サマーコンサート2007

ごあいさつ

余市室内楽協会 代表  牧野 時夫


   本日は、余市室内楽協会のコンサートにお越し下さり、ありがとうございました。余市室内楽協会も、今年で創立20周年を迎えました。前代表の浦宏吉が創立した1988年には、わずか6名のメンバーでしたが、現在では20名を越えるメンバーが、余市町内はもとより町外からも多数参加し、小編成のオーケストラ曲も、演奏できるようになりました。個人的にも様々な音楽活動をしているメンバーがたくさんいるので、今回は会員それぞれの独奏によって様々な楽器のコンチェルトを楽しんでいただくという贅沢なプログラムを組んでみました。また、最後のバルトークの作品はコンチェルトではありませんが、フルート、オーボエ、ヴァイオリンが独奏的に活躍し、最後に全員で一気に盛り上がるという曲です。いずれの曲も、決して易しい曲ではありませんし、我々には未熟な点がまだまだ沢山ありますが、少しでも皆様に楽しんで聴いていただければ幸いです。
 当協会は、この余市中央公民館のサークルとして誕生し、創立以来、練習にも演奏会にも、この公民館を減免措置で使わせていただいていることを、大変ありがたく思っています。ただこの会場は、クラシックの生演奏にとっては、音響面でつらいものがあるというのも正直なところです。町の財政状態も厳しい中、不可能なことにも思えますが、クラシック演奏に適した音響の良い会場が、いずれ余市町にできることを願わずにはおれません。 それでは、秋の一夜、日ごろの喧騒を忘れて、生の楽器の音色をたっぷりとお楽しみください。

演奏曲目

1.アルビノーニ作曲
 オーボエ協奏曲 ニ短調 作品9−2 全3楽章
  オーボエ独奏: 石田浩子
2.カール・シュターミッツ作曲
 フルート協奏曲 第1番 ト長調 作品29  全3楽章
  フルート独奏: 瀧谷まゆみ
  ・・・・ 休 憩 ・・・・
3.ヴィヴァルディ作曲
 ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「秋」 全3楽章
  ヴァイオリン独奏:牧野時夫
4.J.S.バッハ作曲
 フルート・ヴァイオリン・チェンバロのための三重協奏曲 全3楽章
  フルート独奏:瀧谷まゆみ、ヴァイオリン独奏:牧野時夫、チェンバロ独奏:板谷知子
5.バルトーク作曲
   ルーマニア民俗舞曲集 全6曲

曲目解説

1.トマゾ・アルビノーニ(1671〜1751)作曲
 オーボエ協奏曲 作品9−2 ニ短調(1722) 全3楽章
 イタリアのヴェネツィアで、ヴィヴァルディとほぼ同時代に活躍したアルビノーニは、生前はオペラの作曲家として知られ、50曲ほどのオペラを残していますが、現在ではこのオーボエ協奏曲などがよく演奏されています。映画で有名になったオルガンと弦楽合奏のための「アルビノーニのアダージョ」は、アルビノーニのオリジナル作品ではありません。
 作品9には12の協奏曲がありますが、オーボエ協奏曲はいくつもあり、他に2本のオーボエや、ヴァイオリン協奏曲もあります。他にも作品7と作品10という、それぞれ12曲の協奏曲集があり、やはりオーボエ協奏曲を含んでいますが、作品9のオーボエ協奏曲群、とりわけこのニ短調は、人気が高くしばしば演奏されます。

2.カール・シュターミッツ(1745〜1801)作曲
 フルート協奏曲 第1番 ト長調 作品29  全3楽章

 モーツァルトと同時代に活躍し、ヴァイオリニストとしても活躍したカール・シュターミッツは、チェコ系のドイツ人(ドイツで生まれ育ったチェコ人?)です。それぞれ50曲を越える交響曲と協奏曲の他、おびただしい数の室内楽曲を残していますが、この曲はフルート学習者にとって、有名なモーツァルトのフルート協奏曲を演奏する前に、必ず演奏しなければならないレパートリーとされるほど重視されています。
 カールの父はマンハイム楽派の創設者とされるヨハン・シュターミッツで、やはり50曲を越える交響曲を残し、もちろんフルート協奏曲も書いています。また、弟のアントン・シュターミッツもヴァイオリニストで作曲家。20曲を越えるヴァイオリン協奏曲を書いていますが、やはりフルート協奏曲を残しており、この曲も今でも演奏されるレパートリーになっています。

3.アントン・ヴィヴァルディ(1678〜1741)作曲
 ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「秋」 ヘ長調 作品8−3

 正式には、12曲からなるヴァイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」作品8のうちの第3曲です。それぞれの楽章に表題と、短い詩(ソネット)が、添えられていて、音楽による具体的な描写がされています。

第1楽章 アレグロ(小作農の踊りと歌)
 小作農たちは収穫が無事に終わり大騒ぎ。ブドウ酒が惜しげなく注がれる。彼らは、ほっとして眠りに落ちる。
第2楽章 アダージョ・モルト(酔っぱらいの居眠り)
 大騒ぎは次第に弱まり、冷たいそよ風が心地良い空気を運んで来てすべての者を無意識のうちに眠りに誘う。チェンバロのアルペジオに支えられてヴァイオリンは眠くなるような長音を弾く。
第3楽章 アレグロ(狩り)
 夜明けに、狩猟者が狩猟の準備の為にホルンを携え、犬を伴って叫んで現れる。獲物は彼らが追跡している間逃げる。やがて傷つき獲物は犬と奮闘して息絶える。

