チャシはアイヌ語で「砦」や「柵」などを指す。「城」も意味するといわれているが、いわゆる天守閣を伴った近世の城郭ではない。多くは周囲に壕が掘られたり、壕を掘った土を盛り土した土塁や柵が備えられるなど、空間を仕切る役割を担っていたという。
北海道の歴史を追う際に欠かせないのが、アイヌの人々が築きあげた文化。その中にチャシという言葉が出てくる時期があり、アイヌ文化期を知る上で重要なものとなっている。しかし、北海道に住んでいてもチャシについて知る人は多くない。
道内各地に分布し、その数は現在わかっているものだけでも五百を超えている。道東地域や太平洋側に多く、日本海側や内陸部に少ない。宅地化で失われてしまったり、チャシを見つけるための重要な伝承が途切れてしまっている可能性があり、もしかしたら皆さんが住んでいる場所の近くにも発見されていないチャシがまだあるかもしれない。
※この写真は、稚内市の増幌チャシ。典型的な孤島式のチャシ。頂上から見ると右の部分に壕のくぼみがある。(写真提供:北海道開拓記念館)
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