農民芸術学校(余市フォルケ・ホイスコーレ)

農民芸術学校は、まだ構想中でありますが、実現に向けて以下のような計画を練っています。この計画に賛同して下さる方の協力を、今後求めていく予定です。私は、学生時代に宮澤賢治の「農民芸術概論」に共鳴し、彼と同じ30歳でサラリーマンをやめて百姓になり、夢であった農民オーケストラを始めることができました。しかし、このことをもっと新しい運動に育て,若い人たちに受け継いで行ってもらいたいという願いを強く抱くようになりました。そのために、このような学校を作ろうと思っています。デンマークに発祥したフォルケ・ホイスコーレ(宮澤賢治の教えていた花巻国民高等学校は、その流れを汲むもの)の理念である三愛主義(神と人と土を愛する)を基本とし、有機農業を実践しながら、音楽などの芸術を学ぶ場になるでしょう。フォルケ・ホイスコーレは北欧を中心に全世界にあり、18歳以上を対象にしたカリキュラムの自由な私立学校で、教師と生徒が生活を共にしながら学び、試験はなく資格にも無関係です。日本では、この名前での学校は北海道の瀬棚と、山形の小国にあります。

1.農民芸術学校(仮称)とは
 農民芸術学校(余市フォルケ・ホイスコーレ)は、祈りと労働をしながら、自然や社会についても学び、音楽を中心に多様な芸術活動を行うための人材を育成する学校です。デンマークに発祥したフォルケ・ホイスコーレ(=民衆大学)の理念である三愛主義(神と人と土を愛する)を基本として、教師と生徒が生活を共にしながら、将来的に農業による自立を可能にし、また平和を実現するための芸術を身に付ける、訓練の場です。

2.農民芸術学校設立の趣旨
 学問や技術を学ぶだけならば、既存の学校でも十分ですが、人間としてのあり方を学び、芸術の本質を獲得することは、そこでは困難です。そのために、祈ることと働くことも、大切なカリキュラムとした学校が、今こそ求められていると思います。従来の学校が、依存と競争による上からの教育の場であるのに対して、農民芸術学校は、自立と共生を自ら学びとる場です。既存の教育機関のほとんどは、現代資本主義社会の歯車となる人間を育てるシステムになっていますが、この学校は、有機農業を中心とした自給的労働により自立できる人材を育て、創造的な芸術活動により社会に奉仕貢献できる人間を目指し、そのためのスキルを磨きます。

3.農民芸術学校の理念
 芸術は、かつて特権階級に仕えることにより発展しましたが、現在は主にコマーシャリズムに仕えていると言えるでしょう。しかし、真の芸術は、そのような形では生み出されません。真の芸術は、日々の労働によって支えられ、神や自然の霊性に触れる祈りの中にこそ、存在するものです。大量生産される「娯楽」ではなく、かといって労働と無関係なところにある自称「芸術」でもなく、祈りの具現としての労働から生まれる、虚飾のない「真の芸術」こそ、農民芸術学校の目指すものです。
 農民芸術学校は、キリスト教の「愛」の教えを基本にしたいと思いますが、特定の宗教や信仰をおしつけるものではありません。主義・主張によって他者を排除することこそ、「愛」に反する行為であるからです。また、「祈り」を大切にしたいと思いますが、口先だけの祈りには、意味がありません。労働そのものが「祈り」であるために、農民芸術学校での農耕は、できる限り大自然の霊性と交感し合える農法、つまり有機農法あるいは自然農法で行います。さらに、農作業のみならず、あらゆる自給的労働、つまり建築や土木、農産加工や工芸、そして炊事や洗濯などの家事労働も、教師と生徒の共同作業で行います。最終的には、農業や労働そのものが「芸術」にまで高められることが目標です。
 芸術は、自閉的であっては意味がありません。芸術は一部の人たちのものだけであってはならず、広く外へ開かれている必要があります。行く行くはオリジナルのミュージカルや新しい伝統芸能の創作にも挑戦して行きたいと思います。
 最終的な目標として、この農民芸術学校を中心に、老若男女、障がい者も健康な人も、どんな人も一緒に暮らせる、有機的、総合的な自給自足の村にまで発展させることを、将来の大きな構想としています。

4.農民芸術学校の構想
(1) 入学の条件
 18歳以上(高校卒業程度)の男女で、将来的に農業による自立(収入の柱を農業とするか、自給的農業を営みながら他に現金収入の道を得るかは、不問)を目指し、音楽を愛し(何か楽器の演奏ができることが望ましい)、平和を愛し、規律を乱さないことを約束できる者。