4.ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685〜1750)作曲
 フルート・ヴァイオリン・チェンバロのための三重協奏曲 イ短調 BWV 1044 全3楽章

 有名なブランデンブルグ協奏曲第5番と全く同じ編成の曲です。すべての楽章が、オリジナルはバッハの鍵盤曲だったものから編曲したものですが、最初から協奏曲として作曲したかのような構成になっています。第2楽章は、独奏者3人のみで演奏されるようになっていますが、今回はファゴットを通奏低音に加えて演奏いたします。第3楽章は、ブランデンブルグ協奏曲の場合ほど長大ではありませんが、チェンバロのカデンツァがあって、全曲を通してチェンバロの演奏難易度は相当に高く、名人芸が要求されます。

5.バルトーク・ベーラ(1881〜1945)作曲
      ルーマニア民俗舞曲集

 1909年から1915年にかけて20代のバルトークがピアノのために作曲した作品ですが、友人のセーケイのヴァイオリンとピアノのための編曲や、弦楽合奏版もよく演奏されます。今回は1917年に自身によって小管弦楽のために編曲されたものを、余市室内楽協会の編成に合わせてさらにアレンジしました。
  6曲からなる短い小品の組曲ですが、バルトークがコダーイと共に取材した民謡素材(バルトークはハンガリー人ですが、彼の生地は現在ルーマニア領になっています)によっており、印象派風の近代的な和声で彩られ、親しみやすい魅力的な作品になっています。

第1曲 棒踊り Danse au baton
第2曲 飾り帯の踊り Braul
第3曲 足踏み踊り Le batteur de grain
第4曲ホーンパイプ踊り Danse de Bucsumi
第5曲 ルーマニア風ポルカ Polka roumaine
第6曲 速い踊り Danse rapide
  2部に分かれ、前半は「ハン」と呼ばれる部分で、後半やや速度を増して、全曲のフィナーレに相当するのが「ルーマ」と呼ばれている部分です。

出演者

オーボエ独奏: 石田浩子
 小樽市在住。中学よりオーボエを始める。北海道教育大学芸術文化過程音楽コース(オーボエ専攻)4年目在学中。オーボエを寺岡稔、岩崎弘昌の各氏に師事。2006年第16回日本クラシック音楽コンクール全国大会入選。2004年および2007年小樽室内管弦楽団春のミニコンサートでソリストを務める。管楽器研究演奏会「残響」、北海道ディレクターズバンド、小樽室内管弦楽団会員。余市室内楽協会には、高校生の時から出演していただいている。

フルート独奏: 瀧谷まゆみ
  稚内市出身。北海道教育大学札幌校芸術文化過程音楽コース(フルート専攻)卒業。フルートを森圭吾、(故)高橋安治、山崎衆の各氏に師事。札幌新人音楽会、札幌パームホールフレッシュコンサート等に出演。1996年ソロリサイタル開催。現在、余市町在住。後進の指導にあたる他、道内各地で演奏活動を積極的に行っている。北海道ディレクターズバンド、余市室内楽協会会員。

チェンバロ独奏: 板谷知子
  仙台市出身。愛知県立芸術学部音楽学部作曲専攻、同大学院修士課程修了。佐藤泰平、福井文彦、山内忠、小林秀雄、石井歓の各氏に師事。現在、子どもたちにピアノを指導しながら、合唱指導、伴奏、アンサンブル、作編曲活動を行っている。また声楽家の夫と共に宗教曲をレパートリーとする合唱団「コーロ・ファーチレ」を主宰し、道央圏中心に管弦楽伴奏でのコンサートを開催している。音楽活動の傍ら、よいち子ども劇場の運営委員長も務めている。余市室内楽協会ではヴィオラも演奏する。

ヴァイオリン独奏: 牧野時夫
  大阪府生まれ、幼少期より高校卒業までは山梨県で育つ。北海道大学農学部卒業、同大学院修士課程修了(果樹蔬菜園芸学)。3歳よりヴァイオリン、ピアノ、聴音を習い、北大交響楽団、北海道交響楽団、山梨交響楽団、岡山交響楽団等で、コンサートマスターを務める。本州のワイン会社にてブドウの栽培・育種の研究後、1992年、北海道余市町に有機農園「えこふぁーむ」開設し、ブドウを中心に数百種類の果樹・野菜を無農薬栽培。1994年、北海道農民管弦楽団を設立、同代表・指揮者、作編曲も行う。余市室内楽協会でも、代表・コンサートマスターを務める他。板谷夫妻主宰の合唱団コーロ・ファーチレの伴奏アンサンブルでのコンサートマスターも務める。  他に小樽室内管弦楽団と協奏曲の共演等、年間20回以上の演奏活動を道内外にて行う。日本有機農業研究会、北海道有機農業研究会、しりべしなんでも百姓くらぶ各会員、北海道農業担い手センター就農アドバイザー。

   第1ヴァイオリン
 牧野時夫、井坂有美子、小泉雅広、久保田睦、古谷 甫、牧野智香 
   第2ヴァイオリン
 嶋田 宏、嶋田覚子、舘巖晶子、廣田洋子、中岡亮子 
   ヴィオラ
  清水三佐子、板谷知子、浦 宏吉、古谷洋子
   チェロ
    山川雅裕、佐川一美、篠田寿生
   コントラバス
    荒木雅幸
   フルート
    瀧谷まゆみ
   オーボエ
    石田浩子
   ファゴット
    高嶋孝寛
   チェンバロ
    板谷知子

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