無条件で受け入れないことに対して、第3国のアメリカに戦争を仕掛ける権利がどこにあるというのだろう。湾岸戦争の時にはまだ大義名分があったが、どちらにしても正義のための武力行使なんて、まやかしに過ぎない。武力そのものが正義ではない。アメリカの世論調査でも、ほとんどがイラクへの攻撃を支持していると報道されていた。設問の仕方が気になるが、それが本当ならば、何と愚かなことなのだろう。
 また本来ならば、今日は紀元節復活に反対することはもちろん、象徴天皇制というソフトな装いをもった差別と排除のシステムに対して切り込む格好の日であるのだが、マスコミにはそんな問題意識などこれっぽっちもありはしない。それは仕方ないとしても、一般的な日本人の意識はとても気になる。建国記念の日だからといって、今時軒先に日の丸を掲げるような家庭はそうそうないが、オリンピックの表彰台に日の丸が揚がるのを見て喜ばない日本人は少ないだろう。でも、沖縄の人はどうなんだろう。沖縄で国体があった時に日の丸を引きずり降ろした知花さんは、一体どう思っているのだろうか。アイヌや在日朝鮮韓国人も、どんな思いであの日の丸を見ているのだろう。日の丸が揚がる時の君ヶ代には、もっと複雑な思いを抱くに違いない。国家を代表して競うオリンピックって、一体何なのだろう。
 先日の沖縄のヘリポート基地移転問題に伴う名護市長選の結果でも、非常に複雑な思いにさせられた。住民投票を翻す結果には驚きもしたが、沖縄の痛みがとても深いことを知らされたことでもあった。大田知事はいつも良心に誠実に発言をするのでとても尊敬できるのだが、それにしても自民党政権の対応にはあきれた。開発振興策などというアメをちらつかせながら言うことをきかせようとする態度には、沖縄に対する差別意識がありありと伺えるし、基地はいらないと言っている大田知事に対して、ヘリポートを巨額の思いやり予算とやらで移転させようという全くナンセンスな対応は、どう考えてもアメリカの傀儡そのものの姿だ。政治の視点が、民衆とは全く対極にある。沖縄本島における開発の遅れた北部地域の弱みにつけこみ、意地汚いやり方で大田知事を追いつめようとしていることに対しても、全く腹が立って仕方がない。この国の政治も経済も、腐臭を放ち始めている。どんな政治や経済からも解放された生き方が可能な有機農業にこそ、未来を託したい。


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