(2) 募集定員
当初は5〜8名程度

(3)日課・休日
一日のスケジュールは、静かに祈ることから始め、午前中は農作業、午後からは別の労働や学習、そして夕方から楽器の稽古、そして夜は自習や自由な時間に充てます。土曜日の午後は、野外活動や社会奉仕活動、音楽活動など、校外でのカリキュラム中心にします。日曜は朝の礼拝をしてから休日とします。ただし、農繁期は当然農作業中心になるでしょうが、冬期間には特に音楽に集中して外部での公演もしばしば行うことができるようにしたいと考えています。長期休暇は、夏休み1週間程度、冬休み6週間程度、春休み2週間程度を予定しています。

(3) カリキュラム
農業(有機農業、作物学、畜産学、土壌学、害虫学、農業経営など)、農産加工(食品加工、織物、染色など)、工芸(陶芸、木工など)、土木建築、音楽(楽器演奏、歌唱、理論、音楽史、伝統芸能、アイヌ音楽など)、語学(英語、アイヌ語など)、自然科学(生態学、植物学、動物行動学、気象学など)、歴史社会(日韓史、アイヌ史など)、平和学、聖書学など 有機農業実習、合奏実習(最低限何か一つオーケストラ楽器の演奏技術を習得することを必須とする)、社会奉仕(福祉施設訪問など)、体育(登山、スキー、カヌーなど)

(4) 卒業後の進路
農業者として自立できるよう、農地取得まで面倒をみます。学校のスタッフと共に、共同体のメンバーに加わるという選択肢も歓迎します。その場合には、自給率向上および収入向上に大きく貢献する新たな生産活動(従来いなかった動物の飼育や食品加工など)にチャレンジすることが望まれます。

(5) 授業料・寮費
寮費と学費は最低限に抑えたいのですが、月10万円程度は必要です。将来的には、奨学金制度も導入できるようにしたいと思います。

5.農民芸術学校の設立に向けて
(1) 開校予定
未定

(2) 場所・敷地
当面は、余市町登町の「えこふぁーむ」隣接地に、農地(1ha=3000坪の農地)が確保されていますが、土地代金の約500万円の支払いは、まだこれからです。ブドウハウス0.15ha、ブドウ棚0.3ha、サクランボ0.4ha、未植地0.15haがあります。

(3) 校舎・宿舎・その他施設
上記農地内に、教室・ホール・宿舎を備えた、約10名の生徒と寮舎監が共に生活できる施設を計画しています。自然素材を使い、バリアフリーで薪暖房、人力攪拌コンポストトイレを備えたものにします。他に、鶏舎等の建設も予定しています。

(4) スタッフ
専従教師:牧野時夫(音楽および有機農業、北海道大学農学部農学科修士課程修了、有機農園「えこふぁーむ」代表)、
寮舎監:    、会計:     、外来講師:       、他に随時、臨時講師も招きます。

6.農民芸術学校の運営
 学校の設立、運営には、かなりの資金が必要となりますが、公的な助成を求めることは、当面困難であると思われますので、学校の趣旨に賛同する支援者からの寄付によって発足させ、将来的には農産品や加工品などの生産を軌道に乗せ、その販売で運営を支えられるようにし、より充実した内容に発展させて行きたいと思います。 よってここに、「農民芸術学校を支える会」を設立し、以下の要領で、出資、協賛、募金を募って行きたいと思います。

(1).農民芸術学校を支える会 正会員(出資金1口  円、年会費  円)
  学校運営に対し発言する権利を持ち、年1回の総会に出席するか委任状を提出しなければなりません。出資金に応じた配当などはありませんが、学校が生産した農産物の送付を受けられます。定期的な通信も送付いたします。退会する場合には出資金の返却を受けることもできます。

(2).農民芸術学校を支える会 賛助会員(入会金  円、年会費  円)
  総会にもオブザーバーとして出席し、意見を述べることもできますが、議決に参加する権利はありません。学校施設の優先的な利用ができます。また、定期的な通信の送付を受けられます。

(3).農民芸術学校を支える会 サポーター(随意の寄付金)
  純粋な募金で、金額はいくらでも構いません。あなたのできる範囲での協力をお願いいたします。

こちらもご覧ください>>>「農民芸術学校の設立を目指して」  
日本グルントヴィ協会 会報「ハイムダール」第25号(2004.6.20)より

この構想に賛同される方のご意見お待ちしています。
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